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13人目の勇者  作者: ユウジン
第一章・勇者と獣
5/10

勇者

ビーストの村に来て二週間ほど経った。


当初はここの住民には警戒されていたが、この二週間毎日ココさんに連れられて彼女の父が管理する農園に連れていかれて仕事を手伝ったり(リハビリも兼ねて簡単な荷物運びをしたり一週間程で痛みもなくなったので農業にも本格的に手伝わされた)しているうちに少しだけ態度が軟化して警戒を解除してくれた。


それでもやっぱり完全にフレンドリーとはいかないしココさんと一緒だと彼女の方しか見てくれない……


だがそんな中、分かったこともある。例えばこの村で主に行われているのは畜産や農業。他にもそれを売り買いする店等がある。肉は豚、牛、鶏。たまに猟師が熊や猪を捕ってきて肉屋で売られることもあるが基本的には最初に三つ。他には農業がこの村で行われている仕事だ。ココさんも両親が営んでいる農場を手伝っているしさっき言ったように俺の仕事は基本そこ。


家は基本的に木造で、何と手作りらしい。現在俺が住まわせてもらっているココさんの家の物置小屋だったものを片付けて住めるようにした小屋も彼女の父親が作った物らしい。素人とは思えない程しっかりした作りで住み心地も良い。


彼女の両親も、完全にはではないがそれでも警戒の色は村の人たちに比べれば比較的弱めてくれてるしご飯は美味しいしココさんは可愛いしゲフンゲフン。しかしふと思ったのだが、


「なぁココさん」

「はい?」


と、収穫した野菜を八百屋に売りに二人で歩いていた際に疑問に思った事を口にする。


「この村って子供見ないんだけど……?」

「えぇ、この村と言うか恐らく現存するビーストの最年少は私でしょう」


え?と彼女の言葉に大和がポカンとすると、


「ビーストは現在数が少なく、この村以外には居ません。更に出生率が非常に低く私も十何年振りに生まれた子供だったんです」

「なるほど」


と大和は頷くが今度は逆によく絶滅せずにいたなと言うと、


「30年前まではもっとたくさんいましたし、ヒューマンとの婚姻もありましたから……」


そう言うココに大和は首を更に傾げる。いや数が沢山居たは分かる。だが何故ヒューマンとの婚姻が認められるのが関係するのだろうか?そう思っていると彼女が、


「ビーストだけではなくヒューマン以外の種族は繁殖能力が低いんです。まぁその中でもビーストはぶっちぎりなんですが……でもヒューマンはそれが高く、しかもヒューマンはヒューマン以外の種族と子を成したとき相手の種族を100%受け継がせることが出来ます。しかも繁殖率あげれますし」


その言葉に大和はようやく合点がいった。確かにそれなら数を増やせるだろう。だが今度は新たな疑問だ。


「なんでじゃあ誰もヒューマンと結婚してないんだ?この村以外にはビーストがいないってことは結婚して外に出て行ったって訳じゃないんだろ?」

「それは……」


とココが言い淀んだ次の瞬間、


「ヒューマンがビーストを含めた全ての亜人との婚姻を禁止したからじゃよ」

『え?』


背後から聞こえた声に、大和とココが振り返るとそこにいたのはお供を連れた長だ。ココがお疲れ様です。等と挨拶を交わす中、長は大和に付いてくるように言われた。


大和一人でと言う注意つきで言われ、どう言うことか聞くが訳は後で話すとだけ言われてしまい、仕方なくココに荷物を預ける。


「ゴメン。任せちゃって」

「いえ、ただ長も何か慌ててる様子でしたので気を付けてください」


ありがとう、ココさんと大和は言って長を追い掛けた。


長の家は村の一番奥にありビーストの家の中では大きな家だ。中に入るのは勿論初めてだったが家具もココの家のものより立派な気がする。


何て思いながらキョロキョロ見ていると、長がお供を出ていかせて煙管からプカリと煙を一吹きした。


「すまぬな。折角のデートを邪魔して」

「え!?あ、いやぁ……」


あっはっは、と身を思わず捩りながら答えてしまう。デートか。まあ確かに年頃の男女だしそう見えるものか。そう思うと結構照れ臭い。


そんな大和の様子に長は眼を丸くする。大和も長の反応に首を傾げて、


「あの、何か変でした?」

「いや、冗談じゃったんじゃがお主ココに女を感じとるのか?」


だって可愛いしまだ若干警戒されてるがそれでも面倒みてくれるし優しいし。正直見た目も中身もストライクなので普通に一緒にいるだけでドキドキする。しないわけがない。こっちはお年頃なのだから。


そりゃ最初は獣耳とか驚いたけどもう見慣れたし寧ろそこも可愛いです。はい。獣耳美少女最高です!


