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24話 攘夷志士の追憶編Ⅴ

24話 攘夷志士の追憶編Ⅴ

――結界の中枢。


空気が、張り詰める。


歪みきった空間の中。


蘆屋道満と、晴明が向き合う。


沈黙。


だが、それは一瞬。


「……晴明」


道満が、ゆっくりと口を開く。


その声には、濁った愉悦が混じる。


「術比べと行こう」


次の瞬間。


空気が裂ける。


「セレナ」


晴明が、静かに言う。


視線は、道満から外さないまま。


「下がっていてくれ」


短く。


明確な意思。


「ここは――術の領域だ」


セレナが、わずかに笑う。


「……了解」


一歩、下がる。


だが視線は外さない。


完全な待機。


いつでも動ける位置で。


「ほう……一対一か」


道満が、口元を歪める。


「よかろう」


その瞬間。


術が、展開される。


「五行相剋――火行」


「オン・カエン・ソワカ――急急如律令」


符が燃え上がる。


炎が爆ぜる。


渦となり、空間を焼き尽くす。


「……五行相剋――水行」


晴明が応じる。


「オン・スイテン・ソワカ――急急如律令」


水が奔流となり、炎を呑み込む。


蒸気が爆ぜる。


視界が白く染まる。


「五行相生――木行」


道満。


「オン・モクレン・ソワカ――急急如律令」


「これどうじゃ!!」


地が裂ける。


枝が伸びる。


絡みつき、締め上げる。


「……五行相剋――金行」


晴明。


「オン・コンゴウ・ソワカ――急急如律令」


光の刃が生まれる。


枝を断ち切る。


一瞬で。


「くく……」


道満が笑う。


「では――」


「五行相剋――土行」


「オン・ドテン・ソワカ――急急如律令」


重力が落ちる。


空間が沈む。


押し潰す。


逃げ場はない。


「……五行変転」


晴明の指が滑る。


「オン・ゴギョウ・ヘンテン・ソワカ――急急如律令」


術が反転する。


土が水へ。


圧が流れへ。


すべてが逃がされる。


「なに……?」


道満の目が、わずかに見開かれる。


「流れを変えたか」


「流れは読むものだよ」


晴明が静かに言う。


次の瞬間。


同時詠唱。


「五行相剋――火は金を溶かす!」


「オン・カエン・ソワカ――急急如律令!」


「五行相生――水は木を巡らす!」


「オン・スイテン・ソワカ――急急如律令!」


術が激突する。


光と炎、水と木。


五行が渦を巻く。


空間が軋む。


結界が震える。


一歩も譲らない。


純粋な術のぶつかり合い。


「……やはり」


道満が低く笑う。


「貴様との術比べは面白い」


晴明の目が鋭くなる。


「同感だよ」


その瞬間――


空気が、さらに歪む。


「五行相剋――金行」


道満の声が落ちる。


「オン・コンゴウ・ソワカ――急急如律令」


無数の刃。


空間を裂く。


一直線に、晴明へ。


「……五行相剋――火行」


晴明が応じる。


「オン・カエン・ソワカ――急急如律令」


炎が弾ける。


刃と衝突する。


火花のように散る。


だが――


金が、火を裂く。


「……っ」


晴明の目が細くなる。


「なら――」


指が、空間を切る。


「火界呪」


温度が跳ね上がる。


空間が、変わる。


「オン・アビラウンケン・バザラダトバン――急急如律令」


真言が響く。


その瞬間。


炎が、広がる。


ただの火ではない。


“界”。


領域そのものが、焼き尽くす。


結界の内側に、別の支配が重なる。


金の刃が、焼かれる。


溶ける。


崩れる。


「……ほう」


道満の目が、細くなる。


「攻めに転じたか」


口元が歪む。


愉しむように。


「よい……実によい」


炎が揺らぐ。


火界呪の中で。


それでも――決着はつかない。


術はぶつかり続ける。


削り合い。


上書き。


拮抗。


「……」


晴明の目が、わずかに細くなる。


「しぶといね」


「当然よ」


道満が、嗤う。


「この程度で終わると思うたか?」


その瞬間。


空気が、変わる。


温度が、落ちる。


火界呪の中でありながら――


別の“冷え”が混ざる。


