12.「リスプ」
ドタンバタンと山を揺らして争うエンベリラとリスプ。エンベリラの方が巨体なため、リスプが劣勢に見えるが、リスプは音波や気を使い、うまく立ち回っているようだ。
エンベリラが爪を振るう度に山の地面が抉れ、土飛沫が飛ぶ。リスプが音を発するごとに山が揺れ、岩石が宙を舞う。
やがて、2体は疲れたのか、互いに距離を置き、ぜえぜえと息を吐いていた。
「きょ、今日はこのへんで勘弁してやる……」
『それは………こっちのセリフである……』
ふぅ、と2体は息を吐いてバタンと横になった。
『…………そういえば、この山に引きこもってから、空など久しぶりに見るな』
「そうか……なら、久しぶりに俺に乗っていみるか?今ならお前を乗せて飛べそうだ」
2体は互いに幸せそうに笑い合っていた。昔の仲良しだった頃に戻ったように。
数分後。
『いやはや、挨拶もせずに申し訳なかった』
リスプが起き上がり、ローサーとドラパに挨拶をする。
「いや、こちらこそこのバカがすまなかった」
「誰がバカだ!」
エンベリラが抗議するが、ローサーはそれを無視する。
「それで、話なんだが……」
笑っていた顔を引き締め、両者共に真面目な顔つきになる。
「この山から出て行ってくれ。そうしないと、今度は国が兵を上げてお前を討伐しにくる。その前に遠くへ逃げるんだ」
『………とても有難い話だが、それはできぬ。我には遠くへ行くほどの翼がないのだ』
悲しげにリスプが項垂れる。確かに、リスプには翼がなかった。もとより、飛竜ではないようだった。困ったように頭を掻く。
『…貴様方についていくことはできるが……迷惑か?』
「いや、それでいこう。人化は出来るんだろ?」
『左様』
そう頷くと、リスプの体が人間サイズになっていく。あっという間に150cmほどの少年の姿になる。深緑色のボブカットに赤色の眼、緑色の長いボサボサの服を身に纏っていた。
「我は服さえも再現できるのだ!龍だからな!」
高く、鼻につくような声でリスプが言う。
「龍だから服まで再現できるわけではないって聞いたんだけど…まぁいいか。よし、じゃあ、とりあえずは僕たちについてきて、代わりの巣が見つかったらそこに住んでもらおう」
こうして、老脈龍リスプが仲間として加わった。




