↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/66

64話 思惑が交差する蓬莱編Ⅵ

【神木フバ・中間付近】


爆発によって立ち込めていた煙の向こうを見つめながら、どこからともなく響いていた声が、不気味な笑いを漏らす。


サマエル

「これで……フバの根は切断した!」


「厄介な者も……裏切り者も排除した」


「さぁ……復活しろ、邪神よ……」


「意思を持つ、負のエネルギーの塊よ……」


さらに、不気味な声が神木フバの内部へと響き渡る。


サマエル

「さぁ、出でよ……」


「我に力を!!」


その直後――。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


大地が大きく揺れ始めた。


神木フバそのものが震えるように軋み、周囲の地面からも異様な振動が伝わってくる。


――――――――――


【神木フバ・上空】


その異変を、夜天に乗ってサマエルを追っていたセレナと晴明も見ていた。


そして、二人の視界に先ほどまで総司と美雪がいた場所が入る。


セレナ

「……え?」


セレナの表情が凍りつく。


セレナ

「待って……」


「さっきまで、あそこで美雪と総司が……」


目の前に広がっていたのは、凄まじい爆発によって変わり果てた場所だった。


セレナは動揺を隠せない。


セレナ

「美雪ー!!」


「総司ー!!」


声を張り上げる。


しかし――。


返事はない。


セレナ

「…………」


晴明も、眼下の光景を見つめたまま言葉を失っていた。


晴明

「…………」


セレナ

「晴明……」


「こんな事って……」


「……あの二人が……」


「美雪と総司が……」


声が震え、セレナの頬を涙が伝う。


晴明

「あの二人が跡形もなく死んだとは……俺も思いたくはない」


「だが、セレナ……今は……」


セレナは右手と左手、それぞれに握ったゲイ・ボルグと天野逆鉾を強く握り締める。


セレナ

「……今は……」


「サマエルを必ず見つけ出して、倒すわ……」


そして、一度だけ眼下を見つめる。


セレナ

「弔い合戦だなんて……思いたくはない」


「私だって、二人が生きてるって信じてる」


「だけど……そのつもりで奴を……!」


晴明

「あぁ……」


二人は前方へ視線を戻す。


セレナはSDを操作し、クー・フーリンへ通信を繋ぐ。


セレナ

「今の……見ていたわね」


クー・フーリン

『あぁ』


『このまま降りて、あの二人の捜索をするつもりだ』


セレナ

「いや、捜索は後回し」


「私と晴明、それに貴方の三人でサマエルを探し出して倒すわよ」


クー・フーリン

『……弔い合戦か?』


セレナは一度、深く息を吸う。


セレナ

「……生きてると信じたい」


「本当なら、すぐにでも捜索したい……でも、その前に……」


セレナが言葉を続けるより早く、クー・フーリンが答えた。


クー・フーリン

『分かった』


セレナ

「……ありがとう」


そして、セレナは周囲を見渡す。


先ほど巨大な魔力球が放たれた場所。


その周辺には、未だに濃い魔力の残滓が漂っている。


セレナ

「あの大規模攻撃が放たれた場所……あの辺りにまだいるは……」


一瞬、セレナの視線が止まる。


セレナ

「……いえ」


「見つけたわ」


「奴は……神木フバの中央付近にいる」


その瞬間――。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


再び大地が大きく揺れた。


クー・フーリン

『何だ、この地響きは!?』


セレナ

「おそらく……さっきの奴の攻撃で、完全にフバの根と真鉱石との繋がりがなくなったのよ」


そして、眼下の神木フバを見つめる。


セレナ

「……というか、根ごと真鉱石も消した」


晴明

「……邪神と邪なる者の復活……」


セレナ

「そう考えるのが妥当ね……」


そして、セレナは武器を握り直す。


セレナ

「奴が……サマエルが邪神を取り込む前に!!」


クー・フーリン

『あぁ!』


だが、その直後。


クー・フーリン

『その前に、セレナ。一ついいか?』


セレナ

「何?」


クー・フーリン

『俺たちは命のやり取りをしている』


『相手がどれだけの悪人だろうが、ここは戦場だ』


『それを忘れると……死ぬぞ』


セレナは一瞬、言葉を失う。


そして、強く頷いた。


セレナ

「えぇ……」


「今回のことで、改めて思い知ったわ!」


晴明

「二人とも!」


晴明が夜天を前へ向ける。


晴明

「行くよ!」


セレナ

「えぇ!」


セレナは眼下を見据える。


セレナ

「まずはサマエルを……あの焦土と化した場所に叩き落とす!」


夜天と黒翼は大きく翼を羽ばたかせる。


三人は、神木フバの中央付近へ向けて一気に加速した。


――――――――――


【神木フバ・中央付近】


その頃――。


サマエルは、神木フバの外観を見渡しながら、口元を歪めていた。


サマエル

「もう少しだ……!」


「もう少しで邪神の力が手に入る!」


「そうすれば……アザゼルの序列を俺が超える!!」


不気味な笑い声が、神木フバの内部へと響き渡る。


サマエル

「フフ……ハハハハハ……!」


すると――。


その笑いを遮るように、背後から声が響いた。


クー・フーリン

「よう! さっきぶりだな!!」


サマエル

「……!」


振り向くよりも早く、クー・フーリンがゲイ・ボルグを突き出す。


――ガキィン!!


