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23話 攘夷獅子の追憶編Ⅳ

光が、弾けた。


世界の輪郭が、一瞬で曖昧になる。


音が、消える。


銃声も。


叫びも。


風の流れすら。


すべてが遠ざかる。


残ったのは――


繋がり。


重なった感覚。


離れないという、確かな実感。


光の中。


茜は、まっすぐに前を見ている。


その先。


黒に覆われた晋作。


だが――


迷いは、もうない。


「……晋作さん」


一歩、踏み出す。


足場なんてない。


それでも、進める。


距離は、もうない。


手を伸ばす。


触れる。


温もりが、ある。


確かに、そこにいる。


「……ねえ」


息が、わずかに揺れる。


それでも。


視線は逸らさない。


「戻ってきて」


はっきりと。


迷いなく。


言い切る。


「……晋作さん」


そのまま。


顔を寄せる。


ほんのわずかな距離。


黒が、ざわめく。


拒むように。


侵食を広げようとする。


だが――


遅い。


触れる。


唇が、重なった瞬間。


光が、爆ぜる。


一気に。


内側から。


黒が、崩れる。


焼き尽くすのではない。


ほどけるように。


消えていく。


抗うことすらできずに。


「――ぁ……」


微かな声。


すべてが消えた、その先に。


残ったのは――


何も覆われていない、その姿。


「……晋作さん」


静かに、呼ぶ。


その声に。


まぶたが、わずかに動く。


そして――


ゆっくりと、開く。


「……はぁ……」


息が、戻る。


視線が、合う。


「……派手にやったな」


かすれた声。


だが、確かに。


“戻った”声。


「……戻ってきた?」


茜が、少しだけ眉を寄せる。


確かめるように。


近い距離で。


晋作が、わずかに笑う。


「どう見える」


その目に、迷いはない。


完全に、戻っている。


その瞬間。


茜の力が、抜ける。


だが――


倒れない。


晋作の腕が、しっかりと支える。


そのまま。


横抱きに、持ち上げる。


光が、二人を包んだまま。


ゆっくりと――


世界が、戻る。


音が、戻る。


空気が、戻る。


――戦場。


光の中心から。


二つの影が、現れる。


一歩。


地面を踏みしめる音。


そこに立っていたのは――


晋作。


その腕の中に。


茜。


静かに抱きかかえられている。


淡い光が、まだ揺れている。


消えていない。


LINKは、まだ繋がっている。


「……っ」


誰かが、息を呑む。


空気が、止まる。


その光景を理解するのに、わずかな間が生まれる。


黒は、もうない。


侵食の痕跡も、完全に消えている。


ただ――


“戻った姿”のまま。


そこにいる。


晋作が、ゆっくりと顔を上げる。


周囲を見渡す。


確認するように。


そして。


「……悪ぃ、待たせたな」


低く。


静かに。


言葉を落とす。


その腕の中で。


茜が、わずかに動く。


「……晋作さん」


小さく、呼ぶ。


その声に。


晋作が視線を落とす。


「無茶しすぎだ」


短く。


だが、どこか柔らかい。


「……そっちでしょ」


茜が、少しだけ言い返す。


弱い声。


でも、ちゃんといつもの調子。


「……はぁ」


セレナが、大きく息を吐く。


肩の力を抜くように。


「ほんと……派手にやるわね」


一拍。


視線を、晋作へ向ける。


口元が、わずかに歪む。


「晋作」


呼びかける。


しっかりと。


「後で覚悟しときなさいよ」


さらに。


「いーっぱい文句、言うから」


間を置かず。


「……全員でね」


美雪が、胸に手を当てる。


「……よかった」


総司が、静かに頷く。


「間に合ったね」


晴明が、目を細める。


「術は完全に浄化されています」


一拍。


「見事です」


その一方で――


「……高杉……!」


久坂の声が、歪む。


理解が追いつかない。


現実を拒むように。


「なぜだ……」


一歩、後ずさる。


ほんのわずかに。


「なぜ……戻れる……!」


その問いに。


晋作が、ゆっくりと視線を向ける。


腕の中の重みを確かめながら。


一歩、前へ。


「決まってんだろ」


低く。


迷いなく。


「――一人じゃねぇからだ」


その瞬間。


淡い光が、戦場の各所で脈打つ。


総司と美雪。


セレナと晴明。


それぞれの胸元で。


対になる光が、呼応する。


三つの繋がり。


それぞれ独立しながら。


確かに成立している。


そして――


その最前。


晋作と茜。


二人の光が、最も濃く、重なっている。


久坂の表情が、歪む。


怒りと。


焦りと。


理解できない恐怖。


「……ふざけるな……」


低く、吐き捨てる。