「ならば――」


道満の指が、ゆっくりと上がる。


「次は“これ”で行こうかのぉ」


低く。


歪んだ声。


「怨霊よ――縛に応じよ」


空気が、軋む。


「その無念、その呪い――我が式として顕現せよ」


その瞬間。


空間が、裂ける。


引きずり出される。


本来、この世に留まるべきではないものが――


無理やり、形を与えられる。


まず一つ。


現れた瞬間――


空気が、沈む。


人の形をしている。


だが、それは“保っている”だけだ。


輪郭は崩れ。


黒い靄のような怨念が、絶えず溢れ出している。


足元から、空間が歪む。


触れてもいないのに。


周囲の気配が、削れていく。


「……早良親王」


その名を呼んだ瞬間。


“それ”が、ゆっくりと顔を向ける。


目は、ない。


だが――


見られている。


そう錯覚するほどの“圧”。


怒り。


無念。


呪い。


それらが、個ではなく――


“災厄”として、そこに在る。


もう一つ。


地を這うような気配。


形が、定まらない。


獣でも、鳥でもない。


混ざり合い、歪み続ける。


「鵺」


低い唸りが、響く。


耳ではない。


本能に直接、叩き込まれるように。


空気が、重く沈む。


「ほう……」


晴明が、小さく息を吐く。


「厄介なのを持ち出してきたね」


後方。


セレナが、眉をひそめる。


「ちょっと待って」


視線を向ける。


「早良親王と鵺って?」


晴明が、視線を外さず答える。


「早良親王は、無念を抱えたまま祀られた存在だ」


一拍。


「強い怨念を持つ――人の霊だったもの」


そして。


「鵺は、正体不明の怪異」


目が細くなる。


「形を持たない恐怖そのものだ」


短く。


「どちらも……災厄だよ」


セレナが、小さく息を吐く。


「なるほどね」


軽く。


だが、目は鋭い。


「厄介ってレベルじゃないわね」


「だから――」


晴明が、静かに言う。


「こちらも出し惜しみはなしだ」


一歩、踏み出す。


指が、動く。


「来い」


空間が、震える。


光が、広がる。


「十二神将」


武神が、次々と顕現する。


圧倒的な気配。


さらに――


「四神」


東西南北。


気が満ちる。


青龍。


白虎。


朱雀。


玄武。


場の支配が、塗り替わる。


セレナが、静かに笑う。


「いいじゃない」


一歩、前へ。


槍を握る。


晴明が、わずかに振り返る。


「セレナ」


一拍。


「力を借りますよ」


迷いはない。


セレナが、即座に応じる。


「もちろん」


その瞬間。


二人の声が、重なる。


「――LINK」


光が、走る。


繋がる。


重なる。


術が、式が、力が――すべて引き上がる。


空気が、変わる。


対するは――


災厄。


早良親王と、鵺。


道満が、嗤う。


「さあ――」


ゆっくりと、腕を広げる。


「本当の術比べと行こうかのぉ」


激突の直前。


晴明が、一歩踏み出す。


「セレナ」


短く呼ぶ。


視線は、前。


「鵺は任せる」


一拍。


「不定形だ。動きを読むより、圧で制してくれ」


その言葉に。


セレナが、わずかに口元を上げる。


「了解」


槍を構える。


背後。


四神が、呼応するように気配を強める。


青龍がうねる。


白虎が唸る。


朱雀が揺らめく。


玄武が、静かに構える。


「暴れるのは――嫌いじゃないわ」


一歩。


踏み出す。


その瞬間。


鵺の形が、収束する。


歪んでいた輪郭が――


無理やり、“一つ”に固まる。


猿の顔。


歪んだ眼。


人に似ているのに、決定的に違う。


胴は、獣。


膨れた筋肉。


だが、その動きは異様に滑らかだ。


四肢は、虎。


踏み込むたびに、地が軋む。


そして――


尾。


長く、うねる。


蛇。


それだけが、別の意思を持つように蠢いている。


「……なるほどね」


セレナが、低く呟く。


「全部バラバラ」


次の瞬間。


声が、響く。


「――――――」


一つじゃない。


重なっている。


獣の唸り。


人の声。


何かの悲鳴。


混ざり合い、濁った音。


空気が、震える。


