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第15話 選ばれたのは勇者でした。

 おかしい、いとおかし。


 勇者の仕事は魔王を倒すことなり。


 現在の仕事。





 馬車曳き。


「お嬢様方、速度はいかがでしょうか?」

「うむ、苦しゅうない」

「まあまあね」


 俺は苦しゅうございますが?

 何故に俺馬車曵いてるの?


「ちょっと! 道間違えてるわよ」

「へい! すいやせん」


 なんで?

 なんで俺怒られてるの?



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



 時は数分前。


「御者雇うの忘れてた!!」


 可愛らしい幼女の悲鳴が響き渡る。


 まだ幼い女の子だ、忘れてたなら仕方ない。


 幼女は一瞬だけ反省の素振りを見せたが、共犯者と思わしき人物から有難い一言を頂戴する。


「ヘレナ、何の為に勇者がいると思う?」


 魔王を倒す為に御座います。


「馬車を曳くためよ」


 それはおかしい。


 共犯者はきっとツンデレという病に侵されているのだ、そうに違いない。

 そう思う事で、俺の心の安息は保たれた。


 テレレテッテレー♪


「プライドを投げ捨てる」を獲得しました。


 その辺に捨てますか?


 なんか頭の中でよく分からないスキルを取得したらしい。

 これは鑑定しなくても分かる、俺が日常的に使用していた。


 なんなら一緒にやる気も捨ててた。


 テレレテッテレー♪



 ヤケクソですか?



 うっさいわあ!!



 テレレテッテレー♪



 なに? なんかムカついてきたなこの脳内音声。

 しょうもない事だったら、カセットごと叩き割るぞ。





 お馬さんなら、やってましたね?



 なんか断定してるのがムカつくな。

 なに? お馬さん?

 あのサバサお姉さんの柔らかいお尻が俺の背中に乗って尻を叩かれる現象か。


 ……まあ、やれと言われたらやぶさかではない。



 ……キッモ。


 あれ?なんか俺の脳内で誰かさんの声が聞こえたぞ?

 ここ一応神聖不可侵にして紳士結界が貼られてるはずなんですが?


「なにニヤニヤしてんの、キッモ」


 あ、現実世界でした。

 いつのまにか俺は夢の世界にトリップしてたらしい。

 それにしても……。


「なに」


 相変わらず顔だけは整ってらっしゃる。


「いや、可愛いなあって」

「なに当たり前のこと言ってんの」


 可愛いは当たり前だったらしい。


「それよりどうなの? やるのやらないの?」


 サバサお姉さんから情熱的なアプローチを頂いてしまっては断れない。


「是非! ヤりたいです!」



 奴隷から家畜に昇格した瞬間だった。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 ところでなんだが。


「俺たちどこに向かってるんだ?」


 実は2度目の質問になります、前回はガン無視されると言う痛々しい事件がありました。


「王都よ」


 嘔吐? なに吐くの?


「お嬢様、催したのなら其方の草むらで」

「なに考えてるか分からないけど絶対に違うと断言できるわ」


 違うらしい。

 仕方ないヘレナに聞くか。


「なあ、ヘレナ。 そのオウトってなんだ?」

「おっきいです!」


 あ、聞いたひと間違えた。


「お姉さんオウトってなんですか?」

「…………」

「サバサお嬢様、オウトとはどの様なものでしょうか?」

「王都は王都よ」


 あかん、詰んだ。


 ヘレナに問い合わせるしかない。


「ヘレナ、おっきいってどれくらい」

「こーれくらい!!」


 手でおっきな丸を作ってくれた。


 ありがとう、全然分からない。


「そうだな、この馬車何個分くらいかな?」

「ばしゃ!?」


 凄い驚いてらっしゃる。


「あのねえ……王都の大きさが馬車で比較出来るわけないでしょ」


 お姉さんが呆れた感じで話しかける。

 そうか、馬車換算出来ないのか。


「うーーん、100個!!」


 お姉さん? 妹さん換算出来てますよ?


「……妹は100以上の数字知らないのよ」


 左様でしたか。


「ここなら見えるんじゃない? ほらあそこよ」


 お姉さんが指を指してくれた。

 俺も指した方向に首を動かした。


 ……。


 …………。


「街じゃん」

「だから言ってるでしょ」


 あ、そうゆうことか!


「街の名前がオウトって言うのか!」

「あなた頭大丈夫?」


 違うのか!


「ね? おっきいでしょ!」


 こいつは論外。


 もういいや、オウトですね分かりまーした!!


「なるほどな、ここがオウトか……」

「ほんとに理解してるの?」


 ああ、完璧に理解した。

 完璧すぎて己が怖い。


「なに言ってるんだ、オウトはオウトだろ?」

「凄いドヤ顔してるけど王都の正式な名前知ってるわけ?」


 正式な名前? オウトではない?

 え?


「オニイ・チャン・ダイスキかな?」

「それだったら王都燃やすわ」


 燃やすのか、お姉さんは危険思想の持ち主だったとは。


「はあ、エモリーシス、王都の名前よ」

「エモリーシス……」


 流石ツンデレ、何だかんだで教えてくれる。


「それで貴方は今回この王都におわす女王さまに招待されたのよ」


 ……。


 …………待て。


 ………。


「んふふ、ヤマガタは凄いんです!!」


 ………。


 …………おい、幼女。 聞いてないぞ。


「なんで?」

「あんたが国を騒がしていた大盗賊団を壊滅させたからよ」


 ほう、俺そんな事やってたんだ。

 あれ? 前回そんなことしたな。


「王国騎士まで出て討伐する話しが出てたくらい危険な盗賊だったらしいわ、知らないけど」


 へー。

 ソウナンダー。


 ……。


 …………。


「ヘレナ魔力ってあとどれくらいある?」

「たっぷりあります!!」


 ……。


 …………。


「帰っていい?」

「ダメです!!」


 いやー、ヘレナや。

 これはお兄ちゃん無理だわ。


 いきなり女王はハードル高いわ。

 せめて村長あたりから始めたいわ。


 これじゃどこかのゲームの勇者みたいじゃないか。


 ……俺勇者だった。


「ヘレナ、元の世界に忘れ物したみたいなんだ」

「え? そうなんですか!?」

「ヘレナ嘘よ、信じないで」


 姉のガードかてえ。


「せめてスーツでも……」

「その為に服を与えたじゃない」


 これそうゆう意味だったの!?


「なに? まさかあんた勇者ともあろう方がビビってんの?」

「ビビってるんですか?」


 おい、幼女。 分からない言葉をさも知ってるように復唱するでない。


 なにこの空気、エターナルブリザードの次は串刺し式ダブルラリアットですか?


 味方はおりませんか?


 市川課長、市川課長、至急異世界までお越し下さい。


 ……。


 …………。


「……英雄とは孤独か」

「なに言ってんの?」


 俺は、3回目にして女王に会うことになるのだった。

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