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13.まぁ仕方ない今日はこれで良しとする



 日が沈んでからだいぶ経った深夜、羊も眠る未明に…眷属達は話し合いをしていた。



「ファースト、お前は創造主様に生み出されてからどれくらい経つんだ?」



 近くにいてもぼそぼそとしか聞こえないほどの小声でセカンドはファーストにそう問う。勿論この部屋には創造主たる昴がいまもすやすやと眠っているが為の小声だ。ちなみにセカンドはファーストがこの小声を聞き取れないのではないか?という疑問は持っていない。



「貴方と同じく昨日命を頂いたばかりですよ」



 ファーストもセカンドと同じく小声で話す。実は彼らは睡眠も必要としないので案外暇なのである。といっても今日が生まれて初めての経験する深夜帯なのでルーチンワークはこれから出来ていくのであろうが。…少なくとも、現状何もわからない状態なのでとりあえず警戒しておく事にした彼らだった。



「そうか…」



 なかなか会話は続かない。彼らはある程度昴が知っていた知識を保有して生まれてくるが、彼ら自身の個性といえるものはまだほとんど無いのだ。だから面白い話を出来るわけでもないし深い話をすることも出来ない。



「私は…私たちは、創造主様の為に何かして差し上げる事以外何が出来るのだろうか?」



 セカンドは問う。その問いはファーストと自分自身に向けてのものだ。心の奥底にははっきりと創造主を守るという意思がある。だがそれ以外はどうだろう?それは、まだ何も無いのだ。



「貴方のしたい事をすれば良いのでは無いですか?」



 ファーストはセカンドより少し早く作り出されているが、根本的にはセカンドと同じくまだ自分の意思というものが弱かった。だが既に自分にとって何が嬉しくて何が嫌なのか、という事は知った。創造主に褒められた時、怒られた時…それらの経験からファーストは創造主が喜ぶことが自分の喜ぶことというイコールを得ていた。



「私の…したい事…か」



 眷属には自我がある。これに深い意味などない、それが当たり前なのだから。実際一番初めにファーストを生成したのが若干悪かったのだが、本来彼のように創造主の事だけを考えて行動する眷属の方が極稀なのだ。殺せという命令に嫌悪感を感じる者もいれば死ねという命令に好意的な者もいるのだ、それが個性だ。



「今は見つからなくてもきっといつか見つかりますよ」



 セカンドは今日の出来事を思い出す。それ以前の事は何も思い出せない、勿論自身が存在していなかったからだ。いまこうして考え事を出来るのも全て創造主様のおかげだと考える、そして一つの考えが浮かぶ。そうだ、どうせなら創造主様の為になる事がいい。



「ああ、いい寝顔…」



 ファーストとセカンドは音も立てずに声の主に攻撃を加えた。なぜならば…それは此処にいるはずのない4人目だったからだ。ファーストは光を凝縮した直剣を、セカンドは闇を圧縮した大剣を。



「そんなに怖い顔しないで、貴方達の大切な人に危害を加えたりしないから」


「ぐぅッ…!刃が通らない!?」


「なんなんだ貴様は…!」



 ファーストの直剣が薄桃色の髪に触れるが、まるでそこから先には絶対に進めない壁のようだ。そしてふわりと靡く髪に剣が押し流される。セカンドの大剣はその柔らかそうな指に摘ままれた。




「ごめんね、驚かせちゃったみたい。次からはこんな事しないで仕事を全うするから許して欲しいな」


「何を言っているのですか」


「創造主様には指一本触れさせん」



 直接攻撃が通じないと理解した両名は次の手をうった。まずファーストは身体を光の粒子に変換する。ファーストの本質は光そのもの、あのイケメンな外見はまたの姿であり本来の姿は固形ではないのだ。ゆえに一切の攻撃は通じないし光の速度で攻撃できるという正真正銘の化け物だ。



「へぇ、生き物ですら無いんだね」



 次にセカンドの身体が闇に溶ける。彼女の姿もファースト同様固形ではない、見た目の通り闇だ。そしてその闇は昴の身体を覆い、そのまま消える。



「それ大丈夫なの?」


【夜に隠しただけだ】



 セカンドのどこからともなく聞こえる声を聴いた4人目はため息をついた。それはもうやれやれといった感じだ。



「この様子だと私の出番は無いかもな」


『それが望ましいですね』



 そして光の檻と化したファーストの声が全方位から4人目に響く、この声だけでも常人ならばSANチェックが入るだろう。



「…まぁ君が決めたことだけどさぁ…ちょっと寂しいな。まぁ仕方ない今日はこれで良しとする」


『なッ!?』



 4人目の姿は突如消えて無くなる。ファーストは即座に月明りとこの惑星の反対側を照らしている太陽光を利用して探せる範囲を探した。…がどこにも居ない。まるでこの世界から消え失せたように。



『これは…厄介ですね」


【ああ…悩みが増えたな」



 両名とも人型に戻り昴を見る。



「………エルフ…ケーキ…エルフ…ケーキ…」



 とりあえずは昴が無事であることを再確認して心の底から安堵する二人であった。

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