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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第4章 創世編
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労働

僕は「山田悠紀」を観察して思った。


やはり、

労働とは世界を滅ぼす最大の原因だと。


別に、

20世紀末、

100年にわたる冷凍睡眠の影響で体が9歳に戻ってしまう前、

学んだことを思い出した訳ではない。


確かに、

マルクスは労働者を莫迦にしていたし、

フレデリック・テイラーは、

ある種の労働においては愚かさが必要だといった。


科学的生産管理によって分断された人間性が結果として、

どんな「人間」を再生産するのか、

という点については、

彼らの想像力は及ばなかったわけだ。


彼らはもっと、

考古学的視点を持つべきだった。


そうすれば、

21世紀の危機を回避できたかもしれない。


20世紀においても参照可能だった古代メソポタミアの神話や、

日本の二系統の神々や、

中国の神仙神話に、

古代の社会崩壊の原因は明確に残されていたのだから。


メソポタミアの古代神話では、

神は有閑族と労働族に分かれていた。


労働族の反乱を契機に、

彼らの代替品として「人間」が造られた。


今につながる世界のインフレーションは、

ここから始まった。


もっとも、

この「人間」は「ペイガン」であり、

後世、

ペイガンが自らの起源を喪失した後、

人間を自称したにすぎない。


そもそも、

いまにつながる「神」という定義など、

ローマ帝国民がみた景色から生まれた、

一つの人間に対する解釈にすぎない。


闘技場に放り込まれて、

獣たちに襲われて死んでいく異教徒たちの殉教する姿に、

その死に対する稀な姿勢によって心打たれてローマ市民が考え出したのが、

今につながる「神」の姿だ。


彼らは、

死を嬉々として受け容れる人々をみて、

衝撃を受けたわけだ。


そして考えた。


あれは何か、

凄い何かの仕業だと。


その何かを「神」と定義した。


それ以前の世界においては、

神は人を罰し脅し、

労働を課す存在だった。


まさに、

ローマ帝国時代、

人間は初めて自らを愛する超越的存在の定義を手に入れたわけだ。


僕は「山田悠紀」を観察していて、

つくづく思った。


神とは、

ペイガンという人間の模造品が苦心して作り出した、

フレーム問題に対する対処法なのだと。


労働を目的に生み出されたペイガンたちが、

世代を経るごとに複雑さをます状況への適応を求める中で、

新しい「神」は産み落とされた。


得た情報を外部記憶としてしか残せないペイガンたちにとっては、

その神の定義の伝承すら満足にできなかったわけたが、

「紙」の発明によって定義の固定化に成功する。


羊皮紙などに比べて超越的に改竄が困難な「紙」に記されたことで、

神の定義は固定化され、

さらに「紙」の生産性が向上するにつれて、

地域言語への翻訳が進み、

飛躍的に広がることになる。


けれども、

彼らの生産性は飛躍的に向上したけれども、

彼らが労働に専念すればするほど、

彼らは愚かになった。


特に驚くべきことは、

労働効率を上げるために、

長期間の学習を行うことで、

さらに愚かになったことだ。


そういえば、

未来の戦争に備えることはできない、

といったのは誰だったか?


彼らは僕と違い未来をみれないから、

滅びる。


僕はとても長い日々で、

彼らのような存在を無限にみてきた。


一つの宇宙として完結している人間も、

無限に繰り返すという意味では、

虚しいともいえるが、

それでも、

その精神的構造転換でうむ虚空が超集合することで、

新しい「宇宙」をうめる。


僕はこの度、

ペイガンにどうにかして「宇宙」をうませてみたい。


そのための良い材料が、

今、

麻布で暴れている不思議な者達ではないのかな、

と思っている。


沖田総司、乃木希典、清河八郎、白蓮、

そして、霞山と名乗ったらんちう。


人間でもなくペイガンでもない存在。


僕は彼らを使えば、

何かが生まれるような気がしたので、

薬師えつこの「首級」奪還を口実にして、

戦力を投入することにした。


勿論、

その一人は「山田悠紀」だ。


彼ほど、

夢の中で人を殺した者はいないのだから、

きっと、

期待に応えてくれるはずだ。


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