サマエルは瞬時に魔力障壁を展開し、ゲイ・ボルグの突きを受け止めた。


クー・フーリン

「そんなに笑いが止まらないか?」


「ニヤけてるぞ?」


サマエル

「これでも堪えているんだがな?」


サマエルはそう言うと、片手を掲げる。


その手元に、眩い光が凝縮していく。


やがてそれは一本の槍へと形を変えた。


サマエル

「ならば……これでも喰らえ!」


――ズドォッ!!


光の槍が、クー・フーリンへ向けて放たれる。


クー・フーリンは咄嗟に身をかわそうとするが――。


――ドスッ!!


光の槍が、その身体を貫いた。


サマエル

「……!」


そして次の瞬間――。


――ドォン!!


槍の先端が、大きく爆発する。


爆炎と煙がクー・フーリンの姿を包み込んだ。


サマエル

「光の爆発を起こす槍だ」


「手応えはあった……」


「ケルトの英雄も、この程度か……」


サマエルが勝ち誇ったように笑う。


しかし――。


煙の中から、声が響いた。


クー・フーリン

「誰が……この程度かって?」


サマエル

「……何!?」


煙が晴れていく。


そこに立っていたクー・フーリンの身体には、致命傷どころか大きな傷すらなかった。


サマエル

「……!」


よく見ると、爆発した光の槍の先端は、五芒星の局所結界によって防がれていた。


クー・フーリン

「大方、当たった物を爆発させる槍だろ?」


「お前の槍は、この局所的なバリアに当たっただけなんだよ!」


そう言うと、クー・フーリンはゲイ・ボルグを大きく横薙ぎに振り抜く。


――ブォン!!


サマエル

「……!」


サマエルは咄嗟に空中を移動し、その一撃をかわす。


その直後――。


クー・フーリンは空中で身体を翻し、黒翼の背へと着地した。


クー・フーリン

「槍使いの速さ、見せてやるよ!」


そう言うと、黒翼の背を蹴る。


――ドン!!


一瞬。


クー・フーリンの姿が、サマエルの視界から消える。


次の瞬間には、すでにサマエルの懐へと入り込んでいた。


クー・フーリン

「――そこだ!!」


狙うは心臓。


一直線に、ゲイ・ボルグが突き出される。


――シュッ!!


サマエル

「……!」


サマエルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、咄嗟に光の槍を差し込む。


――ガキィン!!


光の槍によってゲイ・ボルグの軌道を逸らし、紙一重で心臓への直撃をかわした。


サマエル

「仕留め損なったな……」


「英雄と言えど、所詮は半神半人。この程度だ」


しかし――。


背をサマエルへ向けたまま、クー・フーリンは口角を上げる。


不敵な笑み。


クー・フーリン

「悪いな……」


「本命は俺じゃない……」


その言葉と同時に――。


二人の間を割くように、下方から一つの影が跳び上がってきた。


サマエル

「……何!?」


クー・フーリン

「来たぜ……!」


それは――セレナだった。


セレナは二本の槍を頭上で交差させるように構える。


セレナ

「堕天使が天使みたいに空から人を見下ろしてんじゃないわよ!」


「名前の通り――」


「地に堕ちなさい!!」


――ブォンッ!!


セレナは二本の槍をクロスさせたまま、一気に振り抜く。


――ドガァァァン!!


二本の槍がサマエルを直撃する。


サマエル

「ぐっ……!?」


衝撃によってサマエルの体勢が大きく崩れる。


そのまま、為す術もなく地上へ向かって落下していく。


サマエル

「ぐああああああっ!!」


――ドゴォォォン!!


サマエルの身体が地面へと叩きつけられる。


凄まじい衝撃とともに地面が大きく抉れ――。


もうもうと土煙が立ち上った。


【神木フバ・中央付近】


セレナ、晴明、クー・フーリンの三人は、地上へ叩き落とされたサマエルの後を追うように、すぐさま降下する。


――ドンッ!!


