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149.第一試合が終わって

お待たせしてしまってすいません!

更新です。

「おつかれ、ハルキ」

「お疲れ様です、先輩!」


 悪魔族の待機スペースへと戻った先輩を私たちは歓待を持って迎えた。

 先輩の姿は、出ていった時とほとんど変わらず、まさかあんな戦闘をしてきた後だとは思えないほどスマートだ。


 完勝、圧勝。

 モニター越しに見ていた私たちは、その頼もしい姿に興奮のままに歓声を上げていた。

 と言っても、主に声を上げていたのは私と、悪魔族の三人組くらいだけど。

 まったく、先輩の勇姿を見てよくもそんなに冷静でいられるよね?


「みんなお疲れ様。どうにか勝てたよ」

「そう?余裕そうだったじゃん?」

「そんなことないよ。長期戦に持ち込まれたらちょっと危なかったかも。

 でも、これで約束通り一勝だよ」

「さんきゅ、ハルキ。

 でもね、残念なお知らせがあります」


 クレスの、せっかくのこのいい雰囲気に水を差すような言葉に、待機室にいた一同が怪訝な顔をした。


「あまりにも早く試合が終わっちゃったから、時間繋ぎにインタビューしたいって、運営から依頼が来てるの。

 拒否権はないらしいから、お願いね?」

「それマジ?」


 クレスの言葉を聞いて諦めの表情と共にすぐに受け入れるように頷いた先輩に対し、思いのほか大きな反応をしたのはメアリだった。


「マジみたいね。試合が早く終わっちゃったし、次の試合の開始時間は決まってるから仕方ないんじゃない?」

「うわだっる…」

「ちょっとメアリ。なんかもう自分もそのインタビュー受ける気でいない?」


 メアリの態度が気になった私は思わず口を挟む。

 メアリは私の言ったことに対し、何を言っているのか、という表情で。


「当たり前でしょ?私が負ける訳ないし、試合もさっさと終わらすつもりでいたし。

 ハルキの時間を切るつもりでいたけど、そんな面倒なことが待ってるなら、時間延ばしも考えないとなぁ」

「メアリ、チーム戦なんだから真剣にやらないとダメだよ」

「わかったよ、シュウ。時間引き伸ばす方法は真剣に考えるから」


 メアリの中では勝つことは当然で、その上でさっさと決着がつくことも規定事項のようだ。

 なのでその後に待っているであろう面倒くさいインタビューとやらをどうやり過ごそうかに意識が行ってしまっているらしい。

 シューくんの忠告もどこ吹く風か、その言葉にはまったく真剣さが見られない。

 まぁそれでもメアリが負ける姿が思い浮かばないので、やりたいようにやらせておいた方がいいのかもしれない。




「インタビューってのはどこでやるの?」

「なんかさっき戦闘した広場らしいよ。準備したら転送するから待ってるようにって書かれてるけど」


 クレスが運営から来たらしい通知文を読みながら答えていると。


「あ、わたしの方にも通知来たよ。

 これでOK押したら転送されるみたい」

「そう?じゃあ行ってらっしゃい」

「インタビューも中継で見てますから!」

「それはちょっと恥ずかしいかな?まぁ、行ってきます」


 と言って、先輩はコンソールを操作し、転送されて行ってしまった。

 残された私たちは、ほっと息を吐く。




「まずは一勝、だね」

「予定通りってね」

「クレスって本当に強気だよね。もちろん私だって、先輩が負けるとは思ってなかったけど、相手がどんな人かもわからないし、そんなに確信持っていられなかったよ」

「確信、っていうか、予感かな。こうなるんじゃないかなって予感。あたしのこういう感はよくあたるんだよね。

 それに」

「それに?」


 聞き返した私に、クレスはウインクを返しながら。


「あんたも負けないって予感がしてるから大丈夫。

 そんな緊張ばっかりしてないで、もうちょい楽にしてな」


 同じ女で、しかも友人の仕草だというのに、思わずどきっとしてしまう。

 同時にその言葉に、自分が緊張していたことを自覚し、今までの行動がどこかちょっと上滑りしていたような気がしてちょっと気恥ずかしくなった。


「おいおいおい、初心(ウブ)な反応を楽しんでたってのに、そういうこと言っちゃうかねぇ?もうちょいそのままにしといた方が面白かったのになあ?」

「あんたのそういう視線がキモイから言ったんだけど?」

「かぁー、手厳しいねぇ?おじさんにキモイキタナイクサイは禁句だぜ?マジでへこむからよお?」


 え、え?と状況が飲み込めないまま、クレスと夢現のやりとりが続いていた。

 クレスが夢現から庇うように、私の前に立つ。


「緊張したあんたのことがちょっと可愛かったからもっと見てたかったみたいよ。

 それにしてもあんたってのは、どうしてこんな変なのにばっかり好かれるの?って、あたしもあんまり人のこと言えないか」

「べ、別に好かれてる訳じゃないでしょ!?私の恥ずかしい姿見て笑いたいだけでしょ!?」


 はぁ、と二人揃ってため息。

 いやいや、流石にそれはないって!

