第85話「店長の目撃」
---
ソウはカウンターから立ち上がって、バックヤードに向かった。
テルとナナとレイがついてきた。ミオは「お客様対応があります」と言ってカウンターに残った。
在庫室に入ると、田所店長が腕を組んで立っていた。カイが棚の横で少し固まっていた。
床に、端末機器が入ったダンボール箱が五箱ほど積まれていた。
さっきまでは天井近くの棚に置いてあったはずの箱だった。
「ソウ」と店長が言った。
「はい」
「お前、さっきここ通ったか」
「通っていないです」
「お前たち誰もここにいなかったんだな」
「いなかったと思います」
店長がカイを見た。カイが少し目を逸らした。
「ミドウ、俺に説明してくれ」と店長が言った。「あの箱が、棚から——浮いてたんだが」
誰も何も言わなかった。
「浮いてた」とソウが繰り返した。
「俺が入ったとき、ちょうど棚から離れてた。空中にあった。それがゆっくり降りてきた」
「……」
「ミドウが手を離したら降りてきた」
カイが「すみません」と言った。
「謝り方が、認めてる感じだな」と店長が言った。
「……そうです」
「そうか」
店長が一度、溜め息をついた。怒っているわけではなかった。ただ、確認している様子だった。
「お前ら全員、バックヤードに集まれ」と店長が言った。
ミオを呼んできて、六人が休憩室に集まった。
田所店長が椅子に座って、全員を見た。
「お前ら、ちゃんと説明してくれるか」
誰も口を開かなかった。
「説明しなくていいなら、しなくていい」と店長が続けた。「ただ——隠したいなら、隠し方がヘタだったと思うぞ」
「……ずっと、ヘタでしたか」とソウが聞いた。
「ずっと変だったよ、お前ら」
「どこから変でしたか」とソウが聞いた。
「それを今聞くか」と店長が少し笑った。笑った。怒っていなかった。
「聞いていいなら聞きたいです」
「……最初に変だと思ったのは——ナナが遅刻した日に汗をかいてたことかな。それまで全然汗かかないのに」
「それが最初ですか」
「その前から何となくはあったけど。レイが棚の裏から出てきたとか」
「……それは気づいていたんですか」とレイが言った。
「気づいてた」
レイが「失礼しました」と言って頭を下げた。
「謝ることでもない。でも今日みたいに、はっきり見えてしまうと——」
店長が少し間を置いた。
「俺、ずっと気づいてたんだけど——今日のは無視できなかった」
---