三人が地面へ着地した直後、先ほどまで立ち込めていた土煙が徐々に晴れていく。


そして――。


土煙の中から、怒りに満ちたサマエルの声が響き渡った。


サマエル

「地に堕ちろだと!?」


「この天使の俺に向かって……人間風情が!」


「下等な種族が、この高貴な俺に地に堕ちろだと!?」


その言葉を聞いたセレナは、呆れたように息を吐く。


セレナ

「プライドだけは一丁前ね!」


「貴方は今、天使ではない……」


「堕・天使なのよ」


「堕ちた天使……」


セレナは二本の槍を構えたまま、サマエルを真っ直ぐに見据える。


セレナ

「高貴な存在なら、人間を下等な種族だと言う相手に対して、隠れたところから不意打ちで消そうとするかしら?」


「……あ、そういうことをするようになったから堕ちたのね」


「なるほど……納得だわ!」


サマエル

「どこまで俺を愚弄するか!!」


セレナ

「どこまでって?」


「アンタが人間を下等生物と蔑んだのと同じように、愚弄してやるわよ!」


「堕天使さん……」


セレナは一歩前へ踏み出す。


セレナ

「私たち人間と堕天使が同じだってこと、分からせてあげるから覚悟して!」


その横で、クー・フーリンが小声で晴明に話しかける。


クー・フーリン

「……セレナ、キレてねぇか?」


晴明

「うん……」


「……あんな感じのセレナ、初めてだ……」


二人は思わず顔を見合わせる。


しかし、サマエルは怒りに満ちた表情を浮かべながら、六枚の翼を大きく広げた。


サマエル

「俺たちと、お前ら人間が同じだと?」


「笑わせるな!」


「そっちがその気なら……」


「完膚なきまでに、お前らを消し去るのみだ!!」


その言葉に呼応するように――。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


突然、神木フバを中心として、戦場全体の地面から不気味な青黒い炎のようなオーラが立ち上がり始めた。


それは炎のように揺らめきながら、ゆっくりと戦場全体へ広がっていく。


やがて――。


その場にいる者だけではなく、島全体へ響き渡るような声が轟いた。


???

『力が欲しいか?』


『ならば……与えてやろう……』


青黒いオーラが、まるで意思を持っているかのように揺らめく。


その一部はサマエルへ。


そして、もう一方はセレナへ。


二人へと引き寄せられるように、青黒い炎のようなオーラが蠢いていた。


サマエル

「邪神か……」


「ようやくお出ましとは……」


サマエルは両手を広げる。


サマエル

「俺は貴様の力を取り込むために来た!」


「寄越せ……お前の力を!!」


一方、セレナは自分へと近づいてくる青黒いオーラを見つめる。


そして――。


セレナ

「……確かに、力は欲しい!」


晴明とクー・フーリンがセレナを見る。


セレナ

「けどね……」


「扱いきれない力を手にしても、力に取り込まれるだけ……」


「制御できなければ、意味がない」


セレナは、ゆっくりと二人を見る。


セレナ

「その分、私には仲間がいる!」


「自分一人じゃないのよ!」


そして、目の前の青黒いオーラを真っ直ぐに見据える。


セレナ

「私は……仲間を信じる!」


「だから――これ以上、力はいらない」


その言葉を聞いた晴明は、セレナに寄り添うように一歩近くへ立つ。


晴明

「セレナの選択……」


「私は間違っていないと思うよ」


セレナ

「晴明……」


その一方で、サマエルは勝ち誇ったように高らかな笑い声を上げる。


サマエル

「ハハハハハハハ!!」


「その選択……後悔するぞ?」


「この力を制御できないのであれば……」


「やはり人間は、我らからすれば下等生物だ!!」


その瞬間――。


サマエルの周囲に集まっていた青黒いオーラが、一気に彼の身体を包み込んだ。


――ゴォォォォォ……!!


青黒い炎のような力が、サマエルの身体へと流れ込んでいく。


サマエル

「おぉ……!」


「これが……邪神の力!!」


「この力を全て、俺のものにできれば……!」


「アザゼルだけではない!」


「神をも超える……!!」


「力が……身体に満ちてくる……!」


サマエルの身体を包んでいた青黒いオーラが、次第にその内部へと吸い込まれていく。


そして――。


最後の一片まで、すべてがサマエルの身体へと消えた。


――シュゥゥゥ……。


静寂。


次の瞬間――。


サマエルの身体が、青黒く輝き始める。


その背中からは、漆黒の六枚の翼が大きく広がった。


――バサァァァッ!!


六枚の翼が大きく羽ばたく。


サマエルの身体が、ゆっくりと宙へ浮かび上がっていく。


その額には――。


一本の角が生えていた。


セレナ

「……額に角まで生やして……」


「堕天使ですら、なくなってるじゃない……」


「まるで……翼を生やした鬼ね」


サマエル

「どうとでも言うがいい……」


サマエルは宙に浮いたまま、セレナたちを見下ろす。


そして、不気味な笑みを浮かべる。


サマエル

「待たせたな……」


「始めるぞ!!」


――――――――――

【神木フバ内部・邪なる者封印場所】

――――――――――


比嘉真玄

「やっとだ……もうすぐだ……!」


「封印されてから、ざっと1300年……ようやくだ!」


「これで邪神様と共に、このニライカナイから……朝廷を……攻められる!」


比嘉真玄の目の前には、一人の男の身体があった。


その身体は、何本もの木の蔓によって幾重にも縛り付けられている。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


