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60話 思惑が交差する蓬莱編Ⅱ

地下通路をしばらく進んだ一行は、やがて前方に差し込む光を見つけた。


海斗が先頭に立ち、出口へ向かって歩いていく。


そして――。


地下道を抜けた瞬間。


一行の目の前に広がった光景に、誰もが言葉を失った。


そこは、先ほどまでの美しい自然に囲まれたニライカナイとは、まるで別世界だった。


建物は無残に崩れ落ち、道路には瓦礫が散乱している。


ところどころで建物の壁が大きく抉られ、黒く焦げた跡が残っていた。


かつて街を行き交っていたと思われる車も、無残な姿で道端に放置されている。


美しかった街並みは、戦場そのものへと変わり果てていた。


晋作は周囲を見回し、低く呟く。


「……こりゃぁ、ひでぇな。」


セレナも険しい表情で街を見つめる。


「街が一方的に破壊されてる……。」


海鈴は胸元で手を握り締めながら、静かに口を開いた。


「はい……。」


「奴らは、結界が弱まってから数日ほど経った頃に攻めてきました。」


「最初は上空から攻撃されて……。」


「大きな爆発が起きました。」


海鈴の声が少し震える。


「その後、さっきの堕天使が……。」


「『神具はどこにある?』と。」


「そう言って、無数の異形の者たちを街へ送り込んだんです。」


晴明が静かに呟く。


「……サマエル。」


晋作は周囲を見渡しながら眉をひそめた。


「堕天使どもは、容赦なさそうだな。」


海斗は複雑な表情を浮かべる。


「それに比べると……騎士風の吸血鬼は、本気で攻めているようには見えなかった。」


総司も頷く。


「ルシウスのことだね。」


「……本意ではないのかもしれない。」


セレナは周囲を見ながら考え込む。


「少なくとも、サマエルと同じ目的で動いているようには見えなかったわね。」


一行は瓦礫の間を歩きながら、さらに街の奥へ進んでいく。


すると、美雪が周囲を見渡して目を輝かせた。


「それにしても……。」


「ここって、かなり破壊されてるけど……。」


「思ってたより、ずっと現代的だね!」


道路脇に残された車。


崩れた建物の中に見えるエレベーター。


そして、ところどころに残る高層建築。


美雪は驚いたように続ける。


「車みたいなものもあるし、ビルだってある。」


「さっきまでいた場所とは、かなり雰囲気が違うね。」


海鈴は小さく頷いた。


「はい。」


「動力は違いますけど……生活そのものは、外の世界と似ていると思います。」


セレナが振り返る。


「動力が違う?」


海鈴は頷いた。


「はい。」


「私たちは、半永久的に使えるエネルギー鉱石を利用しています。」


「それを『真鉱石』と呼んでいます。」


「車などに取り付ければ動力として使えますし、生活に必要な電力も真鉱石から取り出せるんです。」


セレナは驚いたように目を見開く。


「半永久的なエネルギー……。」


「それが本当なら、私たちが抱えているエネルギー問題まで解決できそうね。」


「でも……。」


セレナは街を見回す。


「それだけの技術力があるなら、防衛用の軍備もかなり発達しているんじゃない?」


海鈴は少し困ったように答える。


「確かに、防衛用の装備もあります。」


「ですが……それを扱える人は限られています。」


「それに、ニライカナイでは長い間、大きな争いそのものがありませんでした。」


「だから、武器の絶対数はかなり少ないんです。」


晋作が納得したように頷く。


「なるほどな。」


「治安が良くて平和だった。」


「しかも、ずっと外界から隔離されていた。」


「だから、今回みたいな大規模な侵攻が起きるなんて想定そのものがなかったってことか。」


茜は周囲の惨状を見つめながら、静かに言った。


「治安が良くて平和っていうのは、すごく良いことだよね。」


「私たちだって、それは願ってることだし。」


海斗は少し苦笑する。


「そうだな。」


「だからこそ……今回のことは、誰も想像していなかった。」


歩きながら、美雪がふと尋ねる。


「じゃあ、さっき海斗さんたちが持っていた弓やナイフって……?」


海斗は腰に差していたナイフへ視線を落とす。


「あれか。」


「昔の博物館から、狩猟用のものを失敬した。」


「身を守るためには、少しでも武器が必要だからな。」


「こんなものが敵に通じるとは到底思えないが……。」


「無いよりは、幾分マシだ。」


海斗は少し遠くを見る。


「それに、異形の奴らには多少は通じた。」


晴明は周囲を見渡しながら尋ねた。


「ちなみに……。」


「この街に住んでいた人たちは、今どうしているんです?」


海斗は表情を曇らせる。


