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Cross Destiny: LINKS-共鳴する絆-  作者: JING
第一章 共鳴する絆
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67話 思惑が交差する蓬莱編Ⅸ

サマエルが両腕を広げると、その周囲に次々と転移魔法陣が展開された。


魔法陣からは、異形の魔物たちが途切れることなく姿を現す。地上を埋め尽くすほどの軍勢に加え、空にも無数の魔物が飛び交い、禍々しい魔力がニライカナイ全土を覆い始めていた。


ルシウス「この敵の数に加えてデカブツのサマエルってのはマズくないか? 守り人の嬢ちゃんや長の兄ちゃんを加えても11人間だぞ!!」


晋作「圧倒的に不利だな……。」


総司「でも、やるしかない!」


目の前に広がる絶望的な光景。それでも、誰一人として戦意を失ってはいなかった。


サマエル「まずはお前たちからだ! この地がお前たちの墓場となるのだ!!」


サマエルの言葉とともに、魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。


地上からは鋭い爪を振りかざした魔物が飛び掛かり、空からは翼を持つ異形が急降下してくる。さらに、別方向からも新たな魔物が押し寄せ、あらゆる角度から容赦なく攻撃を仕掛けてきた。


セレナ「全員、各個撃破!!」


セレナの号令とともに、総司たちはそれぞれ武器を構え、襲い来る魔物たちを迎え撃った。


総司は迫り来る魔物の攻撃を紙一重でかわし、返す刀でその胴を斬り裂く。美雪は氷の魔力を放ち、総司へ飛び掛かろうとした魔物の足元を凍結させ、その動きを封じた。


晋作は銃撃で魔物の急所を正確に撃ち抜き、接近してきた敵には刀を振るって応戦する。茜もまた、梓弓から放った矢で襲い掛かる魔物を次々と射抜いていった。


恒一「イカヅチ様!」


恒一の呼びかけに応じ、黒い鱗に金色の雷模様を走らせた雷霊蛇が、天に向かって咆哮を上げた。


その背には恒一が騎乗しており、襲い来る魔物たちを鋭い眼差しで見据えていた。


イカヅチ「フハハハハ! よかろう! この程度の数で我らを屈服させられると思うなよ!」


恒一「イカヅチ様、右から敵が迫っています!」


イカヅチ「承知!」


イカヅチが大きく身をひるがえす。恒一はその背で体勢を保ちながら、迫り来る魔物へと鋭い視線を向けた。


恒一「霧隠流――風刃!」


恒一が放った斬撃が魔物の群れを切り裂く。直後、イカヅチの全身から凄まじい雷光が迸った。


イカヅチ「我が雷をその身に刻め! まとめて焼き払ってくれるわ!!」


金色の稲妻が空を駆け、恒一の斬撃を逃れた魔物たちを次々と打ち据える。轟音とともに雷撃が炸裂し、異形の軍勢が吹き飛ばされた。


恒一「さすがです、イカヅチ様!」


イカヅチ「当然である! 我の力、存分に頼るがよい!」


恒一「はい! 引き続き、よろしくお願いいたします!」


一方、晴明もまた、すでに戦場で戦っている四神と連携しながら、次々と陰陽術を展開していた。


青龍が大きく身をくねらせ、強烈な風圧と霊力で魔物の群れを吹き飛ばす。朱雀は翼を広げ、燃え盛る炎を上空の魔物たちへと浴びせた。


白虎は大地を蹴って敵の懐へ飛び込み、鋭い爪で魔物を切り裂く。玄武は重厚な霊力の障壁を展開し、仲間たちに向けられた攻撃を受け止めていた。


晴明「青龍、敵の群れを薙ぎ払え! 朱雀、上空の魔物を頼む! 白虎、地上の敵を討て! 玄武は仲間たちを守れ!」


晴明の指示に、四神はそれぞれの力を存分に発揮する。


晴明自身も護符を操りながら術式を描き、四神の攻撃を逃れた魔物には陰陽術を叩き込む。仲間に迫る敵には防御の術を展開し、四神と息の合った連携で魔物たちを迎え撃った。


晴明「この程度で、私たちを倒せると思うなよ!」


しかし、四神の猛攻を受けてもなお、魔物たちは次々と押し寄せてくる。


晴明は表情を引き締め、四神との連携を保ちながら術を放ち続けた。


晴明「油断するな! まだまだ来るぞ!」


千代女もまた、襲い来る魔物たちに向けて身構えていた。


その傍らには、清らかな水の魔力をまとった白い霊蛇がいた。その背には千代女が騎乗しており、ミズチと呼吸を合わせながら戦場を駆けていた。


ミズチ「千代女、右後方から来ているわ! 気をつけて!」


千代女「ありがとう、ミズチ!」