地響きが鳴り響き、周囲の空間が激しく揺れ始めた。


比嘉真玄

「おぉ……!」


「邪神様……蘇我様が降臨なされる……!」


その直後、男の身体を縛り付けていた木の蔓が、次々と枯れ始めた。


蔓は力を失い、乾いた音を立てながら崩れ落ちていく。


比嘉真玄

「もう、この身体には用はない……」


「この男の野心に取り憑いたのは正解だったな」


「取り憑いた時点で、この男は亡き者となったが……それでも役には立った」


比嘉は目の前の男を見下ろし、口元を歪める。


比嘉真玄

「朝廷への復讐を果たした後、この男の魂を探し出し、取り込んでやろうぞ……」


そう言った瞬間――。


比嘉真玄の身体から、黒い影のようなものが抜け出した。


それは、目の前に横たわる男の身体へと移動し、その中へ吸い込まれるように入り込んでいく。


やがて――。


男の身体が、ゆっくりと動き始めた。


邪なる者

「……久々の自分の身体だ」


「1000年を超える時が経つから、どうかと思ったが……」


「やはり、よく馴染む……」


邪なる者は、自らの身体を確かめるように手を握り、ゆっくりと開いた。


そして、顔を上げる。


邪なる者

「次は、この地のアマミキヨの神器を手に入れ……」


「邪神となられた蘇我様と共に……」


言葉を残し、邪なる者はその場を後にした。


目指すは、アマミキヨの神器。


ニライカナイに眠る、さらなる力だった。


――――――――――

【神木フバ内部・頂上付近の通路】

――――――――――


晋作と恒一を先頭に、一行は神木フバの内部を急いで進んでいた。


入り組んだ通路を抜けたかと思えば、次の瞬間には見覚えのない空間へと出る。


その構造は、まるで迷路そのものだった。


晋作

「まるで迷路だ……」


「通路を抜けたと思ったら、よく分からん空間に出る」


海鈴

「神木の内部は、そういう構造になっています」


「なので、容易に奥へは……」


海鈴が言いかけた、その時――。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


突如、激しい地響きが一行を襲った。


茜

「何!? 地震!?」


千代女

「気味の悪い地震ね……」


海斗

「もしかして……封印が解けたんじゃ!?」


その言葉に、一行の表情が一斉に強張る。


まさにその時だった。


晋作、茜、千代女、恒一のSDに通信が入る。


晴明

『聞こえてるか?』


晋作

「あぁ、問題ない」


「こっちは神木の中を進んでる。そっちは?」


「それと……今の地震は何だ?」


晴明

『北西方向の封印の要となっていた真鉱石と、それに結び付いていた神木の根が消された』


海鈴

「それって……」


「封印が解けたんじゃ……」


晴明

『おそらく……』


『そして、もう一つ』


晴明の声が、わずかに沈む。


晴明

『封印を解くための最後の一撃によって、辺り一帯は焦土と化した』


晋作

「そんなにすごい攻撃だったのか!?」


晴明

『ああ……』


『ここからは、心して聞いてくれ』


通信越しに、短い沈黙が流れる。


晴明

『その攻撃に巻き込まれ……ルシウスと交戦中だった総司と美雪が……跡形もなく消えた』


――!!


全員に衝撃が走った。


晋作

「……今、何て言った!?」


晴明

『二度は言わない……』


茜

「う、嘘よね……?」


「あの二人が……敵の攻撃で……?」


海鈴はその場に崩れ落ちた。


海鈴

「総司さん……美雪さん……」


海斗も言葉を失い、ただ立ち尽くしている。


晴明

『サマエルの不意打ちだ……』


『総司、美雪、ルシウスの三人を排除すると同時に、神木の根と真鉱石を消した……』


千代女

「私、その一帯を捜索してくる!」


「あの二人が死んだなんて……そんなはずないわ!」


「きっと、どこかにいるはずよ!」


千代女が駆け出そうとする。


晋作

「待て、千代女!!」


千代女

「なぜ止めるの!?」


晋作

「……簡単に死ぬような奴らじゃねぇ!!」


茜

「晋作さん! だけど……!」


晋作

「だけども何もねぇ!!」


晋作は強く言い切った。


晋作

「……俺は、総司と美雪が生きてるって信じるぜ」


その言葉に、誰も返事をしなかった。


それぞれが胸の内に不安を抱え、何とか現実を受け止めようとしていた。


晋作は、さらに言葉を続ける。


晋作

「新選組最強と言われた剣客、沖田総司が……そう簡単にくたばるわけねぇ」


「進むぞ」


「今は、生きてるって信じて進むしかねぇ!」


一同は息を呑んだ。


やがて晋作は、海鈴へと向き直る。


晋作

「さぁ、海鈴……」


晋作は海鈴の手を取り、立ち上がらせる。


海鈴

「……分かりました」


「私も……生きていると信じて進みます!」


不安は消えない。


それでも、一行は前へ進むことを決意した。


晋作

「晴明、サマエルの方はどうなってる?」


晴明

『これから、セレナと私、それにクー・フーリンの三人で交戦に入る』


晋作

「そっちに加勢したいところだが……現状、それは無理だ」


「そっちは頼んだぞ……」


「そして、お前たちも死ぬなよ?」


晴明

『心配ありがとう!』


『……では』


通信が途絶えた。


茜

(……多分、めちゃくちゃ心配してる)


(怒りもあるだろうし、今の状況を考えて進むって判断したんだろうな……)


(本当は、一目散に現場へ向かってサマエルを倒しに行きたい……)