「皆、散り散りになって逃げている。」


「街の奥には、昔から神聖な場所として扱われている洞窟がある。」


「今は、そこへ逃げ込んでいる人が大半だ。」


「だが……全員じゃない。」


「他の連中は、それぞれどこかに隠れていると思う。」


海斗は周囲を警戒するように見回す。


「まだ定期的に異形の奴らがこの辺りをうろついているからな。」


「不用意に動けば見つかる。」


海鈴が不安そうに海斗を見る。


「海斗……。」


「長老も、その洞窟にいるの?」


海斗は頷く。


「ああ。」


「そのはずだ。」


「俺たちも、そこから出てきた。」


「出る時には、長老もそこにいた。」


総司は静かに頷いた。


「なら、まずはそこを目指そう。」


海斗も頷く。


「そうなる。」


だが、少し間を置いてから表情を曇らせた。


「ただ……。」


「長老の様子が、少し変なんだ。」


「精神的に……というか。」


「なんて言えばいいのか分からないが、妙に攻撃的になっている。」


セレナは眉をひそめる。


「それは……。」


「ちょっと話がまとまりそうにないわね。」


「ルシウスから聞いた話もあるし……。」


晴明も黙って考え込む。


ニライカナイの街を襲った堕天使たち。


そして、様子がおかしくなったという長老。


さらに、夜に総司たちを呼び出したルシウス。


いくつもの思惑が、この島の中で交差し始めていた。


総司は遠くに見える洞窟の方向へ視線を向ける。


「……まずは長老に会おう。」


「そこで、何が起きているのか確かめる。」


一行は警戒を強めながら、荒廃した街の奥へと歩き始めた。


しばらく歩くと、海斗が前方を指差した。


海斗「……あの奥だ。あそこに洞窟の入り口がある。」


その言葉を遮るように――。


ドォォォン!!


大地を揺らすような轟音が響き渡った。


海鈴「戦闘してる!?」


総司「行こう!!」


一同は頷き、足を速める。


やがて木々の向こうに、洞窟の入り口が見えてきた。


しかし、その前には無数の異形の者たちが群がっている。


海斗「入り口の結界を異形の奴らが攻撃してる!?」


「ここも見つかったのか!?」


「ニライカナイの神聖な結界だから、そう簡単には壊れないだろうけど……!」


異形たちは結界へ何度も攻撃を叩きつけている。


そのたびに、洞窟の入り口を覆う淡い光の膜が大きく揺らめいた。


クー・フーリン「やるしかねぇな。」


「とりあえず、奴らを蹴散らそう!」


その言葉を合図に、総司、晋作、クー・フーリンが一斉に駆け出した。


総司は走りながら菊一文字へ手を掛ける。


次の瞬間――。


キィンッ!


抜刀と同時に、目の前の異形を斬り伏せた。


勢いを殺さず、そのまま次の敵へ踏み込む。


一閃。


さらに一閃。


無駄のない足運びと鋭い剣技で、異形の群れを切り崩していく。


一方、晋作は和泉守兼定を抜き放った。


晋作「おらぁっ!」


斬撃で一体を薙ぎ払う。


その直後、左手のリボルバーを構えた。


バンッ!!


銃弾が別の異形を撃ち抜く。


晋作「まだいるぞ!」


クー・フーリンは槍を大きく振り抜く。


クー・フーリン「はぁっ!!」


一体を貫き、槍を引き抜いた勢いのまま横薙ぎに振るう。


さらに迫ってきた敵を突き、次々と異形を地面へ叩き伏せていく。


クー・フーリン「こんな奴らに、時間を掛けてられるか!」


後方では晴明が印を結んでいた。


晴明「援護する!!」


「オン・シバリエイソワカ!」


数枚の呪符が風を切って飛翔する。


異形へ次々と命中すると、呪符から霊力が迸り、その身体を拘束した。


晴明「今だ!」


晴明の声に反応し、総司が一気に踏み込む。


「――!」


天然理心流の鋭い剣技。


拘束された異形を一刀両断する。


そのまま身体を翻し、別の敵へ斬り込んだ。


晋作「この敵を指揮してる奴はいないみたいだ!」


「全部叩きのめすぞ、総司!」


「遅れんなよ?」


総司「あぁ!」


二人は並んで敵陣へ駆け込んでいく。


海鈴はその光景を見つめながら、声を震わせた。


海鈴「皆さん……。」


「本当に……私たちのために……。」


その表情には、感謝と同時に心配の色が浮かんでいる。


茜はそんな海鈴へ優しく笑いかけた。


茜「海鈴ちゃん。」


「大丈夫だから、安心してね!」


その時――。


総司「美雪ちゃん!」


「数体、そっちへ抜けた!」


美雪「分かった!」


「任せて!」


美雪はすぐに右手を掲げる。


「凍てつく氷よ――。」


周囲の空気が一気に冷え込む。


「貫きなさい!」


右手の前に巨大な氷槍が形成された。


そして――。


美雪が掲げていた腕を勢いよく振り下ろす。


ドシュッ!!