ミズチ「ふふっ、礼なんていらないわ。私と貴方の仲でしょう?」


ミズチが身をひるがえすと、千代女はその背で姿勢を低くし、迫り来る魔物の攻撃をかわした。


千代女「ミズチ、あの一団をお願い!」


ミズチ「ええ、任せて!」


ミズチが尾をしならせると、激しい水流が巻き起こった。渦巻く水が魔物たちの足元を襲い、その体勢を崩していく。


千代女「今よ!」


千代女はミズチの背から素早く印を結び、忍術を放った。水流によって体勢を崩した魔物たちに術が炸裂し、次々と地面へ叩き落とされる。


ミズチ「さあ、動きを止めるわよ! 今のうちにお願い!」


千代女「ええ、任せて!」


千代女はミズチの背から戦況を見極め、ミズチの水流と自身の忍術を巧みに組み合わせて魔物たちを迎え撃った。


しかし、倒れた魔物の向こうから、さらに別の魔物たちが襲い掛かってきた。


ミズチ「もう、次から次へと……! でも、私たちだって負けないわ!」


千代女「ええ! 私たちの力を見せてあげましょう!」


ミズチ「その意気よ、千代女!」


二人は互いの呼吸を合わせ、迫り来る魔物たちへと立ち向かった。


イカヅチ「ハハハハハ! どうした、魔物ども! まだまだこの程度では終わらぬぞ!」


恒一「イカヅチ様、周囲への注意もお願いいたします!」


イカヅチ「分かっておるわ! 我を誰だと思っておる!」


ミズチ「ふふっ、相変わらず威勢がいいわね」


イカヅチ「当然である! 我らの力、存分に振るってくれるわ!!」


恒一と千代女は、それぞれの相棒とともに戦い続ける。


海鈴と海斗もそれぞれの力を振るい、神楽もまた、襲い来る敵を相手に懸命に戦っていた。


クー・フーリンはゲイ・ボルグを振るい、セレナの側面から迫っていた魔物を一掃した。ルシウスもまた、デュランダルを手に敵の攻撃を受け流し、反撃の一撃を叩き込む。


しかし、倒しても倒しても、魔物の数は一向に減らなかった。


新たな転移魔法陣が開くたびに、次々と異形の軍勢が現れる。地上では魔物たちが倒れた同族の死骸を踏み越えて襲い掛かり、空では翼を広げた魔物たちが幾重にも重なり、太陽の光さえ遮り始めていた。


一体を倒せば、別の一体が襲い掛かる。攻撃をかわした直後には、別方向から鋭い爪や牙が迫ってくる。


誰もが自らの身を守りながら、仲間への攻撃にも目を配らなければならなかった。


そして、戦いが続くほどに、魔物の群れはさらに膨れ上がっていく。


サマエル「ククク……ハハハ! 笑いを堪えるのがキツいなこりゃ! 絶対的な数の力になす術がないとはな! お前らがいくら個で強かろうとこの数では到底及ぶまい! 泣いて許しを乞うなら助けてやっても良いぞ? その代わりお前らの魂は吸収し、体は人形の様に使い古してやるがな!! アハハハ……!」


サマエルは、圧倒的な数の魔物に囲まれながらも戦い続ける総司たちを見下ろし、嘲笑を響かせた。


セレナ「誰があんたに! 許しなんて乞うはずない!!!」


セレナは怒りを込めて叫び、迫り来る魔物を二本の槍で斬り払った。


晴明「セレナの言う通りだ!」


晴明もまた陰陽術を放ちながら声を張り上げる。青龍が魔物を吹き飛ばし、朱雀が炎を放つ。白虎は地上を駆け抜け、玄武は仲間たちを襲う攻撃を受け止めていた。


晋作「そんな気色悪い事するくらいなら1匹でも多く葬って果てた方がマシだな! 例えばお前とかなぁ! サマエル!!」


晋作は不敵な笑みを浮かべ、サマエルを睨み据えた。


サマエル「笑わせるな! 俺は不死の力も手に入れた! 死ぬはずがなかろう!」


サマエルの巨体から、禍々しい魔力が噴き上がる。その威圧感は凄まじく、周囲の空気さえも震わせた。


茜「きっと何か手があるはず! 何か! 必ず!」


千代女「そうね! これまでもそうやって切り抜けてきた!」


恒一「その通りです! 必ず何かあるはず!」


絶望的な状況の中でも、茜たちは希望を捨てなかった。


これまでにも、幾度となく強大な敵と対峙してきた。仲間と力を合わせ、知恵を絞り、どれほど困難な状況であっても切り抜けてきたのだ。


今回も、必ず突破口がある。そう信じることだけは、誰にも奪えなかった。


サマエル「完全となった私にそんな綻びがあろうはず無い!」


サマエルは不快そうに声を荒らげた。


美雪「完全なんてあるはず無い! 私たちはあなたと違って仲間を信じてここまで来た! どんなにあなたが強大な力を手に入れようと、自分の味方を巻き添えにしたり、同族を駒としてしか使わないあなたに負けない!」