(それが、すごく伝わってくる……)


その時、千代女が周囲を見渡した。


千代女

「……今、気づいたんだけど」


「ここの通路、何か変わってない?」


海斗

「確かに……」


「何だか、さっきまであった神秘的な感じがなくなったような……」


海鈴

「……まさか!」


海鈴は周囲を見回し、顔色を変えた。


海鈴

「フバの力が……消えた!?」


「早く、邪なる者の封印場所へ!!」


晋作

「いや……根を消された時点で、おそらく復活している」


「今から向かうなら、神器のところだ」


「急ぐぞ……!」


一行は、神秘的な力を失い、通常の通路へと変わった神木フバの内部を駆け抜けていった。


――――――――――

【神木フバ内部・隔離空間】

――――――――――


「……総司くん……」


どこからか、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


総司

(……声がする……)


意識がゆっくりと浮上していく。


総司は、薄っすらと目を開けた。


そこは、周囲に何もない、明るく不思議な空間だった。


総司

(……そうか)


(俺……死んだのか……?)


美雪

「総司くん!」


「総司くん!! 起きて!」


総司

「……美雪ちゃん!?」


総司は慌てて飛び起きた。


総司

「俺たちは……死んだの?」


美雪は首を横に振る。


美雪

「分からない……」


「でも、少なくとも今は生きてるみたい」


すると、少し離れた場所から声がした。


「よう、やっと起きたか……」


総司

「……ルシウス!!」


総司は咄嗟に身構え、刀の柄に手をかける。


ルシウス

「ちょっと待て」


「殺す気なら、お前たちが気絶している間にやってるよ」


「今は全く敵意はない。安心しろ」


総司はしばらくルシウスを警戒していたが、やがて少しだけ緊張を解き、抜き身の刀を鞘へ戻した。


総司

「……ここは?」


美雪

「分からない……」


「目覚めたら、ここにいたの」


ルシウス

「俺も同じだ」


「お前らとの戦闘中だったんだがな……」


「大型の攻撃魔法で襲われたところまでは覚えている」


美雪

「それは私も……」


「ここは一体、何なの……?」


総司

「やっぱり……俺たち、死んだのかな?」


その時――。


空間全体に響き渡るように、穏やかな声が聞こえてきた。


???