刀を握る手に、力が入る。


「そんなものが……」


殺気が、膨れ上がる。


「そんなものが、我らの志を……!」


空気が、張り詰める。


だが――


もう違う。


晋作が、ゆっくりと茜を地面に降ろす。


乱暴じゃない。


静かに。


それでも。


手は、離さない。


「……行けるか」


短く。


茜が、息を整える。


一度、目を閉じて。


そして、開く。


「……うん」


もう、揺れていない。


その瞬間。


二人の間で、光がわずかに脈打つ。


LINK。


繋がったまま。


「じゃあ――」


晋作が、銃を構える。


「続きだな」


その横に。


茜が並ぶ。


同じ方向を見る。


その先に――


久坂。


六人。


三つの繋がり。


すべてが揃う。


空気が、変わる。


これはもう――


ただの戦いじゃない。


取り戻した後の戦い。


「……面白い」


久坂が、笑う。


狂気を孕んだまま。


「ならば――」


刀を構える。


「その絆とやら」


殺気が溢れる。


「まとめて断ち切ってやろう」


その瞬間――


張り詰めていた空気の中で。


晋作が、ゆっくりと口を開く。


視線は、久坂から外さない。


だが、そのまま――背後へ。


「総司、美雪、セレナ、晴明」


低く、しかしはっきりと。


全員に届く声。


「この奥の結界の中に、術の核がある」


一拍。


「泰山府君……それを含めた中枢だ」


空気が、わずかに揺れる。


「おそらく――蘆屋道満もそこにいる」


その名が落ちた瞬間。


場の緊張が、質を変える。


「そっちは、任せたい」


短く。


迷いなく。


そして――


視線を戻す。


久坂へ。


「こいつは――」


一歩、前に出る。


「俺に……いや」


隣を、一瞬だけ見る。


茜。


「俺と茜に任せてくれ」


言い切る。


その一言で。


空気が、動いた。


その一言で。


空気が、静かに動いた。


「……了解」


最初に応えたのは、総司だった。


迷いはない。


一歩、下がる。


だが視線は、久坂から外さない。


「美雪ちゃん、行こうか」


柔らかく。


いつもの調子で。


「うん」


美雪が頷く。


セレナが、軽く肩を回す。


「道満、ね……」


口元に、わずかな笑み。


「ちょうどいいわ」


晴明へ視線を向ける。


「本命ってやつでしょ?」


「ええ」


晴明が静かに頷く。


指先が空をなぞる。


符が、舞う。


「結界の構造は、こちらで解析します」


「言われなくても」


セレナが、槍を構える。


そのまま。


四人が、同時に動く。


迷いなく。


一直線に――奥へ。


――その瞬間。


「……行っていいと、言ったか?」


低い声。


久坂。


一歩、踏み出す。


配下が、動く。


四人の進路を塞ぐように。


だが――


一閃。


晋作が、前に出る。


抜刀。


踏み込みと同時に放たれた斬撃が――


配下をまとめて薙ぐ。


触れた瞬間。


その身体が、淡く光る。


内側から。


浄化されるように。


――霧散。


音もなく。


存在ごと、消える。


一瞬の静寂。


晋作が、刀をわずかに振る。


残心。


そして――


「……追っていいと、言ったか?」


低く、呟く。


その言葉だけで。


空気が、変わる。


四人は止まらない。


そのまま――突破する。


一直線に、奥へ。


その背を見送りながら。


晋作が、小さく息を吐く。


「……頼んだ」


短く。


それだけ。


残るは――二人。


そして。


久坂が、低く笑う。


歪んだ声。


「数の利を捨てるとはな」


刀を、ゆっくりと持ち上げる。


殺気が、濃くなる。


「随分と余裕だ」


その言葉に。


晋作は、動じない。


一歩、前へ。


「余裕じゃねぇよ」


低く。


静かに。


「分けただけだ」


言い切る。


その隣で。


茜が、息を整える。


血の気は、まだ戻りきっていない。


それでも――


立つ。


晋作が、わずかに視線を向ける。


ほんの一瞬だけ。


「……悪りぃ、茜」


低く。


少しだけ、柔らかく。


「決着つけるために、もう少し俺に付き合ってくれるか?」


その言葉に。


茜は、迷わない。


即答する。


「もちろん!」


一歩、前に出る。


その目は、まっすぐ。


「この先もずっとね!」


その言葉が落ちた瞬間――


空気が、変わる。


張り詰める。


呼吸が揃う。


視線が、重なる。


「……行くよ」


短く。


だが、はっきりと。


晋作が、わずかに笑う。


「おう」


その瞬間。


二人が、同時に踏み込む。


迷いはない。


一切のズレもない。


久坂へ――一直線に。


「ならば――!」


久坂が、踏み込む。


刀が、振り下ろされる。


殺気と共に。


「その絆ごと――断ち斬る!!」


――ギィンッ!!