美雪の言葉には、揺るぎない意志が込められていた。


どれほど強大な力を得ようとも、仲間を信じることなく、他者を利用し、不要になれば切り捨てる。そんなサマエルの在り方を、美雪は決して認めなかった。


総司「俺たちは、パートナーを、仲間を、絆を、これまで出会ってきた全ての人たちから託された思いを信じる! お前なんかに取り込まれてたまるか!」


総司は刀を握り直し、サマエルを真っ直ぐに見据えた。


仲間とともに歩んできた道のり。出会った人々から託された思い。そして、互いを信じることで築いてきた絆。


それらは、どれほどの敵に囲まれようとも、決して失われるものではなかった。


総司たちは再び襲い掛かる魔物たちに向き直り、それぞれの武器を構える。


空も大地も、敵の軍勢に覆われつつあった。


圧倒的な数と、不死の力を得たサマエル。


それでも、彼らの心に宿る絆の光が消えることはなかった。


晴明「とは言ったものの、この敵の数……サマエル本体に届きもしない……」


セレナ「くっ、こうも多いと……!」


晴明たちが次々と襲い掛かる魔物を迎撃する一方で、サマエルの周囲からは依然として無数の敵が大挙して押し寄せていた。


一体を倒しても、別の魔物が間髪入れずに襲い掛かってくる。晴明が操る四神も、セレナたちも、懸命に応戦していたが、敵の数は増える一方だった。


そのとき、突然、空からプロペラの回転音とジェットエンジンの轟音が響き渡った。


美雪「何?」


総司たちが空を見上げる。


雲の上から、一機の輸送機が高度を下げながら姿を現した。機体は戦場上空を通過すると、ゆっくりと降下を続けていく。


そして、その機影の下で――新たな戦いの幕が上がろうとしていた。


――輸送機内――


パイロット「目標値地点まで、残り30!」


輸送機の機内に緊張が走る。


後部ハッチの前に立つ二人の男女。白を基調とした鎧を身にまとった金髪の女性と、その隣に立つ同じような装いの男性が、互いに顔を見合わせた。


カウントダウンが始まる。


パイロット「10……9……」


女性は眼下に広がる戦場を見据え、静かに息を吸い込んだ。


???女性「行くわよ!」


???男性「あぁ、遅くなった分、俺たちが突破口を開かないと!」


パイロット「3……2……1!」


カウントがゼロになった瞬間、二人は開かれた後部ハッチから勢いよく飛び降りた。


二人「レゾナンス!!」


その声が戦場に響き渡る。


次の瞬間、二人の体がまばゆい神聖な光に包まれた。光の中から現れたのは、背中に六枚の翼を広げた二人の戦士。


神々しい光をまといながら、二人は大空へと飛翔した。


サマエル「人間ごときが天使の真似事か? 忌々しい!」


二人の姿を見たサマエルが、苛立たしげに吐き捨てた。


美雪「今、レゾナンスって言った!? ってことは……」


総司「あぁ、間違いない! ジャンヌとラファエルだ!!」


ジャンヌは飛翔しながら、サマエルの巨体へと向かっていく。


その手には、聖カトリーヌ・ド・フィエルボワの剣が握られていた。


ジャンヌ「忌々しいですか……今の貴方から言われると心外ですね! ディバイン・ジャッジメント!!」


ジャンヌが剣を振り下ろす。


刃から放たれた巨大な斬撃が、空を埋め尽くしていた魔物の群れを薙ぎ払った。


その一撃は勢いを失うことなくサマエルの巨体へと直撃し、黒い肉体に深々とした傷を刻み込む。


サマエル「ぐっ……!」


サマエルの巨体がわずかに揺らいだ。


――輸送機内――


パイロット「こちら輸送機α、AX3。空母ロナルド・レーガンに入電。オルレアン隊長と副隊長の降下を確認。オペレーション・メテオ完了を報告。これより帰投する。オペレーション・ヴァルキュリア・プラスおよびオペレーション・クロスガーデンに移行されたし。繰り返す、オペレーション・ヴァルキュリア・プラス及びオペレーション・クロスガーデンに移行されたし」


