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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第2章 ペイガン科動物圖鑑編
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三千年について説明できない者は暗闇の中に未熟なままでいるがいい

ペイガンは霊子を全くもっていない。


持っていない、

ということは、

自分以外の全てのものとのネットワークから遮断されている状態だ。


だから、

彼らは言葉や文字でしかコミュニケーションが取れない。


故に、

彼らの歴史は常に三、四千年という短い時間しか保てない。


本来、

あらゆる存在の時間は、

あらゆる方向に無限だ。


僕のご先祖様、

命の根源は限りなく遡れる。


千年前、

一万年前、

一億年前の何処かで終わる、

ということはない。


同様に、

未来に向けて、

千年後、

一万年後、

一億年後、

僕という存在が消滅することはない。


けれども、

ペイガンはそうは考えられないし、

現実として霊子のない彼らは、

生命活動が停止した時点で、

全て情報は肉体の中に沈殿したまま、

何者にも受け継がれることなく、

消滅する。


故に、

彼らは霊子を介した世界や人との共感覚を持たないが故に、

時間をとても限られた範囲でしか認識できない。


「三千年について

 説明できない者は

 暗闇の中に未熟なままでいるがいい」


と、かの偉大なる詩人に指摘されても、だ。


それでも、

彼らの個数が人間と大差なければ、

また、

豊かな自然が生み出す微量の霊子が充分であり、

それらがペイガンの欲求を落ち着かせていられる間はよかった。


そうした社会においては、

死でさえも再生への一過程であり、

恐るべきでなく、

病や死は闘うべき相手ではない、

と、されていた。


種子が一旦腐敗することで芽をだすように、

人の死も無限の時に、

折々、やってくる変化の一つだった。


玉蜀黍(とうもろこし)、穀物や干し物の種子は、

死して地に蒔かれ、再生し、芽を出す。

かくして地に落ちた人間の肉体も、

再び栄光のうちに立ち上がらん、

肉体の復活たる万人の最後の日に」


16世紀の書物からの引用だ。


けれども、

その後は歴史の語る通り、だ。


死は恐怖となり、罰となり、

罰故に闘うべき対象となった。


この境界より、

世界はペイガンを主とし、

人間を従として今に至っている。

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