本能が、拒絶する。


「……不快ね」


セレナの目が、細くなる。


だが――


止まらない。


「でも――」


槍を構える。


「壊せば同じでしょ」


踏み込む。


同時に――


四神が動く。


青龍が空を裂き。


白虎が地を蹴り。


朱雀が炎を纏い。


玄武が守りを固める。


鵺が、応じる。


身体が歪む。


腕が伸びる。


尾が弾ける。


一つの存在でありながら――


複数の動き。


読めない。


軌道が、定まらない。


空間が、乱れる。


「いいじゃない……!」


セレナが、笑う。


一瞬で距離を詰める。


槍が、走る。


直線。


迷いなし。


だが――


鵺の身体が、ずれる。


避けたのではない。


形が変わった。


次の瞬間。


虎の脚が振り抜かれる。


重い。


速い。


セレナが、槍で受ける。


衝撃。


地面が砕ける。


だが――


止まらない。


「遅い」


低く。


踏み込み直す。


その背後で。


蛇の尾が、襲う。


独立した動き。


死角。


だが――


「見えてるわよ」


白虎が割り込む。


爪が、弾く。


同時に。


青龍が、鵺の胴へ絡みつく。


朱雀の炎が、焼く。


玄武が、足場を固める。


四神と共に。


セレナが、押し込む。


完全な制圧。


次の瞬間。


怨念が、押し寄せる。


波ではない。


“圧”だ。


触れたものを削り取る、濁った流れ。


「――毘羯羅」


晴明の声。


低く。


前に出る。


巨大な盾のように。


怨念を、受け止める。


だが――削られる。


削られながらも、踏みとどまる。


「……耐えろ」


続けて。


「波夷羅」


地を踏み鳴らす。


重圧が、逆に押し返す。


怨念の流れが、わずかに歪む。


その隙に――


「招杜羅」


踏み込む。


一直線。


迷いのない斬撃。


怨念を“切る”。


だが。


切った感触はない。


霧を斬るような手応え。


それでも――


確実に“流れ”は乱れる。


「珊底羅」


次の瞬間。


影のように動く。


怨念の内側へ。


攪乱。


流れを崩す。


分断する。


さらに――


「迷企羅」


静かに、立つ。


揺らがない。


場を、固定する。


精神の軸を保つ。


侵食を、防ぐ。


その中心で――


晴明が、指を構える。


「……なるほど」


低く呟く。


「単なる怨念じゃない」


視線の先。


早良親王。


その存在そのものが、流れを生んでいる。


「なら――」


一歩、踏み込む。


「核ごと抑える」


十二神将が、連動する。


防ぐ。


押し返す。


切る。


乱す。


固定する。


それぞれの役割が、噛み合う。


その中心へ――


晴明が、踏み込んだ。


怨念が、空間を満たしている。


波ではない。


濁流でもない。


ただ、そこに“在る”だけで削り取られる。


そんな圧。


早良親王。


災厄そのものが、静かに佇んでいる。


その中心へ――


晴明は、踏み込んでいた。


「……重い」


低く、息を吐く。


言葉に出したところで、軽くなるものではない。


それでも、言わずにはいられないほどの“質量”。


十二神将が前に出る。


毘羯羅が受け止める。


波夷羅が押し返す。


招杜羅が切り裂く。


珊底羅が流れを乱す。


迷企羅が場を支える。


それでもなお――


削られる。


侵される。


一歩間違えれば、すべてが呑まれる。


「……」


晴明の視線が、わずかに揺れる。


だが、それは迷いではない。


確認。


盤面。


流れ。


そして――


“別の戦場”。


ほんの一瞬。


視線が横へ流れる。


セレナ。


そして、鵺。


「……今だ」


声は小さい。


だが――


迷いはない。


その一言で、すべてが動く。


セレナの瞳が、わずかに細くなる。


理解する。


言葉の意味ではない。


状況の“芯”を。


「任せなさい」


一歩、踏み込む。


その瞬間。


四神が、呼応する。


青龍がうねり、空間を縛る。


白虎が裂き、逃げ道を断つ。


朱雀が燃え、存在を削る。


玄武が固め、動きを止める。


鵺が、歪む。


形を保てない。


