第18話 ヤマガタは逃げる、しかし回り込まれてしまった!
「おはよう山形くん」
俺は無事に家に帰った、そして会社に出勤したんだ。
……分かるだろう?
いま修羅場なんだ。
「おはようございます市川課長!!」
元気で誤魔化す24歳。
絶対怒ってるわ、ここに来るまで5通りくらいの言い訳を考えて来たぞ!
さあ、来い! 受けて立とう!
……。
「なんだ、今日は朝から元気がいいな! やる気があって良いな!」
怒られなかった。
あれ?
あーれー?
どうしました、課長?
壊れました?
怒りで逆に優しくなりました?
笑顔の裏にマグマみたいな怒りを抱いてるタイプですか?
こーれはまずいぞお☆
「昨日の飲み連絡も無くブッちしてしまってすいませんでした!」
「あー、それか、うん、まあ山形くんにも行けなかった事情があったのだろう。 気にしてないよ」
謝罪の受け取り拒否!
これはまずい、謝罪すらさせて貰えないとは。
つまり、お前の謝罪程度じゃ足りねーよ宣言。
でも山形、できる男。
当然こうなる予想はしてました。
「市川課長! 昨日のお詫びです」
「え、あ、ありがとう」
戸惑いながらも受け取って貰えた。
必殺、お詫びの品作戦。
……これも受け取って貰えなかったら、終わってた。
「ほんとにすいませんでした!」
「あ、うん。 気にしてないから大丈夫だぞ」
「ありがとうございます!」
「分かった分かった、頭を上げろ。 恥ずかしいだろ」
頭を上げると恥ずかしそうに頬をかいて佇む課長がいた。
良かったあ、無事にミッション完了だ。
「お詫びは良いんだが…………中身なんだこれ?」
課長が早速中身を気にし始めた。
なるほどな、気になっちゃいます?
それはですね。
「それ凄いんですよ」
「お、もしかして私の好きな、さ」
「服です!」
「ふ、服!?」
あれ? 今私の好きなの後なんて言った?
てか、課長の好きなものってなんだ?
「なんか、言いました?」
「いや、ふ、服かあ! 丁度新しいスーツ欲しかったんだよ」
あ、スーツ欲しいんだ課長。 メモメモ。
「わ、分かっちゃいました? スーツです、いやあ流石課長!」
「え? ほんとにスーツなのかい! これは嬉しいなあ!」
あっはーっ! 言っちまったあ! もう戻れねえ!
厳密にはスーツじゃねえけど!
なんて言うんだこれ!? ドレス? コート?
なんでもいーか☆
課長が紙袋から服を覗き込んだ。
はやいっ! はやいよっ!
クソダサい服だってバレちゃうから。
ちょっと待てやコラ。
俺は課長の手を握った。
「ちょ、ちょっと課長」
「ん、なんだ?」
「帰ってからのお楽しみって事で」
「何を言う、山形くんが私の為に買ってくれたスーツ。 確認くらいしても良いだろう」
「いやいや、絶対帰ってからの方が良いですよ!」
「何照れてるんだよ、可愛いやつだなあ!」
「あっはー、照れてるとかそんな次元の話じゃないんだけどねー(小声)」
「ん? なんか言ったか?」
「言ってないですね」
「そうか?」
「ええ」
「そうか」
うわあ、ウキウキしてるなあ。
これ、止まんねぇな(絶望)。
「ん? なんか臭うな、もしかして香水もセットか?」
それ、たぶん加齢臭です。
「スーツにしては、なんかカラフルだそ?」
中を伺いながら課長が呟く。
まずいな、ここはひとつ助言を。
「課長」
「どうした?」
「そのスーツ少し特殊なんですよ」
「特殊?」
「ええ、祝宴や社交パーティー用なんです」
「ん??」
目をパチパチしてらっしゃる。
正確には、女王さまの前に出る用です。
「仕事用ではないのか」
「はい、ですから……」
「ふむ、そうか。 では結婚式などで使おうかな」
……それは辞めといたほうがいい。
「出来れば観賞用などに」
「観賞用? え?」
「すごく古いので」
「古いってどれくらいだ?」
どれくらいだろう?
ここだと大体…………。
「400年前くらいですかね?」
「古すぎない!?」
そうなんです。
「ですので丁寧に扱って下さい、触れると爆発します」
「お、え? 爆発?」
「はい、爆発します」
「え? え? じゃあどうやって着れば良いの?」
「着ないでください」
「……はい?」
「もっと言うと人目のつかない所で永遠に封印しておいて下さい」
「お前なんで持ってきたの!?」
いやいや、ですから。
「お詫びです」
「新手の嫌がらせかよ!?」
あ、そう言えば。
「そう言えば課長、一ヶ月後って何か記念日とかありますか?」
「話切り替わるの早いな!」
「無いんですか?」
「いや、子供の誕生日があるがなんだ?」
「ああ、良かったです」
「なんだ? なんかあるのか?」
「では、課長のお子さんの誕生日プレゼントに宝石贈りますね!」
「重いよ!」
ふふっ混乱している。
作戦通り。
「課長」
「……まだあるのか?」
「無いです!」
「……そうか」
名付けてショックで許して貰おう作戦。
これは大成功では?
「あーそうだ、山形」
課長から声を掛けられる。
あれ? ショックが足りなかった?
「な、なんでしょう?」
「お前さ」
はい、お前なんでしょう?
「今日までの企画書かいて来たか?」
あ、やっベー書いてないわ☆
「……ふぅ、課長」
「なんだ?」
「…………今日飲みに行きましょう!」
「忘れたんだな?」
無事に刑は執行された。
ここで書溜めが切れた為停止します。
また何話か溜まったら更新します