ロナルド・レーガン管制官「ラジャー! これよりオペレーション・ヴァルキュリア・プラス及びオペレーション・クロスガーデンを開始する!」


――対サマエル戦場――


ジャンヌとラファエルはレゾナンスを解きながら降下し、総司たちの目の前へと着地した。


ジャンヌ「良かった、間に合った!」


美雪「来てくれたの!?」


ジャンヌ「遅れてでも行くって言ったの、忘れた??」


茜「本当に来てくれるとは思わなかったから……」


ラファエル「仲間のためなら、駆けつけるさ」


総司「助かる!!」


ジャンヌとラファエルの合流に、総司たちの表情にも希望が戻る。


しかし、サマエルは何も変わらないとでも言いたげに、嘲笑を浮かべていた。


サマエル「11人が13人になったくらいで、何が変わる? 遅かれ早かれお前達は死ぬだけだ!」


セレナ「そうかしら? さっきのジャンヌの一撃の傷、再生が遅いようだけど?」


サマエル「このくらい大したことではない!」


サマエルは強がるように言い放つが、ジャンヌの斬撃によって刻まれた傷は、これまでの傷と比べても明らかに再生が遅れていた。


セレナはその変化を見逃さなかった。


千代女「貴方達が来たってことは……」


ジャンヌ「はい、我儘を言って先に降下、上陸させてもらいました!」


ラファエル「そろそろ到着する頃だ」


晋作「到着?」


その直後だった。


遠くから、幾つものジェットエンジンの轟音が響き始めた。


音は次第に大きくなり、戦場上空へと近づいてくる。


セレナ「もしかして、これって……!?」


ジャンヌ「えぇ、航空部隊の到着です!」


千代女「やっと許可が降りたのね? でも、タイミング的にはベストよ!」


セレナ「もしかして千代女が言ってた仕込みって、これのこと?」


千代女「そうよ!」


ラファエル「航空部隊だけじゃない。地上部隊もだ!」


茜「地上部隊!?」


ジャンヌとラファエルは、空と海の方角へと視線を向けた。


そこには、戦況を覆すための新たな援軍が迫っていた。


――戦場上空――


神崎鷹也「ヴァルキリー1、目視にて敵飛行個体を確認。各機、ミサイル準備!」


速水蒼真「ヴァルキリー2、了解!」


榊原誠「ヴァルキリー3、了解!」


霧島隼人「ヴァルキリー4、了解!」


如月美咲「ヴァルキリー5、了解! ラプター1も見えてる?」


エミリー・ウォーカー「ラプター1、こちらでも目視にて確認!」


ヴァルキリー隊の各機が敵飛行個体を捉えるなか、ラプター1の後席では、ノア・レッドホークが静かに目を閉じ、両手を組んでいた。


ノア「風の精霊たちよ、敵の位置を我らに示せ!」


その言葉に応じるように、青緑色の光が機内に広がる。


光の中から、鷹を思わせる精霊が姿を現し、機体の外へと飛び立った。


精霊たちは大空を駆け巡り、敵飛行個体の位置や動きを捉えていく。


ノア「エミリー、敵の動きを捉えた。精霊たちがミサイルを導いてくれる!」


エミリー「了解! ヴァルキリーズ各機へ、目標情報を共有する!」


神崎鷹也「目標情報確認!全機、ミサイル発射!」


各機からミサイルが放たれた。


通常の誘導だけでは捉えきれない敵の動きを、ノアの使役する精霊たちが補う。青緑色の光がミサイルに寄り添い、急旋回する敵飛行個体を追尾させていく。


魔物たちは回避行動を取るものの、精霊の導きによって軌道を修正するミサイルから逃れきれない。


次々と爆発が起こり、空を埋め尽くしていた魔物の一角が崩れた。


如月美咲「ヴァルキリー5、敵の一体が編隊から離脱! こちらで仕留める!」


美咲は機体を傾け、編隊から離れていく敵の進路へと回り込んだ。


如月美咲「逃がさないわよ!」


照準が敵を捉えた直後、ミサイルが発射される。


精霊の光に導かれた一撃は、急旋回する敵を正確に追い詰め、直撃とともに撃墜した。


如月美咲「ヴァルキリー5、敵一体撃墜!」


榊原誠「いい腕だ、美咲!」


しかし、その直後だった。


別の敵飛行個体がラプター1へと向き直り、紫黒色の光弾を放った。


エミリー「回避が間に合わない!」


ノア「させるか! 大空の精霊よ、我らを守れ!」


ノアが両手を強く組むと、鷹の翼を思わせる半透明の障壁がラプター1を包み込んだ。


次の瞬間、光弾が障壁に直撃する。


激しい衝撃が機体を揺らし、障壁に亀裂が走った。


ノア「くっ……! 長くは持たない!」


如月美咲「ラプター1、今助ける! 敵の注意をこちらに引きつけるわ!」


美咲は機体を反転させ、敵へと急接近する。


如月美咲「こっちを見なさい!」


敵が美咲の機体へと向き直った隙に、ラプター1は急旋回して攻撃を回避した。


エミリー「助かったわ、美咲!」


如月美咲「お礼は後で! まだ敵が残ってるわよ!」


ノア「……頼もしい仲間たちだな」


青緑色の光が再びラプター1を包み込む。


ヴァルキリー隊とラプター1は、残る敵飛行個体へと機首を向け、攻撃を再開した。


――対サマエル戦場――


空で繰り広げられる激しい空中戦を、総司たちは見上げていた。


海鈴「す、すごい……鉄の塊が空を……」


海斗「……」


晋作「ヴァルキリーズ!? アストラルディアの時以上の連携じゃねぇか!?」


美雪「それにあの一機……精霊の力を使ってた。あの機体に乗ってるのって……」


ジャンヌ「式典会場にいたアメリカの人よ! 確か名前は……」


ラファエル「エミリー・ウォーカー大佐と、その補佐でシャーマンのノア・レッドホーク少佐だ」


茜「アメリカまで!?」


ラファエル「彼らは今回、空母まで出しているんだよ……」


恒一「空母を!?」


ラファエル「あぁ。だから、あの飛行部隊もアストラルディアの時とは違って補給を受けられるってことだ」


空母を拠点とした継続的な航空作戦。


それは、以前の異世界での戦いとは大きく異なる点だった。補給と整備を受けながら戦闘を続けられることは、長期戦において大きな意味を持つ。


そして、空からの援護に続き、地上にも新たな援軍が到着しつつあった。


千代女の目の前に、三人の女性が素早い動きで現れ、膝をついた。


千代女「あなた達も来たの!?」


黒羽「はい、松平様からの命により参上いたしました!」


紅蓮「地上部隊、続々と上陸を果たしております。頭領、我々も参戦の許可を!」


千代女「水織……あなたは松平様の護衛のはずじゃ?」


水織「松平様が、お前も行けと仰せなので……」


千代女「分かったわ! 三人とも、地上部隊の援護! 一人も死者を出さないで! いいわね!」


黒羽「御意!」


紅蓮「よっしゃあ! 千代女様からのお許しが出た!!」


水織「初の実戦ですねー!」


晴明「いきなり、口調と言うか性格変わってない?」


千代女「そうなのよ……。黒羽は別として……紅蓮と水織は…ね…」


総司「と言うか、この人達は?」


千代女「前に話した養成所を設立したでしょう? その中で選りすぐりのくノ一よ!」


水織「皆さん、初めまして〜」


水織は明るい笑顔で、総司たちに向かって手を振った。


黒羽「水織、緊張感のないその言い方…実践よ?」


黒羽は少し頭を抱える。


紅蓮「良いじゃない、そんぐらい」


千代女「紅蓮、あんたもよ……。とりあえず紹介は後! 早く援護に向かって!」


三人は力強く頷くと、それぞれの持ち場へと散開した。


――そのとき、海の方角から大音量の通信が響き渡った。


『全部隊に告ぐ! これは演習ではない! 実戦である! 接敵時は通常弾ではなく、仏魔弾を使用されたし! 繰り返す。通常弾ではなく、仏魔弾を使用されたし!』


恒一「この声は、もしかして……」


海斗「ちょっと良いか? これって侵略じゃない……よな?」


海斗は、次々と姿を現す見慣れない兵器や武装部隊を見回し、警戒するように問いかけた。


その直後、再び通信が響く。


『蓬莱島の住人にお知らせします。我々は国際特殊事象対策機構――通称ISEA、日本・フランス・アメリカ連合です。これは決して貴国への侵略ではありません。貴方の尊厳、権利、人命を守るために参上いたしました。ご安心ください! 決して侵略ではないことをご理解ください!』