猿の顔が軋み、虎の脚が暴れ、蛇の尾が狂う。


それぞれが別の意思を持つかのように――暴走する。


だが。


遅い。


「終わりよ」


静かに。


だが、確信を持って。


槍を構える。


空気が、止まる。


時間が、引き延ばされたように。


すべてが、そこに集束する。


「――貫け」


一瞬の静寂。


そして。


「リーサル・エンブレイス」


突き。


ただの一撃ではない。


“結果”が先に決まる。


因果が固定される。


避けるという選択肢が――消える。


次の瞬間。


鵺の中心を、正確に貫いていた。


音は、遅れてくる。


崩壊。


形が、維持できない。


猿の顔が砕け。


虎の脚がほどけ。


蛇の尾が霧散する。


混ざり合っていた存在が、分解される。


そして――


消える。


完全に。


だが。


セレナは止まらない。


踏み込みの勢い、そのままに。


一直線に。


視線の先。


蘆屋道満。


「まだ終わりじゃないわよ」


左手に宿る、白い光。


天の逆鉾。


神域の力が、静かに脈打つ。


四神が、呼応する。


青龍が空を裂き。


白虎が地を駆け。


朱雀が炎を纏い。


玄武が支え、力を束ねる。


すべてが――一点に収束する。


振るう、その瞬間。


道満の目が見開かれる。


「なに――!」


遅い。


セレナの声が、重く響く。


「――天之逆鉾・四神薙あめのさかほこ・しじんなぎ


横薙。


四神の力を束ねた一閃。


空間ごと、断ち切る。


直撃。


道満の身体が――裂ける。


抵抗する間もなく。


そのまま、光に呑まれる。


消し飛ぶ。


同時に。


早良親王。


災厄が、揺らぐ。


支えを失ったように。


崩れる。


濁った怨念が、ほどけていく。


形を失い。


流れとなり。


やがて――消える。


静寂。


音が、戻る。


空気が、軽くなる。


――終わった。


そう思った、その瞬間。


カラン――


乾いた音。


不自然に、軽い。


視線を落とす。


そこに転がっていたのは――


人形。


小さく。


粗末な作り。


だが。


髪。


人のものが、くくりつけられている。


「……」


空気が、わずかに変わる。


晴明が、静かに言う。


「傀儡だ」


一拍。


「本体と繋げた“身代わり”の術」


視線は、人形へ。


「ダメージだけを受け持たせる」


セレナが、眉をひそめる。


「……ってことは」


一瞬の間。


「つまり――生きてるってことね」


その直後。


「……くく」


笑い声。


どこからともなく。


空間に、こだまする。


低く。


歪んで。


耳ではなく、奥に残るような響き。


姿はない。


気配も、ない。


ただ――


笑いだけが、残る。


「……くく……くくく……」


徐々に遠ざかる。


薄れていく。


それでも、消えきらない。


不快な余韻だけを残して――


ふっと。


完全に消える。


静寂。


残されたのは――


転がる人形と。


何もいない空間だけ。


「……やっぱりね」


晴明が、小さく息を吐く。


「簡単には終わらないか」


セレナが、槍を軽く振る。


「むしろ、ここからでしょ」


その目は、鋭い。


次を、見据えている。


戦いは――


まだ、終わっていない。



――その頃。


結界の奥。


総司たちのいる領域で――


空気が、裂けた。


低く。

重い。


唸り声と同時に――巨体が動く。


踏み込み。

速い。


常識を外れた速度で、鬼が一気に間合いを詰める。


振り下ろされるのは――大剣。


空気ごと叩き潰す、一撃。


「……っ」


総司が、前へ出る。


退かない。

受ける。


――ギィンッ!!


火花が、弾ける。


衝撃が、腕へ食い込む。

骨に、響く。


「……重いね」


低く。


だが、崩れない。


足が、地面を掴む。


そのまま――流す。


刃を滑らせる。

力を逃がす。


そして、一歩。


懐へ。


「――っ!」


横から。


もう一体。


巨大な刀が、薙ぎ払われる。


広い。

速い。


逃げ場を潰す軌道。


だが――


「止めるよ」


静かな声。


その瞬間。


温度が、落ちる。


――ギギギッ!!


