#11 借り
結論から言うと、その取引には王国軍が一枚噛んでいた。
非合法組織を間に挟み彼らの仕業に見せかけた非道な人体実験。王城内で碌でもない人間が権力を握るとしばしばこういうことが起こる。
歴史の教科書には載らない。載せられない。だが、あるのだ。繰り返し。
俺はそこまで辿り着いてしまった。
いや、おびき寄せられたという方が近い。俺が嗅ぎ回っていることを、軍の誰かが察知した。そして動いた。迅速に、静かに確実に。
ある日の取材帰りだった。王都の外れ、運河沿いの寂しい道を歩いていた。日はすでに落ちていた。街灯は少なく、水面に映る月明かりだけが頼りだった。
気配に気づいたときには、もう遅かった。
最初の一撃は背後からだった。振り向く暇もなく、脇腹に鋭い痛みが走った。ナイフだ。
咄嗟に体を捻ったおかげで傷は深くなかったが、精神的な衝撃は大きかった。
俺はすぐさま横に飛び、壁に背を預けた。三人いた。いや四人か。黒い服を着て顔を覆っていた。
動きが洗練されていた。喧嘩慣れしたチンピラとは違う。これは訓練された殺し屋だ。
俺は応戦した。喧嘩と荷役で鍛えた体はまだ衰えていなかったが、相手は手練れが四人。しかも武器を持っている。丸腰だった俺は防戦一方だった。
何とか脱出の機会を探ったが、当然そんな隙をつくらせてはもらえなかった。
そうこうしているうちに二発目、三発目が俺を捉えた。腕を切り裂かれ太ももを刺された。血が噴き出す。視界が霞む。
まずい。死ぬ。
そう思った瞬間だった。
「そこまでだ」
低い声が路地に響いた。四人が同時に動きを止めた。
ドレンツが立っていた。手には短剣。その後ろにもう一人。その後ろにも。五人か六人。いや、もっとか。
「お前たち、どこの所属だ? 王都の掟を知らんのか」
ドレンツの声は静かだったが凄みがあった。殺し屋たちは一瞬躊躇した。それから、リーダー格らしき男が舌打ちをし手を挙げた。
四人は闇に消えた。まるで最初からいなかったかのように。
俺はその場に崩れ落ちた。ドレンツが駆け寄ってきた。
「生きてるか、若造」
「ああ……なんとか」
「運が良かったな。俺たちはたまたまこの辺りを巡回していた」
「たまたま……?」
「そういうことにしておけ」
ドレンツはそう言って、俺を担ぎ上げた。
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それから俺は、後見人の庇護下に入った。
正確には、そうならざるを得なかった。軍が動いた以上、俺一人ではどうにもならない。後見人たちは俺を匿い、傷を癒しそして身の安全を確保した。
それ以降は危険が及ぶことはなかった。あの殺し屋たちが再び現れることもなければ、軍が動く気配もなかった。




