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16.「原因」

 町に着き、ほぼ逃げるようにベトルの住む屋敷へと竜化を解いて転がり込む。焦った様子のローサー達を見て、一瞬戸惑う様子だったが、苦しそうに呼吸するドラパを見るや、すぐさま奥の部屋へと案内してくれた。


 ドラパを別室に寝かせ、軽く薬草で治療してくれたベトルが、ローサー達のいる部屋に入り、重々しくため息を吐く。みんなの表情は、暗く沈んでいた。


「……何があったか、説明してくれる?」


重々しく、ベトルが口を開く。しんと静まり返った空気が、各々(おのおの)の気持ちをさらに沈める。


「…昨夜、リスプ…老脈龍(ろうみゃくりゅう)のいた山の(ふもと)の森で狩りをして…その場で野宿をしたんだ…それで、目を覚ましたら……森が、燃えてて…」


息を吐くのさえ苦しそうな声で、膝の上で腕を組んで顔を上げないままローサーが説明をする。ローサーの説明を聞き、顔を歪めるベトル。当たり前であろう。今の説明では、まるでーーー


「……焚き火の、消火不足………」


ぽそりと、ベトルが呟く。その言葉に反射的にエンベリラが吠えるように叫ぶ。


「火の後始末はちゃんとした! それは俺もリスプもドラパも知ってる! それに…かなりの年数冒険者をやっているローサーがンな初歩的なことで…」


「だとしたら…」


吠えるエンベリラをベトルが睨み、恨むように声を低くした。


「だとしたら、あんたが火をつけたことになるわよ…エンベリラ」


「ッ…!」


その言葉に、言葉が詰まる。焚き火の消火不足が原因でなければ、この中に唯一炎を使えるエンベリラが原因としてあげられる。ローサーやドラパの炎魔法、ということも考えられるが、森に火をつける理由がない。


「エンベリラ、あんた無理矢理ローサーに使い魔にされて腹いせに火を…」


「そんな、こと…」


「そんなことしない!」


言葉が出ないエンベリラを押し退けるようにローサーが声を荒げる。ローサーのその気迫に()され、再びみんながおし黙る。


「エンベリラは、腹いせでそんなことするようなヤツじゃない」


深く、はっきりと言葉を放つ。


 しかし、それでも森が燃えた理由がエンベリラではないという確証は、無い。寝惚けた人が寝言を話すように、エンベリラが炎の欠片を吐いてしまうことだって十分にあり得る。それは注意や用心をして止められるものではない。それに、


「……どんなことが原因だとしても、火の不始末は、ローサー…全てあんたに返るのよ?」


吐き気がするほどの重い、冷たい空気。


「焚き火の消火不足にしろ、エンベリラにしろ…管理ができていなかったローサーが責任を負うことになる…」


「ッ、待てよ! 原因が俺だったら、俺がどうにかする部分だろうが!」


たまらず吠えるエンベリラに、ベトルは冷たく言い放つ。


「使い魔の暴走は、使い魔の主が責任を負うことになる…冒険者登録も、使い魔登録も、そういうことなのよ、エンベリラ」


人間世界のルールを知らないエンベリラでも、その言葉の意味は十分に理解できた。しかし、それでも納得できるかと言われれば、完全に納得できることではない。何か、打開策はないのか。そう考えあぐねているエンベリラと他のみんなの耳に、屋敷の扉がノックされる音が響いた。


「夜分遅くにすいません。こちらに、冒険者ローサーとその使い魔が燃えた森の方向から飛んでくるのを目撃されたため、そのことについてお聞きしたいことがあります」


張り上げられた声に、この場全員の心臓が凍りついた。

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