22話 攘夷志士の追憶編Ⅲ
――松下村塾結界内。
足を踏み入れた瞬間から、空気が違う。
重い――というより、淀んでいる。
呼吸をするたびに、わずかな違和感が肺に残る。
「……」
高杉晋作は、その感覚を表に出さないまま歩を進めた。
止まらない。
立ち止まった瞬間に、この空間に飲み込まれる気がしたからだ。
視線だけを動かす。
床に刻まれた術式。
淡く脈打つ光。
そして――
並ぶ影。
奇兵隊。
見慣れた顔が、そこにある。
だが。
「……」
やはり違う。
視線が合っても、何も返ってこない。
意思が、感じられない。
“いる”だけの存在。
「どうだ」
背後から、声が落ちる。
久坂玄瑞。
「悪くないだろう」
その声音は、静かだ。
熱ではなく、確信だけで構成されたような響き。
晋作は、わずかに肩を回す。
銃創のあった場所が、かすかに軋む。
だが――
何も起きない。
「……悪趣味だな」
短く、吐き捨てる。
だが、拒絶ではない。
観察の延長。
久坂は、それを理解している。
「そうか」
あっさりと返す。
一歩、距離を詰める。
「だが、これが現実だ」
言葉に、揺らぎはない。
「使えるものは、使う」
割り切り。
迷いのない選択。
「……変わったな」
晋作が、ぽつりと落とす。
「いや」
久坂はすぐに返す。
「変わったのは、お前の方だ」
空気が、わずかに張る。
その時だった。
「――面白いな」
声が、横から差し込む。
蘆屋道満。
そこに立っていたのは、年の頃四十代後半ほどの男だった。
痩せすぎてもいない、均整の取れた体躯。
無駄のない立ち姿。
長く垂らした髪の奥から覗く瞳は、鋭いというより――“計算している目”だった。
口元には、薄く笑みが浮かんでいる。
それは愉悦というより、観察の結果に対する興味に近い。
「完全には染まっていない」
ゆっくりと、言葉を置く。
「だが、拒絶もしていない」
晋作の周囲を、半歩だけ回る。
距離を詰めすぎない。
だが、逃さない位置。
「いい状態だ」
静かに、そう評する。
「崩すには、ちょうどいい」
その言い方は、あまりにも自然だった。
まるで壊すことが前提のように。
晋作は、視線だけを向ける。
「……お前が元締めか」
短く。
探るように。
道満は、わずかに肩をすくめる。
「そう大げさなものでもない」
軽く、否定する。
「ただ、整えているだけだ」
足元の術式を、わずかに示す。
「流れをな」
その言葉と同時に、術式が微かに脈打つ。
制御されている。
完全に。
「……気に入らねぇな」
晋作が吐く。
「そうか」
あっさりと返す。
だが、その目は楽しんでいる。
「なら、慣れろ」
一拍。
「これが“次”だ」
押し付けではない。
事実として置く。
その温度が、逆に重い。
久坂が、静かに口を開く。
「来い」
短く。
「まだ見せるものがある」
晋作は、わずかに息を吐く。
肩に残る違和感を押し込めるように。
「……案内しろよ」
それだけ言って、歩き出す。
拒絶でも、服従でもない。
ただ――踏み込む選択。
その背を見て。
道満が、わずかに目を細める。
興味深そうに。
「いいな」
小さく、呟く。
「壊しがいがある」
その声だけが、静かに残った。
――松下村塾、結界内奥。
踏み込んだ瞬間、空気の質が変わる。
重いのではない。
濃い。
呼吸のたびに、目に見えない何かが肺の奥に絡みつくような感覚が残る。
床に刻まれた術式が、かすかに脈打っている。
踏み出す足に反応するように、その光がわずかに揺れた。
「……ずいぶんやったな」
晋作が低く呟く。
視線は止めない。
観察するように、周囲をなぞる。
「必要だった」
久坂の返答は短い。
振り返らない。
ただ前へ進む。
その背に、迷いはなかった。
やがて、空間が開ける。
だが――広がったはずの場所は、むしろ圧迫感を強めていた。
空気が逃げ場を失っている。
押し留められている。
その中心に。
「……」
晋作の足が、わずかに止まる。
そこに、いた。
人の形。
だが、完全ではない。
輪郭が、微かに揺れている。
存在そのものが安定していない。
それでも、確かに“そこにいる”。
わずかに歪む。
戻ろうとするように。
あるいは、留められていることに抗うように。
――ドクン。
術式が脈打つ。
空気が震える。
目に見えない圧が、場を満たす。
「……なんだ、それ」
