《2016年、冬》2/4 お〇んチョと言わないで
「ピャー……ww また、ちゃんぴょん……」
「…………」
「……うん、そうだな。凄いよ、Pノコ」
「うん……ありがとう、すーちゃん、くないちゃん」
「…………」
「うん……あ、ありがとう?Pノコ……」
最初のマッチから数えて連続4回、Pノコは〝爪痕〟というやつと〝ダブハン〟というやつを毎マッチ二つ同時に取り続けた。くないによるとその二つの称号はガチプレイヤーが年単位で努力しても取れないことの方が多いものらしくて、それを4マッチ連続で同時取得というのはプロ顔負けの所業だそうだった。
「じゃ行きますか、次」
「…………」
「あ、でも結構もうそろそろ、いい感じなんじゃないか……?」
「……? すーちゃん?」
「…………」
「結構場も暖まったというか、十分盛り上がったというか。時間ももう、結構経ってるし」
「……すーちゃん嫌い?このゲーム」
「…………」
「え?いやいやいやいや、全然。凄い楽しいゲームだなとさっきから、思わせて、いただいていて……」
「すーちゃん……」
「お前チートだろ」
とくないがはっきりとした発声で言った。
「……え?くないちゃん……」
「絶対チートだろ。おかしいもん、命中精度」
「くない?」
「…………」
「100%じゃない?ほとんど。しかも〝超☆よわいdeath〟とか使って」
「……そんなおかしいことなのか?」
「…………」
「うん、おかしいよ。プロでもせいぜい6割とかなのに、今日初めてであんな当たるなんてどう考えても異常だね」
「あそう?」
「…………」
「すーさん、こいつやってるよ。ゲーマーとしても配信者としても越えちゃだめなライン、越えちゃってる」
「……うん、だとしてもそういうことを配信ではっきりと言うもんじゃないよ」
「…………」
「いやだめだって、すーさん。すーさんはこいつに甘過ぎる」
「いや甘過ぎるとかじゃない、裏でする話と表でする話を分けろってことをあたしは今」
「くないちゃん」
「……うん、なんだよ。なんか弁解でもあんのか?」
「やめろ、くない」
「くないちゃん……」
「言っとくけどリスナーのみんなに確認しても分かることだからな?あんな命中率、このゲームで出るわけないってことぐらい」
「くない」
「くないちゃん、使ってるキャラが、悪いんだとおもう……」
「あ、やっぱそうなのかな?」
「……え、くない?」
「うん。くないちゃんはね、一回考えて動くタイプだから、向いてないと思う、〝鬱骸骨〟とかは」
「あ、そう?でも……そう、確かに。よく分かんなかった、このキャラ」
「うん」
「強いとされてんじゃん?でもなんか何?みたいな。あの飛ぶ前の溜め。突然の敵襲から逃げるためのジャンプじゃん?なのに急いで押したらその場でびょん、て一回軽く跳ねるだけ、みたいな」
「うん……対面で焦りがちな人には向いてない、〝鬱骸骨〟」
「あそう?」
「うん。〝元気印〟、使って?」
「あー〝元気印〟……確かにいいキャラだけど、ソロだとキツいんだよねぇ……」
「うん、大丈夫。あちしがいるから」
「! Pノコちゃん……」
「うん。これからは一緒にプレイしてあげる、くないちゃん」
「Pノコちゃん……!」
「…………」
Pノコの異常な強さはさておき、私は2~3マッチ目辺りからくないに関して〝なんか弱くないか?こいつ〟と思い始めていた。ほとんど毎日やっているそうだから知識に関しては申し分ないようだけど、もう二時間近くもやって少しは慣れてきた私より明らかにあっさり倒されるし、ダメージも全然稼いでいない。〝倒れてもシールド張って味方を援護するんだよ〟とか〝回復アイテムは使用中にもう一回押すと連続で使用できるから〟とか色んな知識を授けてくれたけど、どうもくない本人はそういったテクニックの全てを十分に活用できているとは言えない状況のようだった。
「やった!すーさん。布教成功した笑」
