第410話 もう終わりですね
武器が同時に砕けたことによる延長があった挙句、最終的には両者ノックアウトという前代未聞だらけの決着を見せた剣術大会。
結局、両者引き分けで同時優勝という結果で終わった。
その場に居合わせた私やサキが回復させたにもかかわらず、二人ともなかなか目を覚まさなかった。なので、仕方なく私とフィレン王子が代わりに表彰式に臨む。
そのせいで、観客たちは将来の国王と王妃の誕生だとか、かなり飛躍した歓声を上げていた。いや、まだ決まってないからね。
こうして、いろいろとあった剣術大会が終わった事で、私はようやくクラスの出し物へと顔を出す事ができそうだった。
「一応、二人が目を覚ましたか確認しに行きましょうか、殿下」
「ああ、そうだね。頑丈な二人だから、もういい加減に目を覚ましているだろうね」
人間やめてるみたいな言い方じゃないのよ、殿下。
言い分には呆れているものの、それを否定できないから困る。あの脳筋ペアは本当に困ったものよね。
私たちは優勝の証である賞状と副賞を持って、二人が運ばれた救護室へとやって来る。
扉を開けて中へと入ると、さすがに二人とももう目を覚ましていた。
「殿下、アンマリア嬢。試合の結果はどういう扱いになりましたか?」
上半身だけ起こしたタンが、私たちに必死な形相で問い掛けてきた。
その様子を見た私たちは、お互いの顔を見て呆れたようにため息をつく。そして、フィレン王子がタンに告げる。
「結局、二人とも試合続行は不可能という判断で、同時優勝という扱いになったよ。長い王国の剣術大会でも、実に珍しい決着だそうだ」
「そうですか……」
タンは落ち込んだような反応をしている。
「くっ、結局一度もサクラには勝てないで終わってしまったか……」
どうやら婚約者に一矢報いられなかった事が、相当に悔しかったようだ。
その悔しがる姿を見て、サクラは満足そうに笑っている。
「二人とも、体に特に悪いところはないかしら」
結果も伝えたことだし、改めて私は二人に問い掛ける。
「はい、まったく問題ありません。でも、さすがにお互いの攻撃の当たったところはまだ痛みますけれどね」
苦笑いを浮かべて脇腹を押さえるサクラ。そういえばタンの攻撃は横薙ぎで、もろに入ってたっけね。
「本当に鋭い攻撃だったな。俺の方は肩だというのに、どんだけ激しい攻撃だったんだよ……」
左肩を押さえるタン。
確かに、サクラの脇腹に比べれば耐えられそうな箇所だった。それでも気絶させてしまうのだから、それだけサクラの剣筋が鋭かったというのだろう。恐るべし、バッサーシ。
それはさておき、私はようやく回復した二人に近付いていく。
「お二人の代わりに賞状と副賞を受け取っておきましたわ。あっそうだ、殿下」
手渡そうとしたところではっと気が付く私。
「うん、そういうことか」
フィレン王子も察したらしく、手に持っていた賞状と副賞を私に預けてきた。
そう、私たち二人による簡易の表彰式よ。本来二人が受け取るべきだったものを私たちが受け取ったのだから、私たちから直に渡すというのが筋というものよね。
そんなわけで、救護室内は即席の表彰式会場となったのだった。
ベッドの上で上半身を起こした状態ではあったものの、サクラとタンは私たちから賞状と副賞を受け取っていた。
「それじゃ、余韻に浸っていたいけど、私はクラスを手伝いに行きますね。お二人とももうしばらくゆっくり休んでいて下さいな」
私が二人に声を掛けると、
「おう、心配かけたな」
「ありがとうございます、殿下、アンマリア様」
元気そうに答えていた。
その様子に安心した私とフィレン王子は、それぞれのクラスを手伝いに闘技場を後にしたのだった。
こうして、長い学園生活の最後ともいえる盛大なイベントが終わりを告げた。
ゲームの通りであるなら、もう残すイベントは年末の卒業パーティーくらいだ。
この卒業パーティーの場で、ヒロインたる私、アンマリアの婚約者が確定する。場合によっては、乙女ゲーム転生ものによくある断罪劇なんかも起こる可能性はある。
ただ、その断罪劇の矛先は私だったりするのよね。それが2年生の頭で起きた痩せ薬事件。
あれを使うと体重が激減する代わりに断罪ポイントを積み重ねていくことになり、一定値を超えるとヒロインが酷い目に遭うというものだ。
でも、私はそんなものは使っていないし、攻略対象はおろかライバル令嬢たちとも仲がとても良い状態。まず起こりえない話だわね。
とはいえ、エピローグに入るまでは油断は禁物。ここは現実世界なんだから、ゲームの展開がそのまま当てはまるとは思えない。
途中から体重を気にしなくてよくなったとはいえ、そういう気の緩みが最後に悲劇を生みかねないものね。
残る学生生活は4か月間。
最後まで気を抜かずに、乙女ゲームの期間を突っ切ってみせるわ。
学園祭の後片付けをしながら気合いを入れる私だったのだけど、いざ帰ろうとすると、学園祭にやって来ていたベジタリウス王国の王妃に声を掛けられてしまった。隣には王子王女が揃っている。
これから一体何が始まるというのかしらね。
予想もしなかった状況に、私はついつい目を丸くしながら首をこてんと傾げてしまうのだった。