低く、押し出すような声。
視線は逸らさない。
横から、声が差し込む。
「核じゃ」
蘆屋道満。
いつの間にか、すぐ近くに立っている。
気配が薄い。
だが、確実に間合いの内側にいる。
「繋いでおる」
淡々と、言葉だけを置く。
説明ではなく、確認のように。
「……気持ち悪ぃな」
晋作が吐く。
だが、声に拒絶はない。
ただの感想。
その場から動こうともしない。
久坂が、静かに言う。
「それでも進める」
振り返らないまま。
「止まるよりはいい」
短い。
だが、それで十分だった。
晋作は、答えない。
ただ、その“存在”を見続けている。
視線は外さない。
切り離さない。
道満が、わずかに口元を緩める。
「いい」
小さく。
「それでいい」
評価するように。
「そのまま見ておれ」
一歩、引く。
全体を見渡す位置へ。
「もうすぐ分かる」
その一言だけが落ちる。
空気が、さらに濃くなる。
術式の脈が、わずかに早まる。
何かが、起きる。
まだ始まっていない。
だが――確実に、そこへ向かっている。
晋作は、動かない。
ただ、そこに立ったまま。
その“異質”を、受け入れきれないまま見つめていた。
――松下村塾、手前。
昼の光が、まっすぐ地面を照らしている。
人の気配はない。
風は、ある。
鳥の声も、遠くに聞こえる。
――それなのに。
「……止まって」
晴明の声が、静かに落ちた。
安倍晴明。
歩みかけていた足が、ぴたりと止まる。
誰も理由は聞かない。
その一言で十分だった。
晴明は、わずかに目を細める。
視線は、松下村塾の奥へ。
何も見えないはずの場所を、正確に捉えている。
「……歪んでる」
ぽつりと。
だが、その一言は確信だった。
一歩、前に出る。
「このまま入れば――」
軽く息を吐く。
「外に漏れる」
淡々とした声。
「戦闘の音も、振動も」
周囲を一瞥する。
「ここから先、市街地に影響が出る」
その言葉で、全員の意識が切り替わる。
ここはもう、“ただの場所”じゃない。
「ここで止める」
晴明は、静かに告げる。
右手を上げる。
空間をなぞるように、ゆっくりと動かす。
見えない線を引くように。
「――謹請」
低く、澄んだ声。
昼の空気に、すっと通る。
「四方を鎮め、境を定めん」
足元に、淡い光が浮かぶ。
円が、静かに広がる。
陽の光の中で、それはかえって異質だった。
「音を断ち、震を封じ」
空気が変わる。
風の流れが、わずかに歪む。
外界との境界が、ゆっくりと形を持つ。
「内を以て内とし、外を侵さず」
最後の言葉。
呼吸と重なるように。
「――急急如律令」
その瞬間。
世界が、一枚切り替わった。
音が、遠くなる。
風が、届かない。
同じ場所のはずなのに――
どこか“隔てられた空間”になる。
結界。
昼の光の中で、それだけが静かに成立していた。
晴明は、ゆっくりと手を下ろす。
周囲を確認する。
揺らぎはない。
漏れもない。
「……これでいい」
小さく呟く。
振り返る。
「準備はできた」
その一言が、合図になる。
空気が変わる。
戦闘前の緊張へと。
セレナが、わずかに笑う。
「やっとね」
肩を軽く回す。
美雪の周囲に、冷気が静かに滲む。
総司は、刀に手を添える。
「……行こうか」
その声で、全員の意識が揃う。
昼の光の中。
しかしその先にあるのは――
明らかに“異なる領域”。
誰一人迷わず。
松下村塾へと、踏み出した。
――松下村塾、結界内。
空気が、わずかに揺れた。
その変化に、最初に反応したのは――
蘆屋道満だった。
影が一つ、落ちる。
黒い羽。
式の鴉が、音もなく舞い降りる。
そのまま、道満の肩へと留まった。
羽ばたきは小さい。
だが、その瞳は外の情報をそのまま映している。
道満は、指先でその羽を軽くなぞる。
「……来たか」
ぽつりと。
どこか軽い響きの声。
「思ったより早いな」
独り言のように呟く。
その視線が、横へ流れる。
晋作へ。
「高杉晋作…お前も行け」
軽く顎をしゃくる。
「せっかくだ。昔の連中が、わざわざ来てくれてるんだ」
わずかに口元が上がる。
「迎えてやらないのは、もったいないだろ?」
一瞬、間。
晋作は、視線だけを向ける。
そして――
「……行かねぇよ」
短く。
はっきりと。
「今はまだ、その気分じゃねぇ」
拒否は明確だった。
その場の空気が、わずかに止まる。
久坂玄瑞は何も言わない。