晋作「だってよ!」


海斗「な、なら良いが……」


海斗はまだ警戒を解いてはいなかったが、少なくとも彼らがニライカナイの住人を敵として扱っていないことは伝わった。


そのとき、一台の戦車が総司たちのいる場所へと近づいてきた。


戦車から降りてきた人物が、周囲を見回しながら大声で呼びかける。


???「鷹宮一等陸佐は何処に!」


その声を聞いた恒一は、すぐさまイカヅチの背から降りた。


恒一は姿勢を正し、相手に向かって敬礼する。


恒一「は! 私はここに!平川一等陸佐。お言葉ですが私は現在、二等陸佐です」


平川「鷹宮、敬礼はよせ。お前は今この時より一等陸佐に昇進した! つまり俺と同格だ! 同期の親友よ!」


恒一「は???」


突然の話に、恒一は思わず目を見開いた。


平川「今言った通りだ……だから、公の場でもいつも通りで良い!」


恒一「なら遠慮なく……って、どういうことだ? 俺は数ヶ月前に降格してもらったんだぞ!」


平川「詳しいことは知らん! けどな、俺もお前が一等陸佐に戻って良かったと思ってるよ! 同期として、親友としてな!」


恒一「平川……」


思いがけない再会と、突然告げられた昇進。


恒一は困惑しながらも、かつての同期であり親友でもある平川の言葉を真っ直ぐに受け止めた。


平川は表情を引き締めると、改めて恒一に向き直った。


平川「松平将補よりの伝言だ。この地上部隊の指揮をお前が取れとな」


恒一「……俺が、地上部隊の指揮を?」


平川「あぁ。松平将補は、お前に任せると判断したんだ」


恒一は一度、戦場を見渡した。


空ではヴァルキリー隊とラプター1が敵飛行個体と交戦し、地上では総司たちが無数の魔物を相手に戦い続けている。


そして、海からはISEAの地上部隊が次々と上陸していた。


これから始まるのは、単なる援軍の到着ではない。


ニライカナイを蹂躙しようとするサマエルと魔物の軍勢に対し、世界各国の力を結集して挑む総力戦だった。


平川「上陸した地点に拠点を構えた。作戦指揮はそこで執ると良い」


平川の言葉を聞いた恒一は、千代女をはじめとするAX班の仲間たちへと視線を向けた。


千代女「行ってきなさい! 一等陸佐さん。こっちは任せて!」


晋作「昇進、良かったじゃねぇか! 俺たちと一緒だな!」


総司「俺たちにも、もう敬語はなし! てか、階級なんてこれまでも気にしなくて良かったのにね…」


セレナ「本当にね!」


晋作「指揮して俺たちの援護を頼む!」


仲間たちの言葉を聞き、恒一は少し考え込んだ。


そして、平川へと向き直る。


恒一「平川、その指揮は平川がやってくれ!」


平川「いや、待て。松平将補から……」


恒一「確かにそうだが、この場の決定権は俺にあるはずだ。違うか? それに、俺は今AX班のメンバーだ」


平川「確かにそうだが……」


恒一「現時点をもって、平川一等陸佐は拠点にて全体の指揮を執る! 現場の指揮はこちらで行い、細かい状況に対応する!」


平川は一瞬驚いた表情を浮かべたものの、すぐに納得したように頷いた。


平川「分かったよ! 無線で全体の状況を随時共有する。同期二人で協力するぞ! それなら文句あるまい!」


恒一「それで良い! 地上部隊には、周囲の有象無象の敵を相手にしてもらいたい! 俺たちはサマエルに集中する。頼むぞ、平川!」


平川「了解だ! 終わったら久々に一杯やろう! そちらのべっぴんさんも含めてな!」


平川はそう言うと、チラッと千代女に視線を向けた。


千代女「ん?」


不意に視線を向けられた千代女が首を傾げる。


その隣では、恒一がわずかに頬を赤らめ、気まずそうに顔を背けていた。


平川「ちゃんと紹介しろよー? お前がどんな人と一緒になるのか、こっちは楽しみにしてんだからな!」


恒一「分かったから、さっさと行け!」


平川はそんな恒一を見て、楽しそうに微笑んだ。


平川「じゃあな! 死ぬんじゃねぇぞ!」


そう言い残すと、平川は戦車へと乗り込み、上陸地点に設けられた拠点へ向かっていった。


その頃には、地上部隊も各所で戦闘を開始していた。


兵士たちは仏魔弾を装填した銃器や各種兵装を用いて魔物たちを迎撃し、戦車部隊も火力を集中させて敵の群れと交戦している。上空ではヴァルキリー隊が敵飛行個体を相手に戦い続けていた。


