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うかつぼう弁慶  ーかの有名な方と同名で、恥じぬよう日々励んでおりますー  作者: 雲母あお


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鏡

夏のホラー『音』参加作品です

鏡


ケケケケケケ

カツカツカツカツカツ


「何の音でござる?」

廊下を歩いていると、聞いたことのない音が聞こえて来た。

音をたどると、風呂場の前に着いた。

どうやら風呂場から聞こえて来たようだ。


そっと引き戸を開けると、そこには、

「若?」

若が立っていて、壁に向かって何やらやっていた。

「何をなさっておいでですか?」

弁慶の声に、振り向く若。


「おう、弁慶か。今、鏡を設置していたところだ。」

「鏡ですか?」

「あぁ。世にも不思議な鏡だそうで、それを安く譲ってもらったのだ。」


と言って、若は風呂の脱衣所の壁に姿鏡をかけた。


「やはり体型維持にはチェックが必要だと思ってな。」

「左様ですな!」


鏡に向かって力こぶを作ってみたりしている若を見ながらほほえましく思っていると、

「ん?」

なんか黒い影みたいなのが見えるような…


「若…これいくらで譲ってもらったのですか?」

「これか?100円だ。安いだろう。」

とっても嬉しそう。


こんな馬鹿でかい姿鏡が100円!?

ありえん!これは何か曰くがあるのでは……?


「どこでお買い求めになったのですか?」

「先ほど会合の帰りに、古道具屋に寄ったのだ。」

「もしかしてと思いますが、あの古道具屋でございますか?」

「あの古道具屋とはなんだ?よくはわからんが初めて入ったお店だ。近頃評判だと聞いたが」


若は、噂に疎い。


近頃、評判になっているのは確かだが、評判といっても良い方の評判ではない。

若は、純粋なお方なので、良い方に捉えてしまう癖がある。


確かあのお店は……


チラッと鏡の方を見る。

楽しそうな若のお姿が映し出されている。


まぁ、あのような噂は、誠かわからないし。

すべての商品が、そのようなわけでもあるまい。


でも、先ほどから何やら異常な気配がするような……


もう一度姿鏡を見る。


若がうつしだされているが、、、

「うわぁ!」

「どうした弁慶?」

「若のほかにもう一人うつってやしませんか?」

「そうか??」


ケケケケケケ


また、変な音が聞こえて来た。


じーっと影を見ると、くるりとこちらを見て笑った!!!

口のところだけ、半円が白くすけ、また、すぅっと半円が閉じて真っ黒な人影になったのだ。


ケケケケケケ

カツカツカツカツカツ


「ぎゃーーー!!!」

弁慶は走って逃げた。


「弁慶?」

若は気にした様子もなく風呂に入り、姿鏡に自分の体を満足するまで映し、風呂場を後にした。




3日後


「弁慶、風呂に入っているか?」

「は、は、、、い..・・・」

「では体調が悪いのか?臭うぞ?それに眠れてないのではないか?目の下に隈がある。今日は休め。」

「す、すみません。そうさせていただきます。」

「うむ、早く元気になってくれ。」

「はい、、、」


あの鏡がやって来てから風呂に入っていない。怖いから。

風呂場の前に行くと、声のような不気味な音が聞こえてくるのだ。


ケケケケケケ

ケケケケケケ

カツカツカツカツカツ


その瞬間あのニタッと笑う黒い影が思い出され、近づくことすら出来なくなっていた。


夜、暗い部屋に一人でいると怖くて眠れなかった。

弁慶の部屋が、風呂場のそばだったからなおのこと。

明るい昼間に寝てよいと若に言っていただけて、弁慶は3日ぶりによく眠れた。


夜目が覚めると、若が手ぬぐいで弁慶の顔の汗を拭いてくれていた。


「わ、若!?」

「お?目が覚めたのか?顔色がずいぶん良くなったな。寝不足であったのか?」


「若、ずっとそばについていてくださったのですか?」

「ああ。弁慶が心配でな。」

「あ、ありがとうございます。」

そうか、若がいてくれたから安心して眠れたのだな。


「寝汗がすごい。風呂に入って参れ。湯を沸かしておいたぞ。」


「まことでございますか!?そんな、若にそんなにしていただいて…。」

弁慶は、感動する。

「では、早速風呂に、、、」

っと、いやいや、そうだったー!