ただ、静かに見ている。
道満は、わずかに肩をすくめた。
「そうか」
あっさりと。
怒りも、否定もない。
一歩、距離を詰める。
「なら――少しだけ手を入れるか」
軽く言う。
まるで、調整でもするかのように。
指先が、空間をなぞる。
その瞬間――
空気が、歪む。
見えない圧が、晋作の周囲に絡みつく。
「……っ」
肩が、わずかに揺れる。
視界が、ぶれる。
だが――崩れない。
記憶は、そのまま。
消えない。
だが。
優先が、変わる。
奥に押し込められていたものが、前へと押し出される。
松陰。
攘夷。
志。
守るべきもの。
討つべきもの。
それらが、鮮明になる。
他のすべてを押しのけるように。
「……なるほどな」
小さく、吐く。
ゆっくりと顔を上げる。
その目は、変わっていた。
揺らぎはある。
だが、方向は定まっている。
視線が、結界の外へ向く。
「来てるのか」
淡々と。
そこに、かつての温度はない。
久坂が、わずかに口元を緩める。
「行くぞ」
短く。
「……ああ」
晋作が応じる。
迷いはない。
ただ、立つ場所が変わっただけ。
かつての仲間。
だが――
「敵、だな」
ぽつりと、言い切る。
道満が、その様子を見ている。
静かに。
ただ、結果を確認するように。
「いい」
小さく。
「それでいい」
その声を背に。
久坂と晋作は、歩き出す。
結界の奥から――
迎撃へ向かって。
――松下村塾、敷地内。
一歩、踏み込んだ瞬間だった。
空気が変わる。
「――来るぞ」
総司の低い声。
次の瞬間――
影が動いた。
建物の陰。
木立の間。
複数の気配が、一斉に現れる。
――同志たち。
蛤御門で、久坂が率い、指揮していた者たち。
無言。
息遣いが、揃いすぎている。
生きている人間のそれではない。
だが――
死者とも違う。
どこか歪に繋ぎ止められている存在。
そのまま整列する。
一糸乱れぬ動き。
そして――
銃を構えた。
一斉に。
AX班へ向けて。
間合いは遠くない。
撃てば当たる距離。
空気が、一瞬で張り詰める。
その中で。
足音が、ひとつ。
ゆっくりと。
前へ出てくる影。
久坂玄瑞。
視線が、まっすぐ向けられる。
AX班へ。
「……思ったより早かったな」
静かに言う。
その声音に、揺らぎはない。
「昨日のことがあって――」
一拍。
「もう少し後になると思っていたが」
淡々と。
事実を述べるように。
それに応えたのは――
総司だった。
沖田総司。
一歩、前へ出る。
刀に添えられた手は、そのまま。
「友達を迎えに来るのにさ」
わずかに笑う。
だが、目は笑っていない。
「早いも遅いもないでしょ」
静かに言い切る。
その一言で。
空気が、わずかに動く。
久坂の目が、細くなる。
「……新選組、か」
吐き捨てるように。
視線が、総司の羽織へ落ちる。
「忌々しいな」
低く。
「その羽織……」
次の瞬間。
一歩、踏み込む。
「てめえの相手は――俺がする!」
鋭く、言い放つ。
殺気が走る。
それを切り裂くように――
「晋作さんはどこ!?」
声が響く。
一歩、前へ。
迷いなく。
弓を引く。
矢を番える。
その動きに、迷いはない。
視線は一直線に久坂へ。
怒りではない。
取り乱しでもない。
ただ、凛とした強さ。
まっすぐな意志。
「どこにいるの!?」
張り詰めた声。
久坂は、その様子を見て――
わずかに口元を緩めた。
「そう慌てるな、お嬢さん」
余裕を崩さない。
軽く、肩越しに振り返る。
「おい、高杉」
淡々と。
「呼ばれてるぞ」
その言葉と同時に――
空気が、歪む。
結界の奥。
揺らぐ境界の向こうから。
影が現れる。
奇兵隊を従え。
一歩ずつ。
踏み出してくる。
そして――
その中心に。
高杉晋作。
姿を現した。
視線が、交差する。
茜と。
晋作の目は――
まっすぐこちらを見ている。
だが。
そこに宿る色は。
かつてのそれとは、明らかに違っていた。
視線が、ぶつかる。
距離は、そう遠くない。
だが――
その間にあるものは、あまりにも大きかった。
「……晋作さん」
茜の声。
揺れていない。
まっすぐに、届く。
一歩、踏み出す。
弓は、下げない。
矢も、外さない。
それでも――
敵としてではなく。
“本人”に向けている。
「……迎えに来た」
短く。
それだけ。
余計な言葉はない。
その一言に、すべてが込められている。
