12.お前の同僚のせいだよ~
「いやぁ~部屋取れてよかったなぁ~…赤い人めっちゃ顔強張ってたけど」
結局あの後昴一行はアルマイクの元へ行き3人部屋にグレードアップしてもらった。傍から見ると明らかに質が良い事が分かる服を着ているファーストはともかく、真っ黒な鎧姿の怪しすぎるセカンドを見たアルマイクは驚き3割/恐怖7割という壮絶な心境の中なんとか宿屋の手続きを完了させていた。ちなみに今昴一行は手続きが終わった為宿屋へと向かっている。
「ははは、その通りでございますねぇ。創造主様を見て酷い顔をした時は殺してやろうか迷いましたよ」
「やめてな?」
「先ほどからこちらを監視している者が居るようです。暗殺者かもしれません殺します」
「うんうん、それ多分お前の鎧が物珍しいから見てるだけだなそれ?」
昴はもし元の世界から一つだけ物を持ってこれるとしたら真っ先に胃薬を取り寄せようと誓った。
「はぁ…この先無事で居られるだろうか(この街の人達)」
「創造主様、心配なさらずとも必ず私達がお守りします」
正直ファーストとセカンドのどっちがそう言ったかすらぼんやりしていて分からなかった昴はのそのそと宿屋へ向かう。ちなみに二人とも同じようなことを言っているので問題は無かった。
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「まぁ…そうなるわな」
特に問題なく宿屋に着いた昴達はチェックインを済ませて宿泊予定の部屋に着いたが…昴の危惧していた通り部屋は3つあるわけでは無く、3人は入れる部屋が一つで3人部屋であった。そしてそれによって更にもう一つの悩みの種が生まれる。
「!?ベッドは流石に一つじゃないだろうな!!?」
「ベッドでしたら3つありましたよ!」
「はぁん…よかった…」
昴は安心した。流石に一つのでかいベッドで今日知り合ったばかりの二人と寝るのは精神的に嫌だったからである。セカンドの鎧がチクチク刺さって痛そうとかはこの際考えてはいなかったが、昴的には真理以外の女と同じ布団で眠るのはあかんのである。断じてアカン。
「安心すると若干お腹が減ってきた気がしないでもないでもないぞ…」
「夕食は19時頃にお持ちすると言っていましたね…今の時刻は18時30分なのでもう少しですが、待たれますか?」
「え?待たない選択肢あるの?」
昴はとっさに何かを察した。たぶんコイツまた料理人を脅すとかそういう方法を取るぞ…と。だがそれは昴的に大変うれしい事に外れていた。
「はい!だいぶ吸収しましたので、食料を生成することもできます」
「えっ、きゅうしゅ…せいせい…えっ?」
ファーストは実物を見た方が納得してもらえるだろうと考え、実際に己の能力でホールケーキを生成した。ちなみにファーストの能力の一端であるこの生成能力は、光を吸収することによって行使できる能力だ。余談だが…ファーストは対象物を任意で光の粒子へと変換し吸収できる。
「ケーキだ…いや、まてよ?お前さっき吸収したから生成できる的な事言ってたよな?」
「創造主様…私も許可さえして頂ければ私も生成できます」
「セカンドはステイ」
ごつい鎧がしゅんとしているのに若干罪悪感が芽生えるものの、昴はファーストに肝心なことを問う。そう…これは人によって可/不可が変わってくるような繊細な問題なのだ。
「はい。吸収した光をホールケーキとして生成しました」
「…その能力はストックした光のどのタイミングの物から消費されるんだ……?」
「新しい順ですね」
昴は叫んだ。
「じゃあそのケーキさっきのエルフじゃねぇぇぇぇぇぇかああ!!!!」
「ははは、確かにそうですね。ではこれはエルフケーキと名付けましょう!」
「名づけんなぁぁぁ………!?!」
昴、阿鼻叫喚。ちなみにそんな昴の様子を傍から見ていたセカンドは次ケーキを作る機会があれば無機物から作ろうとか思っていた。
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「わぁおいしそぉ~…これ食べても大丈夫な奴だよな…!?」
昴の目の前には大量の豪華な食事が並べられている。だがしかし、昴はこの状況をあまり楽しめないでいた。なぜならさっきのエルフケーキの件があるからだ。確実に頭のおかしいファーストはさておき、ここは異世界なのだから普通に考えて元の世界では絶対に食べないような物が料理として出てきている可能性があるのだ。その可能性に昴は怯えていた。もう昴のSAN値はピンチだ。
「いかがなされましたか?」
「お前の同僚のせいだよ~」
「?」
本気で何のことかわかっていない様子のファーストに昴は若干恐怖するが、それもそのはず。ファーストがもし元の世界にいたとしたら、尿から蒸発した水滴を集めた水を平気でのめちゃうタチの人間だからである。本人曰く成分的には水だし問題なくね?である。さて、これを読んでいる君はどうだろうか?ちなみに私は嫌である。
「クッソ!もういってみっか!どうにでもな~れ」
パク
「あ、普通だなこれ。一番コメントに困るやつ」
意外と普通でなんとも微妙な気持ちになる昴。それもそのはず、実際はうっげぇ~!なにこれ~!何の肉~?と言ってみたかったという気持ちがほんの少しあったからである。そう、元の世界でも人間という生き物は興味本位でヤバイ食べ物を食べてしまう生き物である。本場で作っている人には申し訳ないがシュールストレミング等がいい例だろう、でも気になってしまうのだから仕方ないのである。
「…で君たちは何してるの?」
「待機しております」
「我々は食事を必要といたしませんので…」
「?~?」
素でどうして?といった顔をしてしまう昴。読んでくれている君にはもうわかると思うが従者うんぬんかんぬんである。そう、従者というものは主人の為にうんぬんかんぬんしてしまうのである。だが案外主人もなんで?と思う行動や理解できないけど何となくさせている…という行動があるのだろう。ちなみに食事を必要としないという点についてはツッコむのを辞めた昴であった。
「よくわからんけど、俺は一緒に食いたいなぁ。食う事自体は出来るんだろ?」
「で、ですが…しかし…」
「流石に我々への褒美が過ぎるかと…」
「一緒にご飯食べるのが褒美とか俺はアイドルか何かなのかな?」
一瞬眷属ふやしまくったら自動的にアイドルマスターになれるじゃんとかいらんことを考えてしまった昴だが、すぐに思考を戻す。今の問題はボッチ飯さみしい案件なのだから。
「う~ん。じゃあさ、眷属が増えたらあんまり一緒に食えないだろうし今の内じゃね?ほら、地下アイドルの方がサービス良い的な」
「創造主様を地下アイドルなど!!そんな不敬な事は思っておりません!!」
「地下アイドルに謝れテメェ!!!!」
昴、キレた!!