反撃
2 「復活に向け」
英子は化粧室で身なりを整え、さよりと三郎の前に来た。
「おめでとう、二人とも、とっても素敵だわ」
「ありがとう、英子。あなたのおかげでここまでこれたわ」
「ほんとにそうね」
「あっはっはっは」
「さより、ちょっといいかしら」
さよりはビクッとした
「え、ええ」
英子が情報を流すようになってから、以前にも増して英子を警戒するようになっていたのだ。なにせ、サブローの活躍は英子に情報如何に寄るところが大きいことと、それによって、サブローが英子に恩義を感じることを恐れたのだ。
英子が持ってきた情報にもかかわらず、自分が持ってきたとウソをついて、サブローと解決した問題も多数あるが、自分で情報収集することはなかった。
なにせサブローから話を聞いて、自分なりに解釈したのち、文章に起こす作業は骨が折れたからだ。自分がわからないと表現しようがない。おかげでさよりはサブローに次ぐ、パソコンの詳しい人間になっていた。理解するという上での勉強はかなりしたつもりだ。しかし、そんなことであったから、情報収集するということに関しては英子に丸投げ状態であったのだ。
英子の生活が苦しくなっているのは知っていた。が、走り出してしまった自分の幸せを取り逃がすリスクを背負ってまで、英子の手助けをしようとは考えなかったのである。結婚が近づくとさよりは、英子への警戒心をさらに強め、まるでじぶんが英子を使役しているような態度を取っていた。
「勝ち組、負け組」
「え?」
「負け組なんかにはならないわよ、わたし、今日を境に復活するわ」
「復活って?」
「とりあえず、以前集まったように三人で会議よ。あ、サブローさんも入れて四人がいいわね」
「す、新婚旅行があるのよ、あたしたち」
「ダメよ、すぐにではないでしょう?明日、招集するわ、来ないと…あなたの本に難癖つけた文章を裏アカブログに投稿し、本のネタ元の裏情報をツイットに100以上流して炎上させるわ」
「やめて!、それだけはやめて!」
「いやなら大人しく来るのね。明日、午後にしてあげるから、今日はゆっくり二人で仲良くしなさい」
「お願い、英子、赤ちゃんが、赤ちゃんがいるのよ」
「ふふふん、そんな古いネタ、今時恋愛ドラマでも言わないわよ。大丈夫、大人しく従ってくれれば、悪いようにはしないわ」
「本当よ、英子、本当なの」
英子はつかつかとその場を離れ、サブローの元に向かった。問題解決してもらった連中に囲まれて、ヒーローのような扱いを受けている。サブローはさよりと英子が用が済んだとみると、飛んで目の前に現れた。
「英子さん!今日はありがとう、来てくれて本当に嬉しいです」
「さ、サブローさん、生き生きしてるわね、あなた」
「いや、英子さんのおかげですよ、お会いしてからの半年は随分英子さんにお世話になりましたからね」
「半年?」
「ええ、あの事件以降続いたパソコンの問題ですね。抜群でした。そのうちさよりんから、安定的に来るようになってからは随分ご無沙汰してしまいましたが」
「さ…よ…りからですって?」
「しばらく経ってからですかね。情報収集のやり方を学んだので、あとは私たちでできると。さよりんって、天才です。すごくいいネタが集まるので、一時は会社まで作ろうかって話をしていたんですよ?本もとっても面白くて、僕もヒット間違いなしって思ってたんです」
英子は一瞬、怒りと絶望で真っ青になり、気を失いそうになったが、すぐ立ち直り言った。
「わかった、わかったわ。もうそれについてはどうこう言う気はないの。明日、さよりといっしょに会えないかしら」
「明日、明日、ああ、さよりんと一緒なら大丈夫だと思いますよ。新婚旅行のチケットを取りに行くだけですから」
「夕方、16時に川崎でいかがかしら」
「構わないと思いますが、さよりんにも言っておきますか?」
「ええ、お願い。場所はこちらからメッセージするわ」
英子は会場を見回し、絵美を探した。
「残るは、あの女ね」
絵美もサブローからの情報を得たり、サブローに仕事を依頼して大きな利益を得ているはずである。が、会場内のどこをさがしても絵美の姿はなかった。英子は絵美を探しに喫煙スペースに向かった。
「クリエイターなら、喫煙するはずよね」