放たれた氷槍が、向かってくる異形を正面から貫いた。


瞬間、氷が身体を覆い始める。


パキパキパキッ――。


異形は一瞬にして全身を凍結させられた。


美雪「まだいる!」


その声にセレナが振り向く。


セレナ「撃ち漏らしたのがまだいるわ!」


セレナは手首のSDへ触れる。


光が弾け、その手に天之逆鉾が現れた。


セレナ「そこ!」


セレナは一気に踏み込み、迫ってきた異形を天之逆鉾で貫く。


そのまま身体を翻し、次の敵へ向き直る。


総司「そっちは任せた!」


美雪「うん!」


しかし、茜が周囲を見回す。


茜「とは言ったものの……。」


「この戦闘音を聞きつけて、さらに四方から敵が寄ってきてる……!」


森の奥。


崩れた建物の陰。


街路の向こう側。


次々と異形の姿が現れていく。


セレナは敵の数を見て、わずかに眉を寄せた。


セレナ「この数……ちょっと多いわね。」


そして晴明へ視線を向ける。


「晴明!」


「一瞬でやるよ!」


「ちょっと合わせなさい!」


晴明「分かった……。」


二人は互いに視線を交わす。


そして――。


セレナ・晴明「LINK!!」


二人の魔力と霊力が一気に高まった。


セレナはSDから、もう一本の槍――ゲイ・ボルグを取り出す。


天之逆鉾とゲイ・ボルグ。


二本の槍を構え、同時に空中へルーンを描いていく。


風がセレナの身体を包み込む。


まるで飛ぶような勢いで、セレナが敵陣へ突っ込んだ。


セレナ「陰陽五行――風!」


「鎌鼬!!」


次の瞬間――。


ゴォォォォッ!!


無数の風の刃が発生し、異形の群れへ一斉に襲い掛かる。


「ギィィィッ!!」


「グアァァッ!!」


異形たちは切り刻まれながら次々と吹き飛ばされていく。


その直後。


晴明が天へ手を掲げた。


晴明「四神招来――。」


「朱雀!!」


巨大な霊力が空へ集まり、そこから朱雀が姿を現す。


朱雀は大きく翼を広げると、セレナを援護するように炎を放った。


ゴォォォォォッ!!


灼熱の炎が異形の群れを包み込む。


セレナはその炎の中を駆け抜けながら、二本の槍を振るった。


セレナ「まだまだよ!」


一体。


二体。


三体。


次々と敵を貫き、薙ぎ倒していく。


その反対側では、総司が迫る異形へ駆け込んだ。


総司「――そこだ!」


菊一文字が閃く。


一刀。


二刀。


三刀。


敵の攻撃を紙一重でかわしながら、最小限の動きで確実に斬り伏せていく。


晋作も和泉守兼定を振り抜く。


晋作「こいつで最後だ!」


斬撃で一体を倒した直後、左手の銃を構える。


バンッ!!


