解決
一行がロビーに降りると、待ち構えた群衆に取り巻かれた。一昔前のように、報道陣がビルを囲み、マイクを向けた。
顔を上げるとさよりと絵美が見えた。さよりはサブローに抱きつくと、泣きながら何かを叫んでいた。多分、’無事でよかった’とかそういうことだ。
この女はもう、これからの人生を男に媚びて生きていくことに決めたようだ。かつての企業戦士ではない。あのあざとさ。サスペンス映画じゃあるまいし。そう思うとこちらをちらっと見た。ウソ泣きだ。
絵美はなにやら現場を見ながら必死にメモをしている。おそらくゲームのネタにでも使うのだろう。英子に断りもなくシナリオにして、一儲けするのだろう。今回の結果は予想外のようで大いに満足している様子である。
「とりあえず、伊澤さん、あなたと中野さんには署まで一旦ご同行おねがいします」
英子は茫然自失となりながら、警察の車に乗り込んだ。おそらくこのまま事情徴収だろう。
・・・・
「犯人はLIMEで連絡してきました」
「おそらく社内の人間の犯行と思います」
「私の電話番号を知っている人間は加藤、榊原他5名ほど」
「語尾に特徴がありました」
「声は聞いていません」
「加藤が一番怪しいと思います」
一連の事情徴収が終わると、ようやく解放された。サブローは少し早く終わっていたようで、さよりと一緒に待っていた。例のごとくしがみついている。
「いやはや、大冒険でしたね」
「サブローさんは今回の事件に心当たりは?」
「わたしにはさっぱり、ただ」
「事前に個人メッセージで、パソコンにどれだけ詳しいのかを聞かれていました」
「なんて答えたの?」
「いや、それほどでも。と」
「それで今回の事件はパソコンの問題だと言っていたのね?爆弾がパソコンなんだもの、詳しいと困ったんでしょう」
「それにしても、なんでなんの面識もなさそうな私にメッセージが」
「それが不思議なのよね。社にサブローさんのことを知る人なんていないもの」
「主な狙いは英子さん、あなたでしょうかあなたに何か困ったことを押し付けようしていたみたいですね」
「そうなのかしら。あまり心当たりがないのだけれど」
そんな話をしていると絵美が現れた
「英子さんは、あなた素晴らしいわ。想像以上の問題よ」
「あ、ありがとう」
「サブローさんも見事ね。またパソコン力を上げたわね」
なんだろう、そのパソコン力とは。そんな力の基準あるのだろうか。
「ありがとうございます。こうなったら世の中すべて、パソコンで動いて欲しいですね」
「そんなことあるわけないじゃないの」
「そうですね」
「あっはっはっは」
「サブローさん…相変わらずなのね」
「ええ…パソコンの問題を解決することしかできないんです」
さよりが英子にいポツリと言う
「犯人は逮捕されるかしら」
「きっと社内のものの犯行よ、明日みんな来るのかしら。おそらく数日は休みね」
…………
皆と別れ、自宅にもどり、シャワーを浴びると、英子はベッドに突っ伏した。
絵美からLIMEメッセージが入っており、今回の事件は'35SP'(サブローポイント)だそうだ。なんでも、これからは'サブロー指数'を決めて運用し、離れないように常に見張るのだそうである。絵美もそうだが、ずいぶんな熱の入れようである。
「でも、サブローさんがいなかったら私も今頃」
犯人の言うとおりにしていたら爆死していたかもしれない。そう考えると英子の背筋にゾッと悪寒が走った。
「サブローさんがいないと、私は…」
「……」
「いやいやいや、関係ないから。パソコンと恋とは関係ないから」
翌日、警察はSAE社の会議室で’ようやく’就寝していた加藤真一(25)を、爆発物取締法違反容疑で逮捕した。会議室内からは数台のスマートフォンとデスクトップパソコン、薬品、工具などが押収された。
加藤は連行される時
「ぼくじゃなーい、ぼくじゃなーい、あいつだ、あいつの仕業でし〜!」
と叫んでいた。
「あいつって誰よ?まさか私のことじゃないわよね」
英子はテレビに突っ込んで、そうそうにチャンネルを恋愛ドラマに切り替えたのであった。




