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3/11

失敗

誰からともなく、一歩前へ出た。続いてもう一人。さらにもう一人。


気が付けば騎士も術師も兵士も、少女へ向かうように半円を描いて並んでいた。


少女の額を冷や汗が流れる。


「あ、あの」


全員の視線が集まる。


「赤い薬、青い薬、どっちにします?」


「……どちらでしょうか」


「え?」


「どちらを選べば」


「えっと」


少女は焦った。


「大きくなります」


「何がですか」


「あなたが」


「は?」


「せ、世界が」


「どっちですか」


「あ、あの」


少女は後ずさった。一歩。さらに一歩。


群衆のなかでは跪くものや、祈るもの、ひれ伏すものが現れた。


「天使様だ……」 「いや、女神様に違いない」「おぉお…」


少女の顔色はどんどん悪くなった。


「ああっ……マズイ」


その時だった。


遠くから土煙が上がった。地平線の向こうから馬車の列が現れる。


何十台。いや何百台。やっと援軍にきた最凶の軍団だった。


大量の荷車が連なっていた。先頭の男が大声を上げる。


「おーい!」


呑気だった。信じられないほど呑気だった。


「腹減ったろー!」


誰も返事をしない。


「どうした?」


さらに近付いてくる。


「なんか静かだな」


群衆の間にざわめきが広がった。


一人の騎士が呟く。


「待て……」


「どうした」


「爆裂団だ」


「何?」


「あれは爆裂団のはずだ」


周囲がどよめく。


あり得なかった。


爆裂団。


最前線の精鋭中の精鋭。


あまりにも呑気だった。


手まで振っている。


「おーい!」


兵士たちは顔を見合わせた。


「なぜ生きている?」


「いや、それより……」


術師の一人が周囲を見回した。


眉をひそめる。


「何かおかしくないか」


「何がだ」


「ここだ」


荒野だった。誰もが知る激戦地。城壁があった。砦があった。


死体があった。だが今は。見渡す限りの荒野だった。


何もない。戦場だった痕跡すらない。


群衆の視線がゆっくりと少女へ向く。


少女は硬直した。冷や汗が一筋流れる。


少女は空を見上げた。


「ああっマズイ!」

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