銃声とともに、最後の異形が崩れ落ちた。


クー・フーリンも槍を振り抜き、周囲を見渡す。


クー・フーリン「……どうやら、片付いたか?」


しかし――。


茜が周囲へ視線を巡らせる。


茜「……待って。」


「まだいる。」


遠くから、異形たちの唸り声が響いていた。


だが、その声は次第に遠ざかっていく。


晋作「……逃げたみたいだな。」


総司は刀を構えたまま周囲を警戒する。


総司「今は追わなくていい。」


「まずは洞窟を守ることが先だ。」


晴明も静かに頷く。


晴明「その通りだね。」


海斗はすぐに洞窟の入り口へ駆け寄る。


海斗「結界は……。」


周囲を確認すると、激しい攻撃を受けた結界は大きく揺らいでいたものの、まだ健在だった。


海斗「……大丈夫だ。」


「破られてない。」


海鈴も胸を撫で下ろす。


海鈴「良かった……。」


セレナは周囲を見渡す。


セレナ「ひとまず、ここは守れたわね。」


総司も刀を納める。


総司「ああ。」


「じゃあ、早く中へ入ろう。」


海斗が頷く。


海斗「分かった。」


「ここから先は、俺が案内する。」


海斗は洞窟の入り口に張られた結界へ近づく。


そこには淡い光を放つ巨大な紋様が浮かび上がっていた。


海斗が手をかざすと、結界の一部がゆっくりと開く。


海斗「この結界の内側が、神聖な洞窟だ。」


「俺たちニライカナイの人間なら通れる。」


海鈴が一歩前へ出る。


海鈴「私が先に行きます。」


海鈴が結界へ触れると、淡い光が彼女の身体を包み込んだ。


そのまま、一歩。


結界の向こう側へ進む。


海鈴は振り返る。


海鈴「皆さんも大丈夫です。」


「どうぞ。」


総司が頷く。


総司「よし。」


「行こう。」


一行は海鈴に続き、次々と結界を抜けていく。


最後に晴明が振り返った。


そこには、先ほどまで戦っていた街と、破壊された建物が広がっている。


晴明はしばらくその光景を見つめた。


晴明「……一刻も早く、この島を取り戻さないとね。」


そう呟くと、静かに結界の内側へ入った。


全員が結界を抜けると、そこには外の街とはまるで違う静謐な空間が広がっていた。


洞窟の壁には古い紋様が刻まれ、淡い青白い光を放っている。


海斗が先頭に立つ。


海斗「ここから先は暗い。」


「足元に気を付けてくれ。」


総司たちは頷き、海斗の後へ続く。


海鈴は洞窟の奥を見つめながら、静かに口を開いた。


海鈴「この先に……長老がいるはずです。」


「そして、ニライカナイの人たちも……。」


一行は海斗の案内に従い、神聖な洞窟の奥へと歩き始めた。


程なくして、一行は洞窟の奥にある大きく開けた場所へ出た。


そこは広々とした空間になっており、多くの住民が身を寄せ合って暮らしているようだった。


すると――。


少年「海斗にいちゃんだ!」


別の少年「ほんとだ! 海斗にいちゃんが帰って来た!」


数人の子どもたちが、海斗の姿を見つけるなり駆け寄ってくる。


海斗はしゃがみ込み、子どもたちの顔を見ながら笑った。


海斗「帰って来たぞ〜!」


「みんな、大丈夫だったか?」


少女「うん……。」


「でも、怖かった……。」


「お外から大きな音が聞こえてきて……。」


「海斗にいちゃんたちが、やっつけてくれたの?」


海斗は少し困ったように笑いながら、総司たちへ視線を向ける。


海斗「俺というか……。」


「この人たちと一緒にな。」


美雪は子どもたちへ優しく微笑みかける。


美雪「もう安心していいよ!」


「お姉ちゃんたちが、みんなやっつけたからね!」


少女「本当?」


茜も笑顔で頷く。


茜「うん!」


「また怖い人たちが来ても、お姉ちゃんたちがいるから安心してね!」


子どもたちは顔を見合わせ、少しずつ笑顔を取り戻していく。


しかし――。


「海斗!!」


奥から鋭い怒鳴り声が響いた。


子どもたちは一斉に振り返る。


海斗「……長老。」


その声を聞いた途端、子どもたちは何かを察したように、そそくさとその場から離れていった。


奥から、白髪の混じった髪を整えた六十代ほどの男が、背筋を伸ばして歩いてくる。


年齢を感じさせる落ち着きと、長年この地を導いてきた者特有の威厳。


しかし、その鋭い眼差しには、どこか張り詰めたものがあった。


長老「戻ったのなら、なぜすぐに俺のところへ来ない!」


「それに……そいつらは何だ!」


「外部の者を、なぜここまで招き入れた!」


海斗は慌てて一歩前へ出る。


海斗「長老! この人たちは――。」


長老は海斗の言葉を遮った。


長老「お前は、この地を滅ぼすつもりか!」


「夜の帝国の奴らも、お前が手引きしたんじゃないのか!?」


海斗「なっ……!」


その言葉に、海斗の表情が険しくなる。


すると、美雪の後ろから声がした。


海鈴「長老……。」


「それ以上、海斗を侮辱しないでください!」


長老「……!」


長老は声の主へ振り向く。


そして、その顔に驚きが浮かんだ。


長老「み……海鈴!?」


「どうしてお前がここにいる!?」


「前長老の城間宗玄が、お前を逃がしたはず……!」


海鈴は真っ直ぐ長老を見つめる。


海鈴「外の世界で浜辺に打ち上げられていたところを、この方々に助けていただきました。」


「それだけではありません。」


「この方たちは、私を追ってきた夜の帝国の追手からも守ってくださいました。」


