11.「老脈龍」
「知り合い?」
「あぁ」
エンベリラがゆっくりと話し出す。
その昔、エンベリラが暴虐竜と呼ばれるほど強くなる前。1000年ほど前の死魔の森にいたエンベリラと老脈龍__ドラゴンたちの間ではリスプと呼ばれていた__は、友人同士という関係だった。まだまだ生まれたばかりのエンベリラを友人と呼んで慕ってくれたリスプは、エンベリラにとって唯一の友達だった。しかし、ちょっとしたことで喧嘩になり、そのまま会えずにいたらしい。
「だから、今回は見逃して欲しい」
「んー…でもこのままここに居られると村や街に被害が出るだろうから、僕だけじゃなく、国もいずれ兵を上げてリスプを討伐しにくると思うぜ?」
黙りこむエンベリラ。
「……なにも解決策がないのなら、討伐するしかないな」
ローサーが一歩前に出る。何か不穏なものを感じ取ったドラパがローサーとエンベリラの袖を掴む。
「離してくれドラパ。これは仕方ないことなん……」
「ローサー」
「ん?なんだ?エンベリラ」
「………俺がここから出て行くように説得してみる」
「………わかった。その代わり、成功しなければ討伐する」
ドラパがエンベリラの袖を離す。ゆっくりとエンベリラは老脈龍、リスプに近づいていく。リスプがぎろりとエンベリラを睨み付ける。リスプがみんなに聞こえるようにテレパシーでエンベリラに話しかける。
『今さら何の用だ。貴様と仲直りするつもりも、ここから出ていくつもりもないぞ』
ビリビリと巣穴内が揺れる。リスプが音波を放っているらしい。どうやら、本気で出ていくつもりはないようだ。ローサーが足にぐっ、と力を込める。が、なおもドラパはローサーの袖を離さなかった。エンベリラが説得を続ける。
「そんなこと言うなよ。年齢に見舞わずチビだなって言っただけじゃねぇか」
リスプがカッ、と目を見開き、竜にしては小柄な、人にしては巨体なその体を起こす。グラグラと山が揺れる。音波が大きくなっているようだ。
『その言葉が気に食わんのだ!誰がチビだこの煩悩竜!』
「あ"あ"!?誰が煩悩竜だこのチビ!」
『チビではない!もう怒った!勝負せよ!』
「臨むところだ!」
エンベリラが竜化し、リスプよりも大きな巨体がガラガラと巣穴を崩す。もはや原型を留めていない巣穴から外へ飛び出し、山を揺らしながら戦いを始める2体をよそに、子供のようなことで争っているリスプとエンベリラを冷めた目で見ているローサーであった。