鋭い金属音。


火花が、散る。


晋作の刀が、真正面から受け止める。


刃と刃が、ぶつかり合う。


そのまま――


押し合う。


鍔迫り合い。


距離、ゼロ。


互いの息がかかるほどの近さ。


「……高杉」


久坂が、低く唸る。


目は、狂気を孕んだまま。


「まだ、そんな甘さを残すか」


押し込む。


研ぎ澄まされた圧。


だが――


晋作は、退かない。


足が、地面を噛む。


押し返す。


「甘ぇのは――」


低く。


静かに。


「お前だ」


刃が、きしむ。


力と力が、ぶつかる。


逃げ場はない。


「過去に縋ってんのは、どっちだ」


その一言。


久坂の目が、わずかに揺れる。


ほんの一瞬。


だが――確かに。


その一言が、空気を裂いた。


わずかに。


だが確かに――久坂の瞳が揺れる。


「……黙れ」


低く。


押し返すように、刃に力が乗る。


火花が、弾ける。


鍔と鍔が、軋む。


「貴様に……何が分かる!」


踏み込み。


久坂の刃が、閃く。


鋭く。


速い。


だが――


「分かるわけねぇだろ」


晋作が、受ける。


刃が、噛み合う。


その瞬間。


――すっ……


触れた部分から。


久坂の刀にまとわりついていた歪みが、


静かにほどける。


まるで、水面の波紋が収まるように。


余計なものだけが、消えていく。


「……っ!?」


久坂の目が、見開かれる。


一瞬の動揺。


「だから、今見てんだよ」


晋作が、踏み込む。


間合いを潰す。


刃を滑らせるように押し込み――


斬る。


浅い。


だが。


触れた場所から、


乱れていた気配が、静かに整っていく。


濁りが、抜けるように。


澄んでいく。


「……なんだ……それは……!」


久坂が、距離を取る。


初めて。


“理解できないもの”を見る目。


自分の力が――


削られるのではなく、


“正されている”。


「……効いてんだろ」


晋作が、静かに言う。


刀を構えたまま。


視線を逸らさない。


その刃には、


淡く、揺らぐような光が宿っている。


冷たくも、温かくもない。


ただ、静かで――澄んだ光。


「それ、お前のもんじゃねぇ」


一歩。


踏み出す。


「無理やり歪めただけのもんだ」


言い切る。


その言葉に。


久坂の顔が、歪む。


怒りか。


焦りか。


それとも――


「……違う……!」


叫ぶ。


振りかぶる。


だが――


その動きが、わずかに鈍る。


「――遅ぇ」


晋作が、踏み込む。


一閃。


今度は、深い。


刃が、肩を裂く。


同時に。


そこに宿っていた歪みが、


静かに、ほどけていく。


散るでもなく。


砕けるでもなく。


ただ――消えていく。


「が……っ……!」


久坂の膝が、揺れる。


その背後で。


風が、揺れる。


「――外さない」


静かな声。


茜。


弓を引く。


視線は、ただ一点。


久坂。


呼吸が、止まる。


世界が、細くなる。


「これは――」


指が、離れる。


矢が、放たれる。


光を帯びて。


まっすぐに。


迷いなく。


「私達2人の意志だ!」


その一撃が――


迷いなく、久坂を捉える。


光が、届く。


――直撃。


久坂の身体が、揺れる。


その中心から。


静かに、波紋のように。


歪みが、ほどけていく。


濁りが、抜ける。


乱れていた気配が、整っていく。


空気が――澄む。


「……っ……」


久坂の喉が、震える。


視線が、揺らぐ。


ほんの一瞬。


その目から、狂気が薄れる。


「……たか、す……ぎ……」


かすれた声。


掠れた呼び方。


確かに――“久坂玄瑞”の声。


だが。


その瞬間。


「――ふざけるなぁぁぁぁ!!」


咆哮。


空気が、歪む。


整いかけたものが、再び乱れる。


無理やり。


ねじ曲げるように。


「終わってたまるか……!」


歯を食いしばる。


全身が、震える。


「俺は……まだ……!」


足が、踏み込む。


無理やり。


前へ。


血が、滴る。


それでも止まらない。


「攘夷志士だぁぁ!!」


刀を、振り上げる。


その動きは――


先ほどより荒い。


だが、強い。


純粋な“意志”だけで振るわれる刃。


「……」


晋作が、見据える。


動かない。


ただ、受ける体勢。


そして――


「……そうかよ」


小さく。


吐き出すように。


「なら、最後までやれ」


