第163話 外門の守護者『後編』
「ミユさん!!あのゴーレムの魔力供給炉は別の場所にあります!!場所は・・・地下?!」
駆け巡る想像が絶望的すぎて、思わず片目にかけた眼鏡を落としそうになる。改めて周りを確認するが、この部屋には下へと続く階段はない。
そこから考えられる方法としては、床を破壊してこのゴーレムへと魔力を供給している炉を破壊するしかない。しかし、それは現実的ではないだろう。私はスケルトンと戦った時のことが頭をよぎった。
「要するに全力でこの床ぶっ壊せば良いんでしょ?!」
「そんなこと不可能です!ダンジョンの床や壁は破壊できないんですよ?!さっきもそうだったじゃないですか!」
「でも、ほかに方法あるの?!」
言い合いをしている間にもゴーレムは私たちを叩き潰そうと攻撃の手を休めない。今や、完全に復活した四本目の腕も使って、さまざまな方向から多種多様な攻撃が降り注ぐ。
「ゴゴゴゴゴガガガガガガ!!!!」
「まずいっ!躱して!」
だが、攻撃が当たらないことに痺れを切らしたゴーレムが一際激しい咆哮を放った瞬間、地面から土気色の槍が、私たちを串刺しにしようとゴーレムを中心に波及する様に突き出した。
その槍はそのまま地面から飛び出して中空に浮く。そして、グリンッと穂先を私たちに向けると今度は空からも土気色の槍が降り始めた。
私たちは地面と空から襲いくる避けながら、目の前の敵をどうやって討伐するか、作戦を練る。といっても——。
「破壊できない地面の下にあるものをどうやって破壊したら・・・」
「くっ!この槍も砕けないっ!!」
私は“颶眼”による軌道予測を、ミユは“予知”を使って槍を回避し、弾く。その間にもゴーレムはその槍をものともせず私たちに攻撃を仕掛けてくるのだ。作戦会議もへったくれもない。
「ぐっ!」
「っ!ミユさん!!」
そんな中、ついに槍とゴーレムの攻撃を回避しきれなくなったミユが、土気色の槍を肩に受け、ハンマーの一撃をもろに喰らってしまった。大きく後ろへ吹き飛ばされるミユを追って、私も警戒を怠らずに一旦戦線離脱する。
「ミユさん、大丈夫ですか?意識はありますか?」
「・・・うん。なん、とかね」
「すぐに治療しますね」
私はそう言ってミユの体に手を翳しながら、ゆっくりと肩の後ろまで貫通した槍を引き抜く。痛みに耐えるようにミユがうめく。
それから数分ほど応急処置を施し、なんとか止血を終えた私たちは改めてゴーレムへと向き直る。先程の攻撃で目標のすぐそばまで詰めていた距離は大きく離れ、私の槍どころか魔法すら届くか危うい。
「・・・?」
そこで私は違和感を覚えた。辺りはシンと静まり返り、物音ひとつ立たない。そしてゴーレムは物言わぬ石像のように、左右の腕を交差させながら番人のように立っている。
「動いてない・・・」
「・・・」
ミユが何気なく囁いた言葉がきっかけとなり、瞬く間に私の中で、ピースが埋まっていく。
私は背を向けていてもゴーレムの動きがわかるように一挙手一投足に意識を向けていた。それは、気配ではなく“颶眼”による空気の流れや動き、軋み全てにだ。
その結果、ミユへの治療に少し時間がかかってしまったが、後ろから襲われるよりはマシだろう。
そう考えての行動だったが、功を奏したかもしれない。
私はゴーレムが動かないことをいいことにミユへゆっくりと私の考えた作戦を伝えた。
「・・・ほんとにそれで行けるかな?」
「今のところそれしかありません。やってみる価値はあるでしょう。幸い場所ははっきりと分かっています」
そう言って私はゴーレムの足元を睨みながら、先ほどまで私たちに向けて降り注ぎ地面に突き刺さっている土気色の槍を幾本か引き抜いて背に背負う。
「ではミユさん、行きますよっ!
