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第21話 ブラック企業の勧誘はやめてください。

深夜まじねみい

「あのー、もう帰って良いですかー?」


 かれこれ2時間近く拘束されている。

 ここは刑務所ですか?

 裏道にひっそりと隠れるように存在していた小さな家。

 物も乱雑に置かれて一瞬ゴミ屋敷かと思いました。


 労働環境劣悪すぎますね。


「駄目だ」


 駄目らしい、さっきからこの優男が俺を離してくれない。

 ゲルスとかなんとか言ってたなそういや。


「ねー、いい加減もうネタ切れだろ」

「ばっか! お前真面目に考えろよ!」


 連行された先で何が行われていると言うと。


「カト婆の土地、どうやって買収すればいいんだ!」


 犯罪の片棒を担がれていた。

 俺。

 勇者なんですけど。


 てか、お前に合ってねぇよこの仕事。

 ガキに気安く話しかけられてる時点で伸び代ねえよ。


「ウィース!」

「あ、組長!」


 なんか知らんやつ来た。

 如何にも運動してなさそうなおっさんがご入店してきました。

 なにこいつ偉いの?

 優男直角にお辞儀してるし、偉いんだろうな。


「おいゲルス………なんでお前ズボン穿いてないの?」


 いたって普通の質問してきたな。

 ……こいつ出来るな。


「急に弾けたんです」


 その回答は色々足りてないぞ。


「は、弾けた?」

「はい」


 いや、はいって弁明しろし。


「そうか、そんな事もあるかもな」


 ……あ、この上司馬鹿だわ。

 何故真に受ける!


「お前嘘とかつけないしな」


 馬鹿は撤回。

 的確に部下の性格熟知してたわ。

 寧ろ優秀説まで浮上してきたわ。


「で? どうだった?」

「え? なんすか?」


 え? なになになんかあったの?


「何ってあの土地の権利書だよ!」

「あー! はい! 失敗しました!」


 こいつ爽やかだなー、見習いてえ。

 上司もあまりの爽やかさに呆気にとられてるぞ。


「あ、ああ。 え? もう一回言って?」

「はい! 失敗しました!」


 優男気付いて? 上司のこめかみピクピクし始めてるから! もう危険域だから!


「ま、次頑張りますよ!」


 こいつ俺より勇者だわ。


「ああ”? 何ぬかしてんだ馬鹿野郎!」


 優男が小太りのおじさんに殴られる。

 見た目によらない良いパンチ持ってるじゃないの。

 ありゃ殴り慣れてるな、腰も連動してちゃんと打ち込めている。

 控えめに言って120点だな。


「そんだはっ!!」


 変なコメントを残して優男天空へ飛ぶ。

 よーく飛ぶなー。

 色々お見せできない陳列物がゆらゆら見えますね、後でモザイク処理してね。


 そしてそのまま、ゴミに頭ごと突入。

 うわー、汚ねえ。


 なるほど、優男がサンドバックでしたか。

 あいつは大丈夫なんだろうか? うーーん、大丈夫なんだろうなぁ……。


「てめえ、これで何回目の失敗だと思ってるんだ!」

「はい! 1053回目です!」

「三年だぞ?! 三年間待って何も成果無いってお前才能ないだろ?!」

「そんな!? 俺この仕事に命かけてんっすよ!!」


 こんな仕事に命かけるなよ……。

 てか失敗の数が多すぎて、寧ろ才能の塊だよ。


「入った当初は、期待してたんだよ。 お前元気だし、あと元気だし。 それと元気だったし」


 元気しかねえな。


「それがよお、この体たらく。 お前街でなんて呼ばれてるか知ってるのか?」

「知らないっす!?」

「それくらい知っとけや!」

「すいません!」

「介護ヘルパーって呼ばれてんだぞ!」

「へーー、介護ヘルパーって何すか?」

「それは俺も知らねえ」


 何で知らないんだよ?!

 わりかしメジャーな仕事だよ!


 寧ろ優男には天職だろどう見ても。


「介護ヘルパーってのは、ご老人を介護する仕事だ」

「ほぅ………ってお前さん誰だ?」

「あ! そうそう、持って来たんですよ!」

「お前また厄介なことを……」

「いやいや、聞いてくださいよ! こいつ勇者らしいんっす」

「マジで?!」

「いや、サラリーマンやってます」


 この流れで敢えて勇者を名乗らなくてもいいだろう、なんかめんどくさいことになりそうだし。


「さ、サラリーマン?」

「はい」

「…………サラリーマンって何だ?」

「社畜です」

「………社畜って何だ?」

「会社の奴隷です」

「……………お前苦労してんだなあ」


 なんか同情された。

 後ろで優男もなぜか涙している。


「勇者さん……そんな辛い仕事をしていたんっすね」

「いや、別に」

「いいんです! ほんとは辛いんでしょ? 分かりました! 組長、こいつを雇ってあげましょうや!」

「おお! お前にしては良い考えだな!」


 良くねえ!!!


「いや、あの急に勧誘されても困るんですけど」

「なーに心配すんな! この会社はな! アットホームが売りなんだ!」


 危険ワード入りましたね。


「それに、週休二日制。 残業代も支給(上限あり)給料も15万から35万まで!(年数や技術によって変動します)凄いだろ!」



 トリプル役満ぶっ込んで来たよ!

