第88話「テツジンからの連絡」
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スマホを取り出した。
知らない番号だった。でも、送信者名の欄に「テツジン」と入っていた。
いつの間に番号を知ったのか、ソウには分からなかった。
〈現在の世界安定性:9.2%〉
それだけ書いてあった。
ソウは歩き続けながら、その数字を見た。
9.2。
一ヶ月前は14.7%だった。テツジンが「1ヶ月前は28%でした」と言っていた頃からの数字の推移を追えば——下がり方が速くなっている。
返信を打った。
〈受け取りました。残り日数は?〉
すぐに返信が来た。
〈現在の速度であれば、54日〉
「……」
ソウは53日ではなく、54日という数字を確認した。ep86でソウが計算した57日より少なく、また速度が上がっている。
もう一つ返信が来た。
〈急いだ方がいい。あと——新しい異変が起きた〉
〈どんな異変ですか〉
返信を待った。
帰宅してから五分経っても、返事が来なかった。
ソウは自分の部屋の机の前に座って、スマホを持ったまま待った。
外が暗くなっていった。
十分後、返信が来た。
〈場所と詳細は明日分かります。今日は報告のみです〉
〈分かりました〉
〈一つ伝えておきたいことがあります〉
〈何ですか〉
〈9.2%というのは、今まで私が観測した中で最低の数値です〉
〈それは——今回が最も深刻な状況ということですか〉
〈はい〉
〈過去のサイクルでは、この時点でどうなっていましたか〉
また間があった。
〈この段階まで来たことが、今回が初めてです〉
ソウはその文を、しばらく見た。
〈初めて、というのは〉
〈過去の全サイクルでは、アップデートたちがこの数値になる前に——能力を使うことをやめるか、消えるかしていた。9.2%まで下がったまま残っているのは、今回が初めてです〉
ソウは少し考えた。
〈それは——俺たちが今まで一番粘っているということですか〉
〈そういうことです〉
翌朝、出勤してすぐにソウは全員をバックヤードに集めた。
「テツジンさんから連絡がありました」
スマホの画面を見せた。
全員が数字を見た。
「9.2%」とナナが繰り返した。
「昨日より下がってます」
「どのくらいで」
「54日。昨日俺が計算したより速くなっています」
「……」
「今までのサイクルで、この数値まで来たのは今回が初めてだとも言っていました」
「初めて」とレイが言った。
「私たちが一番粘っているということです」
全員が少し黙った。
〈昼のニュース速報〉
「あの」とカイが言って、スマホを取り出した。「今、ニュース通知が来ました」
〈神奈川県横浜市の一部地区で、今朝から建物が存在しない空き地が複数確認されている。昨日まで建物があったとする証言が複数あり、市が調査中〉
カイが「……建物が消えた?」と言った。
「それが新しい異変かもしれません」とソウが言った。
ミオが、少し顔色を変えた。
「急いだほうがいい。あと——新しい異変が起きた」
昨夜のテツジンの言葉が、繋がった。
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