↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

9

 皇太子ジュードの後宮で過ごしはじめて3日目。

 前日に立て続けに事が起こったので、今日はゆっくりしようと部屋での籠城を試みたが、侍女頭であるイザベラの来訪で早くも計画は崩れ去った。



「ルーナ様、皇太子殿下が面会を申し入れています。本日午後に中庭で一緒にお茶をどうかとのことです。いかがされますか?」



 いかがされますか?と聞くと言うことは、一応、ルーナに気を使って予定を聞いてくれているらしい。

 ただ、後宮に知人がいるでもなく、ルーナしか後宮にいない状況で、他に予定ができるわけもない。

 それを向こうがわかっている状態で『いかがされますか?』なんて聞くのは、『行かないわけがないですよね』と暗に言っているのと同義である。

 お断りなんてできるわけがない。

 ルーナに出来ることは、にっこり笑って



「喜んで伺わせていただきます。」



 と言うことだけだ。

 ジュードが改めて機会を設けるといっていたあれのことだろうと察しはついた。

 でも、ルーナは最初から皇太子の后に選ばれるつもりも、その気も一切なかったので、会えて嬉しい気持ちになるわけでもなし、気を使う事はなるべく避けたいし、ただただ気が重くなるだけだった。

 イザベラが部屋を出ていくと、ため息をついてアメリアに命じた。



「リメイクしたドレスから、なるべく私に一番私に似合うドレスを選んでくれる?あと、皇太子殿下がくれた髪飾りに合う髪型にセットして。」



 ステラに言われたことが気にはなっていたので、なるべくマシな格好を心がけたかった。ルーナは自分にセンスがないことはわかっていたけれど、改めてダサいと言われると、多少なりともショックではあったのだ。

 それならば、伝家の宝刀『センスは他人任せ』を出すしかないじゃないか……と。

 毎日頭を悩ますことがたくさんあって、後宮から家に帰ったら10歳くらい老け込んでいそうだと苦笑いした。



 姿見で全身を映して確認する。

 アメリアが選んでくれたのは、なるべくシンプルで流行り廃りのなさそうなデザインの薄紫色のドレスだ。フリルが少なめなのは、ステラの意見を参考にしているらしい。

 髪は編み上げてもらい、ちゃんとジュードから貰った髪飾りをつけている。



「他のアクセサリーはどうされますか?」



 アメリアに質問されて、ステラに言われたことを思い出す。

『常に身につけるか、もしくは大事なとき以外は常に閉まっておきなさい』と言われたアクセサリー。

 確かに貴重なものだし、ジュードに会うときこそ『大事な時』かもしれない。でも……。

 ルーナは首を振って浮かんだ考えを頭から消すと、アメリアに告げた。



「必要ないわ。髪飾りだけでいい。」



 貰った髪飾りを引き立てる為には、ベネットジュエリーは目立つしむしろ邪魔になるだろう。

 だからといって他のアクセサリーをつけたら、そのアクセサリーがみすぼらしくて見劣りがする。貰った髪飾りが豪華すぎて、ルーナには分不相応なのだ。

 ちょうどいい塩梅というのは、難しいものだと思う。

 多分、家に帰ったらこの髪飾りは金庫行きになるわね。

 髪型が崩れないようにそっと髪飾りに触れる。髪飾りは、不思議とルーナの為に誂えたようにぴったり似合っているように見えた。





「こちらでお待ちください。」



 ジュードとの面会の時間になり、ルーナはイザベラによって中庭に案内された。

 よりにもよってその場所は、あの噴水があった場所を越えた先にあった。

 綺麗にカットされた庭木に囲まれて噴水からは見えなくなっていたが、奥に大きな樹木があり、その木陰になる場所にテーブルとチェアが置かれていた。

 テーブルには赤いクロスがかけられ、皿とナフキンが準備されている。ティーカップだけは埃を避けるためか、テイーソーサーに逆さまに置かれていた。

 先に座っていて良いものかわからず、そこまで待たずともすぐジュードが来るだろうと思ったので、ルーナはとりあえずテーブルの前で立って待つことにした。



 ただ待ってるだけですることがなく、先ほど通りすぎた噴水のことが嫌でも思い出される。

 今さらタラレバを言っても仕方がないのだけれど、噴水の水を飲むなんて行為、するんじゃなかった。そうすれば当たり障りなく後宮で過ごして、領地に帰ったときに後宮はこんなところだったとお土産話にでもなったろうに。

 それにしてもなぜ皇太子殿下は、ステラに私がした行為を聞かせたのだろうか。変わったことをする者だと思ったから?



 近くに自分の侍女のアメリアだけならまだしも、イザベラも控えているので表情を弛めるわけにもいかず、はたまた憂鬱な表情を表に出すわけもいかず。

 ルーナはただただジュードが来るまで、悶々と頭を悩ませていることしかできなかった。


 それから5分も経たずしてジュードがやって来た。ジュードの後ろには側近らしき男が1人と帯剣をした騎士らしき男が2名、それにお茶のセットを運ぶ侍女達が数名続いた。

 ジュードに向かってドレスの裾を持ち、ルーナが深々と頭を下げると、ルーナに声がかけられた。



「ベネット男爵令嬢、会えて嬉しく思う。待たせてすまない。」



「こちらこそ、皇太子殿下にお誘いいただけて大変喜ばしく思っております。私も先ほどついたばかりです。お気遣いいただき感謝いたします。」



 ジュードの言葉は社交辞令そのものだ。会えて嬉しいなんて言葉に、心を浮かせるほどルーナは愚かではない。

 ここに来てから一応毎日会っているので、その言葉が一番妥当だからだろう。

 ジュードが付き添っている男性3人に何かを告げると、3人は頭を下げてその場を辞した。

 ジュードとルーナがテーブルの席につくと、それを合図に侍女達がお茶やケーキをセットしていく。テーブルセッティングが終わると、侍女達は深々と頭を下げて男性達同様にその場を辞した。アメリアもイザベラに連れられてその場からいなくなると、この場にはジュードとルーナの2人きりになった。


 き、気まずい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。