刃が、止まる。


腕ごと。

刀ごと。


一瞬で、氷に覆われる。


「……動き、単純」


美雪が、一歩前へ。


足元から、冷気が広がる。


荒れない。

だが――確実に、支配する。


「だから――読める」


指先が、わずかに動く。


――パキン。


氷が、砕ける。


だが、その“止まった一瞬”で十分。


「もらうよ」


踏み込む。


迷いはない。


一閃。


鬼の胴を、斬る。


――だが。


「……っ」


浅い。


手応えが、違う。


肉じゃない。


霧を斬ったような、感触。


鬼が、低く唸る。


「……効かぬか」


重く。

響く声。


次の瞬間。


大剣が、再び振り上げられる。


今度は――速い。

迷いがない。


「なら――!」


振り下ろし。


だが――


「遅いよ」


総司の姿が、消える。


一瞬で。

視界から。


次の瞬間には――死角。


そして。


斬る。


今度は、浅くない。

確実に。


急所へ。


その瞬間。


――すっ……


触れた場所から。


鬼の身体にまとわりついていた“歪み”が、

わずかに、ほどける。


「……?」


動きが、止まる。


ほんの一瞬。

だが、確かに。


総司が、静かに息を吐く。


「やっぱりね」


刃を、構え直す。


視線は、外さない。


「これ――本体じゃない」


その言葉に。


美雪の瞳が、細くなる。


冷気が、さらに静かに広がる。

周囲を、包むように。


「……うん」


小さく。

だが、確信を持って。


「核と繋がってる」


一拍。


「切り離さない限り――終わらない」


鬼が、動く。


先ほどより、荒く。

だが――強引に。


踏み込み。

大剣が、振り下ろされる。


同時に。


もう一体も、動く。


挟み込むように。

逃げ場を、潰す。


「……いいね」


総司が、わずかに笑う。


ほんの、僅かに。


「分かりやすい」


踏み込む。


刃を合わせる。

弾く。

流す。


最小限で、すべてを捌く。


その間にも。


冷気が、場を支配していく。


足元。

空気。

呼吸。


すべてが――整えられていく。


「……行くよ」


短く。

だが、確かに。


「うん」


即答。

迷いは、ない。


その瞬間。


空気が、変わる。


呼吸が、揃う。


視線は交わさない。

だが――ズレはない。


「まとめて――」


総司が、踏み込む。


「断つ」


美雪の指先が、動く。


冷気が、一気に収束する。


鬼が、吠える。


空気が、沈んでいた。


重い。


肺に入るたび、内側をざらつかせるような違和感。


目の前では、二体の鬼が同時に動く。


踏み込みだけで地面が軋む。

質量が、そのまま圧へと変わる。


酒呑童子の大剣が振り上がる。

茨木童子の巨大な刀が、低く構えられる。


挟み込む。


逃げ場を潰す、完成された軌道。


だが――


総司は、動かなかった。


ただ、わずかに息を吐く。


「……美雪ちゃん」


短く。


それだけ。


けれど、その一言で十分だった。


美雪の瞳が、静かに細くなる。


次の瞬間。


二人の呼吸が、ぴたりと重なった。


「――LINK」


同時に。


迷いなく。


声が重なる。


その瞬間。


光が、弾けた。


胸元で揺れていた対の輝きが、一気に増幅する。


繋がる。


感覚が。


視界が。


距離が。


言葉を介さずとも、すべてが理解できる領域。


総司の刀に――浮かび上がる。


淡い、雪の紋様。


白く。


静かで。


だが確かな力を宿した光。


「……全部、見える」


美雪が、小さく呟く。


それは予測ではない。


確定した未来。


鬼の動きが、“すでに終わった軌道”として視える。


次の瞬間。


空気が、凍る。


広がるのではなく。


収束する。


必要な場所だけに。


正確に。


無駄なく。


「――そこ」


声が落ちると同時に。


鬼の足元が、一瞬で凍結する。


だが。


止まらない。


無理やり、砕こうとする。


その圧が、さらに強くなる。


「……逃がさない」


美雪の声が、静かに沈む。


冷気が、さらに深く侵入する。


足から。


脚へ。


胴へ。


内部へ。


芯へ。


「――凍れ」


その一言で。


完全に、止まった。


二体の鬼が、静止する。


外側だけではない。


内側まで凍りついた、完全停止。


その刹那。


「……今」


総司が、踏み込む。


速い。


だがそれ以上に、無駄がない。


整えられた間合い。


共有された感覚。


ズレは、存在しない。


刃が、閃く。


一体。


もう一体。


交差するように。


すれ違いざまに。


斬撃が通る。


そのまま――抜ける。


止まらない。


振り返らない。


背後で。


氷が、砕ける。


そして。


斬られた鬼の身体が、崩れる。


だが――


終わらない。


肉が、蠢く。


黒が、集まり直す。


骨が、再び組み上がる。


再生。


何事もなかったかのように。


「……再生してる」


美雪の声が、低く落ちる。


総司は前を見たまま、小さく息を吐く。


「……やっぱり」


視線の先。


そこにあるのは――


黒く脈打つ塊。


空間そのものを歪ませるような存在。


「核、だね」


「うん」


即答。


迷いはない。


「これを断たないと、終わらない」


二人が、同時に踏み出す。


距離は、もうない。


「――ここだ」


総司が刀を構える。


刃の雪紋が、わずかに強く輝く。


冷気が、収束する。


その瞬間――


空間が、歪む。


「……間に合ったか」


低い声。


粘つくような気配。


核の前に、立つ影。


蘆屋道満。


ゆっくりと、笑う。


「惜しいのぉ」


手を、核へ伸ばす。


「あと一歩で届いておった」


だが――


「遅い」


総司が踏み込む。


一直線。


迷いなく。


「――行く」


呼吸が、揃う。


「雪華――」


間合い、ゼロ。


「――三段突き」


一突。


二突。


三突。


すべてを重ねた、一線。


核ごと。


道満ごと。


