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アップデートしてください。〜うちのバイト先、なんか変な人しかいないんですけど〜  作者: ハル
糸が繋がる

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第74話「アップデートの意味」

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「問い」とレイが繰り返した。


「はい」とミオが言った。


「私たちが答えだというのは、どういう意味ですか」


「少し順番に説明します」


 ミオが波の方を向いたまま、話し続けた。


「この世界——投影として存在するこの世界は、ただの映像ではありません。中で何かが起きると、情報として記録されます。その記録が積み重なって、ある閾値を超えると、世界は自分自身に問いかけます」


「問いかける、というのは」


「世界が、自分の中に矛盾を見つけたとき——その矛盾を解消しようとする動きが起きます。その動きが、あなたたちです」


 全員が静かになった。


「つまり俺たちは」とテルが言った。「矛盾の産物か」


「バグ、と言う人もいます」とミオが言った。「私は、そう呼ぶのは好きじゃないですが」


「いや、バグって言われてもな」とナナが言った。「なんかやだな」


「バグという言葉は開発者視点の言い方です。世界の側から言えば——アップデートしようとした、ということです」



 



「アップデート」とソウが言った。


「はい」


「俺たちが、そう呼ばれていた理由は、それですか」


「そうです。この世界が自分自身をアップデートしようとしたとき、その動きとして現れた存在。それが——カイさん、ナナさん、テルさん、レイさん、そして私、ミオです」


 テルが「まあ、そういうことかよ」と言った。


「納得できますか」


「できる。俺が確率をいじれたのは、世界の確率系が矛盾してたからって解釈でいいか?」


「はい」


「じゃあ俺は世界の確率バグの申し子か」


「アップデートの申し子、と言ってください」


「大差ない気もするが」



 



「ミオさん」とカイが言った。


「はい」


「バグの体重って、記録上の体重ですか。それとも矛盾した体重ですか」


「……今の話とそこが繋がりますか」


「重力を扱う者として気になります」


「体重は矛盾していません。あなたの重力操作が矛盾の表れです」


「では体重は正しいんですね」


「正しいです」


「……なんか安心しました」


「今日の話を聞いてそこが気になるんですか」とナナが言った。


「ずっと気になってたから」


「話の流れが無視されている」


「仕様なので」とレイが言った。「カイさんの体重への関心は能力に関連しているので、致し方ないと思います」


「お前がそれを言うのか」とテルが言った。



 



「能力は」とミオが続けた。「世界の問いです」


「問い」とソウが繰り返した。


「はい。時間を止められる、重力を操作できる、確率を変えられる、壁をすり抜けられる、物を複製できる——これらは全部、世界が自分自身に問いかけた内容です」


「何を問いかけているんですか」とレイが聞いた。


「この世界が安定して存在できるか——そのために、意識を持った存在が必要かどうかを、問いかけています」


「意識を持った存在が必要かどうか」


「投影が続くためには、それを観察する存在が必要かもしれない。あるいは、必要ないかもしれない。世界はその答えを出すために、あなたたちを生み出しました」


 全員が黙った。


 波の音だけが続いていた。


「……壮大すぎてちょっとついていけてない」とナナが言った。


「私もです」とカイが言った。


「俺は半分だな」とテルが言った。「でも、まあ——そういうことなんだな、と思う」



 



 ソウは黙って、海を見ていた。


 ミオが言ったことを、一つずつ受け取っていた。世界が問いを立てた。アップデートたちがその答えとして生まれた。能力は問いの形。


 それで——おかしいことに気づいた。


 テルは確率。ナナは時間。カイは重力。レイは境界。ミオは複製。


 全員が、何かを操作できる。


 ソウには、何もない。


「ミオさん」とソウが言った。


「はい」


「一つだけ聞いていいですか」


「どうぞ」


 ソウは海を見ながら、言った。


「俺は——俺は、何なんだ」


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