「先ほども、この洞窟の結界を破ろうとしていた大勢の敵を倒してくれたんです。」


「それに……。」


海鈴は少し振り返る。


「さらに後方の森では、千代女さんと恒一さんが警戒にあたってくれています。」


長老は険しい表情を崩さない。


長老「それがどうした!」


「神珠を狙うための狂言かもしれんぞ!」


晴明が静かに一歩前へ出る。


晴明「それはあり得ません。」


長老「……お前は?」


晴明は落ち着いた様子で一礼する。


晴明「失礼。」


「申し遅れました。」


「日本国防衛省AX班所属、陰陽師の安倍晴明と申します。」


長老「陰陽師……。」


「安倍晴明……?」


長老の表情がわずかに変わる。


その名に反応したようにも見えた。


だが、すぐに険しい表情へ戻る。


そこへセレナが続く。


セレナ「私はAX班のリーダー、セレナ・マク・リアス。」


「海鈴ちゃんから救援を求められたことに加えて、世界機構ISEAに対して夜の帝国から宣戦布告があった。」


「だから、私たちはここへ来たの。」


「最初から私たちを信用できないっていうのは分かるわ。」


「でも……そこまで言わなくてもいいんじゃない?」


長老はセレナを鋭く睨む。


長老「外部の者たちは、我々からすれば得体の知れない存在だ。」


「それに、いきなり救援に来たなどと言われても、信じろという方が難しい。」


「神珠についても同じだ。」


「なぜ、わざわざ海鈴をこの地へ戻した!?」


「それがどういうことなのか、分かっているのか!」


セレナ「……あんたねぇ。」


思わず前へ出ようとするセレナ。


しかし、その肩へ茜がそっと手を伸ばした。


茜「セレナさん。」


「今は……。」


静かに首を横へ振る。


セレナは一瞬だけ長老を睨んだ後、渋々引き下がった。


すると晋作が腕を組み、冷静に口を開く。


晋作「そこまで言うなら……。」


「俺たちは俺たちで、夜の帝国に対応する。」


「この島を守ることについてまで、あんたに許可を取る必要はないだろ?」


長老「勝手にしろ!」


「二度とこの洞窟へ足を踏み入れるな!」


「海斗もだ!」


「いいな!」


海斗「長老……。」


長老「出て行け!」


総司は長老をしばらく見つめた後、静かに口を開く。


総司「……行こう。」


皆もそれぞれ頷く。


一行が広間を後にしようとした、その時だった。


長老「待て。」


全員が足を止める。


長老は海鈴へ視線を向けた。


長老「海鈴はここに残れ。」


海鈴「……え?」


「私だけ?」


長老「そうだ。」


「神珠のこともあるからな。」


海鈴は戸惑いながら海斗を見る。


海鈴「でも……。」


「それなら、せめて海斗も――。」


長老「お前だけだ。」


「残りなさい。」


海鈴はしばらく迷った。


しかし、やがて小さく頷く。


海鈴「……はい。」


そう答えると、海鈴は長老のもとへ歩み寄っていく。


総司たちはその様子を見つめながら、洞窟の出口へ向かおうとする。


その時――。


海鈴が長老の顔を見上げた。


「……!」


背筋に、ぞくりと悪寒が走る。


長老の表情は険しいままだった。


だが――。


ほんの一瞬。


その口元に、微かな笑みが浮かんだ。


まるで、何かを待っていた者が、ようやく望んでいたものを手にしたかのように。


海鈴は思わず息を呑む。


しかし、次の瞬間には長老の表情は元に戻っていた。


海鈴「……?」


今のは……何だったのだろう。


そう思いながらも、海鈴は何も言えず、その場に立ち尽くしていた。


――比嘉真玄。


ニライカナイにいくつか存在する街の長、その一人。


一行を見送った海鈴は、その場に立ち尽くしていた。


先ほどまで聞こえていた皆の足音も、やがて遠ざかっていく。


洞窟の広間には、避難している人々の小さな話し声が響いている。


その中で海鈴だけが、先ほど見た真玄の微かな笑みを思い返していた。


――あの笑みは、何だったのだろう。


そんな疑問が胸に残っている。


「海鈴。」


不意に、背後から声がした。


海鈴が振り返る。


そこには真玄が立っていた。


真玄「海鈴。」


「ちょっと来い。」


海鈴「は、はい……。」


海鈴は小さく返事をすると、真玄の後をついて歩き始めた。


二人は人の少ない通路へと入り、しばらく無言のまま歩いていく。


やがて海鈴は、以前から気になっていたことを口にした。


海鈴「……真玄様。」


「宗玄様は……どこに?」


その瞬間、真玄の足が止まった。


海鈴も立ち止まる。


真玄は振り返ると、高圧的な口調で言った。


真玄「今は『長老』と呼べ。」


「皆を守る、この街の長は私だ。」


「いいな?」


海鈴「……。」


海鈴は少し戸惑いながら、小さく頷いた。


海鈴「……分かりました。」


そして、もう一度尋ねる。


海鈴「それで……長老。」


「宗玄様は……?」


真玄はしばらく黙っていた。


やがて、淡々とした口調で答える。


真玄「行方不明だ。」


「……あの時、お前を逃した後からな。」


少し疑問を抱きながら美鈴は答えた。

 「……そう、ですか……。」

 

その言葉を聞いた瞬間――。


海鈴の脳裏に、あの日の光景が鮮明に蘇った。


――――――――――


【海鈴・回想】


街が、音を立てて崩れていく。


ドォォン!!


