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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第2章 ペイガン科動物圖鑑編
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狂気の歴史2

レムは語る。


16世紀の南米。


家族からも社会からも見放された娘がいた。


彼女はある日、

イチジクの木にとまる黒い人型が、

口から火を吹くのを目にした、

と兄夫婦に語る。


その日から、

彼女は断続的に痙攣を起こし、

ベッドから突然跳ね上がり、

周囲のものに神に背く様々な言葉を与え続けた。


そして、

彼女は悪魔憑きとなった。


祓魔師が入れ替わり立ち替わり彼女を癒したが、

悪魔は彼らを誑かした。


彼女はいうのだ。


「原住民を征服するのは神の意志である」

と悩める祓魔師と神に仕える人々が内心抱えていた葛藤をはらし、

古きヨーロッパとの戦いすら唆した。


「征服」に伴う残虐行為に心を疲弊させていた者たち、

そう、

最初に話した少年を射殺した母親の周りにいた男性たちと同じ心理状態の人々だ。


残虐行為を伴う征服が、

「正しい」と誰かに証明してもらう必要を抱えていた人々にとって、

それが自らの伴侶や、

ベッドの相手であれば、

それ以上の好都合はなかったのだった。


彼女に優れた能力はなかった。


家事も下手で女性としての魅力にもかけていた。


では、

彼女は何者だったのか?


ただ、

自らの奇行が人を招き寄せ、

その奇行が自分を利することを知り、

それによって人を堕落させることに、

何らの罪悪感を抱かない存在だっただけだ。


「ペイガンて、ついた嘘が嘘とわからないのよ、ね」

と、灯美子は言った。


「マリアが人ならば、

不逞な修道士たちの、

ただの犠牲者で終わったのでしょう」

と、一女子が言った。


「生憎と、彼女はペイガンだった」


「そうね、ミイラ取りがミイラになった」


「彼女、どうなったの?」

と、ノーラが訊いた。


「獄死した。彼女の周りにいた修道士や祓魔師は焚刑に処された」


「救いがなさすぎない?」


三人が見つめ合い、

誰が言うかを目で探り合った結果、

座ったまま灯美子が白い口もとに笑窪を深めて語った。


「心がないものには、救いもないのよ、ね」

と、ノーラを諭す。


「でも、どんなに教えてもらっても、

人間とペイガンの二種類がいて、

人間よりもペイガンていうのが悪質だっていうのは、

納得できない」


ノーラは碧眼を大きくして、

三人を睨むと言った。


「だって、彼らを皆殺しにするつもりなんでしょ?」


言い終わった途端、

レムは呆れ、

灯美子は微笑み、

一女子は黒髪を揺らして大笑いした。


そして、

レムを通して様子を覗いていた僕は、

彼女の単純さが羨ましかった。


節子は無関心で昼ご飯の用意をしている。


お昼は、

僕の大好きな赤坂にあったキャピタル東急のオリガミ名物のナポリタンだ。


決して、

グランドハイアット東京の70年代風ナポリタンではなく、

オリガミのね、

と念を押してある。


そして、

部屋では嘲笑が治まりつつあるようだった。




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