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パソコンヒモ男  作者: ふじふじ
冒険編
24/47

処理

19階。真っ暗なオフィスの明かりをつけると、英子は自分のデスクを指差した。


「あそこ、あそこらへんよ」

「いや、伊澤さん、全くわかりません」

「ほら、あのぬいぐるみがあるデスクがあるでしょう?」

「あのぬいぐるみが英子さんのですか?」

「いえ、私のデスクにはなにもないわ、いやなの、あの手のものを机に置くのは」

「今、それが仇になりましたね伊澤さん、全くわかりません。もうちょっと近くによっていただけますか?」

「こわいよう、いやよう」


英子は泣きながら柱にしがみついていた。


「では私が行ってきます、デスクの近くに行ったら声かけてください」


サブローがそう言うと、英子が止めた。


「ダメよサブローさん。あなたに何かあったらさよりに殺される」

「ではどうするんですか」

「わかったわよう、近くまで行く、近くまで行くから」


英子は半泣きになりながら、サブロー、爆弾処理班と共に英子のデスクまで向かった。デスクはフロアの中程で、先ほどのぬいぐるみとは全然違うところにあった。


一行が英子のデスクのそばまで行くと、なにやら四角い鉄の塊のようなものが床に置いてある。処理班が声を上げる。

「あっ、アレは」


サブローが言う。

「あれってあれですか?」


処理班が言う

「そう、あれが爆弾では」


サブローが言う

「いや、あれは…パソコンですね。HPC社のデスクトップ。英子さん、英子さんの会社ではフロアにデスクトップパソコンを?」

「置かないわ、あんなものなかった」

「英子さん、犯人に聞いてみてくれませんか?」

「何を?」

「どんな爆弾かです」

「そういえば、犯人にはあれから何も言ってなかったわね」

「何か入ってるかも」


英子はスマホを取り出すと、LIMEを立ち上げた。何十通もメッセージが入っており。全てが犯人からのものだった。


ガイアの夜明け:「そろそろビルについたか?」

ガイアの夜明け:「まだか?」

ガイアの夜明け:「連絡を待つ」

ガイアの夜明け:「おーい」

ガイアの夜明け:「どうしたんだ?」

ガイアの夜明け:「爆発するぞ?」

ガイアの夜明け:「今するぞ」

ガイアの夜明け:「早く、早く」

ガイアの夜明け:「いい加減返事しろ」


英子は絶句した。

「…ずっと無視してたみたい。とにかく連絡してみるわ」


A子「今、それらしきものの近くにいるけど」

A子「みんな言ってるわ」

A子「あれはパソコンでは?って」


しばらくするとメッセージが上がった


ガイアの夜明け:「そのとおり、パソコンの筐体を使った爆弾だ」

A子:「爆弾なのね?」

ガイアの夜明け:「そうだ」

A子:「パソコンではなく」

ガイアの夜明け:「爆弾だ、ふふふふ」

A子:「そのあなたの、"ふふふふ"ってのは」

A子:「わざわざ打ってるのよね、LIMEに」

ガイアの夜明け:「ふふふふ、そのとおり、爆弾だ」


英子は不毛な受け答えを無視すると続けた。


A子:「で、どうやって解除するの?」

ガイアの夜明け:「まずパソコンの筐体を開ける」

A子:「パソコンじゃないの?、やっぱり」


英子は叫んだ

「パソコンの筐体を開けるのだそうです!」


サブローが受け答え、処理班に指示する。

「なるほど、HPCの筐体は…あ、そこの横。そうそう、両側にポッチがありますので、そこを押してください。そうすると、あ、開きました」


A子:「開いたわよ」

ガイアの夜明け:「冷却フィンの付いているCPUクーラーを外すのだ、ふふふふ」


英子が叫んだ

「CPUクーラーを、外すのだそうです!」


サブローが少し嫌な顔をして処理班に言った。

「いやらしいですね」

「いやらしい?」

「いや、きっとネジが」


処理班が言う

「特殊ネジだ」


サブローが言う。

「あ、やっぱり」


ガイアの夜明け:「ふふふふ、CPUクーラーは、特殊な形状のネジで…」


サブローはすかさず、内ポケットからトルクスレンチを差し出した。


「トルクスネジですね。これ、使ってください」

「あ、ありがとうございます」


サブローがレンチを渡すと、ネジはすぐに外れた。サブローが英子に向かって叫ぶ。

「英子さん、外れました」


ガイアの夜明け:「ふふふふ、そのネジを外すには特殊な工具が必要なのだ」

英子:「外れたわよ」

ガイアの夜明け:「なに?!、ちゃんとCPUは見えたのか?」


「CPUが見えたか聞いてるわよ?」


「見えてますね、これは安い方のCPUです」


A子:「安物のCPUが見えてるわよ、で、どうすればいいの?」

ガイアの夜明け:「元に戻す」

A子:「え?」

ガイアの夜明け:「元に戻すのだ」

A子:「関係ないんでしょう?そうなんでしょう」

ガイアの夜明け:「…」


しびれを切らしたサブローは筐体を覗き込むと、処理班とやりとりを始めた。


「シリアルATAの電源から、HDDに繋げているところが、見た感じ変ですね、あ、HDDが爆弾になってるのか。だとすると、この線ですね。この線を抜けば平気みたいですね」

「えっ?、どれですか?」

「これです、あ、抜いちゃった。これで止まったんじゃないですかね?」

「タイマーはまだみたいです」

「ま、でも実質、爆弾に行く電線、抜いちゃいましたからね。タイマーは…ああ常時電源か。やるんならまず…これで止まるんじゃないですかね?」


サブローは電源ケーブルを抜いた。処理班とのやりとりを続ける。


「あ、消えた」

「ちょっと帯電してるかもしれないので、30秒ほど待って」

「あ、このソケットですか」

「そうですね、それです」

「タイマー、もう止まってますけど、念のためって感じですかね」

「そうですね。そろそろ抜いて平気かと」

「あ、はい、抜きました。あ、通電、なくなりました。完全に大丈夫ですね」

「さすが処理班の方、処置が早いですね」

「いえいえ、恐れ入ります」


英子はまだひたすらLIMEをやっていた。


A子:「緑なの?緑なのね?」

ガイアの夜明け:「くくくく、そう見せかけて赤、赤を切断するのだ」

A子:「どっちなの?どっちなの?」


「ああもう、爆発しちゃう、怖い!怖い!怖い!」

「英子さん、終わりました」

「へっ?!」


サブローと処理班は爆弾の残骸を残して作業を終えていた。


「あとは撤去の専用班がやってくれます」

「英子さん、さっきからスマホで誰と話してるんですか?」

「犯人よ。緑を切れって。サブローさん、どっち切ったの?」

「あ、ソケットごと抜きました」

「え?」

「ソケットになってましたので、切らずに抜きました。切るとショートする可能性もありますのでね」

「じゃあ、今の私のこのやりとりは?」

「あ、もう結構です。ありがとうございます。終わりましたので」

「そ、そうなの…」


英子はその場にへたり込んだ。サブローがすかさず支えてくれた。


「英子さん、素晴らしい勇敢さでした。おかげでこの場は解決しましたよ。あとは犯人逮捕を警察に任せましょう」

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