第341話 驚きの告白
「あ、あのっ! 私、夢で見たんです。あなたが私の力になってくれると」
突然、少女がそんな事を言い出した。表情を見るに口から出まかせでしょうね。でも、どこか必死な表情をしているので、私は放っておけなく感じてしまう。
「ごめんなさい、ちょっと信じられないとは思うんですけれど、私と二人で話に応じて頂けませんか?」
見知らぬ人物と二人っきりでとか、正直いって胡散臭すぎて断りたいんだけど……。
だけど、目の前の少女からは並々ならぬ覚悟のようなものが感じられる。
「はあ、仕方ないですね。王妃様、どこか部屋をお貸し願えますでしょうか」
私は話くらいは聞いてあげようと思い、無礼とは思うものの王妃に頼み事をする。
「そうですね。セロー、使っていない部屋に案内して差し上げて下さい」
「承知致しました」
王妃は私の気持ちを汲み取って下さり、少女をここまで連れてきた男性に案内を任せていた。
すごすごと縮こまる少女と、すっかりベジタリウス王城内で顔なじみになってしまった私。実に対照的な態度の私たちは、セローの案内で少し離れた客室へと案内されたのだった。
「では、何かありましたら、すぐにお呼び下さい」
「ありがとうございます」
セローも部屋を出て行き、私は見知らぬ少女と二人きりになった。
相変わらず縮こまって私の方をちらちらと見てくる。一体何なのかしらね。
「さて、あなた」
私がこう声を掛けるとビクッと体を震わせる少女。
「なんで私の名前を知っていたのか、その理由から聞いてもいいかしら」
「……やせた時のグラフィックそのもの」
私の質問に対して、ぼそっと言葉が返ってくる。今なんて言ったのかしら。
「ちょっと待って。やせた時のグラフィックって、まさかあなたも?」
「えっ?」
頭を押さえながら確認するように尋ねると、少女は驚いていた。
「あなたも転生者かって聞いているのよ」
「えっ、嘘。アンマリアも?!」
私の言葉に酷く驚く少女。どうやら彼女も転生者のようだった。なるほど、それで私の事を知っていたわけか、納得がいくわ。
「はあ、嘘でしょ? この世界って、一体何人の転生者が居るのよ……」
客室にあった机に手をつきながら、まるで目眩がする思いだった。私に加えて王女が二人も転生者が居たのに、まだ居るっていうのが信じられなかった。
「わ、私だって先日転生してたって気が付いたばかりなんです。でも、よかった。転生者なら話が通じます」
少女が両手を握って訴えてくる。私は顔だけ向けると、もう一度大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。そして、椅子に腰かけて少女に話し掛ける。
「あなたは『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』をどこまで知っているのかしら」
「私はそのゲームのジャンル替えの拡張版までですね。シミュレーションをRPGに変更して、魔王を倒すってストーリーです」
「何それ……。ミズーナ王女もそうだったけど、私が知らない間にゲームが拡張されてるなんて……」
目の前の少女の話に、がくっと気持ちが落ちてしまう。どうやら私の前世の人生が終わった後も、ゲームは拡張を繰り返していたらしい。ミズーナ王女の話でも聞いた事ないわよ、それは……。
「あ、アンマリア?」
少女が私を気遣うように声を掛けてくる。
「それで、あなたは一体誰なのかしら」
「あっ、そうですね。失礼しました」
私が顔を上げて少女に問うと、一瞬驚いて身を引きながらも、少女は姿勢を整えて話を始める。
「私の名前はメチルと申します。拡張版RPGで戦うボスの一人で、魔王四天王の中で最初にやられる最弱キャラですね」
少女の自己紹介で、私は目を見開いて驚く。なんか信じられない事を言ってきたわね、この子。
「ベジタリウス王国内で聖女の真似事をして、国民を傀儡にして国を乗っ取ろうと考えていた補助系の魔族です。こう見えても治癒系の魔法が大得意なんですよ、私」
「へえ、それはすごいわね。私も使えるけれど、聖女には敵わないものねぇ」
同じ転生者だと思うと、なんだか急に親近感がわいてきたのかついつい話し込んでしまう。
しかし、それをメチルが思いとどまったかのように自分の口を押さえて止める。
「いけないいけない。それどころじゃなかったです」
途中で話をやめてメチルに、私はつい首を傾げてしまう。
「今は向こうの話よりもこっちの話です。私の持ちうる限り、魔族たちの情報をお流しします。少しでも生き残れるように賭けたいですからね」
その時のメチルの瞳は実に真剣なものだった。私もそれをしっかりと感じたので、話に乗っかる事にした。
「でしたら、国王陛下と王妃殿下にも話しますか? 多分話に応じて下さるはずですから」
私がそう持ち掛ける。
「ええ、すぐにでも話をした方がいいと思います。私がこうやって中に入れている以上、魔族がその気になればこの結界は簡単に破られますから」
「あっ、確かにそうだわ……」
メチルの言葉に、私は思わず気付かされてしまう。
「早急に対策を講じるべきです。私たちなら、他の魔族の居場所もなんとなく感じ取れるはずですからね。そうよね、アルー」
「そうですよ!」
聞き慣れない名前をメチルが呼ぶと、メチルの頭の上に妖精のようなものが出現した。
あまりの突然の事に、私は指差しながら口をパクパクとさせてしまう。
とりあえず、さっきのセローを呼んで、すぐさま国王と王妃に謁見する事にしたのだった。