一歩。


踏み込む。


逃げない。


迎え撃つ。


「中途半端が一番ダサいんだろ?」


その言葉。


久坂の目が、揺れる。


ほんの一瞬。


だが――


笑う。


血に濡れたまま。


歪みながら。


「……言うじゃねぇか……!」


その瞬間。


刃が、ぶつかる。


再び。


激しく。


火花が散る。


だが――


今度は違う。


ただの殺意ではない。


ただの狂気でもない。


互いの“在り方”をぶつける斬撃。


その間で。


風が、揺れる。


「――まだ終わってない」


茜が、静かに言う。


弓を構えたまま。


一歩、踏み出す。


視線は、逸らさない。


「終わらせるのは――これから」


その声が。


戦場に、静かに落ちた。


火花が、散る。


刃と刃がぶつかり合う中で。


晋作が、わずかに視線を動かす。


ほんの一瞬だけ。


隣へ。


「……茜」


短く。


だが、はっきりと。


「一緒にって言ったけど――」


一拍。


刃を受け流しながら。


「ここは、俺にやらせてくれ」


押し込む。


踏み込み。


間合いを保ったまま。


視線だけで伝える。


「手、出さないでくれ」


その言葉。


強制ではない。


信頼の上に乗った、選択。


茜が、わずかに目を見開く。


一瞬だけ。


だが――すぐに理解する。


ゆっくりと。


弓を引いていた手を、下ろす。


矢も、同時に。


「……分かった」


短く。


迷いはない。


そして。


すぐに、視線を外す。


周囲へ。


空気の流れを読む。


気配を捉える。


「なら――」


一歩、横へ。


立ち位置を変える。


「残りは、私が抑える」


その瞬間。


弓を、引く。


視線が、鋭くなる。


「近づけさせない」


放つ。


矢が、空気を裂く。


――ヒュンッ


次の瞬間。


晋作の死角。


背後から迫っていた影。


伏兵。


その眉間を――正確に貫く。


光が、走る。


触れた瞬間。


その存在は、静かに消えていく。


音もなく。


残滓も残さず。


霧のように。


消失。


茜は、次の矢を番える。


視線は動かない。


「……任せたよ、晋作さん」


小さく。


だが、確かに。


背中へ向けて。


その言葉が届く。


晋作は、振り返らない。


ただ――


「おう」


短く、応じる。


その声だけで、十分だった。


次の瞬間。


再び。


刃が、ぶつかる。


今度は――


逃げ場のない、本当の決着へ。


――結界前。


空気が、重い。


目の前にあるのは、壁ではない。


幾重にも重なった“層”。


触れれば沈み込みそうで、しかし決して通さない。


「……通れないわね」


セレナが、小さく呟く。


槍を構えたまま、わずかに眉を寄せる。


「力でどうこうする類じゃない」


「だな」


晴明が、静かに応じる。


すでに意識は、結界へと向けられている。


指先で空をなぞる。


見えない式を追うように。


「多重構造だ」


一拍。


「核は奥にある」


総司が、軽く息を吐く。


「つまり?」


「ここ壊しても意味ない」


あっさりと、言い切る。


「すぐ再構築される」


美雪が、小さく呟く。


「……面倒」


セレナが、視線を細める。


「じゃあどうすんのよ」


晴明は、わずかに間を置いて――


「一点だけ破る」


短く。


迷いなく。


「通れる穴だけ作る」


その言葉に。


セレナの口元が、わずかに歪む。


「やっと分かりやすい話ね」


「核には触れない」


晴明が続ける。


「表層だけだ」


視線が、一点へ向く。


「ここ」


指先が止まる。


空気が、わずかに揺らぐ。


「この瞬間に合わせて」


符が、展開される。


空中に。


正確に。


「――断」


その言葉と同時に。


結界の一部が、わずかに緩む。


ほんの一瞬。


構造が、ずれる。


「……今ね」


セレナが踏み込もうとした、その直前。


「待て」


晴明の声。


低く、鋭い。


一枚の符が、槍へと滑り込むように触れる。


「結界破り、乗せる」


一拍。


「LINKじゃない」


はっきりと。


「ただの付与だ」


セレナの目が、細くなる。


理解する。


「……いいわ」


槍が、わずかに震える。


重くはない。


だが――


“通る”。


確かな感覚。


「行くわよ」


踏み込む。


一直線。


迷いなく。


「――貫く!」


突き。


一点へ。


――ガキンッ!!