晋作は、わずかに目を細めた。
一瞬だけ。
何かを測るように。
そして――
「……変わったな、お前」
ぽつりと。
視線は外さない。
「昨日の今日で……何があった?」
探るように。
その奥にあるのは――
ほんの僅かな違和感。
一拍。
「……いや」
小さく、吐く。
「違うか」
自分で切り替えるように。
空気が、わずかに変わる。
「わざわざ来なくてもよかったのに」
軽く、肩を鳴らす。
「ここから先は――」
一瞬。
間が落ちる。
「お前らの来る場所じゃねぇ」
はっきりと、線を引く。
その言葉に。
茜の指先が、わずかに震える。
だが。
弓は、揺れない。
「……違う」
即座に、返す。
間を置かない。
「そこにいるのが晋作さんなら――」
息を吸う。
強く。
「私が来ない理由、ないでしょ」
言い切る。
その一言に、迷いはない。
沈黙。
ほんの一瞬。
晋作の目が、わずかに揺れる。
だが――
次の瞬間には、消える。
「……言うようになったじゃねぇか」
小さく、笑う。
その笑みは、どこか歪んでいる。
「前は、もう少し引いてただろ」
視線は逸らさない。
「自分から踏み込んでくるタイプじゃなかったはずだ」
わずかに肩をすくめる。
「そういうとこ――嫌いじゃなかったけどな」
一拍。
ほんのわずかな沈黙。
「……今は、邪魔だ」
空気が、切り替わる。
完全に。
敵として。
その言葉を、受けても。
茜は、目を逸らさない。
むしろ、一歩。
さらに踏み込む。
「……それでもいい」
静かに。
でも、強く。
「何回でも言う」
矢を、わずかに引く。
狙いは、外さない。
「戻ってきて、晋作さん」
その一言が――
戦場に落ちた。
その瞬間――撃て。
命令と同時に。
銃声が、連なる。
空気を裂く、乾いた連撃。
「――っ!」
だが、その瞬間。
「……来る」
美雪が、一歩前へ出る。
静かに手をかざす。
冷気が、一気に広がる。
「――防ぐ」
地面が凍りつき――
瞬時に、氷壁が立ち上がる。
幾重にも重なる、防壁。
弾丸が叩きつけられる。
ガンッ、ガンッ、と鈍い衝撃。
だが――
氷壁は、揺るがない。
ひび一つ入らず。
ただ、そこに在る。
すべてを拒むように。
「……問題ない」
短く、静かな声。
その背後で。
「十分よ」
セレナが、わずかに口元を上げる。
一歩、踏み出す。
氷壁の影から。
「ここからは――押し返す」
指が、空をなぞる。
光が走る。
ルーン。
瞬時に形成される。
足元に刻まれた瞬間――
身体が軽くなる。
「――行くわよ」
踏み込む。
氷壁を抜ける。
弾幕の中へ。
躊躇なく。
最小限の動きで弾を捌き、すり抜ける。
「――Pierce Fate」
ゲイ・ボルグが、一直線に突き出される。
空気を裂き。
前方を貫く。
その横で――
「……合わせる」
総司が、同時に動く。
低く。
速く。
地面を蹴る。
「――無影」
一閃。
斬撃が走る。
そのまま――久坂へ。
「来ると思っていた」
低い声。
前へ出る影。
久坂玄瑞。
間合いに踏み込む。
刀を構え――受ける。
キンッ――
鋭い衝突音。
刃と刃が噛み合う。
火花が散る。
「……いいな」
総司が、わずかに笑う。
目は、鋭く。
「やりやすい」
そのまま、踏み込む。
斬る。
連ねる。
一方――
セレナは止まらない。
一直線に。
その先にいるのは――
晋作。
「……っ!」
さらに加速する。
その瞬間。
「――セレナさん!」
後方から、声。
茜。
弓を引く。
「援護します!」
放つ。
矢が、空を裂く。
正確に。
セレナへ向けられた銃口を撃ち抜く。
さらに。
弾道を読み切り、弾丸を潰す。
「いいわね」
セレナが、わずかに笑う。
「そのまま続けなさい!」
だが――
茜の視線は、そこにない。
ただ一人。
晋作へ。
弓を構えたまま。
「……晋作さん!」
呼ぶ。
強く。
揺らがず。
「まだ戻れる!」
一歩、踏み出す。
「あなたは――そんな人じゃない!」
声が、戦場に響く。
その言葉に。
ほんの一瞬。
晋作の指が止まる。
だが――
次の瞬間には、動く。
銃が、持ち上がる。
「……うるせぇな」
低く、押し殺した声。
「戦場で、説教かよ」
引き金に、指がかかる。
「甘ぇんだよ」
冷たい言葉。
だが。
その奥に、わずかな揺らぎ。
消えきっていない何か。
「……っ」
茜の指先が震える。
それでも。