 ブラックの中のブラックじゃねーか!!


「仕事は基本営業だな、要らなくなった土地をこちらで買い取って必要としてる人に譲る………まあ社会貢献って感じの会社だ!」


 それを世間ではヤクザと言います。


「見た目はこんな薄汚い会社だけどバックボーンが強力でな! 何とこの街の領主様が俺たちの仕事に出資してくださってるんだ!」


 ズブズブじゃねーか!

 思はぬところでこの街の闇を知っちゃったよ。


「なあどうだ?」

「……丁重にお断りします」

「何で!?」


 当然です。


「何が不満なんだ?」

「強いて言うなら、全部です」

「全部う!?」


 余りに衝撃的だったのか、すんごい驚いてらっしゃる。


「お前……苦労してんだなあ」

「はい?」

「……組を抜けられないんだな」

「……はい?」


 猛烈に勘違いエクストリーム始まる。


「いや、ちゃんとした会社なんで」

「でも、奴隷なんだろ?」

「そうですね」

「ちゃんとしてないじゃないか?」

「……あれ?」


 あれ? うちの会社やばすぎる?

 そんな筈はない。

 少なくとも、ここよりマシである。


 そもそもだ、お前らのやっている事はあくどい商売って事を理解させてやろう。


「まあ聞け」

「お? 何だ入る気になったか?」

「違う、寧ろ逆だ」

「逆?」

「お前らはどれだけ社会にとって害悪かを知るべきだ」

「害悪?!」

「はい、もう社会の癌です」

「癌ってなに?」


 STEP1。


「まず君たちの仕事だ」

「素晴らしい仕事だろう!」

「薄汚い仕事です」

「何で!?」

「人の土地を強引に奪う仕事なんだろ?」

「奪うのではない、譲ってもらうのだ」

「……汚ねえ仕事だ」

「理由教えてよ!」


 STEP2。


「あとこの部屋汚すぎ、臭い、言わば社会のゴキブリ」

「言い過ぎ!」

「事実です、掃除して下さい」

「……だとよゲルス」

「あんたも掃除すんだよ!!」

「分かった………俺の分まで掃除しろゲルス」

「こいつ真性のクズだな」


 STEP3。


「臭い」

「それだけ!?」

「お前が」

「俺だけ!?」


 以上の項目により。


「社会の癌です」

「三つ目いるかな?」

「寧ろ三つ目が80%占めてます」

「圧倒的シェア率!」


 ほんと風呂入って? この組長何日入ってないの?

 意識改革始めましょうか?


「と言う事なので、会社を抜本的に改善します」

「何がと言う事なの?」

「優男! 掃除は!?」

「進行率25%です」

「遅い! 君ならもっとできる!」

「はい! 勇者様! 俺頑張ります!」

「……ちょっと私の部下勝手に使わないで?」

「お前もだデブ!」

「え? 俺? え? デブ??」

「そうだデブ! お前にも仕事をやる」

「えっと、あの俺ここの組長……」

「しのごの言うな!」

「は、はい!」

「まずは」

「まずは?」

「走ってこい」

「はい?」

「走ってこい!」

「は、はいいい!!」

「その後風呂入ってクソして寝ろ」

「はいい!!」


 よし、あのデブは消えた。

 今だ抜本的改革をしよう。


「よし優男、こっちにこい」

「あ、はい……でも掃除は」

「後でいい!」

「はい!」

「お前たちの仕事内容を変更する!」

「え、あのでも組長が」

「あいつはもういない!」

「あ、ほんとだ! 居なくなってる!」

「だから大丈夫だ!」

「なるほど」


 こいつ馬鹿だろ。


「先ずは土地の売買は禁止だ」

「は、はい?」

「これからは福祉ボランティアだ」

「福祉……ボランティア?」

「あぁ、無償で人々に尽くす崇高な仕事だ」

「具体的には何を?」

「ご老人と戯れろ」

「え、戯れる? それっていつもの俺」

「そうだ、いつものお前だ」

「あの、それって仕事になるんですか?」

「なるぞ、立派な仕事だ」


 まぁ、こんくらいでいいだろう。

 …………何で俺がこんな経営コンサルタントのようなことしているんだ。


 いいか、これも縁だ。

 とことん改善しておいてやるか。


「先ずは社訓を決めよう」

「社訓?」

「ないの?」

「ないですね」

「じゃあ今日から社訓は『社会のゴミを抹殺する』だ」

「何それ?」

「社会のゴミ掃除だ」

「ゴミ掃除?」

「組長のことだ」

「酷くない?!」


 上司が変わってもらうことを期待するのは無駄なことさ。


「だから今日から君が社長だ」

「何がだから??」


 よし、あとはだ……。


「あの……勇者様。 なんか透けてないっすか?」

「透けてる?」

「勇者様の身体が透けてますよ」

「………マジで?」

「うんマジですね」


 あーーー。

 時間ですわ。


「俺消えるわ」

「……はい?」

「後頑張ってな!」

「……はい?」



 俺は清々しい気持ちで元の世界に帰ったのだった。

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