硬い感触。


だが、止まらない。


術が、噛み合う。


表層だけが、わずかに砕ける。


穴が、開く。


ほんの人一人分。


それ以上は壊れない。


それ以上は――壊さない。


「行くよ!」


総司が、最初に踏み込む。


滑り込むように。


美雪が続く。


空気を凍らせ、周囲を抑えながら。


セレナが、そのまま突き抜ける。


そして最後に。


晴明が、術を収めながら通過する。


全員が抜けた瞬間。


結界が、元に戻る。


完全に。


何事もなかったかのように。


だが――


四人は、すでに内側にいた。


――結界内部。


空気が、わずかに重い。


「……気をつけろ」


晴明が、低く言う。


足を止めずに。


だが、視線は鋭い。


「ここは道満の領域だ」


一拍。


「何仕掛けてきてもおかしくない」


総司が、軽く頷く。


「了解」


美雪も、小さく息を整える。


セレナは槍を肩に担ぎながら、周囲を見渡す。


「歓迎される気はないわね」


その時――


声が、響いた。


どこからともなく。


空間そのものに染み込むように。


「――来たか、晴明」


ぴたりと。


四人の足が止まる。


空気が、変わる。


晴明の視線が、鋭く前を射抜く。


「……道摩法師」


低く。


抑えた声。


だが、確かな圧を含む。


「どこにいる」


一歩、踏み出す。


「出て来い」


その言葉が落ちた瞬間。


くつり、と。


笑うような気配。


「そう急くな」


声が、近づく。


「久々の再会だ。もう少し風情を味わえ」


次の瞬間。


前方の空間が、わずかに歪む。


そこから――


一人の男が、姿を現す。


僧のような装束。


だが、その顔も、身体も――


かつてのものとは違う。


それでも。


纏う気配だけは、変わらない。


「……久しいのぉ、晴明」


穏やかな声。


まるで世間話のように。


だが、その奥には底の見えない何かがある。


晴明の目が、細くなる。


「……変わらないな」


わずかに。


吐き捨てるように。


「そのやり方は」


一歩、距離を詰める。


「やはり外法か……御霊転生」


視線が、鋭くなる。


「これまで何人を使った」


その問いに。


道満は、肩をすくめるように笑う。


「さてな」


軽く。


どうでもいいことのように。


「そんなもの、いちいち数えておらんよ」


一歩、踏み出す。


ゆっくりと。


晴明へ向かって。


「すべては――」


視線が、真っ直ぐに突き刺さる。


「貴様と再び相対するため」


その言葉に。


空気が、重く沈む。


「そして――」


口元が、わずかに歪む。


笑みとも、嘲りともつかない。


「この道満が」


一歩、止まる。


距離はまだある。


だが、すでに近い。


「真の陰陽師だと――」


静かに。


だが確信を持って。


「認めさせるためよ」


沈黙が落ちる。


わずかな風すら、動かない。


その場にいる全員が理解する。


これは――


ただの戦いじゃない。


「……くだらん」


晴明が、吐き捨てる。


短く。


だが、その声には明確な感情が乗っている。


「証明ごっこに、どれだけ巻き込むつもりだ」


視線が、揺らがない。


「貴様は、何一つ変わっていない」


その言葉に。


道満の目が、わずかに細くなる。


ほんの一瞬。


だが――


確かに、反応した。


空気が、張り詰める。


沈黙が、張り詰める。


その空気を――


道満が、崩した。


「まずは」


ゆるく、口元を歪める。


「この者たちの相手をしてもらおうかのぉ」


その一言が落ちた瞬間。


空気が、変わる。


道満の足元。


影が――蠢く。


じわり、と。


滲み出るように。


広がる。


そして。


そこから、現れる。


ゆっくりと。


一体、また一体。


形を成していく。


歪な輪郭。


人のようで、人ではない。


獣のようで、獣でもない。


「……っ」


低い唸り。


かすれた声。


重なる。


響く。


――魑魅魍魎。


無数の“それ”が、地を這い、空間を満たす。


ゆらり、と揺れながら。


四人を取り囲む。


「……百鬼夜行の再現か!!」


晴明が、鋭く叫ぶ。


その声に。


道満が、満足げに笑う。


「応よ」


ゆったりと。


腕を広げる。


「ワシなりの百鬼夜行よ」


視線が、細くなる。


「どう防ぐ、晴明?」


その言葉に。


美雪が、わずかに息を詰める。


視線が、揺れる。


目の前の存在たちへ。


妖。


それは――本来、同じ側の存在。


「……」


だが。


違う。


分かる。


“これは違う”。


その違和感が、胸の奥を掻き乱す。


総司が、その様子に気づく。


横目で、ちらりと見る。


何も言わない。


だが、理解する。


セレナが、視線を巡らせながら口を開く。


「百鬼夜行って、なに?」


短く。


だが真剣に。


晴明が、視線を前に向けたまま答える。


「妖の大行進だ」


一拍。


「酒呑童子、ぬらりひょん、玉藻前、大天狗――」


淡々と。


だが、重みのある名を並べる。