まあ流石にそこまで素直に言いはしないが、オブラートに包みつつ言うと長は、腕を組んでしまった。


「ふむ……他の勇者ともまた違うのか」

「他の勇者?」


大和が呟くと、長は答える。


「先日アーバルト王国に行ってな。話をしてきた。その辺は後で話すがお主の以外の勇者を見たが既に亜人に対する差別意識を持っていてな」


大和は思わず爺さんだったから鼻の下を伸ばさなかっただけではと思ってしまったが、長はそれを読み取ったのか、


「代表者には儂のようなジジイだけではなく美しいおなごもおったわい」


と言われてしまい、大和は視線を剃らした。意外と目敏い人である。


「そ、それで俺に一体何のようですか?」


これは形勢不利と判断した大和は話を若干無理矢理戻す。すると長は眼光を鋭くして、


「近々勇者がここに来る」

「勇者が?」


何故勇者が来るんだ?と大和はまた首をかしげてしまうが、長は説明してくれた。


「そもそも勇者とは何かをお主は知らぬだろう?そして30年前の戦いも」

「なんですかそれは?」


確かに勇者とは何か知らないし、30年前の事も知らなかった大和は長に尋ねる。


「30年前。ヒューマンと儂らビーストを含めた亜人連合が戦った。儂ら亜人は確かにそれぞれが得意な分野ではヒューマンに負けぬ。だがヒューマンは儂ら亜人にはできぬ多種多様な才能と圧倒的な数を持って戦った」

「多種多様な才能?」

「例えば魔法じゃ。ビーストに至っては魔法を使えぬ上に、他のも一部の種族を除き、それぞれに得意な系統がありそれ以外を使えぬ。だがヒューマンは得意な系統がない代わりに全てに適正を持っている。無論適正があっても亜人には才能的には劣るが多種多様な魔法を使えた。それを数の暴力でやられては敵わなかった」


だがそれでも亜人同士手を取り合いヒューマンに対抗していた。そんな時だ。ヒューマンが作った異世界と呼ばれる世界からその世界のヒューマンを呼び出す魔法。


どういう原理か分からないが異世界のヒューマンはこちらの世界に来ると著しい身体能力の向上や魔法を使えるようになるらしい。


「ただ魔法が使えるならいい。だが勇者はヒューマン同様全ての魔法に適正を持つ上に、その中でも得意な適正を持つ。その得意な適正に限れば……」


同じ適正を持つ亜人すら越える。と言った長に大和は唾を飲む。


そして30年前の戦いでも勇者と言う存在は亜人に対して凄まじい力を発揮した。現在ビーストの数が少ないのもこの戦いで多くの若者を失い、その後も子供が産まれなかったのが理由らしい。因みにこれはビーストに限った話ではなく他の亜人もビーストほどじゃないだけで似たよったりな状況らしい。


「多くの犠牲を払った。余りにも痛すぎる犠牲を払い、漸く勇者を倒し、同じく戦いで疲弊し、人口を大きく減らして漸くヒューマンに停戦協定を結ばせた。しかし30年と言う月日でヒューマンは人口を戻し……いや、寧ろそれ以上にしてまた勇者を呼び出した。亜人はヒューマンがおらぬため殆ど人口は増えておらぬ。人口が増えておらぬと言うことは、戦えるものはおらぬと言うことじゃ。そんな中アーバルト王国が出した提案は……」


30年前と同じく従うか、滅ぼされるか。勿論亜人達で反発したらしい。だが勇者が控えてる状況で強く出れない。へたに出ればその場で戦争だ。正直勇者がこちらに来て二週間ちょっとで戦えるのか気になったが、長曰く戦えてしまうらしい。そういった才能も取得できてしまうのが勇者を呼び出す魔法とのこと。何でもありと言うかズルすぎないか?こっちはそんなの全く無かったぞ?