「三人とも、お目覚めになりましたね」


「良かった……」


美雪

「……その声は、神楽さん?」


神楽

『はい……』


美雪

「ってことは、ここは……」


神楽

『神木フバの内部に、新たな空間を作りました』


総司

「ってことは……神楽さんが俺たちを助けてくれたってことかな?」


神楽

『はい』


ルシウス

「そりゃありがたいが……一体どうやって?」


神楽

『あなた方は、斬られる前に傷を負った神木フバの根の上にいらっしゃいました』


『根に触れていたため、避難用の空間を作成し、あなた方を迎え入れたのです』


『ですが、その直後……完全にフバの根が切断された衝撃で、気を失ってしまわれました』


ルシウス

「……神木の根を傷つけたのは俺だ」


「なのに、なぜ俺まで助けた?」


神楽

『あなたは、堕天使や邪なる者に従わざるを得なかったのだと認識しております』


『現に、街の人々にあなたは手を掛けていない』


『その理由では、不服ですか?』


ルシウス

「……違いないな」


「最初から、侵略なんて不本意だった……」


「にしても、そこまで見透かされていたとはな」


総司

「神楽さん、外の状況は分かるかな?」


神楽

『……正直にお伝えするのは心苦しいのですが』


『完全に北西方向のフバの根が斬られたことで、邪神と邪なる者が復活してしまいました』


『現在、堕天使が邪神の力を一部取り込み、セレナさんたちと交戦しています』


ルシウス

「……あいつ、やりやがったな」


「目的は不死の邪神を帝国に連れ帰ることだったはずだ」


「だが、自分の本願を優先させやがった……」


美雪

「でも、あなたも一緒に私たちごと殺そうとしたよね?」


ルシウス

「あぁ」


「さっきも言ったように、あいつの思惑は見え見えだった」


「だから、俺は表向き従っていたんだ」


「それに……俺たちが裏でモロクやアザゼルに対抗しようとしていることにも、勘づいていたんだろう」


「タイミング的にも、自分の目的を知った者を始末するつもりだったんだろうさ」


神楽

『サマエルは、あなた方三人がフバの根と共に消滅したと思っているでしょう……』


『現在、セレナさん、晴明さん、クー・フーリンさんが交戦中です』


総司

「……ならさ」


「俺たちを元の場所へ戻すことはできるかな?」


神楽

『はい!』


『最も近い、切断された根の本体側であれば可能です』


ルシウス

「なら話は早い」


「すぐに、そこへ出してもらえるか?」


総司

「……待て」


総司はルシウスを見据え、再び刀の柄に手を触れる。


総司

「お前はどうする気だ?」


「その返答によっては……」


ルシウス

「今更、奴の側に戻ったりはしねぇよ」


「奴は俺を消そうとした……それだけじゃない」


「邪神の力を取り込んだことで、あいつは強大な力を手に入れた」


「大方、他の奴らに手出しさせないためだろうさ」


ルシウスは表情を引き締める。


ルシウス

「だがな……それは帝国の意に反する行為だ」


「騎士団長として言わせてもらう」


「これは裏切り行為だ」


「だから、俺は奴を斬らなきゃならん」


美雪

「……目的は同じってことね!」


総司

「なら、話は早いね!」


神楽

『いいでしょう!』


その言葉とともに、三人の目の前に光が集まり始める。


やがて光は形を変え、奥へと続く一本の通路を作り出した。


神楽

『その通路の先が、最も近い出口となります』


総司たちは頷き、通路へ向かおうとする。


しかし、その時――。


神楽

『最後に、一つだけお伝えいたします』


三人は足を止め、神楽の言葉に耳を傾けた。


神楽

『神木フバの根が斬られたことで、このフバ内部の空間の五分の一が、通常の空間へと変わりました』


『私のいる隔離された空間も、その一つです』


美雪

「……ってことは、そこにある神器が!」


神楽

『はい……お察しの通りです』


『現在、こちらへ向かっている者が一名』


『そして、もう一組……こちらは六名です』


総司

「セレナたちが三人……」


「ってことは、晋作たちじゃないかな?」


「そして、もう一人っていうのは……比嘉?」


神楽

『その通りです』


美雪

「……そっちに行く?」


総司

「いや、晋作たちが向かっているなら任せよう!」


「俺たちは、セレナと合流する」


そして総司は、何もない空間の上方を見上げた。


総司

「神楽さん……伝えたかったのは、それだけ?」


神楽

『……別の意図で伝わったかもしれませんが』


『次に同じようなことが起きても、五分の一の空間が失われた今、今回のようにお助けすることができない可能性があります』


総司

「……それに、比嘉が来たら、俺たちを助ける余裕なんてなくなるってことね」


神楽

『……申し訳ありません』


『こちらからお願いしたことなのに……』


美雪

「神楽さん!」


「私たちを間一髪で助けてくれて、ありがとう!」


「こっちは任せて!」


神楽

『……はい』


『そろそろ、客人が来ます』


『皆さん……ご武運を!』


美雪

「神楽さんもね!」


三人は改めて頷き合い、通路の先へと歩き出した。


――――――――――

【神木フバ内部・隔離空間】

――――――――――


三人との空間通信を終えた神楽は、静かに呼吸を整えた。


そして、ゆっくりと振り返る。


神楽

「……来ましたね」


「比嘉真玄……」


「いえ……邪なる者……藤原広嗣!!」


その名を呼ばれた男は、ゆっくりと口元を歪めた。


藤原広嗣

「……久しいな、神楽」


「このニライカナイの地に戻り、お前の身体から儂が抜け出た時以来か……」


「それにしても……本名で呼ばれるのは、1000年以上ぶりか」


「いまだに知っている者がいようとはな……」


神楽

「貴方は、ニライカナイの地に流れ着いた……強欲で、復讐心に駆られた生霊のような存在」


「なぜ、そこまで人を憎むのです!」


藤原広嗣

「儂を排除した朝廷への恨みよ!」


「このニライカナイの力を手に入れ、邪神となった蘇我入鹿様と共に復讐を果たすためよ!!」


神楽

「……蘇我入鹿」


「ニライカナイへと帰ってくる魂と共に、この地へたどり着いた怨念……」


「そして、邪神と化した者……」


藤原広嗣

「そうだ!」


「この地で邪神・蘇我入鹿様と出会い、復讐を誓った」


「そして、力と不死を手に入れたのだ!」


「全ては、我らの敵への復讐のため……!」


神楽

「……現在の彼の国は、貴方たちの復讐の対象となるのでしょうか?」


「政府を含め、当時とは何もかもが異なります」


藤原広嗣

「それがどうした!」


「蘇我様と儂を排除した上で成り立ってきた国だ!」


「人が変わろうが、同じことよ……!」


藤原広嗣は神楽へと一歩踏み出す。


藤原広嗣

「さぁ、神楽……」


「アマミキヨの神器はどこにある?」


「ここでお前が管理していることは明白だ!」


神楽

「……貴方に渡すわけにはいきません!」


藤原広嗣

「そうか……」


「ならば、仕方あるまい……」


藤原広嗣は片手を掲げた。


すると――。


床一面に、いくつもの魔術陣が浮かび上がる。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


魔術陣から、異形の者たちが次々と姿を現した。


その姿は、悪魔や天使の成れの果てとも思える、おぞましいものだった。


藤原広嗣

「此奴らは、サマエルの働き蟻だ……」


「そこに、邪神・蘇我様の力を乗せるとどうなるか……」


次の瞬間――。


異形の者たちの身体に、青黒い炎がまとわりついた。


炎は全身を覆い尽くし、その身体をさらに異様な姿へと変えていく。


藤原広嗣

「フフフ……」


「強化された、これだけの数を相手に……」


「一人で太刀打ちできるかな?」


藤原広嗣は、不敵な笑みを浮かべた。


藤原広嗣

「……神楽」


強化された異形の者たちが、一斉に神楽へと襲いかかる。


神楽は祭壇と自身を守るように両手を掲げ、神々の加護を発動させた。


すると、神楽の目前に眩い光が広がり、広範囲を覆う巨大な光の壁が形成される。


――ドガガガガガッ!!