「そういった存在が率いていたとも言われている」


空気が、わずかに沈む。


「見た者は呪われる――そんな伝承もある」


その説明の間にも。


魑魅魍魎は、ゆっくりと距離を詰めてくる。


逃げ場を塞ぐように。


「……だが」


晴明の声が、わずかに変わる。


鋭くなる。


「これは違う」


視線が、道満を射抜く。


「ここまでの数を、式で制御しているとは……」


一歩、踏み出す。


「もはや本来の妖ではないな」


その言葉に。


道満の笑みが、深くなる。


「ほぅ」


愉しむように。


「見抜くか、晴明」


一歩。


ゆっくりと、前へ。


「こやつらの御霊は別に使うておる」


軽く、手を振る。


魑魅魍魎が、ざわめく。


「いわば――魂魄の抜け殻よ」


その言葉が落ちた瞬間。


空気が、変わる。


「……っ」


美雪の瞳が、揺れる。


次の瞬間。


静かに――細くなる。


怒り。


だが、爆発はしない。


内側で、凍るように。


「……どこまで外道なんだ」


総司が、低く呟く。


軽く笑うようでいて。


その目は、笑っていない。


道満は、肩をすくめる。


「なんとでも言うがよい」


口元に、不敵な笑み。


「使えるものは使う」


その一言に。


迷いはない。


躊躇もない。


ただ――歪んだ確信だけがある。


その瞬間。


魑魅魍魎が、一斉に動いた。


その瞬間。


空気が、動いた。


魑魅魍魎が、一斉に踏み込む。


低い唸り声。


歪な気配が、四方から押し寄せる。


総司が、即座に刀を構える。


セレナも槍を回し、足を開く。


晴明の指先には、すでに符が挟まれている。


だが――


「……」


美雪だけが、動かなかった。


一歩も。


ただ、立っている。


その視線は――妖怪たちへ。


じっと。


まっすぐに。


怒りが、滲んでいる。


だがそれは、荒れるものではない。


静かに。


冷えていくような――怒り。


「……ごめんね」


小さく。


それでも、はっきりと。


その言葉が落ちた瞬間。


美雪の腕が、ふわりと持ち上がる。


力を込めるでもなく。


ただ、空気を撫でるように。


――その瞬間。


世界が、変わる。


温度が、落ちる。


一気に。


空気が凍る。


足元から。


空間そのものが。


白く、染まる。


吹雪が、巻き起こる。


視界を奪うほどの白。


そして――


氷。


無数の氷柱。


槍のように鋭いそれが、空間に生まれる。


次の瞬間。


それらが、一斉に――


吹き荒れる。


貫く。


突き刺さる。


逃げ場はない。


避ける余地もない。


百鬼夜行。


そのすべてを――


一瞬で、飲み込む。


音が、消える。


吹雪の中で。


すべてが、止まる。


凍りつく。


完全に。


動かない。


魑魅魍魎は――


氷の中で、静止していた。


「……」


美雪が、ゆっくりと息を吐く。


その瞳は、もう揺れていない。


ただ、静かに。


凍りついたそれらを見つめる。


一歩。


踏み出す。


「……今、楽にしてあげる」


優しく。


だが、迷いはない。


指を、軽く鳴らす。


――パチン。


乾いた音が、響く。


その瞬間。


氷が、砕ける。


一斉に。


粉々に。


閉じ込めていたものごと。


すべてを巻き込んで。


霧のように。


跡形もなく。


消えた。


沈黙。


完全な。


「……」


道満の目が、見開かれる。


初めて。


明確な驚きが、浮かぶ。


総司も、思わず息を止める。


セレナも、わずかに目を細める。


晴明だけが――


静かに、それを見ていた。


道満が、ゆっくりと口元を歪める。


「……ほぅ」


低く。


楽しむように。


「これは……」


笑う。


「ここまでの力の持ち主とはのぉ」


視線が、美雪へと向けられる。


ねっとりと。


値踏みするように。


「貴様を式にするのも――悪くない」


その瞬間。


空気が、変わる。


道満の指が、動く。


札が、数枚。


放たれる。


一直線に。


美雪へ。


「――っ!」


晴明の声が、鋭く響く。


「危ない!」


だが。


それよりも早く。


「させないよ」


総司が、動く。


一歩。


踏み込み。


抜刀。


一閃。


――斬る。


すべての札を。


空中で。


正確に。


切り落とす。


紙片が、舞う。


切り落とされた札は、力を失い、ただの紙となって地に落ちた。


その光景を見下ろしながら――


道満の口元が、ゆっくりと歪む。


「……なるほどのぉ」


愉しむように。


「その剣士も、式にすれば後が楽そうじゃ」


視線が、総司へと向く。


絡みつくような、重い視線。


「ついでに――」


指が、わずかに動く。


空気が、軋む。


「そこの娘も、取り込んでしまえば良い」


今度は、美雪へ。


狙いが、定まる。


次の瞬間。


見えない術式が、放たれる。


絡みつくような“拘束”。


魂ごと引きずり込むような力。


「……っ」


総司が、即座に構える。


美雪も、わずかに身を引く。


