第87話「店長の答え」
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「どうしたいか」と、ソウは繰り返した。
全員が少し黙った。
「残りたいです」とナナが言った。「ここに、みんなで」
「普通に働きたいです」とカイが言った。「能力がなくても」
「お前らと一緒に決めたい」とテルが言った。
「ミオさんが作った崩れた卵焼きを食べてみたいです」とソウが言った。「それが終わってから、ということでいいですか」
ミオが少し笑った。「練習します」
レイが少し間を置いた。「……私は、まだ全部は分かりませんが——ここにいたいと思っています」
「そうか」と田所店長が言った。
腕を組んで、全員を見た。
「俺はお前たちのことを信頼してる」
特別な言い方ではなかった。普通の声で言った。
「どう決めても、ここはいつでも来ていい場所だ。封印しても、しなくても。能力があっても、なくても。それだけは変わらない」
全員が黙った。
ソウは店長の顔を見た。店長はいつも通りの顔だった。特別に優しい顔をしているわけじゃなかった。ただ、本気で言っていた。それだけが伝わった。
ナナがちょっと、口元を押さえた。
カイが天井を見た。
テルがそっぽを向いた。
ミオが「ありがとうございます」と言った。声が少し細かった。
レイが店長を見て、それから床を見た。
「……仕様なので」とレイが言った。
「何がだ」とテルが言った。
「なんとなく言いたくなりました」
「じゃあ今日は上がっていいぞ」と店長が言った。「残りはシフト通りやるから」
「すみません」
「気にするな。お前らの話を聞くのは——まあ、店長の仕事の範囲内だ」
全員がバラバラと立ち上がった。ソウが最後に残って「店長」と言った。
「なんだ」
「ありがとうございました」
「お前が礼を言うことじゃないだろ」と店長が言って、立ち上がった。「まあ、お前がここにいるのは、お前自身がいたいからだろ。別に礼は要らない」
「……そうですね」
「分かったら帰れ。明日もシフト通り来い」
夕方のニュースが流れた。
〈東北・関東に続き、近畿・中四国でも河川の水量低下が相次いでいる。専門家は「大規模な地下水脈への影響が疑われる」としているが、原因は依然として不明〉
ソウは一人でメモを書いた。「川の干上がり、近畿・中四国まで拡大」。五十七日。
帰り道。
ソウは一人で歩いた。
夕焼けが残っていた。橙の空の下で、自転車の人が通り過ぎた。犬を散歩している人が通り過ぎた。
ソウは歩きながら考えた。
なぜここが好きなのかを、今まで考えたことがなかった。バイト先として選んで、働いて、気づいたらみんながいた。それだけだった。
でも今日、田所店長が「いつでも来ていい場所だ」と言ったとき——ああ、そういうことか、と思った。
店長がいるから、ここが好きなんだ。
それだけじゃないかもしれないが、それは確かにあった。
スマホが鳴った。
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