風呂に入れず寝不足になった原因が風呂場にー!!


「そ、それで、、あの、若…」

「なんだ?」

「その、風呂に設置した姿鏡のことなんですが……」

「鏡か?ああ、あれは、お前が寝ている間に買い戻しに来てな。」

「え!?」


「なんだか慌てた様子で、とても顔色が悪く、必死に何かを訴えながら、勝手にあがって持ち帰ってしまったのだ。」


「えええ!!!」

どういうことだ???


「そ、それで、理由はおっしゃっていたんですか?」


「うーん?良くわからないことを言っていたぞ。」

「それはなんと?」


「確かやっと手放せたと思ったのにー!とか。」


「あとは、確か・・・」


「お前を脅かすのに飽きたから、他のやつ紹介しろって言われて、これで縁が切れると喜んでいたら、若様に売ったその日から、毎晩枕元に気配を感じ、あやつはなんの反応も示さん!!よもや私などいないと言わんばかりに、自分の体を見つめてうっとりしておる!!そんなやつ映したくないぞ!なんであんなやつを紹介してくれたんだ!たたってやる〜!と、鏡が怒り始めて、鏡を所持していた時よりひどい目に遭っているから、後生ですから、あの鏡を買い戻させてください!お金はいくらでも払います〜!と、泣きつかれてな。」


「それでなんと答えたのです?」

「いや、気に入っているのだが。と、つい本音を言ってしまった。」

「そ、それで?」

「ああ。それで断ろうと思ったのだが、店主が必死の形相で『え!?お、同じ大きさの鏡を新品でご用意いたします!!それでご勘弁を!!と、とにかく上がらせてもらいますよ!!』というなり勝手に家に上がり込んできてな。思わず弁慶を呼んだんだが、そうだ体調が悪くて寝ているんだったと思い出し、声をかけるのをやめて慌てて後をついて、様子を伺っていた。」


ふっと、その時のことを思い出しているようだ。

「私は弁慶に頼り切っているなあと実感したよ。」

若は、しんみりとそう言った。


「いえ、そんな。それでどうなったのですか?」

それより先が知りたい!


「それでか?それが、どこに鏡をかけたか話していないし、この家に入ったのは初めてなのに、迷わず風呂場の扉を開けてな。」

「はい。」

「鏡にむかって『お許しください!ただ今持って帰ります。ですから、毎晩出てくるのはおやめください!』と、鏡の前に土下座をし、何度も頭を下げながら泣いて訴え、鏡を持っていってしまった。」


残念そうな若。

若は、あの鏡がとても気に入っておられたからな。


しかし!!!


「持っていった?ということは、いまはもうないのでごさいますね?」

「うむ。残念だ。だが、持っていってしまったのだ。その後、鏡があったところに戻ったら封筒がおいてあってな。」

「封筒?」

「うむ。これだ。」

ポケットから出された封筒には、


『お詫び』


と三文字かかれていて、中に10万円が入っていた。

『これでお好きな鏡を買ってください。』

と、添え状も入っていた。


「さて、どうしたものかな?」


「若!是非とも受け取りましょう!それで私と鏡を買いにいきましょう!!」

すっくと立ち上がる弁慶。

「それでは、早速風呂に入って支度をしますので、しばしお待ちください!!」


嬉しそうに着替えを持って風呂場に走っていく弁慶。


「元気になってよかったな。」

若は嬉しそうだった。


「でも、弁慶。鏡を買うため支度してくれるのは嬉しいが、もう深夜だから、買いに行くのは明日にしよう。」


ふわあ〜


弁慶が元気になって安心した若は、あくびをひとつ。


「おやすみ弁慶。」


若は、自室に向かって歩き出した。


「あの姿鏡気に入っていたのになぁ。」


まだ少し諦めきれない若であった。


9月26日はすこし長めになっております(^^)

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