S3-21 善意は時に…
観測者
[災害が起きると“善意”が目立つんですよね。]
[あなたのその“善意”は、被災者に本当に必要なことですか?]
[いま、問われる問題ですよね。]
スマホの、
画面とにらめっこ。
灯
「あの…カルディさん」
灯に、
振り向く。
カルディ
「どうしたの?」
灯
「Wi-Fiってないんですか?」
小さく、
首を傾げる。
カルディ
「え?」
灯の、
スマホを覗き込んだ。
カルディ
「誰かに連絡するの?」
視線が重なる。
灯
「同級生が心配してるかなって思いまして」
友達との、
思い出の写真を見つめなが呟いた。
カルディ
「確か…東山小学校ですっけ?」
灯
「はい」
頷いた。
カルディ
「直樹くん聞いてた?」
直樹
「聞こえてた」
カルディ
「お願いできるかしら」
灯
「ちょっと、待って!」
椅子から、
立ち上がる。
灯
「どうやって伝えるんですか?」
「圏外ですよ!?」
カルディ・直樹
「「……」」
灯へ
視線が行く。
灯
「私…自分で…」
司令員
「安否、伝えておいたぞ」
灯りの、
言葉を遮るように声が届いた。
司令員
「いや、私も…」
司令員
「俺も…」
次々と、
声が聞こえてきた。
灯
「皆さん!」
「……」
俯いた。
灯
「どこに居るって伝えたんですか?」
小さく呟いた。
灯
「皆さん、私が“どこに居る”と“誰に”伝えたんですか?」
「私。…誰に伝えて欲しいって言ってないですよね?」
「それに…」
言葉を詰まらせた。
床へ、
膝を抱えて座り込む。
沈黙。
司令員
「森 とみこさんが君を探していたそうで…」
司令員
「すごく、心配していたぞ」
司令員
「私たちは君の安全を優先したんだ」
灯
「だから何!?」
「……」
「皆さん、その人が、どんな人か知らないでしょう…」
「信用できる人かも分からないのに!!私の所在を教えるんですか!?」
誰も、
答えられなかった。
灯
「最低!」
扉に、
向かって走って行った。
カルディ
「待って!」
直樹
「危ない!!」
灯
「うるさい!!」
扉を、
遮るようにカルディが姿を現した。
カルディ
「危ないわよ」
灯
「退いて!!」
カルディ
「出てどうするの?」
司令員
「安全な場所に居るべきだ」
南戸
「大越。休憩入れ」
直樹
「え。いいんすか?」
南戸
「護ってやりなさい」
直樹
「ありがとうございます!!」
「灯!!」
駆け寄ってきた。
抱き寄せられる。
灯
「直樹くん…」
カルディ
「お散歩してらっしゃい」
直樹
「ありがとう」
「行こ」
灯
「うん…」
2人は、
司令室を出た。
廊下。
直樹
「ごめんね」
「皆、悪気はないんだ」
灯
「…わかってる」
「仕事の邪魔してごめんね」
直樹
「食堂案内するよ」
歩き出す。
灯
「ねぇ…」
直樹
「ん?」
視線が、
重なった。
沈黙。
立ち止まる。
――「僕が灯の家族になる。だから泣くな」
家族…。
顔が熱くなった。
灯
「何でもない」
視線を逸らした。
直樹
「ん?」
再び歩き出す。
灯
「私って泣き虫だよね」
「直樹くんを困らせてごめんね」
直樹
「……謝るの止めようよ」
灯
「え?」
直樹
「灯、悪いことしてないし」
灯
「うん…」
無言で、
通路を進む。
しばらくして、
大きな扉の前で立ち止まる。
直樹が、
スキャナーに手をかざした。
――シュゥー
扉の向こう側から、
ふわりと、
香ばしい香りが溢れてきた。
思わず、
足が前にでていた。
グゥ~
あっ…
直樹へ
視線を向けた。
彼は、
正面を向いていた。
厨房から調理する音。
視線が無意識に向く。
お腹の音…。
気づかれていないみたい。
……。
どんな食べ物があるんだろう。
再び、
直樹へ視線を向けた。
直樹
「食べようか」
灯
「何があるの?」
直樹
「何でも」
灯
「何でも?」
ここフードコート?
好きなの食べれるってこと?