弓は、下げない。
「……何回でも言います」
息を吸う。
強く。
「戻ってきて、晋作さん!」
その声が――
再び、戦場に落ちた。
引き金が、引かれた。
乾いた破裂音が、空気を裂く。
一直線に――茜へ。
「……っ」
避けない。
足も、視線も、動かさない。
そのまま受け止めるように、立つ。
だが――
弾は、頬のすぐ横をかすめて、過ぎた。
肌を撫でる風だけが残る。
遅れて。
背後で、鈍い音が落ちた。
振り向かなくても分かる。
誰かが、倒れた。
「……え……」
茜の呼吸が、わずかに乱れる。
視線を、前へ戻す。
その先にいるのは――晋作。
銃口は、もう下がっていた。
いや。
下がったのではない。
“保てなかった”ように。
「……っ、ぐ……!」
指が、ほどける。
銃が、地面に落ちる。
乾いた音が、やけに大きく響いた。
そのまま。
晋作は、頭を押さえる。
押し潰すように。
何かを、内側から抑え込むように。
「……なんだよ……これ……っ」
低く、絞り出す声。
呼吸が乱れ、肩が揺れる。
明らかに――おかしい。
さっきまでの“敵の顔”が、崩れている。
「……晋作さん……!」
思わず、足が出る。
だが――
「茜!」
鋭く、割って入る声。
セレナ。
前線で敵を捌きながら、振り向かずに叫ぶ。
「止まらないで!」
一歩、踏み込みながら。
槍が、鋭く閃く。
「戦いながらでいい!」
弾道を切り裂き、道をこじ開ける。
「そのまま、声をかけ続けなさい!」
間を置かずに。
「――その通りだ」
静かだが、芯のある声が重なる。
晴明。
舞う符が、弾道を逸らし、空間を整える。
視線は、ただ一点。
晋作へ。
「やはり……術だ」
言葉を選ぶ余裕はない。
だが、確信だけは揺るがない。
「記憶は残したまま――意識だけを縛っている」
一拍。
観察は終わっている。
結論だけが落ちる。
「だが――」
その目が、わずかに鋭くなる。
「今のは、明らかに違う」
銃弾の軌道。
意図的に外した動き。
「揺らいでいる」
断言する。
「茜の言葉に、反応している」
さらに、踏み込むように。
「本来の晋作が――抵抗している可能性が高い」
その言葉が、空気に沈む。
重く。
だが、確かな重みで。
「……っ」
茜の中で、何かが繋がる。
さっきの弾。
あの一瞬のズレ。
あれは――偶然じゃない。
「……聞こえてますよね」
声が、少しだけ低くなる。
震えは、消えていた。
「ちゃんと、届いてる」
一歩、踏み出す。
今度は、迷わない。
弓を、構え直す。
矢先はぶらさないまま。
視線も、逸らさない。
「だから――」
息を吸う。
静かに。
深く。
「戻ってきて」
短い言葉。
けれど――
まっすぐに、刺さる声だった。
「……戻ってきて」
その声が、まっすぐ届いた――
次の瞬間。
空気が、裂ける。
「――甘い」
低い声とともに。
割り込む影。
久坂玄瑞。
一歩で、間合いを潰す。
茜と晋作の間に――立つ。
刃が、振り下ろされる。
だが。
「――させない」
その直前。
銀の閃き。
総司が、割って入る。
キンッ――
火花が散る。
刃が、ぶつかり合う。
距離が、押し合う。
「……っ」
総司の足が、地面を噛む。
押し切らせない。
「遅い」
久坂が、低く言う。
そのまま、刃を滑らせ――
受け流す。
だが、その動きの中で。
視線は、後ろへ。
晋作へ。
「高杉ィ!!」
叫ぶ。
鋭く、突き刺すように。
「そんな言葉に惑わされるな!!」
空気が、震える。
「お前の攘夷は――そんなものか!!」
その言葉は。
ただの挑発ではない。
思想を、叩きつける声。
その瞬間――
「……っ、が……!」
晋作の身体が、強く揺れる。
頭を押さえていた手に、さらに力が入る。
呼吸が、乱れる。
「……うる、せぇ……」
掠れた声。
だが――
次の瞬間。
空気が、変わる。
どこからともなく。
不気味な声が、響いた。
――その傷
ただの痛みと思うな
我が呪は、既に其処に在り
刻まれしものよ
内より開け
――侵せ
急急如律令
言葉が、空間に染み込む。
逃げ場はない。
響きが、直接“内側”へと落ちる。
「……っ!?」
晋作の身体が、跳ねる。
肩――
あの傷口から。
何かが、蠢いた。
黒い。
液体のようで。
影のようで。
形を持たない何かが――這い出す。
「……っ、ぐあぁ……!!」
押さえていた手が、弾かれる。
