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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第3章 自殺俱楽部編
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麻布六芒星異聞上

「墓地の上に建てるから、

金魚の幽霊まで浮かんできてるよ」

と、一女子がいった。


「あれは幽霊でなくて、

妖怪の類、ね」


「どっちも似たようなもんでしょ」


「服を着ない幽霊はいない、と昔からいうでしょ」


灯美子が言い返した。


「それに、

あの金魚、とっても美味しそう、ね」


「よく(こえて)るけど、日本では金魚を食べるの?」


ローラが訊いた。


「江戸では食べてた」

と、一女子がいうので節子が悲鳴をあげた。


まあ、

とにかく間近でみようと僕らは嫌がる節子を引きずりながら、

テラス席にいる金魚にあいに行く。


銀色の机とテーブル、

その間所々に傘型の、

これも銀色のストーブがある。


中はレストランになっていて、

入り口にはパンが並んでいた。


そして、

それは、

当たり前のように、

銀色の金属製の椅子の上に浮かんでいる「らんちゅう」だった。


僕らは金魚を囲むように座り、

節子は後ろ向きに座り、

僕と背中合わせに隠れていた。


「籠目へようこそ」


らんちゅうが喋った。


声は嗄れていて、

随分とお年寄りのようだけれども、

そもそも、

金魚の声ってどんなだ?


「籠目?」

と、ノーラが訊いた。


「あなたたちの言い方だと、

六芒星(ヘキサグラム)よ」

と、一女子が説明した。


念の為だけれど、

お店の名前が「籠目」とか「六芒星」というわけではない。


テラスには他にも人がいて、

建物の中にあるお店にも、

人も店員もいる。


そして、

金魚と喋っている僕たちのところにも、

黒い服に白い前垂れをした店員がメニューを置いていった。


果たしてこれは幻術の類なのか?

金魚に見えているのは僕たちだけで、

店員には「人」に見えているのか?


人が本性か金魚が本性か?


   ねえ、レム。

   三(3(トリスメギストス)使ってもわからない?


   はい、主さま。

   さきほどからやっているんですけど、

   灯美子様と一女子様と同じく、

   全くわかりません。


「あたしはノーラ、あなたのお名前は?」


目を輝かせてきける神経が羨ましい。


らんちゅうは少し首を傾げて、

また、

元に戻した。


霞山(かざん)だよ、異国の少女」


霞山?


どこかできいた覚えのある名前だとおもいつつ、

灯美子に訊いた。


「君らの親戚かなんか?」


(ソーサリー)の弟はいない」


「弟?」


「多分、私たちよりもずっと若いよ」

と、一女子。


「ねぇ」

と、灯美子が子供のような腕を金魚に向けてメニューを突き出した。


「お昼だよ。なに食べようか」


丁度、店員が注文をききにきた。


「漬物とヨロッコビール」

と、金魚。


「糠漬けでいいですか、あと、いまだと柚子味ですけど、ビール」


「いいね」


「ありがどうございます。

他の方は?」


あまりに普通すぎる流れの中、

僕はカニグラタンとパンを頼んでしまった。


4人はといえば、

注文を取りに来たお兄さんの胸に、

葡萄の房をみつけた途端、

オススメのワインと料理を聞き出して、

色々と注文している。


「霞山さんて、

ヒルズにお住まいなんですか?」


僕は恐る恐る訊いてみた。

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