遠くで爆発が起こり、建物が崩れ落ちる。


煙が空を覆い、人々の悲鳴や怒号が入り混じっていた。


そんな混乱の中、宗玄は海鈴の肩を掴んでいた。


宗玄「海鈴!」


「ここから逃げなさい!」


海鈴「で、でも……!」


「街が……みんなが……!」


涙を流しながら、海鈴は首を横に振る。


しかし宗玄は、そんな海鈴を安心させるように穏やかな笑みを浮かべた。


宗玄「大丈夫だ……。」


「海鈴が無事なら、皆なんとかなる。」


「後のことは、わしに任せて行きなさい。」


海鈴「宗玄様……。」


宗玄「さあ、早く。」


「ここからなら、奴にも……奴らにも見つからずに外へ出られる。」


宗玄はそう言って、地下回廊へ続く水路へ海鈴を誘導した。


そこには、一隻の小さな舟が用意されていた。


宗玄は海鈴を舟へ乗せる。


海鈴「嫌です……!」


「宗玄様も一緒に……!」


宗玄は答えず、ただ優しく海鈴の頭へ手を置いた。


宗玄「……生きなさい。」


その言葉とともに、宗玄は続けて

「海神の加護よ、潮の流れと共にこの者を守り賜え。」


すると水の流れに乗り、小舟がゆっくりと進み始める。


海鈴「宗玄様!」


「宗玄様ぁ!」


その時――。


カツ……。


カツ……。


後方の階段から、誰かが地下回廊へ降りてくる音が聞こえた。


宗玄の表情が変わる。


海鈴「……誰!?」


宗玄は答えない。


ただ、海鈴を乗せた小舟を見つめている。


小舟は水流に乗り、少しずつ宗玄から離れていく。


海鈴「宗玄長老ー!!」


宗玄は最後まで海鈴に微笑みかけていた。


そして――。


ゆっくりと振り返る。


階段を降りてきた人物と向かい合う。


暗闇の中、その姿は海鈴からは見えない。


何かを話している。


やがて、二人の間で言い争っているような声が響き始めた。


しかし、その内容までは聞き取れない。


小舟はさらに速度を上げる。


海鈴「宗玄長老ー!!」


声が地下回廊へ響き渡る。


だが、その声も次第に遠ざかっていく。


小舟はそのまま地下水路を抜け、外へと流れ出ていった。


――――――――――


「海鈴。」


「……聞いているのか、海鈴!」


「!」


真玄の声に、海鈴はハッと我に返った。


海鈴「は、はい!」


真玄「何をボーッとしている。」


海鈴「す、すみません……。」


海鈴はそれ以上何も言わず、真玄の後をついていった。


やがて二人は、いくつもの通路が交差する場所へ差し掛かる。


真玄は右側へ伸びる通路を一瞥すると、足を止めた。


真玄「この右側の通路。」


「この先には入るなよ。」


海鈴は通路の奥を見つめる。


海鈴「……この先には、何があるんですか?」


真玄は海鈴へ視線を向ける。


その目は、先ほどよりも鋭かった。


真玄「お前が知らなくていいことだ。」


「ただ……。」


「皆を守るための物がある。」


「それだけ覚えておけ。」


海鈴「……はい。」


海鈴はそれ以上尋ねることができなかった。


二人は再び歩き始める。


しばらく進んだところで、真玄は一つの部屋の前で立ち止まった。


真玄「この部屋を使うといい。」


「少し休め。」


「また皆の前に出てもらうことになる。」


「これから忙しくなるだろうからな。」


海鈴「……はい。」


海鈴は小さく頭を下げた。


真玄は海鈴を残し、その場を離れていく。


海鈴はその背中を見つめながら、胸の奥に残る違和感を拭えないまま部屋へ入った。


――――――――――


【洞窟・結界外】


洞窟の結界から少し離れた場所。


セレナは腕を組み、納得のいかない表情で洞窟を振り返っていた。


セレナ「あの長老、何なのよ!」


「海鈴ちゃんから聞いてた感じと全然違うじゃない!」


総司「うん……。」


「全然違ったね。」


海斗は申し訳なさそうに頭を下げる。


海斗「すまない……。」


「姉さんが知ってる長老は、前長老の城間宗玄様だ。」


「あの人は……比嘉真玄。」


「簡易的な総意を受けて、長老代理となった人だ。」


「それまではかなり人柄も良くて、子どもたちにも好かれていたんだ。」


「だけど……なぜか長老代理になった途端、人が変わってしまった。」


美雪「その……。」


「前の長老の方は?」


海斗「……行方不明だ。」


「多分……姉さんを外の世界に逃がした直後から。」


その言葉に、海鈴が先ほど話していた宗玄の姿が総司たちの脳裏にも浮かぶ。


すると――。


「ちょっと、その話……気になるわね。」


頭上から声が降ってきた。


全員が一斉に顔を上げる。


次の瞬間――。


サッ!