黒が、腕を伝う。
首元へ。
胸へ。
侵食する。
ゆっくりと。
確実に。
肌を、染めていく。
「……なに……それ……」
茜の声が、震える。
目の前の現実が、理解を拒む。
それでも。
視線は、逸らせない。
黒が、脈打つ。
呼吸に合わせるように。
鼓動に合わせるように。
そして――
晋作が、顔を上げた。
その目。
さっきまでの揺らぎは、ない。
代わりにあるのは――
濁った光。
禍々しい、気配。
「……晋作さん……?」
かすれた声。
名前を呼ぶ。
願うように。
縋るように。
だが――
返らない。
その姿を見て。
久坂が、笑った。
低く。
喉の奥で、転がすように。
「……はは」
その声には、明らかな狂気が混じっている。
抑えきれない愉悦。
歪んだ確信。
「遅いんだよ」
一歩、踏み出す。
「気づくのも、縋るのも」
口元が、吊り上がる。
「もう――終わりだ」
その視線が、全員を貫く。
「元に戻る前に」
わずかに間を置き――
言い切る。
「死ね」
「……道満……」
低く、押し殺した声。
だがその一言に――
抑えきれない怒りが滲む。
晴明の指先が、わずかに震えていた。
――その瞬間。
空気が、変わる。
同じ“間”で。
五人すべての感情が、爆ぜた。
「……ふざけないで」
美雪の声は、静かだった。
だが、その奥にある怒りは冷たい刃のように鋭い。
「……やりすぎよ」
セレナが、吐き捨てる。
軽い口調のまま――だが目は笑っていない。
「……外道が」
晴明の声が落ちる。
低く、重く、確実に怒りを含んで。
「……それ以上は、見てられないかな」
総司が、小さく呟く。
やわらかい声のまま――完全にスイッチが入っている。
「……絶対、戻します」
茜が、震えながらも言い切る。
涙を浮かべながら、それでも目は逸らさない。
「――っ!」
総司が、踏み込む。
一瞬で間合いを潰す。
「――無影」
斬る。
速い。
重い。
迷いがない。
キンッ――!
久坂が受ける。
だが――押される。
一歩。
また一歩。
確実に、後退する。
「……っ」
受けながら、歯を食いしばる。
総司は止まらない。
斬る。
繋ぐ。
畳みかける。
「お前は――!」
踏み込みながら、叫ぶ。
「晋作の親友じゃなかったのか!!」
その言葉が、叩きつけられる。
一瞬。
久坂の目が揺れる――
だが。
すぐに、歪む。
口元が、吊り上がる。
「……はは」
笑う。
明らかに、正気ではない。
「親友だとも!」
刃を弾きながら、言い放つ。
「攘夷志士という志のもとにな!!」
火花が散る。
押し返す力が、わずかに増す。
「お前ら幕府側……新選組には分かるまい!!」
吐き捨てる。
その言葉に。
総司は、わずかに目を細めた。
「分からないね……」
静かに、返す。
だが、その声は揺れない。
「でも――」
一歩、踏み込む。
刃が、さらに鋭くなる。
「その思想を」
振り下ろす。
「人を辞めてまで貫く信念には、感服する」
受け止められる。
だが――止まらない。
「けど」
間を詰める。
視線を外さない。
「同意はできない!!」
重い一撃。
久坂の足が、大きく下がる。
「……っ」
距離が、開く。
久坂は、息を吐く。
その顔には――
まだ、笑みがある。
狂気を孕んだまま。
「……知ったように、ほざくな」
低く、吐き捨てる。
そして。
手を上げる。
「――撃て」
その一言で。
銃口が、一斉に総司へ向く。
発砲。
乾いた音が、重なる。
だが――
「――通さない」
総司の前に、影が出る。
美雪。
一歩、踏み込む。
手をかざす。
瞬間。
氷壁が展開される。
圧倒的な密度。
弾丸が叩きつけられる。
だが――
揺るがない。
すべてを、拒む。
「……美雪ちゃん」
総司が、短く息を吐く。
その背に守られながら。
「ありがとう」
「このくらい、全然」
振り返らずに、答える。
静かに。
けれど、迷いなく。
その言葉に。
総司が、わずかに笑う。
そして――
一歩、前へ。
「……茜のために、道を作る」
低く。
だが、確かな意志。
「力、貸してくれるかな?」
その言葉に。
美雪は、わずかに目を細めた。
そして――
小さく、笑う。
「もちろん」
即答だった。
「茜と晋作のために――やろう」
その瞬間。
二人の呼吸が、重なる。
意識が、揃う。
同じ方向を、見ている。
同じ想いを、抱いている。
――繋がる。
見えないはずの何かが。
