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神の歌  作者: 遵由
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26 可愛い妻達



2人の妻の反応に咲夜も周防も驚いたように目を丸くした。


咲夜は一息に叫んだ。


「だ、だってユキ、俺食事誘うときすっごく緊張したんだよ?


明日も早いからって先に帰ろうとしてたじゃん!だから、必死に引き留めなきゃって思ったんだよ。


その後も震えそうになりながら恋人繋ぎして、恋人になりませんか?って言って…勇気を出して家に来ませんかって言ったのに…酷いよ。


ドキドキしながら、恋人らしいことしましょう?って…誘ったのにさ。


翌朝だって何でもなかったって顔で帰ろうとしてたよね!?俺…傷ついた」



「………いや、マジで言ってる?逆に尊敬するわ」



ユキはもう、受け入れよう、と思った。

周防も舞依に必死に話し始める。



「そんな事言うなよ!

舞依がやっとうちに来てくれた時の…俺の気持ち、分からねえの?


これでいつも一緒に居られるってモニター見ながら喜んでたのに……流石に傷つくぜ。


うちに来てからも一番近くに居て欲しいって言いたかったけど言えなくて、俺専用の使用人にするのが精一杯だったんだぜ?


それに、あの時言ったじゃねえか。


お前に信じてもらえないのも分かるって。俺はお前にこんなことをする男だ…惚れた女にまともな告白一つ出来ねえヘタレだ………ごめんなってちゃんと謝っただろ?覚えてねえの?」




舞依が遠くを見るような目で周防を見上げて、にこりと笑った。

 


「………周防さんって、本当にヘタレだったんですね。私、知らなかったです」



舞依は思った。何かもう、悩む必要とかなかったんだ、と。

舞依もまた、周防を全て受け入れよう、とユキと同じ答えに行き着いた。



「いいよ」


「いいですよ」

 


咲夜と周防は心から息をのむ。2人が泣き笑いのような顔で「「良かった」」と言った。



「でも、もう酔わせて騙すみたいなことしちゃダメだよ?」


「うん、分かった」と咲夜。



「周防さんも、脅して手に入れるとか、なしですよ」


「分かったよ、舞依」



2人の愛する妻が自分に対して「しょうがないなあ…」と笑っている。ユキも舞依も、もう自分達を赦してしまっている。



((あれで赦しちゃうとか、俺の嫁ほんとに可愛い))



かつて銀河のほとりでのユキや舞依とのやり取りを咲夜は思い出していた。









「マイ、近いうちに地球に行くのに、今からそんな調子で大丈夫?」



ユキの心配をよそにマイは胸を張ると「大丈夫ですよ、先輩!先輩と私で首席と次席の仲じゃないですか。いくら向かう先が地球とはいえ、大丈夫ですよ、きっと」と答える。


咲夜はこの天使は地球を舐めていると思った。そんじょそこらの苦痛なんて裸足で逃げ出す「宇宙の檻」「地獄星」だぜ?と。


そして、そんな地獄の星の中でも特に悪党の上澄みみたいな自分を再度自覚して落ち込んだ。



「あっ、へこんだ……先輩、この地球人、どうしたんですか?」


「うーん、具体的なことは何も言わないけど、さっきから自分の罪の重さを嘆いているんだよ」



ユキとマイが2人で羽根を広げて囁き合う。ひそひそ、と話しているが丸聞こえだった。


「地球人なのに、罪の重さを嘆く…ですか?」首をかしげるマイ。


「そうなんだよ、ちっとも楽しそうにしないんだよ」同じく首をかしげるユキ。


2人でしばらく考えこむと、ハッ!と思いついたように顔を見合わせた。



「「じゃあ、好い人だ!」」


「………ちげえよ」



天使2人は地球に降りてはいけないレベルのポンコツだった。降りたら確実に羽根をむしられて鶏ガラスープにされてしまう。そんな未来しか見えないレベルでポンコツだった。



「……俺は地球の中でも悪人の部類だ。間違いなくな」







そんな会話を交わしたことが噓みたいに昔に感じる。まだたった3ヶ月ほどしか経っていないのに、それこそ遠い夢のように感じていた。


ふと見ると、ユキが立ち止まって花を見ていた。隣の舞依も同じように淡いピンクの薔薇を見ている。2人とも「綺麗だね」「綺麗ですね」と感想を言い合っていた。



「ユキ……疲れた?そろそろ、ベッド戻ろっか……」


「舞依……結構歩いたろ?俺がベッドに連れていってやるよ」



一見すると優しいセリフだ。しかし目は熱を帯び、声は掠れていた。




(……な?だから鶏ガラスープにされるって言ったんだよ。


悪党相手に見抜けねえんだから……全く。


バーで酔わせて動画に撮って家連れ込んで、逃げられねえように中に出した挙げ句監禁するような奴がただの純愛なわけねーだろ。


本当に銀河のほとりから何にも変わらねえな)と咲夜。




(……天使ってやつは、アホだな。


母親植物人間にして金で絡め取った挙げ句に部屋に閉じ込めて手錠かけて犯す男をピュアな恋心だとか信じやがる……悪を悪と見抜けねえ……仕方ねえか。


こいつらには悪が神から離れた可哀想な奴に見えてんだから……。


それはな、俺みてえな悪党から見れば自分から煮えた鍋に入っていって食われにいくようなもんなんだよ……。


ったく……悪には悪なりの守り方があるってこと、これから一生かけて見せてやるぜ……舞依)




2人、憎み合う兄と弟。

しかし、その魂はまるで双子のようにぴったり揃っていた。




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