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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

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第182話 得た糸口

 サニアがネィミヤの体を静かに横たえる。瞼をスッとに閉じ、流れる血の痕を拭って立ち上がる。こちらを振り向いたサニアの瞳には怒りと決意が宿っていた。


「・・・主さま、わたし……」

「あぁ、分かってるよ。大切な友達、だったんだろ?」

「・・・……うん」


 サニアは小さく頷く。


「・・・そんなに長い時間一緒にいたわけじゃなかった。むしろわたしは彼らの仲間に手を上げた。……でも、あの子はそれでもわたしに懐いてくれたの。——嬉しかった」

「そっか」

「・・・もう会えないと思ってた。だから、ここで会えた時はとても嬉しかったのに……。許さない」

「そうだな、彼女のためにも。そして、殺されたグリーンエルフたちのためにも————」


 その瞬間、俺たちのいる場所が、紅く朱く血の色のように光り出す。その光は、先程グリーンエルフやネィミヤ、そしてミユやテミスが現れた魔法陣から放たれていた。


「くっ!目が痛いっ!」

「なぜ魔法陣が!」

「ハッハー!!なんだ?見た顔がいくつかいるなぁ!」


 刺々しい光が俺たちの目を貫く。その光が徐々に何人かの人型を成し、聞き覚えのない声が聞こえる。だが、次第に形が生まれる中に見覚えのある生き物を見つけた。


「あれは……あの時のイノシシ?」

「な、なんであんたたちがここにいるの?!ドルトンさんは?!」


 光の中から姿を現したのは、ネィミヤと同じような黒いモヤをその身に纏った、9人の人間と巨大な二本角を携えたイノシシがいた。


「ドルトン?……あぁ、あの雑魚か。ハッ、あの雑魚なら今頃道端で石ころ程度の存在に成り下がっているだろうよ!いやはやあれはまさに傑作!ヤツにお似合いの最期だったよ!!」

「貴様っ……!」


 ミユ、テミスが大仰な仕草で語り出した男を睨みつける。


「……おや?君はサニアだったかな?恵みに落ちたばかりか、生意気にも我らが神域を下賤な獣の分際で踏み入った愚か者じゃないか!!元気にしていたかな?」

「・・・っ?!」


 声をかけようとしていたサニアに至っては、いきなり思っても見なかった方向から罵詈雑言を受けたようで、急に殴られたかのように固まっている。


「ん?……ここにはいろいろあるなぁ。こんなガキが我らと位を同じくする『死徒』に選ばれたなど信じられん。お前ら兄妹ともに死んでくれてセイセイした……よっ!」

「・・・ぁぁああああ!!!」


 もはやそんな身振りしか出来ないのだろう。大きく腕を広げながらナニカを語りながらこちらに歩いてきた男は、突如床に横たえていたネィミヤを蹴り上げようとした。


 間一髪でネィミヤに当たる前に防いだサニアが、雄叫びを上げながら全力で氷の刃を生成し、ネィミヤを蹴り上げようとした男を切りつける。




 ——その瞬間、戦端は開かれた。




 俺はサニアの左右から迫る大剣と細剣を弾き、逸らす。返す刃で大剣を持つ男の指を斬り落とし、細剣を持つ女の首を掻っ切った。


 ミユはサニアの頭を狙う音速の矢にぶつけ、相殺するように、魔力を纏わせた矢で応戦する。


 テミスは、戦線に飛び込もうとしていた戦鎚持ちと格闘家の懐に潜り込み、風の力と槍を組み合わせた技で参加を阻む。


 サニアは矢に続くようにして降ってきた空気を焼く炎と大気を凍てつかせる氷を、共に相反する属性の刃で切り裂き無効化する。


 そして最後に全てを丸ごと飲み込もうとしていた“暗黒魔法”と“神聖魔法”の合わせ技を、俺の“混沌魔法”と“熾天魔法”の合わせ技で飲み込み返す。


「なっ?!貴様…らっ!!小癪なっ!」

「お前ら何者だ?どうやら彼女と同じグリーンエルフみたいだが……」

「貴様らに名乗る必要はないっ!我らに歯向かうというならばっ!!この我が直々に天罰を下してやろうっ!!!」

「?!」


 顔を真っ赤にさせた男が凄まじい速度で指を動かし、宙に七色の魔法陣を描く。それは次第に一つの魔法陣へと収束し、虹色のような魔法陣が出現した。その大きさは人2人分ほどの直径もあり、その魔法陣に膨大な魔力が込められていることが分かる。


「あれが……“七天魔法”か」


 俺は“予知”で感じた危機感のまま目の前の魔法陣を“全鑑定”で鑑定する。すると以前、ヤマタノオロチで手にしてから使い方が分からなかった“七天魔法”、その原型であることが分かった。


 こうして目にしないと分からない魔法というのもおかしな話だが、今の今まで使用方法も一切不明だったのだ。

 …まぁ、俺自身も存在をすっかり忘れてしまっていたが。


 しかし、それもここまでだ。

 こうして実物を目にした。ならば、再現できる。さらにあの程度なら改良することもできる。


「……き、さま……!なぜ、それを、使えるのだっ!!」

「お前が知る必要はねぇよ」


 俺の指は目の前の男が描く魔法陣と大きさ、魔力量など全く同じものが描いている。そ(・)し(・)て(・)そ(・)れ(・)が(・)合(・)計(・)五(・)つ(・)。


 中心に線を引いて繋げるとちょうど正五角形になるようにその魔法陣は並べられていた。


 さらにその五つの魔法陣はそれぞれ黒と白の明滅を時々挟んでいる。まるで新たな生命が生まれる前兆のようにその魔法陣形は胎動していた。


「……そんなもの、は、知らないっ!!な、何なのだ!お前たちはっ!!……ボクの邪魔を、しゅるなぁぁぁ!!!!!!」



 —— 七天魔法『万色喰らう(クレル・ヴァリエ・)宵闇の竜(ディトリエ・ノワール)!!!!!』



 情けない叫び声と共に男の魔法陣から七色をした竜の首のような光が産み出された。それは俺に向かって喰らい付くように迸る。


「所詮は三流だな」



 ——七天魔法『降誕せし天仙龍《ドラグ・アドヴィエント》』



 五本の虹色の龍の首が黒と白の甲冑を纏い現れる。その光は向かってくる竜をいとも簡単に食い荒らし、それでは足らぬと術を放った男の元まで迸る。


「うぁ、うわぁぁ!!!!!!」


 自らの“七天魔法”を呆気なく食い荒らされたその男は情けない声を上げながら虹色の龍に食い尽くされていく。それは黒いモヤによって再生される端から食い尽くされるため、ついには痕跡すら残らなかった。


「……っ?!」

「がっ?!」


 さらにまだ食い足らなかったようで、残りの8人のみならず、最後までなぜか動くことのなかったイノシシすら食い尽くし、その姿を虹の光へと変じさせた光景に俺は戸惑いすら覚えた。


「われながらエグい魔法が出来たもんだな……」

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