だが――


速い。


捉えきれない。


その瞬間。


「――させるかよ」


低く。


だが、はっきりと。


晴明の声。


一歩、前へ出る。


指先が、空をなぞる。


「……甘いって」


軽く。


だが、確信を持って。


その言葉と同時に――


空気が、変わる。


ピン、と。


何かが“噛み合う”音。


次の瞬間。


この場の空間そのものが――反応する。


地面。


空気。


見えない位置に仕込まれていた“点”が。


一斉に、繋がる。


淡い光が、走る。


線となり。


網となり。


結界の内側に、もう一つの“支配”が重なる。


「なに……?」


道満の目が、わずかに細くなる。


晴明が、わずかに口元を上げる。


「仕込んでいたのさ」


一歩、踏み出す。


「この地に繋がる様に」


指先が、静かに動く。


「オン・バザラ・キリク・ソワカ」


低く、短い詠唱。


その瞬間――


道満の術が、弾かれる。


触れた瞬間に。


干渉を拒絶するように。


力を失い、霧散する。


「……っ」


空気が、わずかに軋む。


道満の表情に、ほんの一瞬だけ変化が走る。


「結界の中で……干渉を撥ねたか」


低く、呟く。


晴明が、肩をすくめる。


「外からじゃないよ」


視線は外さない。


「“中に入る前から”繋げておいた」


指先で、空間をなぞる。


そこにあるはずのない術式を、示すように。


「気の流れを固定して」


「干渉をズラす」


さらりと。


だが、その内容は重い。


「完全には防げないけど」


一拍。


目が、鋭くなる。


「好きにはさせない」


その言葉が、場を締める。


総司が、小さく息を吐く。


「……助かった」


短く。


だが、確かな信頼。


美雪も、静かに頷く。


「……ありがとう、晴明さん」


その声は、もう揺れていない。


道満が、ゆっくりと笑う。


くつくつと。


喉の奥で鳴らすように。


「面白いのぉ……」


目が、細くなる。


「やはり貴様との術比べは面白い」


その一言で。


空気が、変わる。


遊びではない。


だが――


愉しんでいる。


純粋に。


戦いそのものを。


その奥にあるのは――


狂気と、執着。


そして。


確かな“格の認識”。


走り去る二人の気配が、遠ざかっていく。


その背中を、追うことはない。


ただ――


残された三人の間に、濃い空気が落ちる。


「……ずいぶんと」


晴明が、静かに口を開く。


視線は、外さない。


まっすぐに道満を捉えたまま。


「ご執心のようだな」


一拍。


「なぜだ?」


その問いは、探るものではない。


見極めるためのもの。


道満が、わずかに目を細める。


「簡単な話よ」


肩の力を抜いたまま。


だが、その言葉には確かな欲が滲む。


「雪女のあの力――」


ゆっくりと。


舐めるように言う。


「損なうには惜しい」


一歩、踏み出す。


「そして、あの剣士」


総司のいた方向へ、視線が流れる。


「ただ強いだけではない」


口元が、歪む。


「雪女の盾として機能する」


その言葉に、空気がわずかに冷える。


「攻防一体」


静かに。


だが、はっきりと。


「使い所を誤らねば――」


一拍。


「ほぼ最強の駒になる」


言い切る。


迷いなく。


そこにあるのは、評価ではない。


“所有”の視点。


「……式にできぬのが、惜しいのぉ」


小さく、笑う。


その一言に。


場の温度が、わずかに下がる。


「やっぱり外道ね」


セレナが、軽く言う。


肩をすくめるように。


いつも通りの調子で。


だが――


その目は、笑っていない。


真っ直ぐに、道満を見据えている。


「人を駒扱いとか」


一歩、前に出る。


「趣味悪すぎるわよ」


その声は、軽い。


だが――


奥にあるのは、はっきりとした怒り。


道満が、ふっと笑う。


「駒に価値を見出すのは、当然のことよ」


当たり前のように。


「使えぬ者に意味はない」


言い切る。


そこに迷いはない。


晴明が、わずかに息を吐く。


「……やはり、変わらないな」


低く。


静かに。


「貴様のその考えは」


視線が、鋭くなる。


「だからこそ、相容れない」


その言葉で。


空気が、完全に切り替わる。


敵として。


明確に。


次の瞬間。


術と術が――ぶつかろうとしていた。


――結界の奥。


空気が、重い。


だが――それだけじゃない。


“歪み”がある。


「……」


総司が、足を止める。


周囲を静かに見渡す。


視界に映るのは――


松下村塾。


だが、どこかおかしい。


静かすぎる。


風の音すら、抑え込まれているような違和感。


「……これ」


美雪が、小さく呟く。


視線は、奥へ。


「結界っていうより――」


一拍。


「“何かが混ざってる”感じがする」


総司が、わずかに目を細める。


「混ざってる?」


美雪が、ゆっくりと頷く。


「……うまく言えないけど」


少しだけ眉を寄せる。


「空気が一つじゃない」


「重なってる……別の何かが」