貫く。


確かな手応え。


だが――


「……ほぅ」


道満が、笑う。


その身体が、歪む。


輪郭が、ほどける。


「見事」


その言葉を残して。


核ごと、消えた。


完全に。


何も残さず。


「……っ」


総司の動きが、わずかに止まる。


背後で。


再生していた鬼の気配が、崩れる。


維持できない。


形が、解ける。


そして――


消えた。


完全に。


静寂。


圧が、消える。


空気が、軽くなる。


「……逃げられたね」


総司が、静かに言う。


美雪が、小さく頷く。


「……でも」


視線は、前。


揺らがない。


「終わりじゃない」


総司が、わずかに笑う。


「ああ」


その瞬間。


空気が、揺れた。


触れられたような感覚。


見えない何かが、そこにある。


「――今回は、この程度にしておこう」


声が、落ちる。


空間そのものから、滲み出るように。


蘆屋道満。


姿はない。


だが、確実に“いる”。


「沖田総司」


「雪城美雪」


一拍。


「安倍晴明」


「……セレナ・マク・リアス」


「高杉晋作」


「弓月茜」


名を、なぞる。


見えていないはずなのに。


すべてを把握している声。


「愉しませてもらった」


低く、笑う気配。


「やはり、この時代は面白い」


空気が、わずかに冷える。


異質な、寒さ。


「……次が、楽しみでならぬ」


その一言に、圧が増す。


試されているような重さ。


「それまで――」


間。


「せいぜい、生き延びてみせよ」


その言葉を最後に。


気配が――消えた。


完全に。


残滓すらなく。


静寂だけが残る。


美雪が、ゆっくり息を吐く。


「……消えた」


総司が、静かに頷く。


「……完全に、引いたね」


一拍。


美雪が、前を見据える。


「……でも」


総司が、続ける。


「終わってない」


短く。


確かに。


そして、わずかに笑う。


「むしろ――ここからだ」


静寂の中。


その言葉だけが、はっきりと残った。


静寂が、わずかに揺れた。


遠くから――気配が近づいてくる。


一直線に。


迷いのない動き。


「……来るね」


総司が、小さく呟く。


次の瞬間。


空間の奥から、二つの影が飛び込んできた。


「総司!」


「美雪!」


晴明と、セレナ。


ほぼ同時に、足を止める。


周囲を見渡す。


そして――


「……妙ね」


セレナが、静かに口を開く。


眉をわずかに寄せる。


「さっきまで感じていた術の気配が……綺麗に消えてる」


晴明の目が、細くなる。


「……消えた、というより」


一拍。


「引いたな」


その言葉に、総司が短く答える。


「逃げられた」


視線は前のまま。


「核ごと、道満が回収した」


セレナが、わずかに息を吐く。


肩の力を抜くように。


「……あと一歩、だったのに」


悔しさはある。


だが、それ以上に冷静。


「徹底してるわね。あの男」


晴明が、静かに頷く。


「無駄な消耗はしない主義だ」


だが――


その瞬間。


空気が、軋んだ。


「――っ」


晴明の視線が鋭く跳ねる。


空間そのものが、歪む。


「まずい」


即座に。


「結界が崩れる」


――ビキッ


何かが、ひび割れる。


景色が、揺らぐ。


層が、剥がれ始める。


「……なるほど」


セレナが、小さく呟く。


「核を持っていかれた時点で、維持できないってわけね」


状況を即座に理解する。


「長く持たない」


晴明が言い切る。


「外に出るぞ」


総司が、頷く。


「出口は?」


「入ってきた位置だ」


迷いなし。


「構造が崩れる前に戻る」


次の瞬間。


四人が、同時に走り出す。


一直線。


背後で――


結界が、崩れていく。


空間が裂ける。


層が剥がれる。


飲み込むように。


「急ぎましょう」


セレナが、低く言う。


焦りではない。


判断としての速さ。


美雪が、足元に冷気を走らせる。


足場を固定する。


総司が、その上を駆ける。


セレナが、わずかに後方へ視線を向ける。


「……完全に崩れてるわね」


静かに。


状況を確認するように。


「――あそこだ!」


総司が、前方を指す。


歪んだ出口。


わずかに残った“繋ぎ目”。


全員が、一気に踏み込む。


最後の加速。


その瞬間。


背後が、崩れ落ちる。


四人は――


その直前で、外へ飛び出した。


光が、弾ける。


次の瞬間。


空気が変わる。


重さが消える。


歪みが消える。


――外。


地面に、足が戻る。


そして。


背後の結界が――完全に消滅した。


音もなく。


跡形もなく。


ただ、消える。


セレナが、ゆっくりと振り返る。


一拍。


そして、静かに言う。


「……逃げられたけど」


わずかに口元が歪む。


余裕のある、静かな笑み。


「次は、逃がさない」


――同刻、結界の外。


空気が、重い。


だがそれは、先ほどまでの“歪んだ圧”とは違う。


削ぎ落とされ、研ぎ澄まされた重さ。


ぶつかり合う二つの気配だけが、この場を支配している。


その中心。


晋作と久坂が、真正面から対峙していた。


間合いは、すでに消えている。


次の瞬間――


「――っ!!」


久坂が、踏み込んだ。


地面を砕くような一歩。


その勢いのまま、刀が振り下ろされる。


迷いのない一撃。


――ギィンッ!!


火花が、弾ける。


晋作が受ける。


その刃には――


淡く、揺らめく光。


白ではない。


冷たくもない。


熱を帯びた、“浄化の光”。


茜とのLINKによって引き出されている力。


触れたものの“歪み”だけを、静かに削ぎ落とす光。


「……まだ、それに頼るか」


久坂が、低く吐き捨てる。


押し込む。


圧が、重い。


だが――


「頼ってんじゃねぇ」


晋作が、刃をわずかにずらす。


真正面から受けない。


流す。


最小限で。


「使ってるだけだ」


そのまま、踏み込む。


距離を潰す。


一閃。


――ザンッ!!