ISEAの参戦によって、戦場の様相は少しずつ変わり始めていた。


晋作「良かったのか?」


恒一「はい! これで良いんですよ……。俺はAX班のメンバーであり、望月千代女のパートナーで、霧隠才蔵の子孫ですから。こちらの方が性に合っています」


千代女「恒一君……」


恒一の言葉に、千代女は優しい眼差しを向けた。


美雪「そっか……その気持ち、嬉しいかも! 仲間として!」


総司「だけど、敬語が抜けてないね!」


恒一「慣れるまで、少しかかるかも……」


その言葉に、仲間たちは思わず微笑んだ。


階級や立場が変わっても、恒一がAX班の一員であることに変わりはない。彼自身もまた、その居場所を選び直したのだ。


セレナ「よし! 私たちはサマエルに集中しましょう! ここからが踏ん張りどころ! 必ず勝って、ニライカナイを復興させる! 良いわね!」


晴明「ああ、そのつもりだ!」


晋作「良いぜ!」


茜「うん! 必ず!」


千代女「そうこなくっちゃ!」


恒一「承知!」


クー・フーリン「良いな! その決意!」


ルシウス「お前たち、最高だな! 決して諦めねぇその心意気、共闘してる身としては頼もしいぜ!」


美雪「絶対にこの地を、海鈴ちゃんと海斗君のためにも!」


総司「サマエルなんかに負けてられないね!」


神楽「皆さん……」


海鈴「私も援護します! ね、海斗!」


海斗「あぁ、任せてばかりいられるか!」


二人は決意を込めて頷き合った。


守るべき故郷。そこに暮らす人々。そして、共に戦う仲間たち。


それぞれの思いを胸に、総司たちは再びサマエルへと視線を向ける。


空では航空部隊が敵飛行個体と交戦し、地上ではISEAの部隊が魔物の群れを相手に奮戦していた。


そして、戦場の中心では、六枚の黒翼を広げたサマエルが、今なお圧倒的な魔力を放ち続けている。


決戦は、まだ始まったばかりだった。


サマエル「有象無象が増えたところで、人間如き下等生物が増えたところで、不死の俺に敵うものか!!」


サマエルは六枚の黒翼を大きく広げ、戦場を見下ろしながら嘲笑した。


その言葉を受けても、セレナは一歩も退かなかった。二本の槍を構え、真っ直ぐにサマエルを見据える。


セレナ「なんとでも言うと良いわ! 私たち一人一人の繋がり、決意、想いが……それが大きな波となること、分からせてあげる!」


サマエル「粋がるなよ! 人間風情が!」


サマエルの表情が憤怒に歪む。


次の瞬間、額に生えた三本の角が禍々しい光を放ち始めた。周囲の魔力が急速に吸い寄せられ、三本の角の先端へと凝縮されていく。


その膨大な魔力は、空気を震わせるほどの圧力を生み出していた。


そして――。


サマエル「消し飛べぇぇぇ!!」


三本の角から、凄まじい魔力を帯びた光線が放たれた。


一直線に伸びる閃光が、轟音を伴いながらセレナたちへと迫る。


セレナ「来るわよ!! 全員、構えて!!」


光線は周囲の空気を震わせ、進路上にいた魔物さえも巻き込みながら、圧倒的な速度で彼女たちへと迫っていった。


晴明「玄武!! 悪しき光を堰き止めよ!」


晴明の命を受け、玄武が即座にセレナたちの前へと躍り出た。


次の瞬間、玄武は強大な霊力を解き放ち、堅牢な防御壁を展開する。直後、サマエルの放った光線が激突し、凄まじい轟音とともに周囲の大気が震えた。


玄武の防御壁が光線を受け止める。しかし、その圧倒的な威力を完全には抑えきれず、衝突した光線は弾け飛び、無数の光弾となって周囲へと飛散した。


茜「危ない! 周りの地上部隊の人に当たる!」


飛び散った光弾の一部が、戦闘を続ける地上部隊へと向かっていく。


美雪「させない!」


美雪は即座に両手を掲げ、濃密な魔力を集中させた。光弾の軌道上に、幾重にも重なる分厚い氷の壁が次々と出現する。


飛来した光弾が氷壁に激突し、凄まじい衝撃とともに砕け散った。氷の破片が舞い散る中、美雪はさらに魔力を注ぎ込み、次々と襲い来る光弾を食い止めていく。


しかし、飛散した光弾のすべてを防ぐことはできなかった。


美雪「ダメ! 遠くに飛んだのは防ぎきれない!」


氷壁をすり抜けた光線が、地上部隊の兵士たちへと迫る。


その瞬間だった。


着弾する寸前、地上へ向かっていた光線が次々と爆発を起こし、空中で霧散していった。


爆発の余波が大気を揺らし、残された光の粒子が空中へと消えていく。


千代女「やるじゃない、黒羽たち! 後で褒美ものだわ、これは!」


千代女は、地上部隊を守り切ったくノ一たちの働きに、満足げな笑みを浮かべた。


攻撃を防ぎ切った美雪も、安堵の息をつく。しかし、サマエルは依然として目の前にいる。


総司「今度はこっちからかな? 美雪ちゃん!」


美雪「うん、総司くん!」


セレナ「えぇ、そうね! 晴明!」


晴明「ああ、分かっている!」


晋作「茜! やるぞ!」


茜「うん、晋作!」


千代女「恒一君! やるわよ!!」


恒一「はい! 千代女さん!」


ジャンヌ「ラファエル! 私たちも!」


ラファエル「ああ! 今度はこちらから仕掛けるぞ!」


それぞれの声が響き渡る。


「「「LINK!!」」」


十人の叫びが重なった瞬間、首元のネックレスが一斉に眩い光を放った。


光は胸元から全身へと広がり、十人を包み込む。無数の光粒子が舞い上がり、互いの間を結ぶ光の筋が戦場に描かれていった。


パートナー同士を結ぶ光が強く輝く。


それと同時に、十人全員の意識が繋がっていく。


総司は美雪の想いを、美雪は総司の決意を感じ取る。晋作と茜、千代女と恒一、セレナと晴明、ジャンヌとラファエルも同様だった。


だが、その繋がりはパートナーだけにとどまらない。


仲間たちの思考、感情、そして戦いに懸ける意志までもが、十人の間を駆け巡っていく。


誰が何を考え、どこを狙い、次にどう動くのか。


言葉にしなくても分かる。


互いの心が一つに重なり合い、十人全員が同じ戦場を見渡しているかのような感覚が生まれていた。


そして、パートナー同士の力が共鳴した瞬間――それぞれの身体に、明確な変化が現れた。


総司の足元から、冷気が勢いよく広がった。


「……っ! 美雪ちゃんの氷の力が、いつも以上に俺の中にも流れ込んでくる!」


総司の青い瞳が、氷のような淡い輝きを帯びる。刀を握る右手から冷気が立ち上り、刀身を薄い氷の光が覆っていった。


その周囲には、雪の結晶が次々と生まれては舞い散る。


総司が一歩踏み出すと、足元の地面が瞬く間に凍りついた。彼の身体から溢れる冷気と、もともと備えていた剣技が一つになり、氷をまとった剣士へと変わっていく。


一方、美雪の銀髪は月光を受けたように輝き、瞳には総司の剣士としての鋭い気迫が感じられた。彼女の周囲では氷の結晶が幾重にも舞い、手をかざすだけで空気中の水分が凍りついていく。


美雪は自分の手を見つめ、総司へと微笑んだ。


「総司君の力も、ちゃんと感じるよ……!」


「うん! 美雪ちゃん、どんな相手でも一緒に乗り越えよう!」


二人の間で光が弾け、氷の粒子が美しく舞い上がった。


続いて、晋作と茜の身体から、まばゆい浄化の光が溢れ出す。


二人の背後に、淡く輝く天の羽衣が顕現した。


白を基調とした羽衣は、金色と朱色の光を織り交ぜながら、それぞれの身体を優雅に包み込む。薄絹のような布が風もないのにゆったりと舞い、その縁からは清らかな光の粒子が絶え間なく零れ落ちていた。