「良かったじゃん、くない……あたしは?Pノコ。あたしは何のキャラ使えばいい?」
「うん。すーちゃんは、〝膝がタイヤ子〟のままでいい」
「あそう?」
「うん。可愛い、〝膝がタイヤ子〟……」
「あー可愛い……可愛い?」
〝膝がタイヤ子〟は30歳いくかいかないかぐらいの目つきの鋭い若い女性で、長い髪を頭の上でぎゅっとまとめてサイドとバックを刈り上げた、好戦的な見た目のクールビューティーだった。
「いや可愛いとかではなく性能の話……」
「でもそれ思った!」
「でしょ!」
「えぇ……?」
「うん!可愛いと思う、〝タイヤ子〟。細いし、目つきキビシーし」
「そう。でもさ?細い割に肉付きいいじゃん?」
「そう!あの……お尻大きいよね笑」
「そう~……もうマジ可愛い、あの顔であのキャラでお尻だけ大きいの……」
「お尻……あー、それで」
Pノコとくないはさっきまでやっていたマッチとその二つ前のマッチ……つまり私が最後まで生き残っていた二つのマッチの最後でチャンピオンに輝いた後に、私に〝タイヤ子〟のエモートをやるようにとしつこくせがんだ。〝タイヤ子〟のエモートはその場で逆立ちして片手で腕立て伏せをするというもので、正面から見ているとついさっきまで〝タイヤ子〟の顔があった場所に逆さになった尻がでかでかとくる。その場で上下するそれを見て二人は狂ったようにキャーキャーと騒いでいた。
「あれはそういう意味で騒いでたのか」
「そー!もうほんと可愛いの、〝タイヤ子〟……」
「うん。理想の年上女子だよな」
「そう。普通に付き合いたいし、普通に抱かれたい……」
「でもあたし、あれだけどな」
「……? うん?」
「?」
「かなり顔似てるけどな、この〝タイヤ子〟に」
「!?」
「……え、マジ?」
「うん。ていうか、だから選んだんだよ、このキャラ」
〝膝がタイヤ子〟は、本当に私と顔つきが似ていた。細く切れ長な釣った目と同じようにシャープに釣り上がった眉、そしてへの字をした口の三連コンボのせいで真顔でいると怒っているようにしか見えないという、往々にして不便な顔立ちがそっくりだった。
「(正直に言うと、過剰に尖った顎とでこっぱちなでこも……冷静に考えるとイカれてるな、こっち系の顔立ちでアイドルやってたの……)」
「……え?身長は?」
「……ん?え?」
「お尻は?すーさん。でかい感じ?〝タイヤ子〟みたく」
「え?お尻?」
「おっぱいは何カップですか?」
「何言ってんだお前らは」
「ねぇーすーさん」
「えぇ?……まあ、こんな肉付きはよくないな。全部細くて縦にすとん、て感じで、身長は175cmとちょっと」
「!?」
「……まじ?」
「うん……あ、だめだこれ。個人情報だ」
「……結婚してください」
「…………」
「今の話なし。アーカイブも消すから……え?」
「結婚してください、すーちゃん」
「…………」
「え、何言ってんのお前……笑」
「好き、すーちゃん。もうね、ずっと好きでしたあちし。会った時から、ずっと」
「…………」
「いやいやいやいや……嘘々、今の話。もう終わり、もう配信も終わってアーカイブも消すし」
「ねぇ、すーちゃん」
「……いやでも、結婚とかはあれだけど」
「うん?」
「あの……年下とかっていうのは、ぶっちゃけありですか?」
「えぇ?」
「あり?すーちゃん」
「ありですか?」
「いやいや……いや、」「…………」
あり。何故なら今リアルで付き合ってるまァ。ちゃんが年下だから。
「(Pノコとまァ。は変わんないんだよな、歳。そう言えば……そう考えるとやっぱり子供過ぎるな、Pノコ)」
「すーちゃん」
「ねぇすーさんそれだけ」
「いやいやいや……でも、あれじゃん。嘘かも知んないじゃん」
「? 何が?」
「嘘って言うか……盛った。盛った盛った。こんな可愛くないわ、今鏡見てみたら全然」
「すーちゃん!」
「……いや、すーさんはなんか……イケメンの匂いするよね?」