異形の者たちが次々と光の壁へ激突する。


しかし、結界は揺らぐことなく、彼らの侵入を阻んでいた。


藤原広嗣

「小賢しい!」


「そのような結界、破れぬと思うてか!!」


その言葉を合図にするかのように、異形の者たちの身体が変化し始めた。


数体の異形が互いに引き寄せられ、次々と融合していく。


身体はみるみるうちに巨大化し、やがて一体の巨大な異形の者へと姿を変えた。


その手には、黒いオーラを放つ光の槍が握られている。


藤原広嗣

「堕天使の身体を媒介に作り上げた、この槍……」


「その一撃を、貴様の結界で防げるかな?」


巨大な異形の者が、黒く輝く槍を神楽へと向ける。


その瞬間、神楽は声を張り上げた。


神楽

「風の神の加護を借り受け、この地の敵を薙ぎ払わん!」


――ゴォォォォォォッ!!


突如として、凄まじい突風が吹き荒れた。


それは竜巻と呼ぶにふさわしいほどの勢いとなり、広大な空間全体を支配していく。


巨大な異形の者もまた、猛烈な風の渦に包み込まれた。


藤原広嗣

「それで防いだつもりか?」


「笑わせるな!」


風の渦の中で、巨大な影がゆらりと揺らめく。


次の瞬間――。


――ヒュンッ!!


黒光りする槍が、風を切り裂きながら一直線に結界へと突き進んだ。


――ガキィィン!!


槍先が光の壁へと激突する。


神楽

「……っ!」


神楽はすぐさま加護を強め、結界の強度を引き上げた。


しかし、槍の一点に集中した凄まじい威力は、光の壁を容赦なく圧迫していく。


――ピシッ……!


結界に、一本の亀裂が走った。


藤原広嗣

「やはり、その程度か!」


「そのまま貴様諸共、串刺しにしてくれるわ!!」


――ピシッ……ピシピシッ……!!


亀裂は瞬く間に広がり、光の壁全体へと走っていく。


神楽は必死に加護を注ぎ込むが、槍の勢いは止まらない。


そして――。


――バリンッ!!


大きなガラスが砕け散るような音とともに、光の結界が崩壊した。


結界を突き破った黒光りする槍が、神楽へと迫る。


神楽

「……これまでですか……」


神楽は静かに目を閉じ、迫り来る槍を受け止めようとした。


――その瞬間。


――ガキィィン!!


神楽の目の前で、金属同士が激突する鋭い音が響き渡った。


神楽

(……え?)


(痛みも……何も感じない?)


(なぜ……?)


神楽はゆっくりと目を開く。


そして、目の前に広がる光景に驚いた。


一人の男が、刀を構えて黒光りする槍を受け止め、その軌道を逸らしていたのだ。


???

「危ねぇ……間一髪だった……」


「怪我はねぇか?」


神楽

「……はい。大丈夫です」


あまりにも突然の出来事に、神楽は拍子抜けしたように答えた。


すると、その背後から聞き覚えのある声が響いた。


海鈴

「神楽様!」


海斗

「晋作さん!」


晋作

「おぅ! 追いついたか!」


晋作は和泉守兼定で槍を払いながら、二人に応じる。


その直後――。


――ヒュンッ!!


一筋の光が、巨大な異形の者へ向かって一直線に飛んでいった。


――ズドンッ!!


光の矢が異形の身体に命中する。


次の瞬間、巨大な異形の者は跡形もなく掻き消えた。


晋作

「茜! いいタイミングだ!」


「お陰で、でかい奴の分のスペースが空いたぜ!」


茜

「一人で先に行くって言って、速度を上げた時はどうしようかと思ったよ!」


晋作

「ははっ、悪い悪い!」


そんなやり取りをしていた、その時だった。


光の結界が失われたことで、周囲に残っていた異形の群れが一斉に襲いかかってくる。


――ザシュッ!!


しかし、そのうちの一体が、瞬く間に斬り伏せられた。


続けて、別の一体も斬撃を受けて霧散する。


目にも留まらぬ速度で、異形の者たちが次々と倒されていった。


千代女

「まったく……」


「こういうふうに先へ行くのは、忍びの仕事なのに……」


そう言いながら、千代女は小太刀と苦無を巧みに操り、敵を切り伏せていく。


恒一

「そうですよ……」


恒一は左手のバトルナイフで敵の急所を突き、その動きを封じる。


同時に右手でホルスターから拳銃を抜き、千代女の背後へ銃口を向けた。


――パンッ!!