木の上から二つの影が素早く降りてきた。


晋作「ああ、二人とも戻ってたのか。」


恒一「今し方ですが。」


セレナ「それで?」


「気になるって?」


千代女は周囲へ視線を走らせながら、少し声を落とした。


千代女「女の勘……というか。」


「忍びの勘かしら?」


「なんか、きな臭い感じがするのよね。」


「そっちの方、私が探ってみてもいい?」


晴明は少し考えた後、頷く。


晴明「構わないよ。」


「ただ、私たちは閉め出されたから、中には入れない。」


海斗「それなら……これを使ってくれ。」


海斗は懐から、小さな木彫りの人形を取り出した。


千代女「これは?」


海斗「中へ入るための鍵になる。」


茜「でも……。」


「海斗君も入れなくなったんだよね?」


海斗「ああ。」


「多分、長老の権限で俺は弾かれる仕様に変わる。」


「これは子どもたちが、俺にそっと持たせてくれたんだ。」


「多分……こうなることを事前に分かってたんだろう。」


「普通なら、この鍵も必要ないんだけどな。」


美雪は少し微笑む。


美雪「海斗さん、子どもたちに好かれてるんだね。」


海斗「……ありがたいことにな。」


千代女は木彫りの鍵を受け取る。


千代女「なら、その鍵……ちょっと借りてもいい?」


海斗「いいぞ。」


「持っていきな。」


千代女「ふふっ。」


「ちょっと借りるだけでいいのよ。」


千代女はそう言うと、木彫りの鍵を片手に印を結ぶ。


千代女「――口寄せの術!」


ポンッ!