久坂の肩を裂く。


深い。


確実に斬り抜けた。


だが――


「――ぉおお!!」


肉が、蠢く。


裂けた傷が、瞬時に塞がる。


骨ごと歪み、再構築される。


明らかに人のものではない再生。


「……っ」


晋作が、息を吐く。


だが、焦りはない。


「やっぱりか」


「当然だ」


久坂が、笑う。


歪んだまま。


「この程度で終わるなら、苦労はしない」


踏み込む。


連撃。


二撃、三撃と続く斬撃が、空気を裂く。


――ギィンッ!!


――キィンッ!!


――ドンッ!!


連続する衝突音。


だが――


晋作は、崩れない。


受けず、流し、いなす。


LINKによって噛み合った動きが、すべてを最小で処理する。


「……見えてる」


低く、呟く。


「全部な」


一瞬の隙へ、滑り込む。


――ザンッ!!


胴を裂く。


だが再生。


しかし同時に、光が滲む。


歪みだけが、静かに削がれていく。


「……っ!?」


「お前のもんじゃねぇからだ」


晋作が踏み込む。


「無理やり使ってるだけだろ」


連撃。


止まらない。


流れを掴んでいる。


久坂が弾き返す。


距離が開く。


荒い呼吸。


それでも立つ。


「……いいな、高杉」


一歩、踏み出す。


「すべて――叩き潰す価値がある!!」


激突。


その瞬間――


――ミシッ


空気の奥で、何かが崩れる。


久坂の動きが、止まる。


歪みが、剥がれる。


消えていく。


再生が鈍る。


圧が変わる。


「……そうか」


小さく、笑う。


「核が……消えたか」


残るのは、純粋な意志だけ。


「……いい顔になったな」


晋作が、静かに言う。


「……続けるぞ」


「――来いよ」


踏み込み。


同時。


完全に一致する。


斬撃が交差する。


技と意志だけの応酬。


そして――


交差。


静止。


――ザンッ


遅れて響く音。


背中合わせ。


沈黙。


やがて。


久坂の身体が、揺れる。


膝が崩れる。


その瞬間。


晋作が踏み出す。


迷いなく。


倒れる身体を受け止める。


支え、そのまま静かに地へ下ろす。


「……はぁ……」


浅い呼吸。


「……遅ぇよ」


「……高杉」


「……もっと早く来い」


「……待たせすぎだ」


「……悪ぃな」


風が、抜ける。


「……なあ、高杉」


「……どこで、間違えたと思う」


「……安政の大獄だろ」


静かに続く言葉。


失ったもの。


止まれなかった理由。


縋ったもの。


選んだ道。


「……違わねぇよ」


「俺も、同じだ」


「ただ――途中で気づいただけだ」


「それ“だけ”じゃ、足りねぇ」


沈黙。


「……なるほどな」


呼吸が、弱くなる。


「……俺は、止まれなかった」


「……怖かったんだろうな」


最後に。


「……高杉」


「……悪くねぇ終わりだ」


「……そうかよ」


それで、十分だった。


一度だけ、大きく息を吸う。


そして――吐く。


そのまま、動かない。


風が、静かに通り過ぎる。


少し離れた場所で。


茜は、その光景を見ていた。


何も言わず。


ただ、静かに。


やがて、歩み寄る。


晋作の隣へ。


並ぶ。


言葉はない。


ただ、同じ方向を見ている。


静かな時間だけが、そこに流れていた。


結界の外。


ついさっきまで満ちていた気配が、嘘のように引いていた。


張り詰めていた空気がほどけ、代わりに残ったのは、静けさだけだった。


晋作は、その場に膝をついている。


腕の中には、久坂。


すでに力の抜けた身体。


呼吸も、もうない。


それでも――晋作は離さなかった。


その重みを、確かめるように。


手放さないように。


風が、静かに吹き抜ける。


の時。


地を蹴る音が重なった。


結界の内側から、四つの影が飛び出してくる。


迷いのない足取りで、一直線にこちらへ向かってくる。


「――晋作!」


最初に声を上げたのは総司だった。


だが、その勢いは途中で止まる。


視線の先。


晋作の腕の中。


そして――動かない久坂の姿。


「……」


誰も、すぐには言葉を出せなかった。


説明など必要なかった。


見れば分かる。


それで十分だった。


「……終わったんだね」


総司が、静かに言う。


確認というより、受け止めるための言葉だった。


晋作は、ゆっくりと顔を上げる。


「……ああ」


短い返事。


それ以上は、いらなかった。


セレナが、小さく息を吐く。


「……そう」


その一言に、緊張がほどける。


美雪は、そっと目を伏せた。


晴明は周囲を一度見渡し、状況を確認するように口を開く。


「核は消滅しています。道満の気配も完全に消えました」


一拍。


「結界も、まもなく崩壊します」


総司が続ける。


「鬼もいない」


視線は、すでに戦場全体を捉えている。


「……全部、終わりだね」


晋作は、わずかに頷いた。


