2049年12月
2049年12月1日 水曜日 曇り
記憶と目標が現在を生み出し、そこに人ナビの未来予測を加味すると、個人の現在が人類世界全体と融合するはずだ、というのが人ナビの基礎理論だけど、特別に珍しい考え方ではないらしい。習った限りでは、20世紀から21世紀初頭にかけて、結局のところ、人間は自分が生み出したいかなる理論についても、それが正しいか証明できずにいた結果、最後に残ったのは資本を蓄積するという不可思議な世界機械だけだった、というのが今日、最近では一番興味深かった講義だ。
驚くべきことに、資本の集中は最高期には九割に達している。世界の資本のほぼ全てが誰かの所有物になった世界。それが人ナビ以前の社会らしい。らしいというのは、僕らの世代は生まれた時から人ナビと暮らしているから、そうした社会についての実感がない。もしかしたら、今も世界のほぼ全てが誰かの物なのかもしれないけれど、それはもう、大きな課題ではなくなっている。
僕らは自分の目標へと達する最善路を人ナビの未来予測力をかりて走り続けていればいいわけで、そこに誰が何を所有しているかは問題にはならない。
でも、だとしたら、僕たちが人造であるとか天然であるとかも、どうでもいいのでは?
2049年12月17日 金曜日 小雪
明日から冬休みだ。
今日、人ナビの大規模更新が発表された。年明けの10日から実装される予定らしい。学校でも、そのための注意がされた。これまでの人ナビは人ナビが僕らへ提案する、という言わば一方通行だったけれども、今度は僕たちの使用されてない部分を人ナビシステムが使用できるようにするらしい。
あと、再来年以降には、人以外へと適応範囲を拡大していくロードマップが人ナビ運営の中心企業BG社から発表された。農作物や樹木、家畜で人ナビを利用したら、随分と世界は楽になる気がするけれども、いよいよ、人造社会化していく。
2049年12月30日 木曜日 晴れ
今年もあと僅かだ。
あらためて手紙を読み返してみると、不思議なことがあった。