「うん……する。なんか、ずっとモテてきた人の感じする」
「……なんだよそれ」
と言いながらまあそうだろうな、と私は思った。私は元々容姿がいい部類で、それに加えて身長も伸び始めた10代以降からずっとモテ続けてきた人生だったけど、そういう青春を送ると大人になって以降自分がモテオーラみたいなものを纏っていることにいつしか気が付く。まあ……要はざっくり言ってしまうと〝ガッついてない〟〝焦ってない〟みたいな態度のことだと思うけど、そういうのはこういう20代そこそこ以前の女の子達も敏感に嗅ぎ分けるし、面白い程にブッ刺さったりもする。〝自分が物心つく前からモテ続けてきた年上の人ってどんなだろう〟という好奇心が強い劣情に変わり、こちらに向けられることも珍しくない……まぁ、地下アイドルをやってた頃何度となく経験したようなことだった。
「もーおしまい!今日は暴力に塗れて疲れたから、撫子さん」
「…………」
「……なんか、全然相手にしてくんないね、この人。Pノコちゃん」
「うん……あちしらのことなんか眼中にないんだよ、この人」
「いや困るだろ、あったら逆に。同じチーム内で」
「もうしょうがないから〝タイヤ子〟で我慢しよっか、Pノコちゃん」
「うん、そだね……ハァ、可愛いなぁ、〝タイヤ子〟」
「サバサバしてるくせにさぁ、意外と露出多いんだよね〝タイヤ子〟……」
「うん……声可愛いしね?隠しきれてない、かわい子ちゃんの部分が」
「もーいいってお前ら……笑」
「あとなんと言っても、このレザーパンツに包まれたパンッパンの尻……」
「ピャー……もうほんと、むっちむち……」
「暑いんだよ?皮パンて……もうムレッムレだよねぇ、マッチ中……www」
「ウヒョホフホww……もうたまらんち。おまんチョ舐めたい、あちし」
「……!」
「うんうん……www え、何?何て言った?今」
「〝タイヤ子〟のね、おまんチョが舐めたい、あちし」
「…………」
Pノコと、あとくないもそうだけど、この二人は本当に問題行動が多い。Pノコは御覧の通りだけど、くないも配信中の態度が悪くて、視聴者さんに失礼過ぎることが多々ある。私は大人だし、二人より常識もあるタイプなので二人の問題行動というのは日々本当によく目に付いているけど、その一個一個をいちいち注意する、というのはやってはいけない。もちろん先々まで同じチームでいることを考えれば放置してそのままにしておくなんてもっての他だけど、かと言って一個一個注意していたら私と二人との人間関係が壊れてしまって、同じチームでいること自体に支障が出てしまう。
だから注意するのは〝誰が見てもいけない行為だと私・本人(達)・その他演者・リスナー全員が満場一致で分かる粗相を犯した時だけ〟と決めていた。それは例えば、今みたいなストレートな放送禁止用語を口にしてしまった時なんかがそうだ。
「Pノコ、それはだめだ」
「……? 何? すーちゃん」
「うん。……え?」
「今のは普通に放送禁止用語だし、ラインも越え過ぎだから普通にだめだ」
「……はい、すーちゃん」
「……え?何が?」
「今はまだいいかもだけど、これからチームがもっと大きくなって視聴者さんがもっと増えたら普通に炎上するやつだから。大変だからな?そしたら。案件とかも来なくなっちゃうかもだし、他のメンバーにも迷惑がかかっちゃうから」
「……はい」
「…………」
「今後は無しな?今のとか、そっち系の発言は」
「……うん、はい。すーちゃん」
「……え、何の話?」
Pノコはぶっ飛んだ奴だけど、根は素直で純粋で、心配になってしまう程にいい奴だ。だからどんなに奇抜な行動をとっても人気が落ちないし、私達もPノコが変わらず好きで、見捨てる気になんて誰もならない。
「(本当はこうやって粗相を咎めて窮屈な形でやらせて、っていうんじゃなくて、こいつに合う活動方法を周りが考えてやらなきゃだめなんだよな……天才なんだから、こいつは)」