「……そうか」


静かに、受け入れるように。


短い沈黙が落ちる。


その中で。


総司が、一歩だけ近づいた。


距離を詰めすぎない、絶妙な位置で止まる。


「……ねえ」


やわらかい声。


「整理、ついた?」


問いかけは軽い。


だが、その奥には確かな気遣いがあった。


晋作はすぐには答えない。


腕の中の久坂に、視線を落とす。


わずかな間。


そして――


「……ああ」


小さく。


「ついた」


総司は、わずかに笑った。


「そっか」


それ以上は踏み込まない。


そのやり取りで、十分だった。


セレナが、息を吐く。


「……そう」


美雪が、そっと目を伏せる。


「……」


晴明も、何も言わない。


沈黙が落ちる。


誰も踏み込まない。


その空気を――


壊したのは。


「……なんで」


茜だった。


全員の視線が、そちらへ向く。


茜は、少し離れた場所に立っていた。


震えている。


肩も。


指先も。


呼吸も。


ゆっくりと、歩き出す。


一歩。


また一歩。


止まらない。


晋作の前まで来る。


「……なんで」


もう一度。


声が、落ちる。


晋作が、わずかに目を細める。


「……」


その瞬間。


――パァンッ!!


乾いた音が、空気を裂いた。


全員が、息を呑む。


茜の手が、振り抜かれている。


晋作の顔が、横へ流れる。


静寂。


誰も動けない。


茜の肩が、大きく揺れる。


呼吸が、乱れる。


それでも――止まらない。


「……ふざけないでよ……」


低く。


震える声。


「なんで……」


一歩、踏み込む。


「なんで、一人で背負おうとするの!!」


声が、跳ね上がる。


感情が、抑えきれない。


「私、言ったよね!?」


胸を掴む。


力が入る。


「一緒にって言ったよね!!」


晋作の体が、わずかに揺れる。


「なのに……!!」


声が、掠れる。


「なんで勝手に行くの……!」


拳が、震える。


叩く。


弱く。


それでも――何度も。


「なんで……っ」


涙が、落ちる。


「なんで、頼ってくれないの……!」


その言葉が、刺さる。


晋作は、動かない。


ただ、受け止めている。


茜の手が、止まる。


力が、抜ける。


そのまま――崩れる。


「……怖かった……」


小さく。


かすれる声。


「いなくなるかもって……思った……」


肩が震える。


「もう……戻ってこないかもって……」


顔を、伏せる。


「……やだよ……そんなの……」


空気が、揺れる。


誰も、口を挟まない。


その時。


「……悪りぃ」


晋作が、やっと口を開く。


低く。


静かに。


「……怖がらせたな」


茜の肩が、びくっと揺れる。


「でもな」


一拍。


晋作が、ゆっくりと視線を上げる。


「一人でやろうとしたわけじゃねぇ」


その言葉に、茜が顔を上げる。


涙で滲んだ視界のまま。


「……は?」


かすれた声。


晋作が、小さく息を吐く。


「お前がいたから、やれた」


一歩。


距離を、詰める。


「LINKがあったから、届いた」


まっすぐに、見る。


逃げない。


「だから――」


「……ちゃんと、一緒に戦ってた」


沈黙。


そして。


「……バカ」


ぽつりと。


力の抜けた声。


そのまま。


晋作の胸に、額を押し付ける。


「……最初からそう言ってよ……」


震えたまま。


でも――さっきとは違う。


力が、抜けている。


晋作が、わずかに目を細める。


そして――


そっと抱き寄せて


頭に手を置く。


撫でる。


何も言わない。


それで、十分だった。


少し離れた場所で。


セレナが、ふっと息を吐く。


「……はぁ」


肩の力を抜くように。


そして、口元をわずかに歪める。


「ま、あそこまで言われたら十分でしょ」


一拍。


晋作の方へ視線を向ける。


「茜があれだけ怒って、言いたいこと全部ぶつけたんだし」


軽く、肩をすくめる。


「今回は――私たちからは勘弁してあげるわよ」


総司が、小さく笑う。


「助かったね、晋作」


美雪が、やわらかく続ける。


「……総司くん」


くすっと、わずかに笑う。


セレナが、そのまま続ける。


「その代わり――」


少しだけ、真面目な声に変わる。


「ちゃんと休みなさい」


一拍。


「全員でね」


そして、いつもの調子に戻る。


「……で」


口元に、少しだけ笑み。


「美味しいものでも食べに行きましょ」


その一言で。


空気が、少しだけ軽くなる。


晴明が、小さく息を吐く。


「……賛成だ」


短く。


だが、どこか柔らかい。


風が、通り抜ける。


戦いは、終わった。


だが――


繋がりは、残ったまま。


静かに。


確かに。


そこにあった。


24話 完





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