総司が、静かに息を吐く。


「記憶か、残滓か……」


低く。


冷静に。


「道満のやりそうなことだね」


一歩、踏み出す。


床が、わずかに軋む。


「普通に進めば、引き込まれる」


その時。


美雪が、目を閉じる。


ゆっくりと。


感覚を外へ広げるように。


冷気が、わずかに揺れる。


「……いる」


ぽつりと。


「“核”……近い」


総司が、すぐに反応する。


「場所は?」


「……奥」


迷いなく。


松下村塾の裏へと続く方向を指す。


「でも――」


言葉が、わずかに止まる。


次の瞬間。


空間が、揺れる。


景色が、歪む。


一瞬だけ――


別の光景が重なる。


人影。


声。


過去の残滓。


「……っ」


美雪が、目を開く。


「引っ張られる……!」


総司が、すぐに前へ出る。


一歩。


自然に、美雪の前へ。


「大丈夫?」


短く。


だが、確かに支える声。


「……うん」


呼吸を整える。


「大丈夫……でも」


視線を奥へ。


「このまま進むと、飲まれる」


総司が、わずかに考える。


そして――


「なら」


一歩、踏み出す。


「最短で行こう」


振り返る。


やわらかく笑う。


「迷う前に、終わらせる」


その一言に。


美雪も、ほんの少しだけ笑う。


「……うん」


小さく。


でも、はっきりと。


その時。


前方の影が、揺れる。


空気が、ざわつく。


何かが、現れる気配。


「……来るね」


総司が、刀に手をかける。


美雪も、静かに構える。


氷の気配が、わずかに広がる。


「……行こう」


総司の一言。


次の瞬間。


二人は同時に踏み込む。


“核”へ続く道を――


切り開くために。


空気が、淀む。


重い。


粘つくような気配が、肌にまとわりつく。


「……ここだね」


総司が、静かに呟く。


視線の先。


そこに――


“それ”はあった。


地面に広がる、黒。


液体のようで。


だが、水ではない。


光を、吸い込んでいる。


揺れている。


ゆらゆらと。


まるで――呼吸するように。


「……なに、これ……」


美雪の声が、わずかに低くなる。


一歩、近づく。


その瞬間。


――ぐちゃり。


内側から、何かが動く。


泡立つように。


膨れ。


沈み。


そして――


「……っ」


かすかな音。


いや。


違う。


声。


呻き声。


悲鳴。


泣き声。


いくつもの“何か”が、重なっている。


「……これ」


美雪の目が、細くなる。


確信に変わる。


「怨念と……魂が混じってる」


低く。


抑えた声。


だが、はっきりと。


「もしかして……」


一瞬、言葉が詰まる。


だが――


言い切る。


「さっきの……操られてた妖怪たちの魂……」


空気が、さらに重くなる。


悍ましい。


ただの術ではない。


“積み重ねられたもの”。


無理やり、押し込められたもの。


それが――そこにある。


「……最悪だね」


総司が、静かに言う。


目を逸らさない。


だが、その声には確かな怒りが滲む。


「壊そう」


短く。


迷いなく。


美雪も、頷く。


「……うん」


一歩、踏み出す。


同時に。


二人が、構える。


その瞬間。


“それ”が、反応する。


ぐちり、と。


粘ついた音を立てて。


表面が、大きく揺れる。


「――っ!」


次の瞬間。


中から、何かが――落ちる。


どろり、と。


二つ。


地面に。


叩きつけられるように。


沈む。


だが――


止まらない。


形が、変わる。


膨れ上がる。


歪み。


組み上がる。


そして――


立ち上がる。


「……っ」


総司の目が、見開かれる。


「鬼だ……!!」


低く、吐き出す。


「しかも――でかい……!」


二体。


異形。


角。


歪んだ身体。


人の形をしているが――


明らかに“それではない”。


ただ立っているだけで、圧が違う。


空気が、沈む。


その一体が、口を開く。


低く。


重く。


「……お前らか」


声が、響く。


地を這うように。


「我らを……大江山から切り離したのは……」


総司の思考が、一瞬で巡る。


「……大江山?」


記憶を探る。


――土方の部屋。


――古い書物。


――源氏の討伐。


断片が、繋がる。


「……まさか」


次の瞬間。


叫ぶ。


「酒呑童子……!」


もう一体を見る。


「茨木童子か!!」


その名に――


鬼の目が、わずかに光る。


「……ほう」


低く。


歪んだ声。


「知っているか……人間」


ゆらり、と。


一歩、踏み出す。


地が、わずかに沈む。


「ならば……好都合だ」


空気が、震える。


「我らの怨みを晴らすは――」


一拍。


その視線が、総司へと向く。


「まず……お前からだ」


次の瞬間。


空気が、裂けるように動いた。


23話 完



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