第四十話 始まりはいつも儚くて-4
「「「YEAH!」」」
ラプンツェルタワー最下層に辿り着いたハサミ、旋風、フモウはヘッド・ギアの目前まで侵入する。
「ななな、なんだそのテンションは!? 頭がおかしいのか!?」
白剛は声を震わせて体中から滝のような汗を流していた。
「観念するんだな、東郷時白剛! 年貢の納め時だ!」
ハサミは白剛とその背後にあるヘッド・ギアに近づいていく。
「ぐぬぬ、研究者たちよ! 全員私の盾となってあの者共を撃ち殺せ!」
サブマシンガンを持った白衣の研究者が壁となって白剛を守るが、元々、非戦闘員である研究者たちが撃つ弾丸はただ歩いてくるハサミたちにかすりもせず、すぐにマガジンの中身を使い果たす。
「お、お許しください長官!」
何も出来ずに恐れをなした研究者たちは銃を捨てて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「なっ、待て! どこへ行くお主たち! 私のために命を賭してでも戦え役立たず共! ……仕方がない。街にいるDURAの実験体を全個体ここに呼び寄せて――」
「そんなことをしても意味はない。操ったDURAに私たちを殺させるつもりなのだろう。しかし、DURAは私たちの仲間が決死の覚悟で喰い止めてくれている」
「何を馬鹿なことを! お主らの部下である幹部共はレールガンのある場所から動けないはずだろう!?」
旋風の言葉に白剛が慌てて手元のコンソールで街中の監視カメラ映像を確認する。
だが、旋風の言葉通り、DURAはハサミたちの仲間と思われる大勢の人々によって足止めをされていた。
「まだこんなに仲間がいたというのか!?」
「彼らはCOMBの人間ではない! 貴様が焚きつけて我々を襲わせようとした、この街で暮らす人々だ! 警官も犯罪者も一般市民も皆が一丸となって自分たちの街を取り戻すために戦っている!」
「なんということだ……愚かにもほどがある」
「俺の仲間を馬鹿にするな! 愚かなのはお前の方だ!」
「うぐぐ……おのれぇ……おのれぇ…………見逃してくれぇ」
白剛はハサミたちに首を垂れて嗚咽を漏らす。
「私の敗北だ……ヘッド・ギアも止める……爆撃も中止させる……だから、私の命だけは取らないでくれ……」
「なんて変わり身の早さだ。悔しがりながら命乞いをする奴なんて初めて見たぞ」
ハサミは白剛の態度に困惑する。
「ハサミ、この男の処遇は貴様に任せよう」
フモウに言われ、ハサミは白剛の首にメッシュブレードを当てる。
「……白剛、俺はここでお前を介錯してしまっても構わないと思っている。お前の罪はどれだけ謝っても許されることではない」
「それは自分でも理解している……私は五十年前までWIGをオカルト研究機関と嘲笑っていた連中に復讐がしたかっただけなのだ。WIGの創設者だった私はディアデムの実在や右左原一族のような髪に異能を宿す新人類の可能性を世間に知らしめようとしていたが誰一人私の言葉に耳を傾けてくれなかった。そして、五十年前の大晦日、ディアデムによる大虐殺は現実となり、国連や各国の研究機関はディアデムの存在を認めた。しかし、奴らは掌を返したように振舞い、私から研究成果を奪おうとし始めた。新人類であるエクステンドを核兵器などと同様に戦争の道具として使い潰そうとするような頭の悪い連中に渡す訳にはいかないのだ」
情けなく背中を丸める白剛の首からハサミはメッシュブレードを離した。
「もういい。俺はお前を殺さない。その代わりとして、スカルプリズンの人々の安全は守ってくれ」
「すまない……恩に着る――なんて言うとでも思ったか馬鹿め!」
白剛が手元で何かを操作していたことに気づいた頃にはもう遅く、部屋の左右から伸びていた作業用アームの手が旋風とフモウを掴む。




