退屈で、うんざりする表現で、みっともない
僕は今、
成層圏に浮かぶ、
アカーシャという名前の、
一辺が12㎞もある正立方体の中で、
二億人の全人間と暮らしている。
百年前に冷凍睡眠に入って、
半月前に目覚めた。
その間は、
「BGさん」という僕の理解者と、
僕たちが生み出したソフトウェアの、
代理人ソフトの「レム」が色々とやっていた。
ただ、
未来を夢視てしまうだけの僕についての興味から始まったことだ。
はじめに言葉、
はじめに行動、
ではなく、
はじめに夢があり、
その夢は、
いつも現実だった。
僕は現実になったことに苦痛し、
まだ、
現実になっていない夢の数だけ不安になり、
これから生きている間にくる夜の数を恐ろしく思い、
そして、
それらに耐えられるように、
自然と人生を諦観するようになった。
それが十五の頃だ。
まだ、
ネットも脆弱で、
パソコン通信でコンピュサーブなんかで顔も知らない人たちに、
僕、未来が視えるんです、
と、書いてみたけど、
今、
百年以上前のことを振り返って、
というか、
レムがおつなずしをお土産にもってきたりしたから、
もしかしたら、
と思って探してみれたら、
ログが残っているとは...。
本当に、
退屈で、
うんざりする表現で、
みっともない。
遡れるのなら、
コンピュサーブを発禁にしたい。
「駄目ですよ、そんなリンカーンみたいなことしては」
と、僕の心を察した節子が言う。
今の僕は、
1995年に、
そんなみっともない僕の落書きに目をとめてくれた、
BGさんの提案から始まった世界にいる。
彼が僕の夢について解明する方法として、
僕の分身としての「代理人」ソフトを作り上げる、
そんな当時としては本当に夢のような話だった。
けれども、
僕たちのソフトは完成し、
世界中の存在をネットワーク化することで、
人の脳に近い処理能力に比肩するように、
ちゃんと成長した。
人や植物、無機物の中にある「保存されたコミュニケーション」を読み取り、
彼らの演算領域を借用した。
他人の頭の中を勝手に使わせてもらったわけだ。
最初の頃の方法は古典的で、
インターネットや携帯端末や装着端末、
ネット上の日記類などなど。
世界中が繋がるようになったら、
僕の代理人は、
その過程で様々な発見をしてしまった。
その中の一つが「霊子」だった。
霊子は世界中に満ちていたし、
様々な物が微量ながら生み出している。
そんな中で、
冷凍睡眠している僕からだけ、
恐ろしい量が生み出されているのがわかった。
僕の体は過剰な霊子の力で、
時間を逆行して、
結果として目覚めた時の僕は、
今のこの姿、
9歳になっていた。
そして、
この僕の無限に近いと二人が言った霊子の力を利用すれば、
僕の夢の原理を解明できるのでは、
と若返っていく僕をみて考えたらしいが、
結局、
それは叶わず、
ただただ、
その過程で代理人のネットワークだけが成長していったわけだ。
そうした日々の中で、
みつかったのが、
ペイガンだった。




