#12 新たな名前
そこから先は早かった。
新聞店は粗末な貸店舗に移った。以前の場所よりずっと狭く天井は低く窓は一つしかない。通りからも目立たない。看板も小さくなった。
それでも「王都の鷹」の名前だけは残した。それがせめてもの抵抗だった。
部数は大幅に削られた。以前の1割以下になっただろう。熱狂的な支持者たちは去り、街角の売店からも次第に消えていった。
軍と後見人たちの間でどんなやり取りがされたのかは知らないが、おそらくはその結果なのだろう。
俺の記事は以前のように自由には書けなくなった。書けることと書けないことの線引きが、明確に引かれた。
そして新しい名前を名乗らされた。
リック・ギャラガー
かつての名前は記事と共に葬られた。親からもらった名前。孤児院で呼ばれていた名前。それを捨てるのは、思ったよりずっと静かな喪失だった。
涙が出るわけでもない。怒りが湧くわけでもない。ただ、自分の中の何かが一つ消えた。そんな感覚だった。
命を失う代わりに、名前を失った。悪くない取引だと思うことにした。名前がなくても生きていける。だが命がなければ何もできない。
しばらくは細々とした生活を余儀なくされた。質素な貸店舗。少ない部数。制限された記事。
それでも命には代えられない。俺は文句を言わなかった。いや、言えなかった。
だが、不思議なことに資産収入は変わらず懐に入ってきた。
後見人がどんな手を使ったのかは未だに分からない。だが何事もなかったかのように、俺がかつて買った証文と家屋はすべて「リック・ギャラガー」の名義に変わっていた。
書類上は最初からそうだったかのように。まるで俺という人間が、生まれつきリック・ギャラガーであったかのように。