「…………」
「え、何?空気……大丈夫?」
「(要は運営……は今のところ期待できないから、あたしがもっとしっかりしなきゃだめなんだよ。今のだって、あたしが無下に話を切ったりしなきゃ失言は出なかったわけだし……)」
「…………」
「え、すーさん?」
「……いや、もう大丈夫だ。な?Pノコ。もう分かったもんな?」
「うん、すーちゃん……分からない」
「うん、そうだよな。分から、ない……」「…………」
「……ん?え?」
「分からない、あちし、今の話」
「…………」
「そうなの?Pノコちゃん」
「うん。すーちゃんが何言ってるのか、多分今世界で一番分かってなかった」
「…………」
「あそう?……え、でも、返事してたじゃん。なんか」
「うん……生返事。なんか、こっちに向けて話してるっぽかったから」
「…………」
「へぇ……だって、すーさん」
「……あっ?」
「分かんなかったって、Pノコちゃん、今の話」
「…………」
「返事も生返事で、しゃあなしで答えてただけだって」
「うるっせぇ黙ってろお前」
「な、なんだよ。何怒ってんだよ」
「…………」
私は、怒っていない。配信は感情的になって我を忘れたら終わりだ。ごく少数の分からんちんな視聴者のために善良な大多数の視聴者に嫌な思いをさせてしまうのはこちらの不手際でしかなく、怒鳴る姿や不機嫌な姿を晒すのは人気商売上マイナスの効果しか生まない。何があっても……それこそ、親が死んでも配信を始めた以上はマイナスの感情の発露というのは断固避けるべきで、活動開始当初から私はこの誓いを固く守り続けていた。
「……うん、Pノコ。分かり辛かったかなぁ?あたしの話」
「うん、すーちゃん。ぐだぐだしてた」
「ぐっ……!?」「…………」
「あー、確かに。具体的に何の話してたのか全く分かんなかったもんね」
「うん……回りくどいって、レベルじゃねーぞ……」
「そうそう。あたし未だに何の話か分かってないもん」
「下手だと思う、すーちゃん。時に、話がすごく……」
「…………」
「あそう?」
「うん。リスクを避けて具体的な表現を避けるうちに、ぐったぐだのくっちゃくちゃになるの、すーちゃん……」
「あー。」
「自信がないのかなぁって思っちゃう。根底に」
「あー……優しいもんね?すーさん凄く」
「うん。でも自分の優しさに負けてる時があると思うの、すーちゃん」
「おー、深いね。自分の優しさに負ける、か……」
「…………」
「うん……ゆとり世代ならではの、自信のなさがモロに出てる時ある、たまに」
「あー……だって、すーさん」
「…………」
「ちょっと気を遣い過ぎてて言わなきゃいけないことがちゃんと言えてないってPノコちゃんが」
「ッチ!てめうるっせ本当」
「な、なんであたしに怒るんだよ」
「黙ってろお前本当に」
「Pノコちゃんが言ったんじゃん」
「うるせ黙れ、黙ってろ……」「ごめんなぁ?Pノコ。ちょっと回りくどかったかな?」
「うん、すーちゃん……最悪だった」
「そっかぁ、ごめんごめん……放送禁止用語の話だよ」
「……あ!それ?」
「そうそう!分かってくれた?」
「あー……すーちゃん、なぁんだ笑」
「そーなんだよ!それを配信でい゛!わ゛!ないでぇえ゛!!!」
「わぁ、びっくりした」
「……って言ってただけなんだよ~Pノコ笑」
「なぁ~んだすーちゃん笑」
「うん……ごめんなぁ?回りくどくて。分かってくれた?」
「うん、分かった、あちし」
「そっか、じゃあ……もう言わない?さっきの放送禁止用語」
「うん……え?」
「気を付けられる?さっきの放送禁止用語言わないように」
「……ううん。無理」
「無理……笑」「…………」
「無理なの?Pノコちゃん」
「うん、無理。だって言ってないもん、あちし。放送禁止用語とか」
「…………」
「言ってないことを気を付けるとかは無理、あちし」
「そーなの?言ってないのに何で今注意されてるの?」
