会社
5.英子の英断
「これまで私は、ほんの軽い情報提供のつもりでパソコンの情報を調べて、皆に伝えてきたわ」
「まさか、英子、それを有料化しようっていうの?私たちの間で?」
さゆりはビジネスの相手として関係もない個人同士のやりとりでそれは難しいと主張した。
「そうね、それも一つの手かもしれない。でも私の考えているのは、もっと根本的なこと。私たちが行っている活動そのものをビジネスにしてしまおうって話なの」
英子は続けた
「さよりはネタから吸い上げた著作のの管理を個人でやるのは大変だろうし、いつまでも裏情報としてバイト代を個人に流し込んでいる絵美さんも健全な情報交換をしているというふうには思えない」
「そ、そうね」
「まぁそうかもね」
「そこで、情報提供のからレポートの管理、ブログサイトの運営、出版の管理までを行う新しいタイプの探偵社のようなものができないかなって考えたのよ」
「へぇ、さすが英子、そういうのパッと思いつくのね」
さよりは感心した。
「ちゃんとした会社に対する調査依頼だったら絵美さんのリスクも減らせるし、個人についた予算を用途不明金のように調査費で使うこともない。ちゃんとした委託をすれば良いのだから」
「そうね、そうなっているとありがたいわね。最近私の業界でも法の遵守はかつてより厳しくなってきているわ」
絵美も前向きな返答をした。
「そこで、中心になるのが、あなた、サブローさんよ」
「え?私ですか?」
「そう、あなたには私の作る新しい探偵社の社員になってもらうわ。調査員として」
「私が、英子さんの会社の社員ですか?つまり就職?」
「何も堅苦しく考え雨必要はないの。オフィスが持てるほどいまは利益がないわけだし、在宅で今まで通りやってくれればいいだけ。ただ、クライアント直接ではなく、私という会社を通すだけよ」
「あたしはどうなるの?」
とさより
「さよりはライターとしてブログを書いたりして貰えばいい。今まで通りフリーのライターでもいい。私がさよりに委託するというだけ。本の出版に関する事務処理は私がやるわ」
「サブローさんの解決能力を一カ所でうまく管理して分散している状態を解消するわ、私のお給金は、営業利益の10パーセントとかそんな感じでどうかしら」
「悪くないわね」
絵美がいった。
「サブローさんの能力をこのいい加減な三十路女に任せておくのもどうかと考えていたのよ」
「あんただってとっくに三十路でしょう、絵美」
「失礼な、私はまだたった1ヶ月よ。あなたのようにもはやどっぷりアラフォーではないの」
「英子だってサブローさんだってもうとっくに超えてるんだから、あんたがガキなのよ」
「なによ、やる気?」
「あーあー、もうやめてやめて。私がそういうふうに喧嘩にならないように間を持ってあげるわ、それだけでもメリットありそうでしょう?」
「そうね、でも英子、こんなことじゃ、全然お金になりそうな気がしないのだけれど。大丈夫なのかしら」
「そうね、かつての会社のコネでも頼って、いくつか仕事がもらえないかは当たるつもり。さすがにサブローさんので仕事だけでは依頼数も多くないだろうし。それに」
「それに?」
「サブローさんにパソコンの問題解決以外のことをお願いするのは心許ないわ」
「お気遣い、ありがとう御座います、絵美さん」
「ということは?サブローさん」
「引き受けましょう、パソコンの問題も増えそうですし」
「あなた、そんな簡単に!」
「さゆり、今、’あなた’って言ってみたかっただけでしょう」
「えへへへ、そうなの、ね、あなた」
「はいはいはい。みんな異論ないかしら?」
「ないわ」
「ないです」
それじゃ、会社は近々発足!入社式はなしよ!解散!
英子はそう言うとビールをぐっと飲み干して、タレつくねを頬張った。久しぶりに美味しい焼き鳥を食べた気がした。ちょっ冷えてはいるが。
とりあえず、あの榊原あたりとでも連絡を取ってみるか。英子はそう考えると飲み物をラストオーダーした。




