第20話 幕間 地上げ屋ゲルス、カトちゃん八百屋商店に恐喝しに行く。
あー、一週間はえー
「全く、あの婆さんも頑固なもんだ」
明らかに堅気ではない男、それが俺ゲルスだ。
そして堅苦しい挨拶が嫌いだ、なので。
「ゲッルスでーーす!!」
こんな感じでカトちゃん八百屋商店に挨拶したのさ。
「………ん? あ、いらっしゃいませ!」
……。
……え、何?
なんか知らん男がいた。
誰こいつ。
「あ、どうもゲルスです」
「あ、どうもヤマガタです」
……誰!?
「えーっとカト婆さんいる?」
「いや、いないです」
……。
「えっと、どこ行ったかわかります?」
「分からないです」
………。
「………君だれ?」
「勇者です」
……はああ!!?
「意味がよく分からないんだが」
「俺もよく分からないです」
………何なのこいつ!?
どうしてここに居るの!?
「あら、今日はカト婆ちゃん居ないのね〜」
話してたら横からおっとりした声の人が。
「あらまあ、今日はカッコイイお兄さんが居るじゃない!」
何だ、ただのおばさんか。
「ゲルスちゃんも今日もカト婆ちゃんのお見舞い偉いわね〜」
……違う、俺は地上げ屋だ。
ここの土地を刈り上げにきたのさ。
「ちっがーう!! 俺はここの土地が欲しいだけなの!」
「はいはい、偉いわねー」
頭をなでなでされる俺。
……何だこの屈辱。
「えーっと、そこのお姉さん。 一体なんだ?」
「あらやだお姉さんなんて! 嬉しいこと言っちゃって! 何も出ないわよ! ……………飴ちゃん舐める?」
買収されとるーーーー!!
「あ、この飴美味しい。 んでおばさん要件は何だ?」
「えーっとねえ、キャベツもらえるかしら」
おばさん。 あいつ、すかさずおばさん呼ばわりしてるぞ。 気づいて?
「えーっとキャベツってどれだ? これか?」
「それはレタスね」
なぜ間違える。
「こっちね、これ幾ら?」
「へー、それがキャベツか。 で? 幾ら?」
質問に質問を返してきたよ、なにこの人。 仕事して。
「幾らかしら? 分からないわ」
ええ、まあそうでしょうな。
「……そうか、じゃあタダでいいや」
おい!
「本当に! 助かっちゃうわ〜」
「良かったな」
いや、よくねーよ!
「お前真面目に仕事しろよ!」
「サラリーマンしてますが?」
なにその職業!? 知らねーよ!
「コンチワーー!!!!」
……今度はガキが来たよ。
「あ、ゲルスちーっす!」
「おう」
こいついつも馴れ馴れしいな。
「あれ、婆ちゃん居ないの?」
「あー婆ちゃんは幼女とどっか行ったよ」
「へーー」
へーー、そうなんだー。 俺の話いつできるんだろう。
「んで、お前何なの?」
「勇者」
「マジで!?」
「おう、サラリーマンで勇者だ」
「すげー! サラリーマンはよく分かんねえけどすげーー!」
さらっとサラリーマンディスられてるな。
「んで、何だ小僧」
「お、そうだ! 俺最強の必殺技を考えて来たんだよ!」
出た、毎回懲りずに必殺技考えやがって。
「って事でゲルスは敵な」
そしてナチュラルに、いつも敵役になってる俺の気持ち考えて?
「へーなんていう技だ?」
「ス◯シウム光線って言うんだ!」
「え? ちょっと待って。 お前もしかして……天才?」
何でだ!??
どこに天才の要素あった?
「よし、俺が見てやる! 撃ってみろ」
「お、おう」
何でお前の方がやる気になってるんだよ!
若干ガキが引いてるじゃねーか。
「じゃ、じゃあ行くぜ! ス◯シウーム光線!!」
痛え! 只のキックじゃねーか!!
「ふむ、小僧。 それはラ◯ダーキックだ」
「名前あんの!?」
名前あんの!?
「では正式なス◯シウム光線を教えてやろう」
「ほんと! どうやんの?」
「こうやるんだ」
正式とかあるんだ、へーしゃがむんだー。
で、こっち向くんだー。
何でこっち向くんだよ!?
俺また敵役かよ!
「こうだ! ス◯シウーム光線!!」
「おー! なんかカッケェ!」
カッコ……良いのか?
「でも、なんか地味だな」
「そうだな、真の必殺技とは地味なんだ。 実用的だからな」
「実用的?」
「最強ってことだ」
「すげえ!」
実用的って何だっけ?
そんなことを考えていたら、俺の服が。
弾けた。
「何でだーー!!!??」
待て、俺全裸になっとるうう!!!