「知らない。おかしいんじゃない?すーちゃん」
「…………」
「だって?すーさん」
「……いや言ったもん」
「……?何を?すーちゃん」
「うん、あたしも知りたい。何言ったの?Pノコちゃんは」
「…………」「おまんチョって」
「……えっ?」
「何それ。何その言葉?すーちゃん」
「……おまんチョ舐めたいって言ったもん、はっきり」
「……え?すーちゃん?」
「何それ?言ったの?Pノコちゃん」
「ううん。言わない、あちし、そんな変な言葉」
「い、言ったもん!はっきり言ったもんおまんチョ舐めたいって」
「…………」
「…………」
「言ったもん、あたし聞いたもん!〝タイヤ子のおまんチョ舐めたい〟って、言ったじゃんはっきり!」
「……え、怖い、あちし。くないちゃん」
「あ、うん。大丈夫だよ?あたしがいるから……」
「ひ!酷い!言ったじゃんPノコさっき!〝タイヤ子のおまんチョ舐めたい〟って!〝タイヤ子のおまんチョ舐めたい〟って……えぇ泣」
「……!?」
「えぇ……?な、泣く……?」
「ひ、酷いよォ、気を遣って言ったのに!大人の立場から大人の態度で!わだかまりなく片付くようにそれとなく控え目に注意したのにィ!」
「…………」
「お、大人の態度か、それが……」「……本当になんか言ったの?Pノコちゃん」
「言ってない、あちし本当に何も」
「あァ~……ま、また嘘ついて……泣」
「えぇ……?でもあたしも聞いてないからなぁ。……アンケートとってみる?」
「やめろォ!!!」
「ひぃ!?」
「ピャァ!?」
思わず机を叩いてしまった。でも、こういう時アンケートをとってリスナーがどういう反応を返すかは目に見えていた。こいつらは一番場が荒れて一番推しが困る選択肢を迷うことなく即断で採る。今〝嘘をついてるのはどっち?〟でアンケートをとった場合、少なくとも9割近いリスナーが私に票を入れるのは分かり切っていた。
「あ、あァ~……酷いよォ、あたし頑張ってんのに、こんな出来の悪いガキ二匹も相手にしてェ~泣」
「随分な言い様だな、また」
「すーちゃん……」
「あァ~……本当は嫌いなのにィ、このゲームだって……む、無理してやってやったのにィ、大人だからァ~泣」
「分けろよ、表で言うことと裏で言うことを」
「すーちゃん、可哀想。よちよち……」
〝配信中はネガティブな感情を発露させない〟という誓いを破ったショックも相まってむせび泣く中で、私はそう言えばこれが〝ネガティブな感情の発露〟の一回目ではなかったことを思い出していた。
「(……あったわ、何回も。こいつらと絡んだ時限定で、何回も。……もうめちゃくちゃだよ、あたしの活動、こいつらのせいで……)」
くないが面倒臭そうに締めの言葉を述べ始めてからも、涙は止まらなかった。
私は私が思う以上に、こいつらと一緒に活動することに疲れているのかも知れなかった。
【登場人物・用語】
すーぱー☆撫子ちゃん…………自称〝膝がタイヤ子〟に似ている人。似ているかどうかは分からないがキレのあるクールな顔立ちをしているのは本当で、身長が175cm以上あるのも本当なら、生涯モテ続けてきたのも本当。学生時代~この仕事に就くまでの間は色んな地下アイドルグループを渡り歩いて研鑽を積んできた。年の離れたPノコとくないを目に入れても痛くない程に可愛がっていて、それ故にキャパを超えた接し方をして結果煮え湯を飲んでしまう。どちらも平等に可愛がっているのが実際だがどうしようもないPノコには過剰に優しく、しっかり者のくないには厳しく当たってしまいがち。これに関して良くないことだよな、と気付いて自省するのはもう少し先の話。〝配信中はネガティブな感情を出さない〟とか〝表でする話と裏でする話は分ける〟、〝個人情報は言わない〟、〝下ネタ禁止〟などいくつもの信条を活動上設定しているプロ意識の高い活動者だが、どれもちょっとしたきっかけであっさりと破ってしまう。
