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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第3章 自殺俱楽部編
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誓約と覚醒3

「人間は一人一人が一つの宇宙なの」

と、灯美子が小ぶりのたい焼きを頭から齧りながらいった。


「この時代の科学的常識じゃ、理解できないかもしれないけど、

世界は一人一人の宇宙が無数に重ね合って成立しているわけ」

と、一女子が尻尾をちぎりながらいった。


僕はロイヤルドルトンのランチプレートに上品に盛り直された焼きそばを、

これは違うのでは?

と、思いながら象牙らしき箸で口に静かに運んでいる。

多分だけど、

この皿、焼きそばの百倍くらいの値段じゃないだろうか。


「三次元と時間を、人間は各々で所有しているんです」

と、今度は節子が説明し始めた。


ノーラは相変わらずだったが、

「じゃ、人間の起源てどうなるの?」

と、至極まっとうな質問をした。


「起源はわかりません」


「死んだらどうなるのかしら」


「肉体はぼろぼろになるけど、ね、霊子が空にのぼるの、ね」

と、たい焼きを食べ終えた灯美子がいった。


「それで適当に休んだら、生まれ変わるか、化身するのよ」

と、一女子がいった。


「化身?」


「好きなものに姿を変えて世界に出現すること」


「たとえば、ね、今食べたたい焼きになるの、ね」


「その発想はなかったわ」

と、ノーラ。


「だから、ね、心して食べるのよ」


「で、食べられたら、また、生まれ変わるのね」


「そうよ。そうやって人間は永遠に現存在であり続けるの」

と、節子がいった。


「逆に、ペイガンは節子以外は死んだら終わりなんだ。物に還元されるだけ。記憶も外部記録以外は全て消失する」


僕はノーラに説明しなくちゃ、と思っていた。


「そのかわりにね、ペイガンは二百年で千倍、三百年で三万二千倍に増えるんだよ」


「人間は増えない、ね」


「私たちは少しだけ増えるな」

と、一女子。


「ねぇ、二人はどっちなの?」

と、ノーラ。


「二人は、西洋でいうところの魔女かな」

と、僕が言ったら灯美子が文句をつけた。


「魔女神(ウィッチゴッテス)、ね」


「神様?」


「あたしたちは<影>みたいなものよ。世界の影。人間が放った光でペイガンが生み出す影」


「だから、少しふえるの、ね」


生まれてから得てきた常識とかけ離れているから、

すぐに飲み込めないとは思うが、

僕らはノーラには理解してもらいたいと思っていた。

それはきっと、

彼女が僕たちのしていることを後世に一番、

正確に残してくれる、と思っているからだ。


ノーラは猫のようにたい焼きのしっぽをくわえたままじっと話をきいている。


僕は焼きそばを少しずつつ食べながら、

三人がノーラに色んな昔話をするのをきいていた。


と、同時に、

さっきから沈黙しているレムの様子を伺っていた。


レムはBGさんが「沈黙の友情」と交戦しているのを、

霊子ネットワークを使って支援しているから、

話しに加われずにいた。


どうやら、

敵は思ったよりも強い。

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