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神の歌  作者: 遵由
10/27

10 好きの形

なぜか、目の前のユキを見ると、ムカムカする。好きなはずなのにイライラして仕方ない。


一瞬、首をしめてやろうかな、と思うが踏みとどまった。


目を閉じて眠るのが少し惜しい。ずっと一緒にいたい。それはそう思う。

でも同時に無性に壊したくなる。傷つけたくなる。


咲夜はギュッと目を閉じた。自分だって何をしているか本当は分かっている。ユキは十分被害者だ。これ以上、苦しむ必要はない。


ユキが起きてたら「殺さないだけ偉いでしょ、とでも言いたいの?自己憐憫も自己愛も気持ち悪いんだよクソ野郎」とでも言ってただろうが、生憎と彼女は眠っていた。咲夜も眠る。


彼女の柔らかい身体に顔を埋めた。


ユキが呻いた。無視した。






…そしてやはり、意識は空へ宙へ。銀河へと向かった。


「……ユキ」


咲夜が銀河のほとりに立つユキの姿をした天使に顔をしかめる。さっきぶりだがあの不快感は覚えている。

一歩、近づいた。


「神はいる…だったか。じゃあこのお綺麗な銀河の真っ只中で、裸にひんむいて犯しても同じことが言えるのかよ?」天使相手に咲夜は吠えた。

手を伸ばせば触れる距離に天使と咲夜は立つ。


「言えるよ。観念じゃなく、事実だから。この宇宙は神の内側。ここには途切れることなく神の意識で満ちている」


ユキが上(宇宙に上や下があるかは咲夜にはわからなかったが)を見て言った。


「神は「在れ」と言って産み出し、「在る」と言って維持し、「在り」と言って終わらせる。そうして、再び生まれるまで沈黙するんだよ。それは摂理だから、誰にも否定できない」


宇宙の真理、摂理…絶対の。違う…咲夜が聞きたかったのはそういうことじゃない…。


「俺、は…じゃあ…俺の何もかも、神が責任とってくれんのか?生んだんだろ?作ったんだろ?その責任だよ…責任!」


天使がわずかに眉を寄せる。理解が出来ない、と言いたそうに。しかし、すぐに一歩、近寄ると手を伸ばす。咲夜の顔をぬぐった。


「泣かないで…」


天使が涙の粒を口に含む。途端に苦々しく顔を歪めた。それを見て咲夜が笑う。口元だけで。


「地球の…その中でもとっておきの、変態ストーカー監禁凌辱野郎の涙だぜ?お綺麗な銀河のほとりの天使様の口には合わねえだろうがよ」


クック、と笑う。笑って…黙って天使に口づけた。




天使がびっくりした顔で唇を触る。その顔を見ただけでも咲夜はニヤリと笑う。


「驚いたか?天使様でもそんな面すんだな。ザマアミロ」


咲夜の軽口に天使が首を傾げる。全く意味が分かってない。地上の、人間のユキに少し似てると思った。


不意に咲夜は胸が掻きむしられるような切なさを覚えた。恋…違う。愛…もっと違う。優しさでも愛おしさでもない。


罪悪感……それだった。



「なあ、ユキ……俺、お前に酷いことばっかりしてるんだ……」


言葉を切る。天使が静かに聞いていた。咲夜がその身体を抱き寄せて...抱き締めた。




「………ごめんな」




この言葉も何もかも、宇宙の果てに置いていく。目覚めれば全て忘れる。


そうと知っていても、咲夜は言わずにはいられなかった。


抱き締めて、肩を震わせて泣いた。







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