「まあ元々停戦協定も勇者を倒して動揺させたゴタゴタの中で結ばせたものじゃったし長続きするものではなかったと言うことじゃ」

「それで勇者が来るって言うのは……」


返答を聞きにと言うことじゃろうな。と長は言う。だが返答はどうするのかと聞くと、


「まだ決まってはおらぬ。昔であればヒューマンに自由を奪われることは良しとしなかったが、今やビーストも絶滅寸前。ヒューマンに頭を下げてでも残る方法を考えた方が……っとそれはこっちの話じゃ。ヤマトよ。この村を出た方が良い」

「やはり勇者に会うのは不味いですかね?」


大和の言葉に、長はゆっくり頷く。


「処分したはずの男が生きとったと言うのも不味かろう。それに戦いになろうとならなかろうと、儂はまだしも他のビーストからの眼が厳しかろう。お主にビーストととの敵対意思がなくとも、ヒューマンであることには変わらんからの」


そう言いながら長は棚から一枚の地図を取り出すと、大和に見せてきた。


「ビーストの村はここじゃ。そしてアーバルト王国はここ」


そうやって指で指し示す先を見ると、確かにアーバルト王国は一番大陸の端にあるけど大きい。しかし可笑しいな。知らない字の筈なんだけど、見るだけで何て書いてあるか分かる。


「そしてお主が目指した方がいいのはここじゃな」


長はそう言うとアーバルト王国の反対側にある大きな国を指すと、


「クラバット王国。ここもヒューマンの国じゃ。ここなら一般人になり済ますのに目立たず居られるじゃろう。それに先の大戦で王が死んで代替わりして以来アーバルト王国とは上手くいっておらぬらしいしの」

「ヒューマンの国ってアーバルト王国だけじゃないんですね」


大和がそう言うと、長は頷き教えてくれる。


「この大陸には端と端に一国ずつヒューマンの国があり、その真ん中に亜人の国が点在している。先の大戦で亜人が苦戦したのは勇者や数だけではない。このように大国に囲まれておる状況になっておるからじゃ」


成程、と大和は頷きつつ地図を受け取った。そして、大和は気になったことを聞く。


「あの、戦うんですか?勇者とって言うかアーバルト王国と」

「さぁの。なにか気になるのか?」

「いや……ただ聞いた限りだと戦力差あるみたいだしやっぱりお世話になった人達が倒されたくないと言うか……」


大和は頭を掻きながら言い、それを聞いた長は不思議そうな顔になった。それを見た大和が首をかしげると、


「益々ヒューマンと言うか勇者っぽくないの」

「やっぱり勇者って柄じゃないですからね」


大和は笑いながらそう言う。そりゃ皆警戒してきていたがきちんと店にいけばお客様と礼儀を持って接してくれるし、ココと一緒ならオマケしてくれたし良い人たちばかりだ。それは間違いない。まぁ余り話せなかったけど。


何て言っていると長は顎を撫で、


「ならば極力穏便にと言うので考えてみようかの」

「え?」

「さっきもいったように戦っても勝てんよ。間違いなくな。それは他の亜人も分かっておる。例え前のように連合を組んだとしても。だからこそ先の会談が終わったあと誰も連合の話をせんかった。無駄な足掻きだと分かっておるからじゃ。クラバット王国は参戦を表明してないがアーバルト王国だけでも驚異なのは変わらずじゃ。どこの国も恐らく降伏の方向で動いとるよ」


じゃあ結局自分が言っても言わなくてもビーストは降伏の方向でいく予定と言うことか。そう言えばさっき言い掛けて止めていたなと思いつつ、大和は立ち上がる。


「その……ヒューマンに降伏しても大丈夫ですかね?」

「どうせ今までも実質降伏状態じゃったよ。休戦協定とは名ばかりのものじゃ。殺されるか殺されないか……降伏も殺されん状況を長引かせるだけ。じゃがな。それも仕方ないんじゃよ。儂らは抗うには年を取りすぎた。若者と言えばココだけ。そんな状況じゃ一矢報いることもできない。遠からずビーストは滅びる。だがそれでも僅かにでも長く存在し続けるのも大切じゃろう?」