白い煙が立ち込める。


その中から、二匹の蛇が姿を現した。


千代女「この二匹に中を探ってもらうわ。」


「何かあれば、私の目と耳に繋がるから、外にいても問題ない。」


千代女は二匹の蛇へ木彫りの鍵を近づける。


「それから、この鍵を使って結界の中へ入ると……。」


スッ――。


蛇たちは結界をすり抜け、そのまま洞窟の奥へ消えていった。


千代女「これでよし。」


「もしここが攻められても感知できるから、すぐに分かるわ。」


そして、木彫りの鍵を海斗へ返す。


千代女「それと海斗君。」


「この木彫りの鍵、返すね。」


海斗「あ、ああ……。」


「もういいのか?」


千代女「ちょっと借りるだけって言ったでしょ?」


晋作は感心したように笑う。


晋作「やっぱ忍びがいると、出来ることの幅が広がるなぁ……。」


そして、ふと空を見上げる。


日が傾き始め、辺りには夕暮れの気配が漂っていた。


晋作「そういえば、そろそろ夜になるな。」


「敵さんから言われてたのって、夜じゃなかったか?」


総司「ああ。」


「村外れにある大岩で、って話だった。」


クー・フーリン「村というか……。」


「ここ、街だぞ。」


全員「…………。」


「確かに。」


海斗「村ならあるぞ。」


セレナ「本当に村?」


海斗「ああ。」


「俺たちが来る時に通ってきた地下道。」


「あの入り口の建物は、昔この街がまだ村だった頃の長老の家なんだ。」


「かなり古びて廃れてるけどな。」


「その辺りには、今でも昔ながらの暮らしをしたい人たちが住んでいる。」


「そこから西へ一キロくらい進むと、大岩がある。」


「ルシウスが言っていたのは、そこじゃないのか?」


恒一「確かに。」


「周囲を警戒していた時、人がいるのを確認しました。」


「少し開けた場所に、大きな岩もありましたね。」


千代女「何か祭られているような感じもあったけど……。」


海斗「あの岩は、このニライカナイの結界を維持している真鉱石なんだ。」


「この島には、いくつか存在する。」


「ここからでも見える、一番大きな御柱があるだろ?」


「あれに繋がっているって、言い伝えでは聞いている。」


「なんでも、神々が何かのために施したものらしいんだけど……。」


海斗は困ったように頭を掻く。


海斗「実は俺、歴史とか神話にはあまり興味がなかったから、詳しいことは覚えてないんだ。」


「悪い。」


「姉さんなら説明できたんだと思うけどな……。」


セレナは少し考えた後、頷いた。


セレナ「その真鉱石のところへ行ってみましょう。」


「罠の可能性もある。」


「十分に気をつけながらね。」


総司「え?」


「セレナも行くの?」


セレナ「当然でしょ!」


「ルシアンの目的が分かるかもしれない機会を、みすみす逃すと思ってるの?」


総司「まぁ……。」


「そう言われれば、そうなんだけど……。」


晴明「セレナが行くなら、私も行くよ。」


総司「せ、晴明まで!?」


「……なら、三人で行――。」


その瞬間。


ヒヤッ……。


冷たい空気が総司の首筋を撫でた。


総司「……っ!?」


総司がゆっくり振り返る。


そこには、にっこりと微笑む美雪が立っていた。


総司「み、美雪ちゃん……?」


美雪「何で私を置いていこうとするかなぁ?」


総司「……もしかして、怒ってる?」


美雪「当たり前でしょ!!」


「さっきも言ったじゃない!」


「とにかく、私も行くから!」


総司「……はい。」


その様子を見ていた晋作が、堪えきれずにクスクスと笑う。


晋作「総司……。」


「完全に尻に敷かれてんなぁ。」


「まぁ、行くのは四人に譲るよ。」


「ここの守りに誰もいなくなるわけにはいかないだろ?」


「俺と茜に任せろ。」


そして、総司へ指を向ける。


晋作「ただし、会話はSDで繋げておけよ?」


恒一「私も残ります。」


「守りなら、多い方がいい。」


千代女「なら私も残ろう……。」


一瞬考えた後、千代女は首を横に振った。


千代女「……かと思ったけど。」


「話をしている間の周囲の警戒も必要だし、私もついて行こうかな。」


クー・フーリン「俺は残るとするかね。」


「どうせSDで会話できるんだ。」


「わざわざ行くまでもないだろ。」


総司は全員を見回す。


総司「なら、五人で行こうか。」


そして海斗へ視線を向けた。


総司「海斗さん。」


「道案内、頼めるかな?」


「もし罠だったとしても、ちゃんと君のことは守るから。」


海斗は力強く頷いた。


海斗「分かった!」


「もう夜も暮れ始めてる。」


「行こうか。」


そう言うと、総司、美雪、セレナ、晴明、千代女、そして海斗の六人は歩き始めた。


――――――――――


【大岩へ向かう道中】


夕暮れの光が木々の隙間から差し込み、森の中を長い影が伸びていた。


しばらく歩いていると、美雪が隣を歩く総司へ口を開く。


美雪「ねぇ。」


「なんで私を除け者にしようとするかな?」


総司「そんなつもりはなかったんだけどね。」


「でも……危ない目に遭わせたくないって気持ちはあるよ?」


美雪「そう思ってくれるのは嬉しいけど……。」


「私も同じだよ?」


総司「……そうだね。」


美雪「分かってないでしょ!」


総司「分かってるよ。」


美雪「どうだか……。」


そんな二人を見ていた晴明が、苦笑しながら口を挟む。


晴明「まあまあ、お二人さん。」


「そのくらいで。」


「そろそろ着く頃だよ。」


セレナもニヤけながら二人を見る。


セレナ「そうよ。」


「仲睦まじいのは分かるけどね。」


総司「……。」


美雪「……。」


二人は少し気まずそうに顔を逸らした。


海斗「もう十メートルも進めば、開けた場所に着く。」


「その中心に、大きな真鉱石があるはずだ。」


セレナは表情を引き締める。


セレナ「分かった。」


「ここからは気を引き締めて、警戒しながら行くわよ。」


千代女「私はこの辺から周囲を警戒して回る。」


「何かあったら、すぐ連絡するわ。」


総司「分かった。」


「よし、行こうか。」


五人は大きな真鉱石へ向かって歩き出した。


やがて木々が途切れ、開けた場所が見えてくる。


その中央には――。


巨大な真鉱石がそびえ立っていた。


セレナ「……本当に大きい。」


「それに、祀られているような装飾が施されているわね。」


それは単なる大岩というよりも、地面から突き出した巨大な天然の石柱に近かった。


周囲には古い装飾が施され、ところどころには神聖な紋様が刻まれている。


美雪「ここまで大きいと……。」


「かなりのエネルギーを蓄えてそうだね。」


総司「そうだね……。」


総司は真鉱石を見上げた後、周囲へ視線を巡らせる。


静かだった。


風が木々を揺らす音だけが響いている。


敵の気配はない。


それでも総司は、いつでも刀を抜けるよう警戒を続けていた。


そして――。


時間だけが過ぎていく。


しばらく待っても、誰も現れない。


総司「……場所、ここで合ってたのかな?」


その時――。


「合ってるぞ。」


頭上から声が響いた。


「指定した場所に間違いない。」


全員が一斉に声のした方向を見上げる。


総司「……ルシウス!!」


巨大な真鉱石の窪み。


そこにルシウスが腰掛けていた。


ルシウスはゆっくりと立ち上がる。


「来てくれたってことは……。」


「俺の話に興味を持ってもらったってことでいいのか?」


そして、周囲を見回す。


「それにしても、こんなに大勢で来るとはな。」


「そこの沖田だけ呼ぶつもりだったんだが……。」


ルシウスは一人ずつ顔を確認するように視線を移していく。


「稀代の大陰陽師に……。」


「二槍の閃光姫。」


「それに、スノーホワイトの悪夢まで。」


「どうやら情報の共有は、俺が思っていた以上に出来ているらしい。」


そう言いながら、ルシウスは真鉱石の窪みからストンと地面へ降り立った。


全員が一斉に身構える。


ルシウスは両手を軽く上げる。


「そう身構えなくていい。」


「今は敵意はない。」


総司「……今は、ね。」


晴明「それで?」


「夜の帝国の情報とは?」


ルシウスは静かに一行を見回す。


そして、少しだけ表情を引き締めた。


ルシウス「タイムリミットは約三十分。」


「その中で――。」


「聞きたいことは、全部話してやるよ。」


60話 完



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