翌日
4「やってしまった日」
朝9時。起きたらその時間だった。なんという失態。おまけに頭がガンガンする。とりあえず会社に連絡し、今日は気分が悪く、休む旨を伝える。
日本で会社勤めを開始して十数年、初めての失態であった。なんであんなに飲んでしまったのか、まず焼き鳥屋から出た記憶がない。サブローやさより、絵美に自分の話をし始めたところまではなんとなく覚えてるが、何を話したかは全く覚えていない。
寝巻きにも着替えず、スーツのまま。
幸いにもスーツがシワになったぐらいで、何処かに転んで破ってしまったような事はないようだった。
「ケータイ…」
スマホのLIMEには、さよりからメッセージが入っており、支払いはサブローがしたこと、英子をタクシーに乗せて自分たちは帰ったことなどが書かれていた。
特に恥ずかしい写真があったり、変なことを言って怒られていることはなさそうだ。英子は少し安堵すると、再びベッドに戻った。カバンや上着を脱ぎ散らかしており、ベッドの上はグチャグチャである。
頭が痛い。吐き気もする。とりあえず、きついスーツを脱いで寝巻きに着替えた。ボサボサの髪もどうにかしたい。
服を脱ぎシャワールームに行くと熱いシャワーを浴びた。
喉が乾く。
なんとなくシャワーのお湯を飲んでしまった。
「ゲホッゲホッ、何を、何をやってるの、わたし」
英子はシャワールームから出ると、放り投げたカバンの中に自分の財布を探した。財布はすぐに見つかった。良かったなくしていない。
「ぱさ」
何か紙が落ちた。折りたたんであるA4の紙である。中身を開くと、パソコンの写真が印刷してある一覧表である。
「パソコン…。きっとサブローさんのね。書き込みがしてあるし」
英子はスマホを手に取ると、さよりにメッセージを送った。
A子「きのうは迷惑かけてごめんなさい」
A子「お金の支払いしますので」
A子「お時間がある時に連絡ください」
さよ「あー、いいわよ別に」
さよ「なんか大変そうだったし」
A子「なにが?」
さよ「企業で働くってことが」
A子「そう…」
さよ「途中でなに言ってるかわからなかったわ」
A子「ごめんなさい、なんか私、スイッチが入っちゃったのかも」
さよ「会社は行けたの?」
A子「休んだわ」
さよ「じゃあ、今日夕方にでも会わない?」
A子「なんとかするわ」
さよ「何かサブロー君もちょっと英子と話したいことがあるみたいよ」
会話を終え、英子はスマホをスリープにすると、ベッドに倒れこんだ。ぐるぐるする頭の中で各社が持ってきた資料が回る。みんな自分たちの解釈で好き勝手書いてきたり、過去のプロジェクト受注パターンなんかを提示してきている。収集がつかない。
英子は寝返りを打って、それらのイメージをかき消そうとした。
「カサッ」
何かが手に当たった。さっきのサブローのものと思われる折りたたんだ紙である。英子は何気なく広げてみた。
紙は一覧表になっており、各社のパソコンの特徴が書いてある。
画面サイズであるとか、CPUであるとか。
下の欄には、手書きで書いてあるところもある。
最後に価格。
「んー、値段は似たり寄ったりかも…」
英子は再び眠りに落ちた。