放たれた弾丸は一直線に飛び、千代女へ迫っていた異形の者を撃ち抜いた。


千代女

「あら、ありがとう……恒一君」


恒一

「どういたしまして」


晋作

「……これで揃ったな」


――――――――――


神楽は集まった面々を見渡し、口を開いた。


神楽

「海鈴、海斗……」


「そして、貴方が高杉晋作さん」


「弓月茜さん、望月千代女さんに、鷹宮恒一さんですね?」


晋作

「初対面で俺たちのことを知ってるってことは……」


「あんたが神楽様ってことで間違いないな!」


神楽

「えぇ。間一髪のところを助けていただき、ありがとうございます!」


晋作は和泉守兼定を構え直し、敵の方へと切っ先を向けた。


晋作

「比嘉真玄……じゃねぇな」


「大方、邪なる者ってところか……」


神楽

「はい」


「彼は藤原広嗣……邪なる者として封印されていた者です」


「これまで、その名は伏せられてきました」


晋作

「藤原広嗣?」


千代女

「藤原広嗣……」


「奈良時代に朝廷の政治に反発して反乱を起こした貴族ね」


「史実では、反乱の後に処刑されたことになっているけど……」


神楽

「彼は、約1300年前にこの地へ生きたまま流れ着いたのです」


晋作

「へぇ……」


「おっさん、元貴族だったのか」


藤原広嗣

「貴様ら……!」


「一度ならず、二度までも邪魔をするか!!」


海斗

「比嘉真玄はどうした!!」


藤原広嗣

「奴は、本体を手にするまでの仮初めに過ぎん!」


「捨て置いてきたわ!」


「だが、役に立ったのは事実……!」


「褒美として、この地で奴の魂を探し出し、取り込んでやるつもりよ!」


「……貴様らを殺した後にな!!」


晋作

「チッ……外道が……!」


晋作は海斗の方へ顔を向け、小声で尋ねた。


晋作

「海斗、お前……刀は使えるか?」


海斗

「え? 刀……?」


海斗は晋作の手にある和泉守兼定を見つめ、それから自分の手元へ視線を落とした。


海斗

「……多少は?」


晋作

「十分だ!」


晋作はSDを操作し、内部から一本の刀を取り出す。


そして、それを海斗へと差し出した。


晋作

「貸してやる」


「それを使って、自分と姉ちゃん、それに神楽様を守りな!」


海斗

「……いいのか?」


晋作

「お前が持ってる小さいナイフじゃ、心許ないだろ?」


「使え!」


海斗

「……助かる!」


海斗は刀を受け取り、しっかりと柄を握り締めた。


その時、神楽が一同へと声をかける。


神楽

「皆さん、先にお伝えしておきます!」


全員が神楽へと視線を向けた。


神楽

「沖田総司さんと、雪城美雪さんは……生きておられます」


茜

「……えっ!?」


神楽

「先ほど、お二人は目を覚まされました」


「隔離していたフバ内部の空間から、セレナさんたちの救援へ向かわれています」


茜

「本当に!?」


神楽

「えぇ」


「間一髪のところで、フバ内部の空間へ引き込むことができました」


「お二人の命に別状はございません」


海鈴

「……良かった……!」


海鈴の目から、安堵の涙が溢れた。


千代女と恒一も、張り詰めていた肩の力をふっと抜く。


晋作

「やっぱりな!」


「簡単に死ぬはずがねぇって言ったろ?」


海鈴

「……はい!」


海鈴は涙を拭いながら、力強く頷いた。


茜

「心配してたのは、あんたでしょ? 晋作さん……」


「昔の敵は今日の友、って感じだしね!」


晋作

「うるせぇ!」


茜

「ふふっ」


神楽

「沖田さんから、皆さんへの伝言も預かっています」


「『俺たちは外の対処に向かう。こっちは任せた』……と」


晋作はふっと笑みを浮かべた。


晋作

「……あいつに任されたんだ」


「否が応でも、やらなきゃなんねぇな!」


海斗

「信用して託してくれたんだ」


「その想いに、応えないとな!」


海鈴

「私も、必ず……!」


神楽

(……この二人も、成長したわね)


(今の二人になら……)


神楽はそう思いながら、後方にある祭壇へと視線を向けた。


そのわずかな動きを、藤原広嗣は見逃さなかった。


藤原広嗣

「……神器は、そこか」


神楽

「……っ!」


神楽はハッと目を見開いた。


藤原広嗣

「図星だな……」


晋作

「そう簡単に触らせると思うか?」


藤原広嗣

「ならば、力尽くで奪うまでよ!!」


藤原広嗣が手を掲げる。


すると――。


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


床に次々と魔術陣が浮かび上がり、新たな異形の者たちが出現し始めた。


その数は、先ほどまでを上回る。


晋作

「……おいおい、まだ増えるのかよ!」


晋作は和泉守兼定を構え、仲間たちへと声を張り上げた。


晋作

「皆、安心するのはまだ早い!」


「油断すんじゃねぇぞ!!」


一同は再び武器を構え、押し寄せる異形の群れに立ち向かう。


神楽の背後には、アマミキヨの神器が眠る祭壇。


そして、その神器を狙う藤原広嗣。


ニライカナイの未来を懸けた戦いは、まだ終わってはいなかった。


――――――――――


【第64話 完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。