「え、すげーー! ス◯シウム光線って相手を全裸にする技なのか!」
「そ、そうかもしれない」
こっち被害甚大なんですけど!
「ま、まあな。 これが実用的って意味だ」
「実用的すげーー!!」
他人を全裸にする技とか実用的というより犯罪的では?
てか、俺地上げしに来たら全裸にされたんですけど。 まだ悪いことしてないんですけど。
「ありがとうお兄さん! また来るからな!」
「おう! 必殺技頑張れ!」
いや、俺の損害がひどいんだが。
「あのさ、俺の服……」
弁償してくんないかな。
「ごめん………上なら貸せる」
下も貸せよ、でも貰えるなら貰っとく。
「……ちょうだい」
「うん、分かった」
この服、見た事ない。 真っ黒だな。
まあ良い、これで少なくとも全裸ではなくなった。
「……ふむ」
「どうした勇者?」
「…………スーツならチ◯ポは隠せるのか」
「……お前なに言ってるの!」
今言うセリフでは無いよね?
「こんに◎$♪×△¥●&?#$!」
またキャラ濃いやつきたなあ。
「え、なんて?」
勇者でも聞き取れないか。
「◎$♪×△¥●&?#$!◎$♪×△¥●&?#$!」
向かいのケンちゃん魚屋のケン爺かよ。
なに言ってるか分からない人間ランキング2位がきたよ。
1位はもちろんカト婆な。
因みに今のは「ゲルスちゃんのそのファッションは今の流行りなのかい?」だ。
「いや、こんなの流行ったら世紀末だよ」
「ふぉふぉおふぉふぉふぉ!」
聞いてねえな、なにが「ワシも若い頃はそんな格好してた」だよ! それただの露出狂だよ!
「はいはい、それでケン爺なにしに来たの?」
「ふぉふぉ◎$♪×△¥●&?#$!」
「いや、今カト婆居ないよ」
「ふぉ!? …………」
マジ!? って言って固まっちゃったよ。
「いやそんなショック受けても居ないから」
「……………プルプルプルプル」
あれ? これちげーな。
「おいケン爺大丈夫か?」
「ふぉ………ふぉ……」
「な、何だって!?」
「おい、そこのお二人。 俺状況が読めないんだが」
マジかよケン爺ぎっくり腰だって!? お医者様呼ばねーと!
「ごめん! えーっと勇者! 服を貸してくれ!」
「は? いやですけど」
「何でだよ!!」
「いや、普通の反応ですが?」
「ケン爺がぎっくり腰になったから医者に連れてくんだよ!」
「……はあ、大変ですね」
「大変ですよ!!」
いや、早く連れてかねーと!
「いいから! YO☆KO☆SE!」
「おい! なにをする! ちょ! ズボンと一緒にパンツ落ちてるから!! 待って! 落ちてるって!」
俺を上だけ着た変態のままで医者呼ばせる気か! この鬼畜野郎!
「ああーーーーー!!!」
……何だこの声。
「ゲルスだ! カト婆ちゃんをまたいじめに来たんでしょ!!」
ああー、この声。
「何だちびっ子か」
「ちびじゃないもん!」
「あ、幼女来た」
「ヤマガタ留守番お疲れ様!」
なに、知り合いなの!?
「えっと、因みにこれどうゆう状況なの?」
どうゆう状況?
俺は客観的に今の状況を把握した。
俺が。
男のパンツを。
剥ぎ取っている。
「……これには深い事情があるんだ」
「?」
理解してねえ!
「分かった!」
え、わかったの!?
なに? なにが分かったの?
それに、ケン爺とカト婆向こうで合流してるし!
「ふぁふぁふぁふぁ……………会いたかったわケイン!」
「ふぉふぉふぉフォオオ!!……………こっちだって会いたかった愛しのカトリーヌ!」
惚気かよ!
そしてケン爺腰どうなった、ぎっくり腰じゃねーのかよ。
普通にカト婆と話してんじゃねーか。
「ねえゲルス?」
ちびっ子の言葉で振り向き直す。
何でそんな優しい目をするかな?
その全て理解してますって目をやめようか。
「はじめに言っておく、お前は絶対理解してない」
「いいんです、運命を受け入れましょう」
運命とか言い始めたよ、誰だよこいつに運命って言葉教えたやつ。
「幼女言ってやれ!」
おい、勇者援護すんな。
「すばり!」
すばり?
「攻め!」
……。
…………。
「ちょーっと勇者さんこっち来ようか?」
「いや、待て待て! 俺教えてねーから!」
「ヤマガタが受け!」
「………これは実刑判決だな」
「あ、俺分かった教えたのお姉さ」
「言い訳は見苦しいんで、はーい連行しまーす」
全く、ピュアな世界を壊さないで欲しいな。
ちょっと事務所まで来てもらおうか。
…………今更だけど、俺なにしに来たんだっけ?