長は歯を噛み締めながらそういう。きっとこれは本心じゃない。本心ではヒューマンに降れば地獄が待ってるのがわかってる。だが抗っても待ってるのは地獄だ。だったら少しでもビーストと言う種族を残せる道を選ぶ。この選択に正解も不正解もない。寧ろ種の存続を考えればよく決断したと思う。


だが大和はなにも言わない。何を言っても惨めに感じさせてしまうのを分かっていたからだ。だから大和は黙って失礼しますと言って去った。


自分が彼らにしてあげられることはない。自分はちょっと体は頑丈だし力もあると思う。でも何も魔法みたいな能力はない。国一個を撃退できるような能力はないのだ。


だったら自分は早くこの村を出て彼らが何事もなく降伏できるようにするのが恩返しだろう。そう思いながら、大和はココのいる家に帰っていったのだった。



「さてと……」


長との話から三日後、大和は旅に出るための準備を終え、昼頃には巨大なバックを背負って村の外を目指す。


ココの家族には挨拶を済ませると、ココの両親に沢山の保存食を持たされ、しかもこのでかいバックを譲ってくれた。ココも着替えを用意してくれたり寝袋を持ってきてくれたりと甲斐甲斐しく世話をしてくれ、ありがたい限りだ。


因みに次の日には長からヒューマンとの話し合いの結果と、その対応について話され、皆はそれに対して内心は納得8割不満2割といった反応だ。ビーストが残るにはそうするしかない。だが心の底から納得できるかといったら……まぁ別だと言うことだろう。


お陰で折角優しくなりかけてた周りの眼に少し厳しさが戻ってしまった気がする。


「ヤマトさん」

「はい?」


村の外まで送ります。そう言ったココが一緒に来てくれていたのだが、声を掛けてきたので大和は振り替える。


「お気をつけください。クラバット王国までの道のりには多数の亜人の国を通りますが、どの国もヒューマンは嫌われ者です。特に今のような状況に加え、ヤマトさんはこの大陸の事情に疎いですし」

「確かにな……」


そう言いながら、大和はじゃあココが一緒に来てこの世界の案内人をやってよ。と言いたくなったがそんな軟派な台詞を言えるわけもないので、大和はゴニョゴニョと濁しながら足を進めた。


いや下心を否定しないと言うか殆んど下心なのだが、それに加えて降伏したあとココが大丈夫なのかと言う心配もあるのだ。


だってココ可愛いし……なんかこうエロ同人的な展開を想像してしまって落ち着かない。これだったら強引でも連れ出す?いやぁ……そんなのが許されるのは互いに好意を持った状態のイケメンだけだろう。自分はそれには程遠いのはわかっている。いやイケメンだったとしても強引はダメだな。


でもココはどうなのだろう。このままヒューマンの下に付くので良いのだろうか?そう思うと聞きたくなる。なので、


「あのさココさん。ココさんはここから出たいと思ってたりしないの?」

「え?」


ココは大和からの言葉に、少し考え込んでから、


「正直に言えば。ヒューマンに支配されるくらいならここから逃げ出したいと思います。これは皆思ってることですよ。でも口にはしない。だってそれでもこの村は先祖代々受け継いできた土地で、生まれたときから居るんですから。きっと私なんかより愛着は他の皆さんの方が強いと思いますけどね。高々15年しか生きてない私より、永くいたわけですから」


そっか。とだけいって大和はそれ以上なにも言わなかった。


のんびり歩きながら、村の中央に差し掛かる。あと少しで村の外につく。そしたらもう彼女に会うことはないだろうな。等と感傷に浸ったその時、突然騒ぎが聞こえ、二人は顔を見合わせるとその騒ぎの方に向かう。


そして影からコッソリ覗くと、八百屋の前で一人の男が暴れていた。


「おいおい。俺は勇者だぜぇ?なのに金を払えだと?冗談は耳と尻尾だけにしとけよ婆さん」

「ですが勇者様であってもお客であるならばいただかないと……」


そう言って八百屋のおばちゃんにイチャモンをつける金髪にピアスのヤンキーと言うかチンピラ?そう言えば召喚されたときに見た気がするな……


と思いつつ、もう返事を聞きに来たのかと驚く。だがここで自分が介入するわけにいかない。何て思っていると、勇者は八百屋のおばちゃん殴り飛ばした。


「半分獣みたいなやつが俺に逆らうってのか?あぁ?」


ガスッと腹を何度も蹴り、八百屋のおばちゃんはすいません。お代はいりませんと言うが、蹴るのをやめない。


「要らないんだったら最初からイチャモンつけんじゃねぇよ!俺の手を煩わせやがってよぉ!苛々序でにこの村滅ぼしてやろうか!?おい!テメェらも何見てんだ!仲間が粗相したんだぞ?謝罪もねぇのか!?」