確かに。
結ばれる。
「――行くよ」
「――うん」
同時に。
叫ぶ。
「「――LINK!!」」
光が、弾けた。
光が、弾ける。
次の瞬間――
総司の刃に、変化が現れる。
白く。
静かに。
だが、確かに。
刀身に、雪の結晶が浮かび上がる。
細やかで、鋭い紋様。
呼吸に合わせるように、淡く輝く。
同時に――
美雪の中に、流れ込む感覚。
軽い。
速い。
研ぎ澄まされた運動感覚。
視界が、広がる。
身体が、自然と動く。
「……これ……」
わずかに息を呑む。
だが、迷いはない。
「――行くよ、美雪ちゃん!」
総司の声。
短く、真っ直ぐ。
「……うん!」
強く、頷く。
次の瞬間。
二人が、同時に踏み出した。
速い。
一歩目から、違う。
空気を裂く速度。
地面を滑るように――駆ける。
斬る。
凍る。
踏み込む。
重なる。
一つ一つの動きが、噛み合う。
無駄がない。
迷いもない。
まるで――
最初から一つだったかのように。
その様子を見て。
「……やるじゃない」
セレナが、口元を上げる。
だが、すぐに視線を切り替える。
「晴明!」
呼ぶ。
短く。
「私たちも――いけるでしょ?」
一歩、前へ。
槍を構える。
「……分かってるよ」
晴明が、静かに応じる。
符が、舞う。
空間が、整う。
「茜の道を作る」
その言葉に。
セレナが、笑う。
「同感」
一瞬。
視線が、重なる。
そのまま――
踏み出す。
同時に。
「「――LINK」」
静かに。
だが、確かに。
重なる声。
その瞬間。
晴明の術式が、流れ込む。
五行。
木・火・土・金・水。
すべての理が、編み込まれる。
それが――
セレナの二本の槍に、宿る。
ゲイ・ボルグ。
そして――天の逆鉾。
質が、変わる。
空気が、歪む。
存在そのものが、一段引き上がる。
同時に――
セレナの力が、晴明へと流れる。
因果。
必中。
避けられない軌道。
それが、晴明の術に重なる。
「……面白いね」
晴明が、わずかに目を細める。
術の“届き方”が、変わる。
外さない。
逃がさない。
「最高じゃない」
セレナが、笑う。
軽く。
だが、その目は戦場を捉えている。
「行くわよ」
一歩。
踏み込む。
その動きは――
もう、さっきまでとは別物だった。
「――行って!」
総司の声が、鋭く空気を切り裂いた。
間を置かずに、美雪の声が重なる。
「茜!」
さらに、セレナ。
「走りなさい!」
そして、晴明が低く落とす。
「道は、作る」
四つの声が、重なった瞬間――
目の前の景色が、変わる。
塞がれていたはずの戦場に、一本の“流れ”が生まれる。
斬撃が、空間を裂き。
氷が、足場を整え。
炎と術が、押し寄せる敵を押し返す。
無理やりこじ開けたはずの道が、不思議と“通れる形”に整っていく。
その先に。
晋作の姿が、はっきりと映る。
「……っ」
茜の呼吸が、深くなる。
さっきまで胸を締め付けていた迷いは、もうない。
ただ一つ。
――連れ戻す。
その意志だけが、まっすぐに残っている。
踏み出す。
地面を蹴る。
走る。
視線は逸らさない。
一直線に。
その動きに、晋作が気づく。
ゆっくりと、顔を上げる。
視線が、ぶつかる。
ほんの一瞬。
だが、その瞬間だけは――確かに“繋がった”。
しかし。
次の動作は、容赦がない。
銃が、持ち上がる。
狙いは、正確に――茜。
「……っ!」
それでも。
止まらない。
避けない。
そのまま、駆ける。
引き金が、引かれる。
乾いた音。
だが――
キンッ!!
弾丸は、途中で弾かれる。
総司だった。
一瞬の踏み込み。
すでに間に入り込み、刃で軌道を断っている。
「――行けるよ」
振り返らずに言う。
短く。
確信を込めて。
その背が、道を支える。
だがその先で――
動く影。
晋作の周囲。
同志たちが、一斉に動き出す。
守るように。
囲い込むように。
銃口が向く。
同時に、槍が構えられる。
発砲。
弾幕が、一気に押し寄せる。
「――邪魔よ」
セレナが、低く吐き捨てた。
踏み込む。
ルーンが、瞬時に展開される。
槍が、唸る。
「火――土」
短く、詠む。
ゲイ・ボルグが、炎を纏う。
次の瞬間。
横薙ぎ。
爆ぜる炎が、敵をまとめて吹き飛ばす。
だが、それで終わらない。
もう一振り。
天の逆鉾が、空を裂く。
その軌跡に応じるように――
地面が、唸る。
ゴンッ――!!