 変なところで息が合った二人に対し、話題を変えるように話を振る。


「メアリは、まぁ心配してないけど、夢現はそのあと試合なんだからしっかりしてよね」

「もちろんわかっているとも?それよりクレスよぉ、俺っちの方はどんな予感がしてるんだ?よく当たるんだろう?」

「そうね、負けるんでしょ?」

「辛辣だなあ?」

「ってゆーか、勝ってる未来が想像できないっていうか、なんか嫌な予感しかしないのよね」


 ジト目で夢現に視線を向けるが、まったく気にした様子はない。

 それどころか、むしろこの状況を楽しんでいるようでさえある。


「先に言っておくけど、盛り上がりに欠けるからってわざと負けるとか許さないからね」

「もちろんもちろん、俺はいつだって真剣勝負よ?」


 全く信用のならない夢現の話を聞いていると、どうやら先輩のインタビューが始まるようだ。




『インタビュアーと務めさせていただきます、異種族所属のクチナシです。

 今回は中立ってことでこの場に呼ばれました、宜しくお願いしますね』

『はい、よろしくお願いします』

『今回は見事な勝利、おめでとうございます!』


 中継先に映っていたのは殺風景な試合会場に佇む二人の姿。

 一人はもちろん先輩で、もう一人は、まぁ人なんだろうか。

 首から下はアイドルみたいなピンクのフリフリの衣装を着た女の子体型なんだけど、顔が白い花だった。

 私はあんまり花の種類とか知らないけど、クチナシって言ってたし、あれがクチナシの花なのかな?

 クチナシの頭を持ったアイドル衣装の女の子…うーん、異種族ってやっぱり変わってる。


『まさに圧勝!といってもいいくらいの勝利でしたが、やはり勝因はその両手足と背中の装備品?なのでしょうか』

『いえ、これは装備品ではなく改造です。装備品ではないので取り外しは出来ないんですよ』

『えっ!?まさかそれが噂のマシーナリーというのですか!?』

『えぇ、そうですね。マシーナリーを解放した方から情報を貰って、マシーナリーの改造手術をしただけなので』


 私がマシーナリーの解放者ってのは周知の事実だけど、先輩は一応個人名が出ないように気を使ってくれたようだ。


『そうなんですね…うわぁ、ちょっと聞きたいことが増えちゃったなぁ…聞いた方がいいのかなぁ?あぁ、でも試合のインタビューだもんね、そっち優先かなぁ』

『時間はたっぷりあるみたいなので、わたしに答えられることであればお答えしますよ』

『そうですか!?ありがとうございます!

 では、まずは試合の振り返りからいきましょう!運営の方から、先ほどの試合動画が提供されましたので、そちらをご覧になりながら解説をお願いします』


 クチナシさんは顔が花なので、人の表情ほど変化はわからないけど、困ったりするとその花弁がちょっとしなっとしたり、嬉しくなるとぴんと張ったりするので、それが逆に可愛らしい。

 私はあまり知らなかったけど、衣装もそんな感じだし、もしかしたらアイドル的な感じの子だったりするのかな?


『───ここは足の排気口から精霊魔法のラミネイルフローを射出しているんです。マシニングで改造した箇所は全て魔道具化してあるので、どこからでも魔法が打てるんです』

『あ、そんなところまで教えて頂いて!

 ってことは、あの動きは魔法によるものということですか?ジェットとか、そういう機械なのかと思ってました』

『風の流れを調整するのに機械も使ってますけど、基本的な動力は魔法ですね。おかげで燃費はあまりよくないんですけど』

『えええ、そんな弱点みたいなところまで話して貰っちゃっていいんですか!?

 あの、本当に、話したくないことは話さなくてもいいですからね?』

『別に隠すようなことでもないですし。

 それに、今回の試合で改善点も見つかったので、また改良して貰う予定です。なので、次にあった時のわたしが、今日と同じだとは思わない方がいいですよ』

『それは、もっと強くなるという、ことですか?』

『ふふ、どうでしょうね?』


 あぁ!見た目が男性アバターなので、そんな流し目ウインクなんてしたら宝塚の男役スターもかくやの格好良さです!


 その後もインタビューは続いて行き、インタビュアーさんの的確な質問に、先輩が丁寧に答えていくという内容で、結果的に四十分ほども続く長いものとなった。

 どうやら途中から運営がヘルプとして、視聴者から来た質問をインタビュアーのクチナシさんにメッセージで送っていたようで、中には結構細かい質問なんかもあったりしてたが、先輩は嫌な顔せず答えていた。

 試合後とは思えないほど疲れた様子もなく受け答えをする先輩とは裏腹に、クチナシさんは慣れないことをしている所為か、むしろこちらの方が花弁に疲れが見えている。

 あ、先輩がそれに気づいて締めようとしている。

 それに気づいたクチナシさんが露骨に嬉しそうな花弁を見せ、もっと言えば白い花がうっすら朱色に色づいている。


 あ、これは新しい恋の予感───


 その恋は実らないよって伝えてあげたい、あぁとりかえしのつかなくなる前に…。




 そうして思いのほか盛り上がった突発インタビュー企画が終了し、次の対戦者を待つ戦場はまた幾ばくかの間だけ、静けさを取り戻していた。




 第二試合開始まで、あと一時間。

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