『っ!』


周りで止めに入りたいが下手に入れば更なる怒りを買いかねない。見たことのない布地の服を着ているし本当に勇者だった場合危険すぎる。と悩んでいた皆は慌てて土下座の姿勢に入った。


「ったくよぉ。勇者様出迎えるってのに礼儀がなってねぇんだよ」


グリグリと靴底を適当に選んだ一人の頭で拭く。不味い。段々苛々してきたのを自覚する。


ここで自分が入ったらややこしい事態になる。分かってる。でも八百屋のおばちゃん今踏まれてる人もここに住んでる間お世話になった人。


でも我慢。我慢と自分に言い聞かせ続ける。その時だ、


「そこにいるのは誰だ?」

「っ!私です」


影に隠れていたのだが、勇者になると直感も増すのかこちらに気づいてきた。そのためココは、咄嗟に大和を奥に押して自分だけ出た。


「ったく、連帯責任ってのを知らねぇのかよこの世界はよ」


そう言って勇者は近づいてきてココに触れようとする。その瞬間、大和の中で何かが切れた。


「おい」

「あ?」


ガシッと勇者の腕を掴み、大和は力ずくで手を離させる。


「ヤ、ヤマトさん!?」

「ごめん。マジでごめん。でもどうしてもこの汚い手で触らせたくなくてさ」


大和はそう言いながら勇者を軽く押して、後ろに下がらせてからバックを下ろす。


「お前は確か召喚の時に……」

「あぁ、不動 大和だ」


向こうも記憶にあったらしく、何故ここに?みたいな眼で見てくるが、大和は気にせずボキボキと指を鳴らした。


「テメェの名前なんざ興味ねぇんだよ。何で邪魔すんだ?あ?」

「この女の子はここで世話になっててな。それに今テメェが蹴った女性はいつも買い物に来ればオマケしてくれるし、今踏んづけた人は朝早くから店やって決して儲からねぇような値段で、それでも皆のために少しでも安くを心掛けて商売してるような人さ」


だから恩義がある。と大和は拳を握り、勇者との間合いを詰める。


「上等だよ。知ってるんだぜ?テメェは何のスキルも無かった失敗例だってよ!だが俺は違う!俺は勇者の中の勇者!俺は他の勇者達は全て適正があるが得意なのは別。と言う奴等とはちげぇ!俺は全てに高い適正を持ってるんだよぉ!つまり天才なのさ!」


そう言って勇者は少し下がると力を溜め、周りに炎や水、土に小さな竜巻と他にも様々な魔法を出した。


それを見たビースト達は慌てて建物の影に隠れる。いや、一人まだ居る。ココだ。


「ヤマトさん!?」

「隠れてろ!」


そう叫んだ大和は足に力を込めながら腕を交差させて走り出す。


「死ねやぁ!」


勇者はそう叫ぶと、様々な属性の魔法一度に叩き込む。爆発と閃光が起きる中、誰もが 大和がボロボロになるのを予感した。だが、


「音と光が喧しい!」

「ぐげぇ!」


土煙の中から現れた大和は、そのまま勇者に拳骨を落とす。


「な、なんで……」

「一気に幾つもの属性の魔法を一度に撃つからな。お互いに打ち消しあって俺に直撃する前に消えてたぞ?流石に衝撃波はあったけどな」


あれ?意外と大したことない?等と思ってはいけないな。と大和は気を引き締め直した。


「く、クソ!」


勇者は慌てて立ち上がると拳を握って振りかぶってくる。確かに見ただけでも半端じゃない腕力で殴ろうとしているのが分かる。普通に当たったら不味いが、大和はそれをひょいと避けて腰を捻って手を後ろに引き……


「ぶっ飛べ!クソ勇者!!!」


バキィ!と大和の拳は勇者の顔面に刺さり、そのまま後方に大きく吹き飛ばしたのだった。

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