表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第2章 ペイガン科動物圖鑑編
44/195

牡蠣蕎麦と雲丹蕎麦

「ね、え?」

と、灯美子がノーラに訊いた。


「牡蠣、たべれるのね」


「好きですよ」


「プラトン派は牡蠣は食べないとかないでしょ、今時」


「そうなの、ね」


ノーラを挟ん座る灯美子と一女子が雲丹蕎麦をすすった。


「わたしが牡蠣食べると、

変ですか?」


三人の様子をカウンターの中から幽霊になって眺めていたレムが急いで止めに入った。


   その話、ちょっと、食事中は避けたほうがいいと思います。


と、黄色い雲丹の塊を口に入れようとしていた灯美子に促した。


「そう? 館長さんの娘さんて、なんか、ノーラちゃんに似てたから」


   まぁ、その辺で。


   それより、どうですか?


「椅子が狭いわね」

と、一女子が店内を見渡した。


   百年前からこんなつくりなんですよ。


   カウンターが10席とテーブルが四卓。


なんとか会話を変えようと頑張る透き通ったレムの体を、

白い料理服の店員が忙しく通り過ぎる。


「ノーラちゃん」

と、灯美子が最後の雲丹を箸でつまんだ。


「美味しいから、お食べ」


突然、口に雲丹を突っ込まれたノーラが碧眼を大きく見開いているを、

黒髪を震わせて笑っている一女子だったが、

「大丈夫! あなたが思っているようなことは、彼はしないから」

と、

座っても縮まらない身長差で見下ろしながら諭しつつ、

「問題なのはこっちの方よ」

と、

周囲の人々を見回した。


「コウサん、知ってるんですか?」


「あっちはほとんど忘れているようだけれど、

古馴染みよ」


三人は食べ終えると、

昔ながらの格子戸を引くと、

左へ向かった。


通りに突き当たると、

また、

左に行くと西麻布の交差点だ。


二人は交差点を渡って南山荘に帰るというので、

私とノーラは、

そこで別れた。


その際に、

「ノーラちゃん、引っ越してくれば?

お部屋、空いてるよ」

と灯美子が誘った。


「駄目ですよ。誘惑しちゃ」


灯美子が赤毛を指でいじって残念そうにしていると、

「あいつと相談してきな。それで、今度は代理人(レム)じゃなくて、

本人に挨拶しにくるようにって伝えて。

まぁ、

今、伝わったんだ思うけどね」

と、一女子が笑いながらノーラに顔を近づけた。


「あっ! ズルイ、ひめちゃん」


「いいから、いくよ」


何事が囁いてから、

ノーラの金髪を撫でて、

灯美子の手を引きながら、

一女子は交差点を渡っていった。


「あの、さっきの牡蠣、何のことだったのかしら?」


「大昔のことですから」

と、レムはいった。


「それよりも、主さまへのお土産買っていいですか?」


「ええ、いいけど。何にするの?」


「この界隈でお土産といえば、

おつな寿司以外にありません」


レムはそう言い切ると、

赤から青に変わった交差点を上り坂へ向かった。


ノーラは同じように歩く人々の姿が眺めながら、

別れ際に一女子が囁いた言葉を思い返していた。


   考えるって、なんだ?


なんだ?って、

それこそ、

何なんだろう、

と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