表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パソコンヒモ男  作者: ふじふじ
対決編
46/47

注文

「先程から、聞いていますと、三年前のあの事件の話をされていますね?」


男はいきなり英子に向かって切り出し始めた。


「いいえ、サブローさん…、この方のメモが細かいって話なんだけど」

「いや、その前に」

「その前は、この方の娘さんが今日ベビーシッターに」

「わざとでしょう、わざと話をはぐらかしているでしょう?」

「なによ、勝手に他人ひとの話題に入ってきて、失礼ね」

「お聞きしたところ、あの事件の関係者をお探しとか」

「そうかもしれないけど、あなたには関係ないことじゃない」

「それが大ありなんですよ」


「ほう?」


サブローはすかさずメモを取り出した。


「お待ちどうさま、レモンサワーと、中生です」


「あ、ありがとう、それじゃカンパーイ、でね、サブローさんのメモの話なんだけど」


背の高い男は英子がそう言うと、明らかに失望した顔をした。


「英子さん!」

「何?サブローさん」

「念のため話を聞きましょうよ。手掛かりになるかもしれないんだし」

「ええ〜。せっかくの乾杯なのにぃ?」

「私なら構わないわよ?」


さよりが何故かニヤニヤしながら言った


そう言うならと英子は気を取り直して


「私は伊澤英子、三年前のSAEビル爆破時未遂事件の調査をしているものなの。あなたは一体誰なの?」

「私は東海林秀一と申します。毎朝新聞で新聞記者やっています」


男は名刺を英子に差し出した。


「毎朝新聞?そんな新聞あったかしら」


なんだか、大手っぽいが聞いたことのない新聞社の名前だ。まるでドラマに出てくる会社だ。


「伊澤さん、最近はネット社会。新聞社もたくさん立ち上がっています。我が社も昨年ベンチャーで」

「はいはい、わかったわ、それであなた、三年前のあの事件になんで興味が?」

「私は企業犯罪に関する記事を書いていまして、そのなかにSAE社ビルの爆破未遂事件が引っかかりました。実はあの時、私は当時別の新聞社であの事件の取材をしていたのです」

「へぇ」


英子は少し体を乗り出して話を聞く姿勢になった。


「そうなの?それは是非話を聞きたいわね、私はあの時現場で爆弾処理をやらされたのよ。一般人なのに」

「やはり、あの時の直接の関係者でいらっしゃいましたか」

「その通りよ、ここのサブローさんもそうだわ。私たちはビルの爆弾の撤去をしたの、一般人なのに」

「私も当時あの事件を独自に調査したレポートがありまして、そのお話を今度させていただけませんか?」

「そうね、ここじゃなんだから、そちらにお伺いしても良いわ」


英子はそう言うと男は少し慌てた。


「そう、サブローさん、ここの”男は少し慌てた”って所、いいメモだわ」

「い、いや、私の方からそちらにお伺いします。お仕事はどちらで?」

「ここ、川崎よ、これ私の名刺」

「…PHOリサーチ、ほう、なんの略称ですか?」

「なんでもいいじゃない、とにかく、今週は何も入っていないので、いつでもいいわ」

「わかりました、後日また連絡します、会話に割って入って失礼しました」


男はそう言うと軽く会釈をして自分の席に戻った。なんだかずいぶん離れた席である。なんでこちらの会話に気づいたのか。


「なんだか、都合よく関係者が現れましたね、英子さん」

「そうね、まぁ、今はなんでも手掛かりになるならいいわ。ね、さより、こんな感じでいつもやってるのよ。遊んでるわけじゃないわ」


さよりは去って行く男を睨むように見ていたが、すぐこちらを向いた


「え、ええ、そうね。真面目にやってるじゃない、さ、飲も飲も」


…絵美のやつ、あからさまに怪しい送り方をしてぇ。とりあえず上手く行ったが、後で文句言ってやる。さよりは一瞬恨めしい顔をしたが、英子に気づかれまいと、気を取り直した。英子はくるくる変わるさよりの表情を不思議に思いながら、食べ物も注文しようと、店員を呼んだ。


「すみません、注文よろしいでしょうか?」

「はい」

「ええっと、卵焼きと、アジの一夜干し、マグロぶつ…」

「はい、あの…ぉ」

「何?どうしたの?注文は以上よ」

「さっきの話、聞いちゃったんです」

「さっきの話って?この”男のメモがすごい”って話?」

「違います、爆破未遂事件のことです」

「えっ?」


さよりは、顔を覆ってその場に突っ伏した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