晋作の赤い髪筋が光を受けて鮮烈に浮かび上がり、鋭い瞳には金色の輝きが宿る。天の羽衣が肩から腕へと流れるように広がり、彼の全身から浄化の光が溢れ出した。


その光は彼の刀と拳銃にもまとわりつき、武器の輪郭を黄金色に縁取っていく。


「はっ……! こいつはすげぇな! 茜の力が、いつもよりも流れてやがる!」


晋作は不敵に笑い、刀を軽く振るった。


その一振りから放たれた光が、周囲に漂う邪気を焼き払うように消し去っていく。


茜もまた、天の羽衣をまとっていた。


白い小袖と赤い袴の上を、浄化の光が幾重にも流れていく。赤いリボンが光の中で揺れ、彼女の瞳には晋作の持つ強い闘志が宿っていた。


背負った梓弓は神聖な輝きを帯び、弓を引く指先には清らかな光が集まっていく。


「私にも晋作さんの力が……! こんなに温かくて、力強いんだね!」


茜が弓を構えると、光の矢が一本、二本と形を成した。


「これなら、私と晋作さんの力を合わせてこれからも…」


「いいねぇ! 俺たちの力、先ずはサマエルにたっぷり味わわせてやろうぜ!」


二人の天の羽衣が大きく翻り、浄化の光が周囲を照らした。


その光に呼応するように、セレナと晴明の周囲では、五行と陰陽術の力が激しく共鳴し始めた。


セレナの金色の髪がふわりと舞い上がり、深紅と黒を基調とした戦装束の金の装飾が眩く輝く。


彼女の右手に握られたゲイ・ボルグには、木・火・土・金・水――五行それぞれの気配が重なり合い、槍の周囲に五色の光が渦巻いた。


左手の天野逆鉾にも陰陽の気が流れ込み、金色と黒の光が螺旋を描く。


「晴明の陰陽術が、私の力をさらに高めてくれている……! 五行の巡りも、いつも以上に鮮明に感じるわ!」


セレナが槍を構えると、五行の気がそれぞれ異なる輝きを放ちながら、その周囲を巡り始めた。


一方、晴明の白装束には五色の光が浮かび上がり、袖や裾に陰陽道の紋様が次々と現れていく。


彼の手元には、木・火・土・金・水の気が陰陽の力によって整えられ、ルーン文字とマントラが合わさり複雑な紋様を描いていた。


「なるほど……! セレナの二槍の力とルーンの力が、私の陰陽術とここまで響き合うとは!」


晴明が指を動かすと、周囲に浮かんだ式符にルーン文字が重なり一斉に輝く。


その瞬間、戦場で戦っていた四神にも変化が現れた。


青龍の身体を流れる青い光が一層強まり、鱗の隙間から稲妻のような気が走る。朱雀の翼には紅蓮の炎が燃え上がり、その羽ばたきが周囲の魔力を震わせた。


白虎の全身には鋭い白銀の光が走り、爪の周囲に凝縮された気が空間を切り裂く。玄武の甲羅には幾重もの陰陽の紋様が浮かび上がり、その巨体を包む防御の力が厚みを増していった。


四神の力が、晴明の陰陽術を通してセレナのルーンと二本の槍の気とも共鳴している。


それぞれの性質を失うことなく、五行と陰陽、ルーンと槍の巡りが整えられ、四神自身の力もさらに高められていた。


晴明は四神の変化を感じ取り、満足げに笑う。


「これなら四神の力も、今まで以上に引き出せそうだ!」


セレナも力強く頷いた。


「ええ! 私たちの力を合わせれば、サマエルにも必ず届くわ!」


その頃、千代女と恒一の周囲では、二人の忍術がそれぞれ異なる形で高められていた。


千代女の身体を紫色の光が包み込み、忍装束の表面に細かな紋様が浮かび上がる。足元には薄い霧が広がり、彼女の姿が一瞬、残像を残して揺らいだ。


気配を消す技、影を利用した移動、敵の意識を欺く幻惑。


千代女が得意とする忍術の精度が、恒一との繋がりによって一段と高まっていく。


「ふふっ……! 恒一君の力が加わることで、私の術もさらに研ぎ澄まされているわ!」


千代女が身を翻すと、その姿が複数の残像に分かれ、次の瞬間には別の位置に現れた。


対する恒一の身体には、鋭い青白い光が走っていた。


鍛え上げられた身体を包む装備の輪郭が光を帯び、瞳には研ぎ澄まされた忍びの鋭さが宿る。手にした武器の周囲には、霧隠流の術を象徴するような光が渦巻き、彼が構えを取るたびに周囲の空気が震えた。


「千代女さんの技が、俺の霧隠流にも新たな感覚を与えてくれる……! これなら、今まで以上に柔軟な戦い方ができる!」


二人の忍術は同じものへと変化するのではない。


千代女の技は千代女の技として、恒一の霧隠流は霧隠流として、それぞれの特性を保ったまま高め合っていた。


さらに、千代女の側では、ミズチの身体が淡い紫色の光を帯び、水流の中に細かな紋様が浮かび上がった。水の流れはより滑らかに、そして力強くなり、ミズチの周囲に渦巻く水が千代女の動きに合わせて自在に形を変える。


「おおっ! 千代女、いつにも増して力が湧いてくるわ! これなら!」


ミズチが嬉しそうに声を上げた。


その隣では、イカヅチの身体を青白い雷光が駆け巡っていた。


角から背中へ、背中から尾へと稲妻が走り、全身を覆う鱗が鮮烈な輝きを放つ。周囲には雷雲のような魔力が集まり、放電するたびに空気が激しく震えた。


「イカヅチ様! 力がさらに高まっていますね!」


恒一が声をかけると、イカヅチは力強く咆哮した。


「当然だ!お前と千代女との繋がりが深まったのだ! この雷、存分に振るってやろう!」


ミズチの水とイカヅチの雷。


それぞれの力が契約者との繋がりによって高められ、千代女と恒一の術を支えるように戦場へ広がっていった。


そして最後に、ジャンヌとラファエルの身体から、神々しいまでの光が溢れ出した。


二人の背中から、純白の天使の翼が広がる。


二枚、四枚――そして六枚。


左右三枚ずつの翼が大きく開き、無数の光の羽根が周囲へ舞い散った。


ジャンヌの銀に近いブロンドの髪は光を受けて輝き、その姿は聖人を思わせる神聖さを帯びていた。鎧と衣装には白金色の光が走り、手にしたサント・カトリーヌ・ド・フィエルボワの剣から、清らかな光が溢れ出す。