古賀くない…………〝銃を撃つ系〟のゲームが実はかなり下手な人。好きなのでYouTube動画を観漁る等して知識はよく仕入れているが、実戦だとテンパってしまって基本的な動きも履行できないまま死んでしまいがち。撫子に理不尽に怒られているがベース舐めているので全然恐がっていない。大人びた女子の御多分に盛れず遥か年上の女性に気が行きがちだが撫子のこともそういう対象として見ていて、でも実はもっと気になるガチ恋の対象が同じチーム内にいる。擦れているようでいて下ネタには疎い。
茸田Pノコ…………撫子を完全にそういう目で見ていた人。ボーイッシュで高身長な男前の年上女子が好きで、出会った最初の時点から撫子をそっち系の女性だと見抜いていた。おっとりしていて控え目なようでありながら性欲・恋愛欲がかなり強く、撫子とリアルで会うことが叶わない今〝タイヤ子〟のような近いタイプの女性で欲を満たしている。怖いぐらい話が通じないが、〝本当に通じていない時〟と〝意図的に通じさせていない時〟の2パターンがあり、本人以外がそのどちらなのかを見破るのは困難。作中の撫子が泣き出してしまった件に関しては〝意図的に通じさせていない時〟の方。
〝まァ。ちゃん〟…………撫子が半年と少し前に西麻布にあるとある飲食店で出会い、そこでナンパしてから今に至るまでずっと続いてる人。今年22歳と若く、Pノコより一つだけ年上。撫子が凄く大事にしていてとても可愛がっている女性だが、出会った西麻布の飲食店に自分が何故行ったのかを撫子はもう覚えていない。
〝鬱骸骨〟…………作中で三人がプレイしているゲーム内で操作できるキャラで、スピードで翻弄しつつ前衛を務めるタイプのキャラ。アビリティの〝ジャンプ〟はボタンを長押しすればする程遠くに飛べる仕様でくないはその独特な使用感が苦手だと言っているが、対面でテンパっちゃう人は前衛系のキャラは基本何でも向いていない。操作感に癖はありつつもかなり強いキャラで、根強い人気を誇る。〝膝がタイヤ子〟や前話で登場した〝ガッチマンロボ〟と同系統のキャラだが、その二キャラに比べると現環境では少し弱め。
〝元気印〟…………同ゲームで使用できるキャラ。味方を回復させることに特化したそこそこ強いキャラだが、くないの言う通り野良で使うにはとことん向かないキャラ。どんなに味方を回復させようとその味方が弱いと全て無駄になってしまうし、逃げ能力に乏しいので味方が倒されると一緒に倒される以外の道がほとんどなくなる。一緒にプレイする仲間がいるなら最大限能力を発揮するが逆ならお世話になる機会はほとんどない、そんなキャラ。同様の野良お断り系のプレイアブルキャラは同ゲームに相当多く、長きに渡る問題点として同ゲームに横たわっているが、運営がその問題の解決に乗り出す日はきっとこない。
〝膝がタイヤ子〟…………最近同ゲームに参加した人気の新キャラ。サバサバ系のキャラクターに相反するお色気要因が各所に盛り込まれていて、もう狙っているとしか思えない。作中でPノコとくないの二人が触れた要素以外だとフィニッシャー(=瀕死の敵に止めを刺すアクション)がシンプルなビンタ&意味ありげな含み笑い、ということで、これはもう完全にそう。同ゲームは同接数が落ち始めてからお色気要素を急に盛り始めたが、それにより同接数は全く回復しなかった。
〝爪痕&ダブハン〟…………〝爪痕〟はそのゲームに参加している過半数のプレイヤーを殺害した証、〝ダブハン〟はそれを成すために必要な与ダメージの3分の2ぐらいの値を叩き出した証。どちらも物凄く難しいトロフィーで、どっちも持っていてバナー(自己紹介カードみたいなもの)に載っていた場合は畏怖の象徴として恐れられたものだが、最近とあるゲームモードの登場により誰にでも取れるカジュアルな称号に成り下がった。現在ではどちらも持っていないと逆におかしいまである。