突き上がる土。
無数の槍となって、周囲を貫く。
包囲が、崩れる。
空間が、一気に開く。
その隙間を縫うように。
冷気が走る。
「――そこ」
美雪の声。
氷の槍が、一直線に走る。
狙いは――銃。
正確に叩く。
弾く。
軌道が、逸れる。
さらに。
「――縛」
晴明の声が落ちる。
指が、空を切る。
九字が刻まれる。
空間が、わずかに歪む。
動きが鈍る。
弾道が、乱れる。
すべてが。
“通すため”に、噛み合っていく。
その中を――
茜が、走る。
息は荒い。
それでも、止まらない。
視線は、ただ一つ。
晋作だけを捉えている。
距離が、縮まる。
もう、すぐそこまで来ている。
誰も、もう止められない。
この流れも。
この想いも。
ただ――
届くために。
「……晋作さん!」
茜は、走る。
一直線に。
声を投げながら――距離を詰める。
その視線の先。
晋作が、ゆっくりと左手を上げる。
銃口。
まっすぐに、茜へ。
引き金に――指がかかる。
その瞬間。
「――させるか!」
風を裂くように、久坂が踏み込む。
一直線に、茜へ。
だが。
「追わせないよ」
静かな声とともに、総司が滑り込む。
進路を塞ぐ。
完全に。
「……っ、チッ!」
舌打ち。
刀を構える。
「新選組……どけぇぇ!!」
斬りかかる。
殺気を乗せた一撃。
「退かないよ」
総司は動かない。
受ける。
流す。
押し返す。
確実に――進ませない。
その間にも。
距離は、縮まる。
晋作の指が、引き金を引く。
発砲。
乾いた音。
弾丸が――茜の肩をかすめる。
「……っ!」
血が、散る。
だが。
止まらない。
足は、止まらない。
「……あと……!」
八歩。
届く距離。
その瞬間。
二つの影が、前に割り込む。
奇兵隊の同志。
道を塞ぐ。
槍が、構えられる。
「――っ!」
セレナが気づく。
美雪も。
晴明も。
だが――間に合わない。
その時。
茜の足が、わずかに踏み込みを変える。
弓を、握り直す。
「……ここで止まる気、ないから」
短く。
言い切る。
次の瞬間。
梓弓が、変形する。
両端から、刃。
短刀が、突き出る。
淡い光。
破魔の力を帯びた刃が、静かに輝く。
一歩。
踏み込む。
円を描くように――舞う。
神楽のように。
一人目へ。
滑らかに、突き立てる。
触れた瞬間――
霧散。
存在が、崩れる。
止まらない。
流れるままに。
もう一人へ。
逆側の刃。
同じ軌道。
同じ“舞”。
突き立てる。
――消える。
一瞬。
道が、完全に開く。
「……え?」
セレナが、思わず漏らす。
「茜すごい!あんな仕込み……あったんだ?」
茜は、止まらない。
最後の一歩。
そのまま――
ぶつかる。
倒し込む。
抱きしめる。
二人の身体が、地面へと崩れる。
砂埃が、舞い上がる。
「高杉ィ!!」
久坂の叫び。
狂気を孕む。
「その女を殺せ!!」
さらに。
「それが一番の邪魔だ!!」
地面の上。
晋作の手が、動く。
黒に侵された手。
ゆっくりと――茜の首へ。
掴む。
締め上げる。
「……っ……!」
呼吸が、止まる。
それでも。
目は逸らさない。
「……晋作」
声を、出す。
もう敬語はない。
「メッセージ……見た」
息が詰まりながらも。
言葉を繋ぐ。
「私の手で終わらせろって……」
一瞬。
言葉が詰まる。
それでも。
「やっぱ……無理だよ」
はっきりと。
でも、優しさを残したまま。
「だから」
視線をぶつける。
「繋がりを……絆を信じる」
言い切る。
迷いなく。
「……それでいいよね?」
その瞬間。
首を掴む手が――
止まる。
ほんの、わずかに。
「……っ!?」
久坂の顔が歪む。
焦り。
その時。
銃声。
別方向から、総司へ。
反射的に躱す。
「――っ、しまった!」
総司の声。
その一瞬。
久坂が、動く。
一直線に――茜へ。
走りながら、叫ぶ。
「高杉ィ!!」
声が、響く。
「お前の攘夷はそんなものか!!」
距離が、詰まる。
「俺との友情はどうした!!」
さらに。
「先生の思想を過去を捨てるのか!!」
刃が、振り上がる。
「こいつさえ、こいつさえ…引き剥がして斬れば!!」
振り上げられた久坂の刀振り下ろされる
その時。
「――違う!!」
茜が、叫ぶ。
空気を裂く声。
「確かに……!」
息が乱れる。
それでも止めない。
「150年前は、親友で、同士だったかもしれない!」
言い切る。
「でも!!」
踏み込む。
「今、この人の隣にいるのは……パートナーは私!」
叩きつける。
涙が滲む。
それでも逸らさない。
「死んだ過去の人が!!」
声が震える。
それでも折れない。
「今を生きてるこの人を!!」
力を込める。
「……私の恋人を!!」
一瞬の間。
そして――
「奪うな!!!!」
叫びが、響いた。
その瞬間。
光が、弾ける。
茜の胸元。
風のネックレスが、輝く。
同時に。
晋作の胸元。
火のネックレスが、応える。
共鳴。
強く。
強く。
光が、増していく。
二人を――包み込むように。
22話 完