彼女の瞳には揺るぎない信仰と決意が宿り、六枚の翼が羽ばたくたびに、戦場の邪気を払うような光の波が広がった。


「ラファエル……! あなたの力が、今まで以上に強く伝わってくるわ!」


ジャンヌの言葉に、ラファエルは穏やかに頷いた。


彼の背中にも六枚の純白の翼が広がり、鍛え上げられた身体を包む装備が白銀の光を帯びる。大剣を構えるその姿は、まるで天より降り立った守護者のようだった。


「ジャンヌ、俺にも君の信念が伝わっている。どれほど強大な敵が相手でも、守るべきもののために戦う。その想いが、俺たちの力をさらに高めてくれる!」


二人の翼が同時に大きく広がった。


光の羽根が舞い上がり、二人の身体から溢れ出す神聖な力が一つの輝きとなって戦場を照らす。


その姿は、まさに天使を彷彿とさせるものだった。


十人それぞれに現れた変化は、決して同じものではない。


総司と美雪には氷の力が共鳴し、晋作と茜は浄化の光を纏う天の羽衣をまとった。セレナと晴明はルーンと槍、陰陽術の力を高め合い、四神までもがその恩恵を受けている。千代女と恒一は異なる忍術を研ぎ澄まし、ミズチとイカヅチの力もまた増幅された。そして、ジャンヌとラファエルは六枚の天使の翼を広げ、聖なる光をその身に宿した。


それぞれの力は、パートナーとの繋がりによって高められている。


だが、十人を結びつけるものは、それだけではなかった。


全員の思考と意志が繋がり、仲間が何を考え、何をしようとしているのかが瞬時に伝わってくる。


互いの力を奪い合うのではなく、それぞれの力を最大限に引き出し、仲間の力を信じて戦う。


それこそが、LINKの真価だった。


十人を結ぶ光が最後に一度、大きく脈打つ。


そして、眩い輝きが収束した。


目の前には、六枚の黒翼を広げたサマエルが立ちはだかっている。


「有象無象が何人増えようと、不死の俺に敵うものか!!」


サマエルが三本の角に魔力を集めながら、嘲るように言い放った。


しかし、十人の表情に迷いはなかった。


美雪「総司くん、準備はいい?」


総司「ああ、美雪ちゃん!」


晋作「茜、派手にいこうぜ!」


茜「もちろん、晋作さん!」


千代女「恒一君、私たちならやれるわ!」


恒一「うん、これならやれる、千代女さん!」


セレナ「晴明、四神の力も十分に高まっているわね!」


晴明「セレナ! 今なら存分に力を振るえる!」


ジャンヌ「ラファエル、行きましょう!」


ラファエル「ああ、ジャンヌ。皆と共に!」


それぞれの言葉が交わされる。


そして、その想いはパートナーだけでなく、十人全員へと伝わっていた。


十人の意志は一つ。


目の前の不死の怪物を打ち破り、ニライカナイを取り戻す。


その決意を胸に、彼らはサマエルとの決戦へと踏み出した。


海斗「姉さん、俺たちも未来のために!」


海鈴「そうね、海斗! 私たちにも何かできることがあるはず!」


海鈴は潮望の杖を構えた。


すると、二人の胸元にあるネックレスが光り出す。


海鈴「何これ……神楽様にさっき渡されたネックレス?」


海斗「俺のも光ってる……!」


美雪「その光……もしかして!」


神楽「そうです! 互いを想う気持ちと絆が生み出す光です! 二人とも、自分たちの力を信じて下さい!」


海鈴「海斗、みんなを真似てみようか!」


海斗「ああ、やってみるか!」


二人は顔を見合わせ、声を揃えた。


海鈴・海斗「「LINK!!」」


ネックレスから溢れた光が二人の身体を巡り、腕に刻まれた加護の紋様が輝き出す。


風が吹き荒れ、大地が鳴動する。海面から飛沫が舞い上がり、風、大地、海の自然の力が二人に呼応するように集まっていった。


二人の身体は、自然の輝きを帯びていく。


海鈴「何これ……温かい……!」


海斗「ああ……俺たちの加護が共鳴しているんだ!」


その時、海斗の背負っていた海尊ノ剣から声が響いた。


アマミキヨ『海斗よ、この剣を抜け! お前なら必ず使いこなせる!』


海斗「……分かった!」


海斗は決意を込めて柄を握り、海尊ノ剣を引き抜いた。


刃が姿を現した瞬間、青白い光と黄金の輝きが一気に溢れ出す。腕の紋様がさらに強く輝き、海の力が剣へと流れ込んでいった。


海斗「これが……海尊ノ剣の力!」


剣を構える海斗の周囲で、大地が震え、光の紋様が広がっていく。


一方、海鈴の潮望の杖にも強い輝きが宿っていた。風が杖の周囲を渦巻き、水の粒子が光を帯びて舞い踊る。


海鈴「風も、水も大地も……私の声に応えてくれている……!」


二人のネックレスが再び輝き、仲間たちとの繋がりを強めていく。互いの想いだけでなく、総司たちの決意も二人に伝わっていた。


総司「二人とも、すごい力だ……!」


神楽「これが、二人の絆と加護の力……!」


海鈴は潮望の杖を、海斗は海尊ノ剣を構えた。


その姿を見届けた総司たちも、それぞれの武器を握り直す。


全員の意識が繋がり、それぞれの力が戦場を照らしていた。


やがて、全員の視線が一斉にサマエルへと向けられる。


六枚の黒翼を広げた不死の怪物。


その圧倒的な存在を前にしても、誰一人として怯む者はいなかった。


守りたいものがある。取り戻したい未来がある。


仲間たちと共に、そのすべてを懸けて戦う。


それぞれの決意を胸に、彼らはサマエルを見据えた。


67話 完


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