第171話 砂漠の幻影
キャラの3点リーダーを変えてみました。違和感はあると思いますが、これでしばらくやってみます…!
「ブルァァァ!!!」
「くっ!!ぁあ!!……オラッ!!」
人間の体の三倍はあろうかという魔物の突進を受け止めた俺は、力を逸らしつつ魔物のツノの一本を叩き斬る。おそらく自慢のツノだったのだろう。二本あったツノを叩き斬られたその魔物は、斬られた衝撃によろけながら後退りする。俺はその隙を縫って、魔物の腹を蹴り上げた。
「シルフィ!!」
「はーい!!」
俺の合図を受けたシルフィは、空中で暴れながら飛んで逃げる態勢を整える魔物を逃がさないように、魔物の翼に空気の棘を打ち込んだ。
「ギャォアァァァ!!」
空気の棘をいくつも打ち込まれた魔物の翼から真っ赤な血が溢れ出す。雄大な砂漠の空を滑空するための立派な翼は一瞬でボロボロになり、元の土気色した筋肉隆々の姿は見る影もない。
「さにあ!!」
「・・・いくよ!」
そして最後。魔物よりも高く飛んだサニアが空中で大きく足を振り上げる。その右足には身の丈の倍はある氷の刃を纏っていた。
「・・・はぁ!!!」
「グギャァァァァァ!!!」
ズドォンッ!!!という轟音と共に魔物がサニアの氷の刃を伴って落ちてきた。そして、砂塵が晴れたところには、砂を被ったサニアと首と胴が分たれた魔物が転がっていた。
「お疲れさま。そのレッグガードやっぱりすごいな。前とは比べ物にならないじゃないか」
「・・・うん、だいぶ魔力の込め方にも慣れてきた」
「でも、もっとかぜもつかってよぉ」
「・・・慣れたらね。わたしはやっぱり氷が一番使いやすいわ」
「今までの経験があるからな」
俺はこの砂漠での貴重な食糧である二本角の魔物、レギレントスの死体を“無限倉庫”へと収納する。サニアが首を切ってくれたおかげで、だいぶ血抜きもできたし一石二鳥だ。
「ねぇ、あつい〜。ふたりだけずるい〜」
「こればっかりはなぁ。ていってもお前もテロルにおんぶにだっこじゃねぇか」
「そんなことないよ〜。ね、てろる〜」
シルフィの背中で体を広げて熱気からシルフィを守っているテロルは返事するようにプルプルの体を震わせる。いつもどこに逃げているかの疑問は、分からなさすぎてとっくに消えたが、そういえば、とテロルのステータスを見る。
名前:ヘテロシルバースライム
種族:異銀妖
Lv:327
スキル:銀棘焉貫Lv.- 完全再生Lv.- 異排全拒Lv.- New環境適応Lv.10 New融躰離脱Lv.-
ずっと俺に引っ付いていたからかレベルも結構上がっており、スキルも二つ増えている。一つは俺とサニアと同じようなダンジョンの環境に適応するためのスキル。そしてもう一つが“融躰離脱”と言うスキル。
融躰離脱 自身の身に危険が迫った時、自身を視界に入れていない外敵からの攻撃を自身の体を融かすことで受け流す。ただ、実体はあるため外敵の視界に入った瞬間、能力は無効化される。
なるほど、いつもどうやって敵の攻撃をすり抜けているのか気になっていたが、こんなスキルを有していたとは。思わぬ形でずっと抱いて、ついには諦めていた謎が解明したが、今回気になったのはそこではない。
——それは、スキル“異排全拒”。
本来ではあれば、このスキルは全ての種族に嫌われ、疎まれると言うスキル。しかし、俺の仲間にテロルを嫌う様子は全く見受けられない。それに『全ての種族』とは言うが、実際にテロルが排斥されていた場面を見たのは、こいつに出会った時のみだ。
そのため、本当に全てなのか?という疑問も湧いてくる。まぁ、それを確かめようにも敵が出てきたらすぐに俺のローブの中に隠れてしまうし、自ら戦おうとはしないので見ることも出来ない。
それにシルフィやサニアたちにまるでペットのように扱われ、それを満更でもなさそうに戯れているテロルを見ると、全ての種族に嫌われるようなところは想像できなかったのだ。
「ま、いいか」
「ん〜?」
「・・・どうしたの?主さま」
「いや、なんでもないよ。先を急ごうか、まだまだこの砂漠の大地は続きそうだ」
「・・・えぇ、そうね。もう暑くはないけど、やっぱり喉は乾くわ」
「あたしはあつい〜!!」
俺は詮ない考えをやめ、視線を地平線の先へ投げる。ここまていくつもの魔物を倒してきたが、“千里眼”で見る先にはまだまだ見たことのない魔物がいる。
砂漠の砂を水中のように泳ぐ魔物や体長と同じくらいの長さの一本ツノを持つ魔物など、バリエーションは豊かだ。それに森の中のように視界が遮られていないからか、魔物同士の衝突も垣間見える。
「ん?あれは……」
「・・・何かあった?」
「あぁ、あれ見えるか?」
「……・・・どれ?」
「ほら、あの黒い塔みたいなやつ」
俺は視線の先を指差して伝える。だが、サニアだけでなくシルフィも見えないようで、反応は芳しくない。ただ、俺もはっきりと見えているわけではなく、陽炎のようにゆらゆらと揺らめく細長い建物が見えるだけだ。
「……蜃気楼…か?」
思いついた可能性を思わず呟く。しかし、言って思ったが、蜃気楼は確か気温の差によって発生するもののはずだ。大気の密度によって光の屈折が変わり、周りのものをそこに写すというもの。
たいてい、それは水上や気温の変化の激しい地上で起こったはずだ。ということは、蜃気楼であった場合、あそこに見える塔の方へ向かっても、そこにはない可能性がある。
「・・・行ってみる?」
「うーん」
サニアの言葉に悩む。理性では危険すぎるため行くな、と言っているのだが、直感が行け、と叫んでいるのだ。
「よし、一か八かだ。行ってみるか!」
「・・・分かったわ」
判断に迷った時は自分の直感を信じろ、と誰かが言っていた気がする。俺たちは海を背にして蜃気楼揺らめく塔に向けて、進むことにした。