灯
「パンケーキとか?甘いのも?」
直樹
「頼めば作ってくれるよ」
灯
「食べたい!!」
直樹へ前のめりに呟いた。
目を輝かせる。
直樹
「パンケーキを?」
にこやかに微笑む。
灯は、
元気に何度も頷く。
めっちゃ食べたい!!
久々に食べたい!!
唾を飲み込んだ。
直樹
「席に座ってて」
「頼んでくる」
マントがなびく。
微かに直樹の香りが鼻先を擽った。
格好いいな。
直樹
「Please place your order.」
(注文お願いします。)
え…。英語?
従業員
「Oh, you look smart.」
「What’s with that outfit?」
(あら格好いい。どうしたのその格好。)
直樹は、
肩をすくめる。
直樹
「I’m just doing my dad’s job.」
(父の仕事してるだけです。)
「Do you think you’ll be able to make pancakes today?」
(パンケーキって今日作れそうですか?)
従業員
「Is it someone’s birthday or something?」
(誰かのお祝いかい?)
直樹
「No, no」
彼の、
視線がこちらに向く。
直樹
「‘I’d like some pancakes,’ she said. She asked me so sweetly.」
(パンケーキを食べたいって、可愛いお願いされまして。)
厨房の、
おばちゃんと視線が重なった。
従業員
「She’s not a cute little princess.」
(可愛いお姫様じゃない。)
「Leave it to me, old girl!」
(おばちゃんに任せなさい!)
厨房の、
奥へ去って行った。
直樹
「Order one for me as well, please.!!」
(私の分も頼むよ!!)
従業員
「I know that!!」
(わかってるって!!)
直樹が、
席へ戻ってきた。
正面に座る。
灯
「直樹くん、すんごい!!英語ペラペラ何だね!!」
直樹
「えっと…そう?」
「仕事で自然と身についたっていうか……」
「…恥ずかしいって」
灯
「憧れるなぁ」
「私にも英語教えて!」
直樹
「いいけど…」
パンケーキの香ばしい香りが漂ってきた。
灯
「いい匂い♪」
微笑ましく、
見つめる直樹。
直樹
「この後どうする?」
灯
「サボる?」
クスッと笑った。
直樹
「駄目だろ」
釣られて笑った。
灯
「司令室でどんな仕事してるの?」
「何もない所ずーと見つめて」
「何にも喋らないから」
直樹は、
黙り込んだ。
灯がまるで、
5年前の自分を見ている様な感覚になった。
灯には、
何も見えていない。
AIや脳内の会話が聞こえない。
触れられるモノだけが目に見えている。
従業員
「You two over there!」
(そこのお2人さん!)
「I’ve done it!」
(出来たわよ!)
大声で呼ばれた。
直樹
「I’m off now!」
(今行く!)
「行ってくるね」
灯
「うん!」
やった!
直樹くん、
何かおばちゃんと話している。
あ!
戻ってきた!
ワクワク♪
テーブルに置かれるパンケーキ。
ふわっとあま~い香りが漂ってくる。
灯
「わーあ!ホイップたっぷり!」
「すごい!お店にでてくるのだよ!!」
従業員
「Hey!」
直樹が、
カウンターへ駆け寄って行った。
飲み物を、
持って戻ってきた。
直樹
「はい。サービス」
灯
「なあに?これ…」
アイスにホイップクリーム。
コーヒー?
直樹
「アイスカフェラテだって」
灯
「アイス…そっちのアイス」
声を出して笑った。
直樹
「あま~いカフェラテだな」
一緒に笑った。
直樹
「冷めないうちに食べよう」
灯
「うん。いただきます!」
直樹
「いただきます」
ホイップたっぷりの一口。
メープルシロップの香りが口いっぱいに広がる。
幸せ〜♪
灯
「おいし〜い」
おばちゃんに向かって。
大きな声をかけた。
灯
「ボーノ!」
直樹が、
吹き出す。
直樹
「それ…イタリア語」
「美味しいって伝わるからいいけど…」
従業員
「Thank you!」
「Take your time」
(ごゆっくり)
おばちゃんは、微笑んでいた。
美味しく、
2人のお腹と心を幸福にした。
Next time
――試作品。
観測者
[重い話は止めよう。]
[灯と直樹の幸せを…これからも応援していきます。]