「うんっ!」
私は先に走り出したミユの数歩後ろから、ミユに追従する様に駆ける。
「ガガガガゴゴゴゴギギガガガ!!!!!」
するとゴーレムも射程圏内に入ったことを察知してか、構えていた武器を振り上げて戦闘態勢に入った。
「“重斬”!!」
「“重突”!!」
ミユは金色に輝く魔力を纏わせながらゴーレムの左手に持つ大剣へと、私は蒼く光る魔力を纏わせながら、右手に持つ槍へと叩きつけた。
「ゴガガガガ!!!」
金色の光は総てを切り裂く斬撃となって大剣どころか、その下にあるゴーレムの徒手すら切り分ける。そして、蒼色の光はその輝きで以って、槍の一撃を弾き返す。
ゴーレムはこれまでと違う威力の攻撃に呻くような声を上げた。
「グガガガガ!!!!」
しかし、黙ってやられる番人ではない。ゴーレムにも矜持というものがあるのかもしれない。大地に落ちた左手と大剣をかなぐり捨て半ばまで裂かれたもう一つの左手でミユを殴り潰さんと叩きつける。
そして、右手は弾かれた槍を無視し、右手上に持つハンマーで私を叩き潰さんと振り下ろした。
「甘いですよ。その速度はすでに知っています」
だが、ゴーレムは私に情報を与えすぎた。私は風を読みながら瓦礫すら当たらない位置に身を置き、ちょうどハンマーが当たる位置に背負ってきた内の一本である、土気色の槍を突き立てた。
「グガガッッ?!」
やはりどこか人間味のあるゴーレムが驚くように声を上げた。そして、そのハンマーを持つ右手は突き刺さった槍から手が離せない。
やはり私の推測は正しかった。このゴーレムの腕と武器は一体化しているのだ。そのため、武器が壊されれば魔力を通して修復するが、こんなふうに武器ごと縫い止められれば、不自然な体制で留まらざるを得ない。
「はぁぁぁ!!!!“閃断”二連!!!」
その隙にゴーレムの背後に回っていたミユが大上段から高速の剣撃を放ち、返す刀で同じ箇所をさらに深く斬りつける。
腰だめになったゴーレムの背後から斬りつけられた斬撃によってゴーレムの体がパックリと裂かれ、核と思われるものの中心が顕わとなった。
しかし、そこで攻撃を止めては意味がない。
「これでおしまいです」
私はゴーレムの頭を蹴り、中空へと飛び上がる。そして、背に持っていた土気色の槍を真下のゴーレムの核と思われる場所、さらにゴーレムへと魔力供給をしている足元を一直線に見る。
「キノ、あなたの技をお借りします」
———“飆拳槍”———
パァン!!と耳に痛いほど甲高い音が鳴ったかと思うと先ほどまで中空に浮かんでいた土気色の槍が真下と地面に突き刺さっていた。そしてそのまま続けてパァン!!パァン!!と2回音が続く。
それとほぼ同時にドスッ!ドスッ!という鈍い音が鳴り、一本目の槍を押し込む勢いで地面へと突き刺さっていくのだ。
「グギャガガガガガガギギガギャギャギャ!!!!」
奇怪な声を上げながら縫い止められたゴーレムが叫ぶ。私は拳を振り切った状態でゆっくりと地上に降りる。改めてゴーレムを片眼鏡で確認してみると、先ほどまでは潤沢にゴーレムの体を循環していた魔力が、急速に減少していた。
最後の力を振り絞るようにゴーレムが縫い止められていた槍を引き抜き、私たちへその槍を振り下ろそうとした——。
しかし、そこで活動限界に達したのだろう。ゴーレムはそのまま動きを止め、風に溶けるように砂となって崩れ落ちた。
「テミスさん!!やったね!!」
「えぇ!!」
勝利を確信したミユが飛び上がって私に抱きついてきた。私も達成感と疲労感がない混ぜになった体でミユを抱き留めたのだった。
名前:テミス・レギド
種族:姚魔族
Lv:847
スキル:颶眼Lv.- 看破Lv.10 神聖魔法Lv.10 自然魔法Lv.10 咒力特自動回復Lv.7 体力自動回復Lv.4→New軀力特自動回復Lv.3 Up槍聖術Lv.9 突破Lv.8→New猛進Lv.4 紫電Lv.6→New閃雷Lv.4 牙突Lv.1→New重突Lv.3 Up連突Lv.8 風車Lv.8 New闘術Lv.1
称号:限界突破者 超越者 飂之眼 観看者 然の寵愛 聖の寵愛 槍技覚者




